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「私はいつか、できれば窓の外に海の見える、冬でも暖かいようなところで、家族が食べるだけの土地を耕し、海の凪いだ日は釣りにでかけ、雨の日は本を読んだり、土をこねたり書画をたしなんで暮らせたら、こんな豊かで贅沢な生き方はないだろうと思うようになりました。なぜなら、毎日が時間に追われているような都会のあわただしい生活を繰り返しているうちに、いったい何の目的で生きているのか分からなくなってしまったからです。」
「経済成長がなければ私たちは豊かにはなれないのでしょうか?文明の進化は私たちを幸せにするものなのでしょうか?古代の人たちは、我々とはまた違った価値観を持ち私の理想とするような生活を、ごく当たり前のようにして過ごしていたのに違いない。進化を否定しているのではありません。少しでも便利になりたい、苦労は減らして楽になりたい、そうした思いが智慧を生み、現在があるのですから。ただ、物質的な進歩だけを追及しても精神的な進歩が伴わなければ悲劇を生みます。」 「ここで少し、西洋人と東洋人の考え方の違いをお話しましょう。西洋民族は狩猟民族、東洋人は農耕民族と分類することもできますね。また、草原と砂漠の民が西洋人ですし、東洋人は森と湖の民と考えることもできます。東洋の人たちと比較すると、西洋の人たちの生きる環境は厳しいものでしたから、自然に対する考え方も厳しいものとなりました。生きてゆくためには、自然と対決し征服するよりなかったのに、東洋では豊かな恵みを享受しつつ自然と共に生きる道を選んだのです。自然を破壊することは自滅を意味します。」 「西洋の各地で栄えた文明、しかし、その痕跡はいずれも砂に埋もれてしまいました。なぜでしょうか。歴史の必然としてのサイクル、栄枯盛衰という言葉だけでは理解しにくい。大きな原因は人口が増え続けて都市が生まれるにしたがい、それらを取り巻く緑の自然環境を破壊していったからです。拡大がピークに達した時、すなわちもう回りの自然環境では、その人口を賄いきれなくなったとき、その文明の崩壊が始まります。」 「まだ、化石燃料の発見されなかった頃のことです。原始的な民族や国家の盛衰がごく小規模で起きていた時代には問題にもなりませんでしたが、それが地球規模での人口増加や大規模な戦争が起きるようになると、勝っても負けても、参加しなかった国までも大きな影響を受けるようになります。」 「常に自然と闘い征服することによって生き延びてきた西洋の論理的思考は近代科学の礎となりました。17世紀の半ば、ニュートンの宇宙重力の発見以降、ヨーロッパでは次々と発明、発見がなされ、それを契機として産業革命が起きました。たった300年余りのあいだに過去1万年以上もかかっても出来なかった文明を築いてしまった。偉大なり、人類の叡智というべきでしょうが、最後に落とし穴が待っていた。」 「原子力の発見です。自らの発見により、自ら滅び去ることも可能となり、人類はそれ以来常にこの恐怖に怯えなくてはならなくなりました。恐怖は心を病ませます。心が病むと体も病むし死人も増える。広島、長崎における原爆投下は悪魔に魅入られた仕業としか思えない悲劇でしたが、それ以降も核開発競争は止むことなく、核実験による地球の汚染は目を覆うばかりでした。直接、間接影響を受けた人たちは広島、長崎の被爆者を上回るでしょうし、地球環境、生きとし生けるもの全ての生態系に影響を及ぼしました。」 「17世紀のヨーロッパでは物質と心を分けて考えるようになったことで、驚くような発展を成し遂げたのですが、原子力以外にも物質的なものだけに価値観を置くようになってしまった。モノを得るためにはお金が必要です。お金を得るためには手段を選ばなくなってきたことも弊害になりました。横道にそれますが、そんなお金にまつわるエピソードをお話しましょう。」 「お金がなくなった現在の社会システムと比較するには、とてもよい教材となっているのです。それは18世紀のドイツのフランクフルトのゲットーで両替商を営んでいたユダヤ人の家族がおりました。当時、ユダヤ人はキリスト教徒から嫌われていて、ゲットーと呼ばれる隔離された地域でしか暮らすことを許されていなかったのです。自由に職業を選ぶこともできず、卑しい仕事と看做されていた金銭を扱っていました。」 「この家族には5人の兄弟が居ましたが、或るとき、父は彼らに矢を一本ずつ手渡して折るように命じました。それぞれの矢は簡単に折れてしまいました。そこで父は再び5本の矢を取り出すと、それらを一緒に束ねて折ってみるように促したのです。矢を兄弟の結束の重要性に例えて話すと、長男だけをフランクルトに残し、他の兄弟をそれぞれロンドン、パリ、ウイーン、ローマへと旅立たせたのでした。毛利元就と同じことを考えていた人物がヨーロッパにもいたのです。 「お金儲けで大切なことは情報の先取りです。通信網のない時代でしたが、私設の郵便馬車を走らせたりして、誰よりも早く情報を入手してせっせと蓄財に励みました。その中でも最も有名な話はネポレオン率いるフランス軍とウエリントン将軍率いるイギリス軍とのワーテルローの戦いでのことでした。結果をいち早く知った彼らは、勝敗の結果を逆にしてイギリス全土に吹聴したのでした。」 「事実はイギリス軍が勝ったのですが、負けたと知らされたイギリスでは債権が暴落して紙切れ同然となりました。そのとき、タダ同然となった債権を一人で買い集めている人物がいたのです。次の日になって真実を知った市場が高騰したことはいうまでもありません。一夜にして莫大な富を得ることができたのも、情報の力はお金になることを知っていたからに他なりません。いつのまにか彼らの資産は王侯貴族をも凌ぐようになり、爵位を買い入れ、それらの王族と婚姻関係を結ぶまでに出世したのです。血のつながりは何にも勝ります。こうして彼らの閨閥はヨーロッパ全土はおろか新世界と呼ばれたアメリカにまで広がっていったのです。」 「経済によるネットワークは世界を覆いました。彼らにとっては宗教やイデオロギー、そして国家や民族の違いより、ビジネスとしての利益を生むかどうかに関心が高かった。強い経済力は政治をも動かします。損得のためには政治信条さえ曲げ、彼らの手足となって働く政治家が多くなりました。そして、利権のために国益だなどと大義名分を打ちかざして戦争が起きるようになりました。」 「二度までも起きた世界戦争は経済戦争に他なりません。彼らも戦争では少なからず影響は蒙っていましたが、終わってみれば以前にもまして大きな資本力を蓄えて経済市場に君臨していたのです。20世紀は彼らの影響なしでは生きていけないほどの影響力を持っていたのでした。すべての分野のマーケットの背後に存在し、メディアの情報を自分たちの都合のよいように操作し、なにより彼らの拝金主義という思想は、かつてのどの宗教の教義よりも人々に支持されたのです。」 「横道にそれてまで、なぜこんな話をしたのかと言いますと、人類の歴史を振り返えれば、私たちはそれなりに進化してきました。封建的な王政はほとんどなくなり、植民地もなくなりましたね。民主的と言われるシステムが導入され、志があれば誰でも政治に参加できる国が広がっていました。しかし、本当にすべての民は平等に生存できていたでしょうか。」 「表向きの政治的民主主義に騙されて、経済的植民地主義が堂々と行われていたことに気付いていたでしょうか。自由競争、自由経済、自由貿易、自由etc、自由になにをしても良いのではありません。資本主義社会では資本力こそが力であり、資本が大きいことが正義となってしまうのです。」 「20世紀の資本主義は当初の目論見から大きくはずれて、富の偏りを招き金権王朝を作り出していたのです。真の民主主義とは一人一人の民のためのものです。政治的にも経済的にも弱いものこそ保護されなくて、なにが民主なのでしょうか。太陽の光や空気のように分け隔てなく与えられるべきものなのです。金銭で売買してはいけないものが、この地球にはたくさんあるのに、なんでも金銭に換算してしまうのは、いいかげん止めなくてはいけなかったのです。」 「さて、世界がどのようにして変わっていったのかは、現在とあなたの時代を比較することである程度は推測できるものなのです。なぜなら未来はあなたがたの思いが作り出すものだからです。あなたがた一人一人がどのような未来を望んでいるのかによって影響を受けるのです。社会システムや政治体制のせいにしてはいけません。それらもまた、過去にそうした思いがあってそうなったのですから。」 「徒党を組んだ力ずくも革命によっても人類は幸福になることはできません。全体は一つなのです。一人一人が全体を構成しているのです。個人が地球の行方に対して、どのような社会が出来れば、争いもなく、餓える者もなく思いやりに満ちた素晴らしい社会が作れるのか真剣に具体的に思う必要があります。自分一人だけで考えてもどうしようもないなどと思うことはありません。」 「最初は小さな意識エネルギーでも、それらが集まって一定レベルに達すれば、社会は自動的に変革していきます。古い意識が作り出していたものは、壊れて崩壊します。今というのは次の瞬間には過去になります。もし現在に満足していないのなら、自分のなかで、どんな未来がくればいいのかイメージして、出来ることから実行してください。物質世界の波動はとても低くて即現実化はしませんが、この世界も思念の世界の一部であることには変わりありませんから、思いは少しずつですが形になって現れてきます。」 「前置きがずいぶんと長くなってしまいましたが、あなたがお聞きになりたいことをこれからお話します。その前に一息いれてお茶を入れ直しましょうね。」 拝金教の信者たち 終
Last updated
2008.02.16 10:09:38
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