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新政権冬が来る

◆プロポーズ大作戦で生き抜け! 新政権「限界」後には冬が来る◆

いよいよ16日は鳩山内閣の誕生だ。
とはいえ、人々の胸には期待とともに不安も渦巻いていることだろう。

「景気が悪化して、冬のボーナスまでカットされたらどうしよう」
「子ども手当は助かるけど、月々の保育料には足りないし」
「親を自宅介護しなきゃいけなくなったら困るなあ。ウチは狭いから」

そんな不安を乗り越え、これからの時代をサバイバルするカギ。
それは結婚にまつわる大きな「誤解」を捨てることにある。

比較社会学・家族社会学・人口学が専門で、家族と人口の比較社会学・比較文明論を研究してきた、明治大学政治経済学部准教授 加藤彰彦氏に話を聞いてみた。

明治大学政治経済学部准教授 加藤彰彦氏。
比較社会学・家族社会学・人口学が専門で、家族と人口の比較社会学・比較文明論を研究

4年後に直面する! 「国は頼りにならない」現実

「民主党政権の失敗は、あらかじめ運命づけられているといっても過言ではありません」

と言い切る加藤氏。インタビューはいきなりショッキングな話から始まった。

「なぜなら、これだけ膨大な財政赤字を抱えているわけですからね。衆議院議員が任期満了を迎える4年後、おそらく人々は“行政の限界”という現実に直面していることでしょう。そのとき、私たちは『国は頼りにならないのだ』と、痛感するのではないでしょうか」

では、いったい何を頼ればいいのか。すでに会社も頼りにはならない世の中だ。

「1992年の細川政権発足で、自民党の55年体制が崩壊。“親方日の丸”が壊れ、企業の家族的コミュニティも崩れた。小泉政権以降、崩壊スピードには一層拍車がかかっていますね。

残る道は“自衛”しかありません。自分で自分の身を守るしかない。つまり、国や企業を頼るかわりに “家族”で結束するのです」

思い浮かぶのはハリウッド映画である。災害やテロ戦争で、国が壊滅状態になっても、強いパパが血みどろの死闘の揚句、愛する妻と子どもを守り抜く――。しかし、現実のパパたちは彼らのように不死身ではないのだが……。

「まず、米国式の眼鏡を外しましょうよ。私たちは、“家族”といえばすぐに“核家族世帯”をイメージしますよね。そうではなく、ここで指しているのは親世代と同居、またはおたがい近くに住む、“親同居の家族”のことです。親が同居していれば、お互い住居費や家計をシェアし、子育てや介護負担を分かちあうことができます」

親同居夫婦の離婚率は 核家族夫婦の7分の1!?

親同居家族といえば、「サザエさん」の磯野家をイメージする人も多いだろう。しかし、磯野家はいかにも遠い昔の家族形態のように思える。現代の典型的家族像といえば、「ドラえもん」の野比家、「クレヨンしんちゃん」の野原家あたりではないだろうか。

「そういった、これまでの“核家族信仰”を脱し、本来の家族の意味、役割を見つめ直すことが必要なんです。

米国型の核家族は高度経済成長期にどっと増えた家族形態です。もちろん、こうした家族のスタイルは昔からありました。たとえば江戸時代も、農村の次男坊や三男坊が大勢、都市へ流れ、分家を作っていった。

高度経済成長期に核家族を作った団塊世代カップルも、多くは家を継げない若い男女でしたが、それまでと違ったのは、まずその増加ぶりが異常だったこと。そして、『核家族こそ時代の最先端』というイメージが広がったことです。これはこの頃、流行していたアメリカのホームドラマの影響も大きかったといえます。

村社会に生き、嫁姑のしがらみに縛られる従来型の日本の家族に比べ、地縁・血縁に頼らない米国型の核家族は、自立したニューファミリーとしてもてはやされました。しかし、じつはけっして自立しているわけではなかった。この頃、ちょうど急成長を遂げていた企業に、しっかりと依存していたのです」

高度経済成長期をはさむ戦後の時代は、日本史上、かなり特異な時代だった。夫の所得が上がり、郊外の一戸建や専業主婦、教育費をたっぷりかけられて育つ子どもたちが生まれた。当時、人々はそれを「普通の幸せ」と思っていたが、長い歴史から見れば普通などではなく、まさに奇跡的な幸せだったのかもしれない。

「経済が成長力を失い、会社に依存できなくなった今、核家族は完全に基盤を失っています。昨今、増え続ける家庭内暴力や虐待も、このことと無関係ではありません。

離婚も同様です。我々の研究によれば、年5%の経済成長期には、核家族の夫婦と親同居の夫婦との間に離婚率の差はあまりありませんでした。ところがゼロ成長期には、核家族夫婦の離婚率は、親同居の夫婦のなんと7倍になっているのです」

「冬」の到来に キリギリスたちは――

子はかすがい、ではなく「親はかすがい」であるという、驚きのデータだ。だが、いい年をして親と同居し続けることに、うしろめたさを感じる人もいるのでは?

「『子どもは親元を離れ、自立して結婚し、一家をかまえるもの』という思い込みは捨てたほうがいいですね。親世代の生き方に感化した子ども世代は、一人前になると、家を出て独立することが当然と考えるようになった。

とくに1999年以降、は“パラサイト・シングル”という言葉が流行り、『親に依存するのはかっこわるい』という概念が広まっています。

親元を離れ、自立に踏み切った未婚男女も多かったことでしょう。彼らの中には、現在もそのまま独身という人が少なくありません。こうして個人化、未婚化が広がりましたが、これは経済の縮小期には、正直、ハイリスクな生き方と言えるんですよ。

たしかに自立すれば自由を謳歌できる。しかし、夏の間はよくても、冬になればキリギリスは飢えて死んでしまいます。まもなくやってくる本格的な冬にどう備えるか。事態は深刻と言わざるを得ません」

家族は最後の「セーフティネット」

「格差は小泉時代の構造改革で一気に進みました。もともと構造改革は、国民を豊かにする改革などではない。地方への分配を引き上げて中央集権化を進め、少ないパイを一部の勝ち組が分奪れるようにした改革です。

そのことにようやく気付いた人々は、自民党に見切りをつけ、民主党政権を選んだ。時代は市場原理主義から所得再分配の方向へと大舵を切りました。しかし、冒頭にも述べたように、民主党の試みは失敗に終わるでしょう。

今回、彼らは公約で生活保障とともに経済成長の約束(「地球温暖化対策を強力に推進し、新産業を育てる」など)まで謳っている。とはいえ、日本の経済成長は実質的には80年代に終わっており、今後の成長はありえません。人口減少や財政難がさらに深刻化する4年後、経済状況はさらにシビアになっていることでしょう」

もちろん、ひとりで生き抜く能力のある人は厳しい冬も乗り越えられる。問題は雇用不安を抱えている人々だ(もちろん、筆者もそのひとり)。また、経済の低迷が続けば、今安定している人もいつどうなるかわからない。冬に備え、私たちはいったいどう自衛をすればいいのか。

「すでに結婚している人には、親世帯と二世帯住宅に住むか、すぐ近くに住むことを勧めます。もっとも現在でも、結婚して10年も経つと親との同居を考え始める人は少なくないようですが。

子どもには英才教育をほどこすより、人付き合いを教えてやってほしい。『サザエさん』のカツオくんのように、誰とでも話せて、上手に甘えられる子に育てたいもの。これからは、コミュニティの中でうまくやっていけることがサバイバルの最大条件になります。路頭に迷わないよう、できれば一戸建ても残してやりたいもの。

まだ独身の男性は、必死で結婚相手を探すことです。親類でも上司でも友人でもいいから『誰か紹介してほしい』と頼みまくる。案外、中学・高校時代の恩師に頼むと、いい相手を見つけてくれるかもしれません。職場の契約・派遣社員の女性もいいですね」

自分は収入も高くないし――などと躊躇せず、とにかく広く積極的に声をかけるべき、と加藤氏。共稼ぎなら世帯収入は倍になる。親の家に転がり込めば貯金もできる。その分、精一杯、親孝行すればいいのだ。

「結婚の本来の意味、役割を見つめ直してください。結婚とは、けっして一時の恋愛感情でするものでもなければ、ましてや自己実現のためにするものでもない。あくまで家族というコミュニティ、セーフティネットを作るためにするのです」

西川敦子(フリーライター)
2009年09月11日

(出典:ダイヤモンド オンライン)



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