カテゴリ:ことばと文字
≪銀行の隠し口座情報 スイス、米に提供合意
脱税ほう助 起訴免れる≫ (日本経済新聞 平成25年8月30日夕刊2面) 漢字熟語を書くときに、新聞は相変わらず漢字制限をまもって、常用漢字・人名用漢字に含まれない漢字は 「ひらがな書き」 にすることが多い。「まぜ書き熟語」 と呼ばれる。 (産経新聞は校閲部部長の方針で、まぜ書き熟語は極力排除しているが。) わたしは、まぜ書き熟語が大きらい。蛇蝎(だかつ)のごとくに、嫌いだ。 上の「脱税ほう助」も、「脱税ほ」「う助」というふうに頭のなかでまず分解してしまう。 (0.05秒) 「う助」 って何だよ! (0.1秒) あ、「幇助」かよ。 (0.05秒) この合計 0.2秒ほどの断絶が不愉快なのですね。 日経は藝が細かくて、 ≪脱税ほう助 起訴免れる≫ と、「助」と「起」の間を4分の1角ほど空けてあるが、その空きがなくて ≪脱税ほう助起訴免れる≫ とあったら、「助起訴」って何……? と2秒くらい考える。 「ほう助」 は、ひらたく言えば 「手助け」 だ。手助けという単語があるからほう助は日常的に使われないレアな単語。(ちなみに中国語では “幇助” は日常単語。簡体字で 「幇」 は上下に 「邦」 + 「巾」 と書く。) どちらも、書けば3文字だから、 ≪銀行の隠し口座情報 スイス、米に提供合意 脱税手助け 起訴免れる≫ と書けばいいようなものだが、「幇助」 が法律用語としてあるから 「手助け」 と言い換えられない。そこで 「ほう助」 と書く。 かりに 「幇助」 という名前の市があったら、地名・人名には漢字制限を適用しないというショバのルールに基づいて ≪銀行の隠し口座情報 幇助市、国税庁に提供合意 脱税ほう助 起訴免れる≫ という文字づかいになる。 そして、日本のすべての市の名前はふりがななしで読めるものと見なすのがショバのルールだから、「幇助市」 には本文でもふりがなは振られない。 こういう状態を何と呼ぶのだろう。 「偽善」? 「ひとりよがり」? 「やってるフリ」? やってるフリの漢字制限遊戯は、いい加減にやめてほしい。 幇助という単語を使いたいのであれば、あくまで 「幇助」 と書き、本文の初出部分で 「幇助 (ほうじょ)」 と ふりがなないしカッコ書きの注をつけてほしい。それができないというなら、「手助け」 と言い換えるべきである。 「障害者」 を 「障碍者」 と書かずに 「障がい者」 と書く、あれ。 「障がい者」 という字面(じづら)を見ると、ゲジゲジに背中を這われるような不快なむずむず感に襲われる。 平成20年11月14日に 「こ線橋」 って、何だ? と題して書いたことがある。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
Sep 5, 2013 07:44:14 AM
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