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■ジャズの歴史(その13)■

February 9, 2007

■History of Jazz ジャズの歴史(その13)■

●ジャズ・ピアノの発展

1920年代に大きく発展したものに、ジャズ・ピアノがあります。
ラグタイム・ピアノやブルースのスタイルから発展したピアノ奏法は、
さらに、多様化しながら、大都市に住むミュージシャンのスタイルに取り込まれていきました。

1910年代、シカゴやニューヨークの都市には多くのピアニストが移り住んできました。
ニューヨークのハーレムでは歓楽街を転々と放浪しながらピアノを弾く、
「ラグタイム・キッド」と呼ばれるピアニストたちが、
ピアノ・バーやサロンなどに出入りしてピアノテクニックを披露していましたが、
さかんにジャムセッションをしたり演奏コンテストが行われたりして、テクニックの向上を図っていくうちに、
優れたハーレム・ピアニストが出現してきます。
そして、その活発で驚異的なテクニックを駆使した奏法は、リズムを打ち出す左手の動きの特徴から、
「またぐ」という意味合いのストライド・ピアノと呼ばれるピアノ・スタイルに発展していきました。
それはラグタイムにスウィング感や即興性を加味した新鮮なスタイルでした。

デューク・エリントンはラグタイム・ピアニストに憧れてこの道に入ったといいますが、
彼がニューヨーク入りした1920年代初期には、すでにストライド・ピアノになっていました。

ストライド・ピアノの父と呼ばれるジェームズ・P・ジョンソン、
カウント・ベイシーの最初の先生であるウイリー“ザ・ライオン”スミス、
デューク・エリントンが最初に憧れたというラッキー・ロバーツがその代表的なプレーヤーで、
ジェームズ・P・ジョンソンに師事したファッツ・ウォーラーが最大のスターになりました。

一方のシカゴでは、南部から移ってきた黒人に伴って、ブルース・スタイルのピアノ奏法が流行しました。
それはブギウギと呼ばれるピアノ・スタイルで、単にブルース・ピアノとも言います。
ブギウギの父と呼ばれるジミー・ヤンシーに、
彼の弟子のパイン・トップ・スミス、
彼らに次ぐミード・ルクス・ルイス、アルバート・アモンズが代表的なプレーヤーですが、
彼らはプロとしての活動は少ないものでした。
しかし、ブギウギは、30年代末「フロム・スピリチュアル・トゥ・スウィング・コンサート」
をきっかけにリヴァイバルし、ポピュラー音楽分野でも多くのヒット曲を生み出し、ブームにまでなりました。
ブギウギは、左手でパーカッシヴで力強いアクセントをもつベース・パターンを反復し、
右手で多彩なリズムを駆使しながら自由に演奏するブルースそのもののスタイルは、
その後の音楽にもピアノ演奏の中に生かされ、時代を超えたスタイルになりました。

ファッツ・ウォーラーは才能を発揮しストライド・ピアノの大スターになりました。
ストライド・ピアノは、もともとソロ・ピアノ演奏から生まれたスタイルでしたが、
ファッツ・ウォーラーは1930年代に入ってから結成した「ファッツ・ウォーラー&ヒズ・リズム」
においても、そのスタイルを生かしたサウンドを表現しました。
ビッグバンドにも匹敵する力強いリズムを繰り出す左手のパターンは、
前人未到のスウィング感を生み出し、
それは、スウィング・ピアノ・スタイルの先駆けともなったものでした。

1920年代のピアニストのうち、アール・ハインズはストライド・ピアノをベースにしながらも。
ビッグバンドにおけるピアニストの存在感を示すために、右手の力強いオクターブ奏法を編み出しました。
当時はまだマイクがない時代だったので、
ホーン奏者と対等に渡り合えるようピアノの音を大きくするための方法だったと言いますが、
彼はその奏法を、トランペット奏者のフレージングにヒントを得て形成したため、
トランペット・スタイルと呼ばれています。
アール・ハインズの独自のそのトランペット・スタイルは、
1920年半ばのシカゴで目覚しく活躍していたルイ・アームストロングとの共演で、
ルイ・アームストロングと対等の位置を示し、
ピアノをそれまでのリズム楽器からメロディー楽器として再認識させるに至りました。
1920年代末ごろの自己のビッグバンドでの活動、
マイクが普及してきた1930年代以降の演奏では、そのオクターブ奏法はあまり用いなくなり、
シングル・トーンを使った明瞭なフレージングが主体となっていきました。
そして、ここに管楽器的(ホーンライク)なピアノ奏法が確立されたと言えます。
アール・ハインズは“ファーザー”というニックネームを持ちますが、
まさに、ジャズ・ピアノの父と呼ばれるに値する革命的業績をあげたのでした。

ファッツ・ウォーラーとアール・ハインズは、
アート・テータムやテディ・ウィルソンら、次世代のピアニストに大きな影響を与え、
ストライド・ピアノをスウィング・スタイルにつなげていくことになります。

Last updated April 10, 2008


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