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「オイルショック以後、エネルギー確保のために世界的に原発の建設が盛んになった時期があります。しかし、度重なる事故と環境汚染の問題から、あの頃はアメリカもヨーロッパも原発建設には反対する世論が強くなり世界の流れは原発廃止に傾いていたのでした。しかし日本はその後も資源エネルギーがないということで原発を推進してきました。そして結果的にはこんな大きなツケを払うことになりました。」
「いいですか、人間の作ったものに絶対などというものは有り得ません。完全な設計、完全な建築、完全な技術、完全な操作、完全な安全装置、そんなものがありましょうか。そのいずれかに欠陥があれば事故は起きる可能性がある。原発の怖いのは最悪の場合は地球のマグマにまで影響を与え、人類が長期間に渡って後遺症に苦しむことになる。どうかあなたにお願いしたいのは、帰ったら人々に呼びかけてください。今からでも遅くはありません。一つ一つさらに厳格な基準で再点検し、僅かでも問題があれば直ちに運転を停止し、新しく計画されているものは白紙に戻すべきです。」 「エネルギーが足りなくなれば節約を考えればいい。節約しても足りなければやりくりを工夫すればいい。必要が発明の母となり新しい発想が生まれてくるのです。人類にはまだ核エネルギーを使いこなせるだけの理力が備わっていなかったのです。常温での原子転換技術が確立されるまで核エネルギーを使ってはいけなかったのです。不況は困る、電力が不足したら経済に影響する、そういっていた人は命や健康をそんなお金で買うつもりだったのでしょうか。そんな人ほど自分の家の近くに原発が出来たら文句を言う人なのではないでしょうか。」 「年々増えていた自然災害はその年も世界各地で猛威をふるっていました。イタリアのベスビオスはしばしば火砕流を麓の町へ流し出し溶岩ドームは不気味に成長していましたし、西インド諸島ではペレー山の爆発大噴火。アメリカではますます巨大化したハリケーンが暴れ、ミシシッピーは氾濫を繰り返していました。トルコでは黒海の水位が上昇し、イスタンブールは大洪水になりました。メキシコからコロンビア、ベネズエラと続く火山地帯は噴火と地震を連動させるように動きが活発になっていましたし、中国大陸でも大小の地震と洪水に見舞われていた、そんな時期でしたから、もともと地震国の日本でも地震が起きたからとて不思議ではなかったのです。」 「私は行く先のあてはなかったのですが、ただ放射能汚染から逃れたいの一心で西へ西へと歩き続けて岡山あたりまできていました。私と同じように避難してきた人たちにと与えられた古い校舎を仮住まいに、若い人たちでグループを作ってボランティア活動のようなことをしていました。私自身が非難民でしたが、他にはすることがなくて、弱っている方々や、お年寄り、体の不自由な方のお世話をしながら私も食べさせていただいていたのです。」 「その年も押し詰まり外には白いものが降り始めました。暖房器具もなく寝具も充分とはいえない状態でしたので、私たちはなるべく固まって寝るようにしていました。もちろんそれでも冷えるので、お年寄りは小便に立つ回数が増えます。そのたび起こされるのでなかなか熟睡できません。何度かうとうとしていた時、私の耳に、はっきりと誰かが遠くから呼びかけているのが聞こえてきました。」 「もちろん、この部屋の中からではなく、透明感のある澄んだ女性の声のようでした。はっきりとした日本語でした。”私の声が聞こえる人たちは、これからお伝えすることをどうか注意深く聞いてください。私たちは地球外知的生命体です。あなた方をお救いするためにやってきました。まもなくこの星は地球規模の大災害に見舞われます。これまで以上の災害が起きます。どうか私たちを信じて、これからお伝えする場所に向ってください。”と繰り返し呼びかけてくるのです。とっさに私は隣で寝ていた友人を揺り動かして目を覚まさせると、声が聞こえないか尋ねました。」 「しかし、彼は不機嫌そうに”何を寝ぼけているんだ”と言ってまた毛布を頭からかぶって寝てしまいました。私は掛けていた毛布を体に巻いて校庭に出て声の聞こえた方を見上げてみました。その時の光景は今も瞼にはっきりと焼き付いています。素晴らしい光景でした。どんよりとした暗い冬空に、いくつかの宇宙船のようなキラキラと光る物体が浮かんでいたのです。」 「私は胸が高鳴りました。このまますぐにでも駆け出したい気持ちでいっぱいでした。でもここの人たちを残して自分だけ助かるわけにはいかない。私は校舎に戻り、そのまま眠れずに朝まで考えていました。出来れば全員一緒に宇宙船に乗りたい。夜が明けるのを待って、全員に集まってもらい昨夜のことを説明しました。」 「みんなは私が、この暗い雰囲気を和らげるために作り話をしているのだと勘違いして、終わるといっせいに拍手をしてくれましたが、私の顔があまりに真剣だったので、きっと夢でも見たんだよと慰められる始末でした。それからしばらく、いつもと同じような日々が続いたのですが、ある夜、あの日と同じような声が聞こえたような気がしたので、私は躍り上がって庭へ飛び出ると空を見上げました。」 「暗い夜空には何も見えませんでした。がっかりした私は気持ちを静めようと大きな深呼吸をしながら、どうすれば皆に分かってもらえるのか心に向って問いかけたのです。するとどうでしょう。再びあの美しい声が響き、宇宙船が一つ、また一つと姿を現したのです。私は夢中になって全員を校庭に呼び寄せて空を見上げさせ、信じられない光景に皆は驚きの歓声をあげたのです。」 「これはずっと後になって分かったことですが、地球外知的生命体の宇宙船はそれから三ヶ月にわたって地球上空に滞在し、世界中の人たちの救出にあたったそうです。私はというと、結局、宇宙船には乗りませんでした。どうしても嫌だと言い張る老人二人と残ったのです。自分の世話も出来なくなったこの人たちを、どうしても置いてはいけなかったのです。」 「宇宙船が去ったあと、しばらくは平穏な日々がありました。遅い春がやってきた五月も半ばのことだったでしょうか、下から突き上げるような強い衝撃を受けたと思った瞬間、私は意識を失っていました。いや正確には失ったのではなく、意識と体が分離していました。私は崩れた校舎から放り出され、額からも頭からも血を流して倒れている自分の体を上空から眺めていました。痛くもなんともありませんでした。私はそれまでに少なからず霊的な知識を学んでいましたので、これが幽体離脱現象なんだなと思いました。」 「私は死んではいませんでした。なぜなら私と私の体は銀色に光る細い紐でまだ繋がっていたからです。死とはこの紐が切れることだと知っていたからです。ふと振り返ると、信じられないようなシーンを目にしました。さきほどまで、一緒にいた二人の老人もまた同じように空中に浮かんでいて、どうやら知り合いか親戚かわかりませんでしたが、懐かしそうに話しているではありませんか。起き上がるのさえ大変だった老人たちは、今はとても元気そうで、私に気付くと今までの礼を言うのです。」 「仲間に教えられたらしくて自分たちが死んだことを知っていました。二人は仲間の人たちと空高く昇っていきました。私ももう少し高く昇ってみたのですが、そこには先ほどと同じような光景があちこちで見られました。おおぜいの人たちがお亡くなりになったのでしょう。」 「私はあまり高く昇って銀の紐が切れたりしないだろうかと心配になった途端、自分の肉体に引き戻されました。それは肉体的な苦痛を感じることでもあるのです。頭、額、腰に激痛が走りました。起き上がることも出来ず、這うようにして近くの欅の大木の下までいって上半身を持たせかけたところで、また気を失いました。」 「どのくらい眠っていたのでしょうか、相変わらず鈍い光しか放たない太陽が山間に沈もうとしていました。私に誰かが囁きかけているような気がしていましたが、まだ痛みが酷く、何をすることも出来ません。ペシャンコに潰れた校舎の隙間に体をねじこんで、手探りで見つけた寝具を体に巻きつけて、また眠りました。」 「どれほどの間、眠っていたのかは未だに分かりません。しかし、頭の中で響く呼びかけは日増しに強くなり、ついには目を閉じるとビジョンが現れるようになりました。どうやら近くに生き残った霊能力者がいてテレパシーを送っているらしい。私はまだ痛む体に鞭打って、亡くなった老人たちの遺体を埋葬すると、ビジョンで感じた方向に向って出発したのです。」 「僅かな煎った玄米と水を肩にかけて、人のまったくいなくなった道をゆっくりと歩いていきました。数日歩いたところでビジョンは鮮明となって、もう近くだと分かりました。彼らにも分かったらしくて途中まで出迎えてくれました。彼らは男女合わせて全員で15人ほどのグループでした。」 「彼らは私よりずっと豊富な霊的な知識を持ち、このような地球規模の災害も予知していたというのです。数年前からこの農家を借り受け、自給自足の生活を送りながら霊的な知識を学び、理力を使えるような訓練をしていたのだそうです。彼らの話では、今回の地震が最後の建て直しで、もうこれ以上の災害は起きないだろうと言っていました。地球に溜まった最後の膿が吐き出されたということです。それからは私も彼らのグループの一員としてそこでの生活が始まりました。」夜の盗人の如くに、終
Last updated
2008.02.18 12:52:22
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