私の見た「金田正一」という男
元プロ野球の名投手、金田正一氏が亡くなった。86歳だった。彼は17歳でプロ野球に入り、たった1人の400勝投手となった。このほか三振数、完投試合数で新記録をつくっただけでなく、最年少ノーヒットノーラン記録など、人間とは思えない数々の記録をもつ。まだスピードガンがなかったので、正確なスピードはわからないが、最高で180キロ出た、という伝説までつくられている。私はこの金田正一とは何度か一緒になったが、ともかく背が高いだけでなく、声もでかかった。それに周りに遠慮するということもなく、思ったことを、すぐ大きな声で話し出すので、秘密の話ができないほどだった。あるとき「女性自身」の編集部に現れて、連載対談のホスト役になる、という話になった。「ワシは金は要らないが、車が欲しい」と、なぜか司会料として、外車を要求した。その頃は、最高殊勲選手には車が贈られた時代だったので、名車が欲しかったのかもしれない。また1度は、金田がロッテ監督時代に、後のロッテ監督、有藤道世氏の結婚式があったのだが、ことのき、私が有藤夫妻の仲人をつとめたのだった。私は金田監督夫妻が仲人するものと思っていたのだが、金田夫人はあまり人前に出たがらなかったのか、それとも夫人がいなかったのか、どちらかわからないが、2人を結びつけた男として、私に仲人をやってほしい、となったのだ。それにしても、有藤と金田の2人の大男に挟まれた私は、実に貧弱に見えた。それに参会した選手たちは、みな大男なのだ。その写真はスポーツ紙に載ったと思うのだが、どこかに行ってしまった。いま思い出しても、この金田ほどの天真らんまん、無邪気で憎めない男に出会ったことはない。すごい男だった!櫻井秀勲 著『昭和から平成、そして令和へ 皇后三代』櫻井秀勲 著『70歳からの人生の楽しみ方』櫻井秀勲 著『60歳からの後悔しない生き方』DMMオンラインサロン「櫻井秀勲のすべて」穴口恵子×櫻井秀勲 オンラインサロン「魔法大学」櫻井文章塾 第3期櫻井秀勲Facebook