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金嬉老(きん・きろう)事件。
いま起これば、たぶん朝鮮語音読みで 「キム・ヒロ事件」 とか 「キミロ事件」 とか呼ばれたろう。 昭和43年2月に、在日朝鮮人の金嬉老がライフル銃で暴力団スジを2人射殺して車で逃走し、ライフル銃と弾丸150発、ダイナマイト40本を持って旅館にたてこもった。 当時8歳だったわたしも、「きんきろう事件」 がテレビでニュースになっていたのをおぼろに覚えている。 名前の 「老」 の字にひかれて、てっきり 「60代前半くらいの男」 が犯人のように錯覚していた。 劇のプログラムを読んで、金嬉老が事件当時39歳であったことをようやく知った。 それだけのことで、金嬉老事件のイメージががらりと変わってしまった。 * 劇団四季の 「解ってたまるか!」 は金嬉老事件の換骨奪胎もの。 主人公の村木明男(加藤敬二さん)は、母親を父に殺され、5歳にして 「前科者の子」 にして孤児になった男だ。 この日、酔っ払い運転の運転手2人を射殺するや、都心の高級ホテルにたてこもる。 酔っ払いが通行人を轢かぬうちに射殺してやったのだ。『中央新聞』 に書いてあったお題目に刺戟されて、ね。 たてこもった 「ライフル魔」 村木が空に向けて撃つライフル音で第1幕が始まる。 第1幕の右往左往の警察は やや学藝会的だが、第2幕が絶品。さすが福田恆存(つねあり)さんの作だ。 個性繚乱の人質たちもおもしろいが、何といっても痛快なのは、中央新聞社(=イヤミなところまで、もろ、朝日新聞社)の記者が特ダネ企画として、「進歩的文化人」 4名をライフル魔に引き合わせるシーン。 「上から目線」 の猫なで声で 「あなたの気持ちはよく解る」 と のたまう 大学教授・辯護士・映画監督・劇作家らに対してライフル魔が次々に繰り出す啖呵の数々がスカッと爽快。 ブンカジンぶりをとことん笑いのめすのが、なんとも小気味よい。 ブンカジンがこねくりまわす空虚なことばにまぎれこんだ 「原罪」 の一語に ≪過去に犯した罪がどうして現在なのだ?≫ と応じて笑いをとったかと思うと、 ≪黙れ、原罪野郎、手前等(てめぇら)に俺の気持が解つてたまるか……。 おたんこなす、俺はその 「解る」 にレジスタンスして けふ(きょう)まで生きてきたのだぞ!≫ * 第1幕の途中からほとんど出づっぱりの主演・加藤敬二さんは、膨大な台詞をこなしつつ全くスキがない。 劇団四季は俳優さんをスター扱いしないので、加藤敬二さんの名前も経歴も、チョイ役の俳優さんとまったく横並び。 劇団なりの原則はわかるが、スターはスターとしてもっと華やかに崇(あが)めたいというのがファンの気持ちである。 だからブログのタイトルにも加藤敬二さんの名を持ってきた。 (11月23日まで東京・浜松町の劇団四季 「自由劇場」 で。 そのあと12月21日から来年1月11日まで京都市の 「京都劇場」 で。) [映画・演劇(とりわけミュージカル)評]カテゴリの最新記事
私は14日に観ました。
加藤敬二さんの正に快演でした。ウエストサイドのベルナルドも素晴らしかったですが。 終わり部分の「原爆」は唐突でしたが、考えてみればあり得ますね?(Nov 22, 2008 08:41:38 AM)
ノムさんさんもご覧になりましたか。
わたしは実は11月8日の夜の部を見たのです。 土曜の夜というのに空席がけっこうあって、もったいないなと思いつつ、ブログでの劇評も遅れてしまいました。 距離を置いてみればリアリティに欠ける 「原爆」。でもそれが、またひとつ諷刺空間を広げるのが福田恆存さんの面目躍如です。 ライフル魔の気合が、嘘という嘘に片っ端からリアリティを与えているのでしょう。(Nov 22, 2008 11:08:31 PM)
>土曜の夜というのに空席がけっこうあって、もったいないなと思いつつ、・・・
そうだったですか。本当に「もったいない」ですね! 「現在」「原罪」のギャグは、私もガハハ笑いしてしまいました。(Nov 24, 2008 08:29:32 AM) │<< 前へ │次へ >> │一覧 │コメントを書く │ 一番上に戻る │ |
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