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Jul 2, 2007
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カテゴリ:ぼくの疑問符
『バカの壁』をはじめ随筆ものをそこここで書いている
養老孟司(ようろう・たけし)さん。
どうもこの人の文章とはソリが合わない。

2~3頁ほども読むと、鼻持ちならぬ表現に出くわして先を読む気が失せるのである。

だから、養老さんの評判のご本は2冊買ったけれど、けっきょく数頁読んだだけだ。

ひょっとしたらご専門では立派な方なのかもしれないが、
こと随筆となると、林望(はやし・のぞむ)さんに共通する厭味なところがある。


読者を見下しつつ、自らの位置ははっきりさせずに二股かける。

日本人代表ぶるかと思えば、

次の瞬間、プイッとそこから飛び離れ
読者に対して
「お前ら日本人はダメだなぁ」
とつぶやき、

かと思うと、また次の瞬間、読者に向って
「お前、それでも日本人かよ」
と、すごんでみせる。

教養人代表と奉られることに甘えたご都合主義。


例を挙げよう。

PHP研究所の『ボイス』7月号のコラム「解剖学者の眼」に、
養老さんの厭らしさが凝縮している。


≪中国における虐殺事件といわれるもの、朝鮮での従軍慰安婦問題、それがいまさらなんだという気持ちは私にも強くある。≫

と、いちおう「保守」側に“保険”をかけておいて、

≪そういう問題が相変わらずしつこく持ち上がるについては、ただいま現在の日本人に、何か反省すべき点があるのではないか。≫

と今度は朝日新聞もはだしの、おめでたいまでに素朴な謝罪論である。


≪憲法改正の手続法が決まったらしい。きちんとした軍をもつべきだという意見を、私はよく知っているつもりである。≫

と、いちおう「保守」側に“保険”をかけておいて、

≪力をもつ者、もとうとする者は、同時に高い倫理観をもたねばならない。
(中略)
自分を日本人と信ずる人たちに尋ねたい。自分の倫理観に確信があるか。≫

と、ちょっと見は高尚なもの言いだ。

防衛力をもつという基本的国権に、
「高い倫理観」というスクリーニングが必要だとは初めて聞いた。

国の護りはまず“大和魂”から、
という意味のことを裏から述べているのだ。
冷めた脳で腑分けすれば、おめでたい唯心論ではないか。

「力をもつ者、もとうとする者は、同時に高い倫理観をもたねばならない」などという講釈は、
日本人相手にぐずる前に
まず中国共産党や朝鮮労働党へ言い放つべきもので、
この辺の出発点の異常な内向(うちむ)きが、そもそも間違いのもと。

憲法9条の議論で「護憲」を言う人々の脳から中国・朝鮮国のことがまったく捨象されているのに通じる。


それにしても

「自分を日本人と信ずる人たちに尋ねたい」

とは、なんという嫌らしい表現だろう。

それを発する当人の位置するところをはっきりさせずにおいて、
口調だけはやたらに傲岸(ごうがん)である。

そういうお前はナニサマだ? と思わず胸ぐらを掴みたくなる
(もちろん、脳のなかだけで、ね)。


養老孟司さんの表現をひとつひとつ見てゆくと、いちいち引っかかるのだ。


「中国における虐殺事件といわれるもの」
このもって回った表現は何だ。

「南京大虐殺」と呼ぶか「南京事件」と呼ぶかで立場が分かれてしまうから、
どちらの派へもご都合で飛び移れるように
わざわざ「虐殺事件といわれるもの」と言って二重三重の“保険”をかけたつもりだろう。


「朝鮮での従軍慰安婦問題」

「従軍」の2字が余計なのは常識として、
「朝鮮での」とは何ぞや。

今日ただいまこれが問題化している地域を指すのなら
「韓国での」
と書くべきだ。

「朝鮮での」と書くのは、
日韓合邦後の「朝鮮」を指しているとしか思えないが、
しかし、慰安婦がいたのは戦争による占領地域だ。
朝鮮で慰安婦は開業していない。

もっと正確にいえば、
朝鮮において公娼なのが、戦争による占領地域では「慰安婦」と名づけられただけである。

だから
「韓国での慰安婦問題」
ないし
「朝鮮人の慰安婦問題」
と書くのが正しかった。

要は、このテの文章を書くひとがもつべき最低限の歴史の基礎知識が
養老孟司さんには缺(か)けているのではないか。


そして、
「憲法改正の手続法が決まったらしい」
と、あえて伝聞形を使ったのはどういう意味だ。

なぜ
「憲法改正の手続法が決まった」
と書かないのか。

「らしい」と書くことで、わざとらしく一歩引いてみせ、
「お前らのように前線に出て政治にかかわる俗物じゃないのさ、わしは」
とほくそ笑んでいる感じだ。


養老さんのこういう文章を抵抗なくスッと読める人は、
まことにおしあわせというしかない。





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最終更新日  Jul 4, 2007 09:02:46 AM
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