運動の効果が明確化された事例です。毎日なら15分ずつ、週3回なら30分ずつ、最大酸素摂取量の50%で運動することは何とかなりそうですね。最大酸素摂取量の50%は運動負荷試験を受けないと正確にはわかりません。
心拍数でコントロールするのが一番の方法です。運動中の心拍数を(220-年齢)×0.6程度とすれば大きく外れていませんが、医師と相談されることをおすすめします。
有酸素運動が血圧の降圧に有効なのはよく知られているが、有酸素運動の時間と降圧度の関係を検討した国立健康・栄養研究所健康増進研究部主任研究員の高田和子氏らによると、中高年では少なくとも1週間に1~1.5時間運動すれば降圧作用は最大になるようだ。American Journal of Hypertension誌の8月号に掲載された。
同氏らは、心血管疾患を認めず、降圧薬を服用していないステージ1~2高血圧(140~159/90~109mmHg)の207例(およそ50歳)を対象に、8週間の有酸素運動が血圧に及ぼす影響を検討した。これら207例は、歩数計を装着するだけの対照群(39例)と、スポーツクラブで指導のもとに運動を行う群に割り付けられ、運動群は1週間の運動時間により、「30~60分/週」群(55例)、「61~90分/週」群(54例)、「91~120分/週」群(21例)、「超120分/週」群(38例)の4群に分けられた。
試験開始時の「男女比」、「年齢」、「身長」、「肥満度(BMI)」、「摂取総カロリー」、「食塩摂取量」に、5群間で有意差はなかった。
有酸素運動はウォーキング、ジョギング、自転車ないし水泳で、最大酸素摂取量の50%の強度で統一した。
8週間後の血圧は、対照群では試験前と同等だったが、運動群ではいずれも試験前に比べ有意な低下を示した。
また拡張血圧は運動時間と相関を認めなかったが、収縮期血圧は「30~60分/週」群(およそ7/6mmHg)よりも「61~90分/週」群(およそ12/7mmHg)でより大きな降圧が認められた(p<0.01)。また、「91分/週」以上運動しても降圧度は「61~90分/週」群と有意差を認めなかった。興味深いのは「運動回数」と「降圧度」の関係で、1週間の運動時間が同じであれば、「1~2回/週」、「3~4回/週」、「5回以上/週」の3群間で降圧度に差はなかった。
これらより筆者らは「1週間に30分~1時間の有酸素運動でも降圧が認められる」、「1週間に61~90分の有酸素運動で降圧作用は最大となる」、「週のトータルの運動時間が同じであれば運動回数は関係ない」と結論付けているが、「毎日の運動推奨を否定するものではない」との警告も記している。
いずれにせよ、毎日ジムに通うなどが現実的に不可能な生活をしている我々にとって、この研究は、「休日に2時間弱汗を流せば運動療法の恩恵にあずかれる」という福音ではなかろうか。
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