みんなさくらが好きだった♪ファイル1のつづき
十分後…疲れる…な。予想以上に疲れる…。クラスの女の子に歩測を合わせるのでさえまどろっこしかったわたしも、女の子が多い環境に置かれて少しは慣れたと思っていたが…。幼女のそれはまったくの別次元だ。おいて来ていないかと横目でさくらを伺う。 ん?ちょっと顔色が悪いな。ヒカル:「さくら、疲れたならちょっと休むか?」また眉をハの字にしてふるふるとかむりを振る。ヒカル:「おうち帰るか?」ふるふる。ふだん甘えん坊のくせにこういうときはいやに強情だなぁ。まぁ子供らしいと言えばそうだが。ヒカル:「あ、おんぶしてやろうか?」…… …… … ふるふる。ちょっと迷った!かわいい♪っと、いけないいけない!さくらは頑張ってるんだもんな。わたしがバカにしちゃいけない。20分弱。ようやく近所のスーパーに到着した。わたしが急げば五分もかからない道だ。ヒカル:「さくら!カートに乗れ!」さくらをカートに乗せ、ハンドルを握る。胸の下を覗き込むと、見上げてきたさくらと目が合った。な、なんか・・・いいぞコレ♪ヒカル:「よ、よーし!しゅっぱーつ!」そのあとは割と、スムーズに買い物が進んだ。他の幼稚園児ならはしゃいだり、だだこねたり大変そうなものだが、さくらは大人しいのでその点は手がかからない。時折カートを止めて笑いかけてやれば、さくらもにっこりわらってくれる。しかし、もうすぐ入用なものがそろうといったところで。さくら:「……」さくらの眉が心なしか下り調子だ。ヒカル「どうした?座りつかれたか?」ふるふる。さくら:「おトイレ…。」なるほどトイレか。買い物の邪魔をしないようにと我慢してたのだろうか?どうもこの子は遠慮深いというか、引っ込み思案気味で、わたしとは違ったタイプである。ヒカル:「よしきた!それではさくら号はこれよりおトイレに向かいまーす!」カートを押してやってきたトイレ。個室に入ったさくらにドア越しに話しかける。「出たかぁ?」返事がない。 しばらくしてドアが開いた。さくら:「出ないの。」ふむ、まぁ慣れない場所だし、そういうことってあるよな。ヒカル:「大丈夫大丈夫。またしたくなったらお姉ちゃんに言いな。」さくら:「… こくり」まぁさくらぐらいの子なら最悪外ですることになっても問題ない…よな。さて、残りの買い物もつつがなく完了。さくらのトイレも今度はちゃんと出て、あとは荷物を抱えて家に帰るだけだ。レジ待ちでしばし放心していると。さくらが服の裾をちょこんと引っ張ってきた。さくら:「さくらも何かもつの…。」ああ、そういえばお手伝いに来たんだった、とか言ったら悪いか♪がんばってスーパーまで歩いたし買い物中も大人しくしてたもんなぁ。さて何を持たせたものか。缶詰は重いし、野菜は持ちにくいからおっことしそうだし…そのときレジの前に置かれた、小さなきんちゃく袋が目に入る。お菓子の詰め合わせ。あれならさくらにも持てそうだ。ヒカル:「すみません、これもください!」袋に買い物を詰め、スーパーを出た。ヒカル:「さくら、ちゃんと持ってるか?」きんちゃく袋のひもを小さな手がぎゅっと握りしめて持ち上げる。ヒカル:「よーし!じゃあ、帰るぞ。」夕焼け小焼けの帰り道。両手に買い物袋をぶら下げたわたしの少し後ろを、さくらがとぼとぼついてくる。懐かしいなぁ。わたしも昔こうやって海晴姉さんたちの後ろをついて行ったっけ…。抱えた袋の中身が気になるのか、隙間から覗こうとするさくら。ヒカル:「ふふふ、お腹すいたか?ホタお姉ちゃんたちがおいしいカレーを作ってくれるからもう少し我慢しような。」さくら:「…あっ、ちがうの!これは食べようとしてたんじゃないの!」ヒカル:「そうか?別に一つぐらい食べてもわたしは内緒にしてあげるぞ?」さくら「ううん、これはあとでお兄ちゃんとヒカルお姉ちゃんと食べるから今はたべません♪」かわいいなぁ、さくらは♪ 絶賛頭を撫でてやりたい中だが、今は両手がふさがっている。ぎゅるるるるる…ん?さくら「?」これは…。さくら:「ヒカルお姉ちゃんもおなかすいたの?」ヒカル:「いや、そうじゃないんだが…」しまった、スーパーの冷凍コーナーで冷えたせいか…。考えてみれば、帰って来てから着替える暇もなかったからな…。ヒカル;「さくら、悪いけどもう少しペースアップできるか?そろそろ春風たちも心配し始めてるだろうし。」さくらはこくりとうなずく。ぐごおぉおおおぉお…ヒカル:「ふぎぃっ!!」さくら:「!?」ヒカル:「な、なんでもない。さぁ、行くぞ。」ほんとはさくらを抱っこして駆けだしたいぐらいだが、あいにく両手がふさがっている。ぎゅらりゅるぅぅぅぅ!切なさと苦痛がときに波となってぐらぐらるぅぅぅぅ!ときに地鳴りとなってきりゅりりゅりしぃぃ!ときに暴風となってわたしの腹部を駆け抜ける。まるで、巨大な伝説のモンスターが海を大地を空を増やしあってせめぎ合っているようだ…。辛くて意識を保つのがやっと。さくら:「ヒカルお姉ちゃん?」声に振り返るとさくらはずいぶん離れた位置にいた。しまった、いつの間にか少し早足になっていたか。さくら:「ヒカルお姉ちゃん、さくらがのろまさんだから、おこってるの…。」ヒカル:「おこってないよ?ゆっくりおいで。」そうは言ってみるが、さくらは今にも泣きだしそうな顔をした。そんなに険しい顔をしているのかわたしは…。さくら:「ごめんなさい…。さくら、がんばって歩いてるけど…ぐす、お姉ちゃんにおいつけないの。」ああ、あやまらなきゃいけないのわたしの方なのに…。歩いてる間、話しかける余裕もなかったので、さくらは完全にわたしを怒らせたものだと思ってしまったらしい、袖で目をこすりながらぽろぽろと泣き始めてしまった。フォローを入れたかったが、とてもじゃないがそんな状態じゃない。せめて険しくなっている顔を背けて、せいいっぱい声を和らげてヒカル:「帰ろう。」と言うのが精一杯だった。家が見えた。心配になったのか春風と蛍が玄関先まで出てきている。春風:「あ!帰って来た!遅いから心配したのよ?」蛍:「ホタも全然アニメの内容が入ってきませんでした…。」そうか、心配かけたな。事情を説明して早く安心させたいが。ガサッ春風&ホタ「???」わたしは走った!買い物袋を二人に押しつけて誰よりも早く…。間に合えっ!蛍:「ど、どうしたんでしょう?ヒカルお姉ちゃん。」さくら:「ぐす・・・ぐす…、ヒカルお姉ちゃん怒ってるの…さくらのせいなの。」春風&ホタ「???」間に合った…。また世界を縮めてしまった。さくらには悪いことをしたな…。ちゃんと謝らないと。すると丁度そこにさくらがやってきた。スーパーから買ってきたお菓子の袋をまだぎゅーっと握りしめている。さくら:「ごめんなさい・・・ぐすんっ」可哀想に。すっかりお目目を真っ赤にはらしている。ヒカル:「いや、悪いのはわたしの方だよ。」さくら:「?」わたしはさくらにいい子のうんちのお約束がしっかり守れてなかったことを白状した。最近偏食気味だったし、暖かくなってきたのを油断して、薄着でいすぎた。だから、怒ってたわけじゃないんだと言って、最後に抱きあげて頬ずりしてやる。ふふ、さくらも頬ずりしかえしてくれて。さくら:「おなかが痛いのよくがんばりました♪ヒカルお姉ちゃんはえらーいの♪」いいこいいこまでされてしまった。ヒカル:「さくらもちゃんとお手伝いできたな!えらーいぞ♪」へへへ♪このままさくらに嫌われるんじゃないかとひやひやしたけどこれで一安心だな♪そのあと、買ってきたお菓子を一つずつつまみ食いしたのは、二人だけの内緒だ♪つづく