『紙の月』 角田光代
『紙の月』 角田光代を読みました。何人かの登場人物が入れ替わり立ち代り変わる構成なので読んでいる最中に何度もこの人はどんなエピソードの人だったかと振り返りました。主人公は、梅澤梨花で彼女の中で何かが違うと狂っていったのは最初は些細なことからでした。だんなさんとの仲がなぜかしっくりいかない不安を解消するためにも働きに出始め、そこで子供が欲しいと思っても、それが伝わらない、子作りしようと誘ったらはしたないという風な目で見られる。公太と出会ったのはそんな頃でした。人に触れてもらうのがうれしかった。多分そんな理由からどんどん公太との時間を作り出し、だんなさんが海外出張を機にエスカレートしていきます。銀行のお金を横領し、スイートルームに泊まったりマンションを買ったり車を買い与えたり、普通ではなくなっていく梨花はもう自分では止められないところまできていました。その間のエピソードは、対照的に節約に励む主婦、または梨花まではいかなくても見得で買い物をしまくる女性が出てきたり、ちょっと感覚がずれている女性達が登場します。読んでいて、デパートの店員の前で見栄を張ってしまい買い物をするシーンなどとても心情がリアルだんだん読んでて辛いと思ってしまう場面もありました。本当に普通を生きるって難しい。情報がありふれていて理性を持って生きていくのが大変な世の中だなと思い、自分への戒めにもなった本でした。