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GREEN MOONの日記 [全55件]

July 09, 2007楽天プロフィール Add to Google XML

kagami その2

 ある日。その鏡を割ってしまった。
 故意ではない。がその時見てはならない物を見てしまった。
 鏡のカケラのひとつひとつに、顔が浮かんでいたのだ。
 それはひとつとして、同じではなく。子供から老人まで、男もいれば
 女もいる。だが、その顔は共通して笑っているのだ。ただの笑いではない。まるで、正気を失った様な笑いなのだ。それらを見たとき、今まであったこの鏡への、いわば、愛情、というべきものは、鏡同様に砕け散ってしまった。
 代わりにひとつの感情が、心を占めるようになった。
 
 恐怖
 
 その感情に取り付かれた私は、それ以来鏡を恐れるようになった。いや、鏡だけではない。夜、窓ガラスが己の姿を写すことさえ、恐ろしくなったのだ。酷いときなど、街を歩いていて、通りすがりの車のミラーにさえおびえるのだ。だから、外には一歩も出歩くことが出来なくなった。
 窓ガラスも段ボールを貼り、昼間でも夜のようになった。もちろん、窓を開けることには支障はない。だが、近所の子供が、病んだ私の事を聞きつけて石を投げるようになって以来、窓の外に木の板を打ち付けてしまったのだ。
 両親はそのように、日々おかしな言動を繰り返す私に、怒りもするし、心配もする。だが、私の抱えている恐怖を理解することが出来ない以上、なにも役には立たなかった。

 あの鏡はいったい何だったのか。
 わからない。先に言ったように祖母も居ない今。あの鏡については、なにもわからない。
 だが、私を恐怖し続ける。
  
   了

 
 
 


Last updated July 09, 2007 2:47:53 PM
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June 29, 2007

kagami その1

 私の家には鏡がある。
 いや、鏡ならば取り立てて「ある」という物ではないのだが。その鏡には、「ある」といわせるだけの何かがあった。
 その鏡は、全身を写せるだけの大きさがあり、いわゆる姿見というやつだ。聞いた話によると、その鏡は祖母の嫁入り道具であったらしい。
 普通、嫁入り道具ならば、鏡台のように化粧をしやすい鏡を持参すると思うのだが、祖母はこの鏡を持参した。その祖母は私が五つの時に、この世を去っているためその理由を問うことは、もはやかなわない。だが一度、母に訊いたことがある。
 その時の母の答えは「さあ」と実にあっけないものであった。

 私は男だから、この鏡に違和感を感じるのかもしれない。鏡などひげそりの時ぐらいしか重宝しないものだから。
 だが、私は気が付くとその鏡の前にたっている。幼い頃より、この鏡に惹かれているだ。何がそこまで、気になるのかわからない。だが、私を逆の動作をする私そっくりの彼の瞳が、何かを訴えかけているのだ。


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Last updated June 29, 2007 10:19:24 PM
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June 22, 2007

見えない闇 10章

 父親の死から、ずいぶんと時間が経ったような気がした。だが、まだ三年しか経っていない。副社長の見舞いの後、退院したゆうじは、日本大地石油を退社し潜伏した。そしてすべての犯罪を告発するために微に入り細をうがつ内容の文章を作成し、関係当局、マスコミに一斉に送った。
 そして、その反応は面白いほど早かった。
 地検の特捜部の動き、連日ゆうじがリストアップした人物の取り調べが行われた。

「案外、うまくいくものだな」
 ゆうじは、そう独りごちると母のいる実家に入ろうとした。その時である。
 鍵を取り出そうとしたゆうじの背後から、カサリと音がした。誰か人の気配がする。
「誰かいるのか?」 
 暗闇から、人影が現れた。その人物が誰か視認して、ゆうじは息を呑んだ。
「ユウ」
 それは井上幸子だった。いや、それはどうかわからない。姿は確かに幸子だったが、その中身はゆうじの知っているそれではないのだ。
「ひさしぶりだな」
 動揺をさとられないよう、平静を装いながら言葉を紡いだ。幸子は、それを聞いて唇の端を少し上げて笑みをつくった。その笑みに、ゆうじは言いようのない恐怖を感じた。
 ゆっくりとゆうじに近づいていく。ゆうじは、足が鎖で固定されたように動かない。
「ユウ、あなたって本当に憎たらしい人・・・・・・。そう憎いほど愛おしく、そして愚かな人。あんな父親の為に、復讐をしようなんて」
「──あんな父親だと?」
「そう、あなたの出世のために、原稿を渡しなさいって言ったのに、拒むんだからあんな死に方をしたんだわ」
 ゆうじは幸子の手を掴んだ。
「どういうことだ」
「議員や私たちが勤めていた会社の社長に頼まれたのよ。うまくいけば、あなたは関東エリアの営業マネージャーにしてくれるって言ったのよ! そのわたしの苦労を!」
 幸子はゆうじを平手打ちにした。ゆうじはそれを、よけることもせず自ら受けた。
 ──サチには、家の鍵も渡していた。つまり、家に忍び込み原稿を奪い、パソコンからも消し去ったということか。・・・・・・だが、原稿を奪っても、何故、命まで奪う必要があった!
 父親の殺しまでは、関与していないだろうが、自分をそのように裏切った幸子に対して、怒りがフツフツと沸いてきた。
「もう二度と俺の前に、姿を見せるな。見せたら、俺は何をするかわからない」
「言われなくても、そのつもりよ。でもね、消えるのは私だけじゃないわ。貴方も一緒よ」
 きらりと何かが光った。ゆうじは幸子の手を放し、大きく飛び退いた。ゆうじのいた場所に研がれた包丁が通り過ぎた。
「なっ、なにをする!」
「・・・・・」
 幸子は答えず、包丁をゆうじに再び突き出した。

 気が付くとゆうじはひとり立っていた。地面には、もはや物言わぬ肉のかたまりが、血を流しながら横たわっていた。
 近所の家から、騒ぎを不審に思った住人が、出てきてこの惨状を目の当たりにした。
「おい! 山崎さん! あんた、何をしてるんだ!」
 その声に、ゆうじは手のひらを見た。それはこの世の物とは思えないほどの、鮮やかな赤に染められていた。
「警察を呼べ! あんたは逃げるなよ」
 しかし、ゆうじはその声にかまわず、脱兎のごとく逃げ出した。

 血に染まりながら、ゆうじは近くの山を目指した。子供の頃にかくれんぼをした山だ。そこの山頂付近には、ごくわずかな物しか知らない洞窟がある。だが、そこに行ってどうしようという考えはない。ただ、今はあの場から逃げられればよかった。
 誰もいない山。
 暗闇の中を、ゆうじは駆けていた。
 目的の場所に着いた。小さな穴だけれども、中は広がっていて、大人が入っても大丈夫なくらいのスペースはある。

 ザッザッザッ

 暗闇から、何かが来ていた。
「警察か?」
 洞窟の中に入って、様子をうかがう。すると今度は、洞窟の中からザッザッと音がした。そこには、誰もいない。
 それにもかかわらず、ゆうじの耳には足音が響いている。
「なんだよ。一体なんだよ」
震える手で、ライターを取り出し火をつけた。







なにもない。と思い振りかえるとそこにはあった。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ」
 その悲鳴を、聞いたものは誰もいない。そして、これ以後、ゆうじの姿を見たものも


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Last updated June 22, 2007 9:31:09 PM
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June 19, 2007

見えない闇 9章

 灼熱の太陽が、ゆうじの肌を焼き付ける。
 ゆうじはアフリカにいた。
 石油の採掘はもう秘密裏に行われているのだ。それは、所有者であるマルミチの中でも、ほんの一握りしか知らない。ここで採れた石油は表向きは、日本大地石油が採掘権を持つ島の近くにある場所で採れたことになっている。
 二重三重に偽装しているため、その事には日本政府も気が付いていない。いや、政府の中にも、この企みに荷担する役人がいるため気が付いていないふりをしているのだろう。

 ゆうじは、このことを証明することができるための書類のコピー、写真などの確保を着々と進めた。指紋やコピーミスなどの痕跡を一切残さずに、また、コンピューターへのアクセス記録などもすべて消していく隠密作業は、ゆうじの精神にかつてないほどのプレッシャーをかけた。
 四ヶ月後、この件に関わった者達の罪を、証明できるだけの証拠をそろえた頃には、ゆうじの胃にストレス性の胃潰瘍が出来た。

「大丈夫かね?」
 東京に戻ったゆうじを、武田副社長が見舞った。副社長には、異国で行われている謀略に荷担したことが、原因であるように仄めかした。副社長がゆうじを見る目は、失望と罪悪感が混じっていた。
 ゆうじにも、何故副社長がそのような目で見るのか、大体推察できる。せっかくお膳立てした仕事を中途半端にされたこと、そして、今ベッドに横たわっている非が自分にあるという想いが、そのような態度をつくりだしてしまったのだ。
 ──留奈との交際も、これで終わりかもしれないな。
 だが、それは寸毫ほどもゆうじの心には、衝撃を与えることはない。それは、悲しいほどもろい偽りの恋だったのだから。
 そして、目的が達せられた今、その偽りにとらわれることはない。確かに、別れは何らかの支障を来すかもしれない。だが、もはや知るべき事は、この手に入っている。復讐の牙をむくべき時だろう。

心の中で、黒い闇を抱えながらゆうじは副社長に「ご心配いただきありがとうございます」と頭を下げた。下を向いたゆうじの視線に殺気が込められていることに、副社長は気が付かず「早く元気になり給え」といい残し病室を出て行った。
ゆうじは、去り際に渡された一通の手紙を見つめる。それは留奈からの手紙だった。
「これも、もう必要はない」
 ゆうじは、ライターを取り出すと、その手紙に火をつけた。

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Last updated June 20, 2007 10:27:12 AM
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June 16, 2007

見えない闇 8章

 ふと気が付くと、視線を感じることがある。その視線の主が誰だか、もう十分すぎるほどわかっている。しかし、いくら探しても姿をとらえることが出来ない。何かをするわけでもなく、ただ見つめて、時々封筒でなんらかのメッセージを送ってくる。 
 物理的にはそれほどではなが精神的にかなりの負担となっていた。
「自業自得だろう」と徳永は言った。
 それは、ゆうじにもわかっている。
 だが、目的のために手段を選んでいる暇はなかった。そして、留奈との交際は確実に効果をもたらしている。留奈の家、すなわち武田副社長の家にも招かれ、家族揃っての食事にも数回同席している。

「徳永くんは留奈と結婚するつもりなのかね?」
 ゆうじにビールを注ぎながら、副社長は訊ねた。その顔はアルコールがまわって、いささか赤くなっている。しかし、この質問は酔漢の戯れ言ではないだろう。ゆうじは慎重に言葉を選びながら、返事を頭の中で組み立てた。
 留奈を見やると、その顔は父親に劣らず真っ赤になっている。その顔にゆうじの心は罪悪感でズキリと痛む。ここで、どんなに良い返事をしても、彼女を騙していることには変わりはない。
 ──ゴメン・・・・・・。
「出来れば、そうしたいとは考えていますが、なにぶん会社に入ってから、それほど月日は経っていません。もう少し、自分の立場をしっかりと固めてからにしたいと思います」
「うん、それは当然だな。わたしとしても君にもう少し高い地位にいてもらった方が、何かと都合がいい。──そこでだ。まあ、未来の息子へわたしができるささやかな助力ではあるが、違う部署に行ってみないかね?」
「違う部署? どこへでしょうか?」
「・・・・・・これは社外秘なのだが、ある会社が所有している島から石油を掘り出そうとしているんだ。どうだね、そのプロジェクトに参加してみる気はないかね? これは我々経営陣にしても注目している企画なのだよ。もし、これが滞りなく進めば、君にはそれなりのポストを用意できると思うが」
 ──棚からぼた餅とはこういう事だな。だが、これで、喜んでほいほいと引き受けるれば、逆に疑いをもたれるかもしれない。
「お話は、ありがたいとは思うのですが、今の営業の仕事もまだ未熟な私です。もし、へまをしたならば、「お義父さん」の顔に泥を塗ることになるかもしれません。お断り死体のですが」
 すると、副社長は意外な顔をした。当然だ。断るような話ではない。だが、すぐにこう言った。
「君が二の足を踏むのはわからないでもない。だが、わたしは君を信頼しているのだよ。留奈のためでもある。やってみたまえ」
 ──もちろん、もう意志は決まっている。俺がこの話を逃すわけはない! 
 心の内で笑いたい衝動が、駆けめぐるがそれを表情に出さないように神妙な面持ちで返事をした。
「──わかりました。留奈、待っててくれ。仕事をうまくいったら、おれ達の将来のこともちゃんとしよう」
 ゆうじの言葉に、留奈の眼に涙が浮かんだ。

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Last updated June 16, 2007 5:59:05 PM
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June 12, 2007

見えない闇 7章

 元の会社の同僚に聞いても、幸子のことはわからなかった。ゆうじが会社を辞めた後に、幸子も辞めてしまったという。そして、その後、誰も連絡を取れていない。
 もし、幸子の奇行が有事との別れならば、いや、そう考えることがこの場合自然だろう。その責任はゆうじにある。そう思うと有事の心は痛みを感じていた。
 ゆうじも心当たりを探したが、その快もなくなんの情報も手に入らなかった。
 
──今は、サチにかまっているときではないか。
 気にならないわけではないが、その事に気を取られすぎると、自分がなんのためにすべてを捨てて父親の死の真相を調べ庸としているのかわからなくなってしまう。
 
 徳永の撮った写真から、兵藤に接触した人物が誰かはわかっていた。それ会長秘書を務める篠山という男だ。
 つまり、この件には会社の上層部も絡んでいることは容易に推察される。だが、中途採用ではいったゆうじには、上の者との接触をそう簡単には持てなかった。 
 ここで、ゆうじはひとりの女性に注目した。
 ゆうじとおなじ営業部に、武田副社長の娘留奈がいた。

 ゆうじは、留奈のすべての情報を手に入れた。趣味、思考、経歴わかることをすべて頭にたたき込み、留奈に近づいていった。
 会社の中には、留奈の父親のことを知っている者が大勢いる。それにつられて留奈に言い寄る男は少なからずいた。ゆうじはその男達と同じ存在に見られないよう、細心の注意をして彼女との仲を狭めていった。
 
 半年後、ようやく留名を口説き落とすことに成功した。だが、あくまでも真実に近づくための切符を手に入れただけだ、けっして、心を許すことはあってはならなかった。
 
 何度目かのデートを重ねたときである。家に帰ると、またあの封筒があった。
「サチ!」
 今度は慎重にカミソリなどの仕掛けがないか、確かめてから開けた。
 どうやらそういう細工の跡はなかった。
 封を切る。すると、その中にはずたずたに切り裂かれた写真が入っていた。そのパズルを貼り合わせて元の写真を完成させる。
 ──これは・・・・・・。
 それは先程まで、ホテルのレストランで食事をしていたゆうじと留奈の写真だった。

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Last updated June 16, 2007 5:03:31 PM
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June 10, 2007

見えない闇 6章

ゆうじは清掃会社を辞めた。
 次の手に移るためである。今回の事の鍵は石油である。そして、父親を殺したのはそれに群がるハイエナだ。ならば、その全貌を明確にしなくてはならない。
 ゆうじが潜り込んだのは、日本大地石油である。そのためにひとつ身元に細工をした。
 徳永の養子になったのである。
 徳永には、まだ何も話していない。徳永もなにも言わないだろう事は、もうわかったのだろう。黙ってゆうじの願いを聞き入れた。

「・・・・・・これは?」
 ゆうじがアパートに帰ると、ポストに一通の封筒が入っていた。差出人の名前はない。
 不審に思いつつ、封を破った。
「っつ!」
 中にはカミソリが入っていた。手に赤い筋が引かれている。カミソリを取りだすと、一枚の便せんが入っている。
 止血をして、その内容に目を通した。

 『誕生日おめでとう』

 背筋にひやりと汗が流れた。てっきり、ゆうじのしていることに気が付いた銀行の連中が、脅迫してきたかと思ったのだが、予想とはかけ離れた内容だ。
 ──だが、俺の誕生日は明日だ。
 そう思い、時計を見ると時刻は零時をまわっていた。
 ──まさか? おれの帰りがこの時間になることを知っていたのか?
 だとすれば、この手紙の主はゆうじの行動を把握しているということになる。一体何者か。
 
その時、携帯が鳴った。
「もしもし?」
「ふふふふふふふふふふふふふふふふ」
 女の笑い声だった。どこかで聞いたことがある。だが、思い出せなかった。
「おい、誰だ・?」
「・・・・・・おやすみなさい。・・ゆう」
 ゆうじをゆうと呼ぶ女は一人しかいない。ゆうじが家具メーカーを辞めるときに別れた井上幸子だった。その別れは、綺麗な別れではなかった。
 ──どうしたっていうんだ。サチ。
 答えは出てこない。 
 

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Last updated June 10, 2007 7:36:24 PM
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