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カテゴリ:やまももの創作短編
内川さんの数少ない自慢の一つが入院するような大病を患ったことがないということでした。しかし、内川さんはフ2008年4月初旬から前立腺肥大と腎不全を患って、鹿児島市立病院で一ヶ月余りの入院を余儀なくされました。そしてこの入院体験から内川さんはろいろ貴重なことを学ぶことができました。 内川さんは団塊の世代ですが、一人の患者としては生まれたばかりの赤ちゃんと同様の治療や看護も受けねばなりませんでした。ですから、恥や外聞などにはこだわっておられません。この体験はかなりキツイものがありましたが、また本などでは絶対に学べないことを身をもって学んだようです。 病室は六人部屋だったのですが、患者さんの入れ替わりが激しく、内川さんいろんな人と接することが出来ました。患者さんの年齢も高齢者が多く、彼の近所や職場ではあまり耳にしない鹿児島弁のネーティブスピーカーたちのディープな会話のなかに身を置くことできたことも、彼にはたいへん貴重な経験だったようです。その頃、自民党から民主党への政権交代の可能がさかんに取り沙汰された時期だったこともあり、一人の患者さんが何かというと他の患者さんに議論をふっかけ、激しく民主党を批判していたものでした。そう言えば、翌年2009年8月の総選挙で民主党が単独過半数を占め、9月に民主党政権が誕生しています。 しかし、内川さんにとって何よりも貴重な体験は、彼を温かく看護してくれる妻や長男との絆を深めることができたことでした。なお、次男は関西の大学に入学したばかりの時期だったので、心配を掛けまいと連絡しませんでした。しかし内川さんの奥さんは、夫の内川さんの看護のみならず彼の父親の世話もしなければならず、さらにまた内川さんの亡くなった母親の愛犬の朝夕の散歩も欠かすことが出来ず、仕方がないので明石で働いている長男に連絡して応援を頼まざるをえませんでした。
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最終更新日
2016年09月04日 13時51分56秒
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