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June 10, 2007
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テーマ:洋楽(3288)
カテゴリ:Album
私の心の音楽
モータウンとの決別、そしてシンセサイザー、新しい仲間との出会い
アイデンティティーの確立

Music Of My Mind

心の詩 / スティーヴィー・ワンダー
Music Of My Mind / Stevie Wonder


オリジナル盤発売日:1972年3月3日
レーベル:Motown

1.Love Having You Around ラヴ・ハヴィング・ユー・アラウンド
2.Superwoman (Where Were You When I Needed You) スーパーウーマン
3.I Love Every Little Thing About You アイ・ラヴ・エヴリ・リトル・シング
4.Sweet Little Girl スウィート・リトル・ガール
5.Happier Than The Morning Sun 輝く太陽
6.Girl Blue ガール・ブルー
7.Seems So Long シームズ・ソー・ロング
8.Keep 0n Running キープ・オン・ランニング
9.Evil 悪魔

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スティーヴィー・ワンダーが、1972年3月に発表したアルバム。

ここからが、本当にスティーヴィー・ワンダーのすごいところが花開くことになる、
岐路に立った作品になりました。

同年1972年10月に発表される『トーキング・ブック(Talking Book)』、
その次の1973年発表作『インナーヴィジョンズ(Innervisions)』、
そして1974年発表作『ファースト・フィナーレ(Fulfillingness' First Finale)』の3枚のアルバムは、
「3部作」と呼ばれ、
そして続く1976年に発表した大作の2枚組LPアルバム『キー・オブ・ライフ(Songs In The Key Of Life)』までが、
スティーヴィー・ワンダーの才能が怒涛(どとう)のごとく爆発した時期の傑作群として知られていますが、
実質的に、このアルバムがその幕開けを告げるもので、
クオリティー的には、それらの傑作に決して劣らない出来になっています。
このアルバムをスティーヴィー・ワンダーの最高傑作と言う人もいるくらいです。
しかし、スティーヴィーが本当にすごいのは、それだけではありませんでした。

1961年、モータウンの創始者であり社長のベリー・ゴーディ・Jr.の目にとまり、
若干11歳でモータウンと契約を交わしたスティーヴィー・ワンダーでしたが、
1971年5月13日、スティーヴィー・ワンダー21歳の誕生日に、
少年時代からのモータウンとの契約が切れました。

この頃はレコード会社が歌手にどんな曲を歌わせるかということなど、すべて決めていて、
アーティスト側には発言権がほとんど無いといった状況でした。
そんな会社のやり方に以前から不満を抱いていたスティーヴィーは、この契約切れの日を迎えるにあたって、
それからは自分のやりたいことを、周りから干渉されずにやりたいと考えていたようです。

1971年5月13日の朝、会社に行ったゴーディは、
机の上にあった、スティーヴィーの弁護士からの手紙を見ました。
そこにはスティーヴィーがモータウンとの契約終了と未払いの金銭の支払いを望んでいると書かれてありました。
そして、その手紙を見て激怒するゴーディに
「僕ももう21歳だ。これ以上まわりの言うことには従わないよ。僕との契約は無効にしてほしい。」
そう言い残すと、ステーヴィーは荷物をまとめ、妻のシリータとデトロイトを離れ、
ニューヨークへと向かいました。

ニューヨークへ移ったスティーヴィーは、次のアルバム制作に向けてスタジオを予約します。
それまでに彼が稼いだお金のほとんどが、スタジオの使用料や新しい楽器の購入等、
次のアルバムを制作する費用として注ぎ込まれました。
モータウンのしがらみから解放されたスティーヴィーは、会社に口を挟まれることなく、
従来のモータウン・サウンドから脱却した、全く新しいサウンド作りを目指します。
そして、ただのヒット曲の寄せ集めのアルバムではなく、
スティーヴィーが影響を受けたビートルズやボブ・ディランらが作るような質の高い、
コンセプチュアルなアルバムを通して、自分自身の音楽を表現するようなアルバム制作に挑みました。

また、この時期スティーヴィーは、後に彼の黄金時代を築き上げる礎となった運命的な人物と出会います。
それは、ロバート・マーゴレフとマルコム・セシルの二人のミュージック・エンジニアです。
マーゴレフとセシルは、シンセサイザーのパイオニアともいうべき存在で、
彼ら二人だけのバンド、トントズ・イクスパンディング・ヘッド・バンドが、
1971年に制作し、リリースしたアルバム『ゼロ・タイム(Zero Time)』は、
当時まだ一般的ではなかったシンセサイザー一台だけで制作されたものでした。
スティーヴィーは、そのアルバムを聴いて、すぐにその虜となります。
そのアルバムの音が、たった一台の楽器だけで表現されているということに、大きな感銘を受けたようです。

スティーヴィーは、以前からシンセサイザーに大変興味をもっていたので、
自らその足で制作者の一人 マルコム・セシルに会いに行き、
彼らを新しい音楽エンジニア兼共同プロデューサーとして自身のレコーディングに迎え入れます。

シンセサイザーという新しい楽器のエキスパートに巡り会い、シンセサイザーの使い方を教わるにつれ、
「この楽器こそ、自分が考えている音楽を思い通りに表現できる最高の手段だ」と確信し、
アルバム制作にこの楽器を全面的に導入するようになります。

スティーヴィーが曲のアイディアを出し、
マーゴレフとセシルがそれに対して技術的なアドバイスするという形でレコーディングが進められ、
三人の共同作業の中から、このアルバムが完成しました。

アルバム・タイトル『Music Of My Mind(ミュージック・オブ・マイ・マインド)』

『私の心の音楽』という意味のアルバム名。

スティーヴィーは、このアルバム・タイトルについて、
「シンセサイザーは、僕の頭に浮かんだイメージを直接表現する方法だと思う。
だから、このタイトルになったんだ。」と語っています。

また、このアルバムでは、スティーヴィーが自分ですべてを表現するため、
ほとんどの楽器は彼自身による多重録音で演奏されています。

そのことは、ポール・マッカートニーも大変興味を抱いたようです。
スティーヴィーがデビューした当時から彼のユニークな音楽的才能に注目していたポールは、
このアルバムで多重録音を駆使した、ほとんどすべての楽器を自分で演奏するというスタイルに感銘を受け、
後のポールのアルバム制作に大きな影響を与えたとも言われています。

ステーヴィーがモータウンとの契約を解消したということは、業界の知れるところとなっており、
他のレコード会社はこぞってスカウトに出ていました。
しかし結局スティーヴィーはモータウンに戻り、再契約を交わしました。
そこで交わされた契約は、スティーヴィーが自らのプロデュース権を獲得し、
何者にも制約されることなく、自分が作りたい音楽を自分の思うように作り上げることができるというもので、
モータウンは、スティーヴィーが作ったアルバムを、“ありのまま”リリースしなければならないことになりました。
つまり彼は、アルバムを制作する上で完全な“創作の自由”を獲得したことになります。

スティーヴィーは、自分がレーベルを去ると、ほのめかしたおかげで、望む自由を手に入れました。

「僕は基本的にモータウンに残りたかったんだ。
最初から一緒にやってきたし、パイオニアの一人として会社が変わり、新しい方向に向かうのを見届けたかった。
会社のことも、そこで働くみんなのこともわかっていたから、
何とかゴーディを説得するだけでよかったんだけど、
説得の一部は僕がいったん契約を打ち切ったときにすでに終わっていたんだ」
と彼は語っています。

このアルバムは大きなヒットはしなかったので比較的地味な印象を受けるアルバムです。
しかし、アルバム制作の全権を掌握したスティーヴィーは、この作品を大きな足がかりとし、
次の作品以降、怒涛の快進撃で傑作を発表し続けることになります。

そういう意味で、
このアルバムは、単にシンセサイザーを全面的に取り入れたり、
多重録音などのレコーディング技術などのサウンド面の革新ということだけでなく、
スティーヴィー・ワンダーの音楽そのものが大きく花開くことになる要素が詰まっているもので、
自らの音楽的なアイデンティティーを確立した最重要アルバムということが言えるでしょう。
このアルバム『心の詩』が作られなかったとしたら、
この後に続く3部作や『キー・オブ・ライフ』のスティーヴィーは、存在しなかったのですから。

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Last updated  June 11, 2007 05:25:26 PM
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