084950 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

いろいろと。。。

いろいろと。。。

第五章

大地震のとき・・・  第五章

一面の銀世界を前にジータは目を輝かせていた。
「うっほーっ!真っ白だぁ!!」
「お前は幼稚園児かよ・・・。」
まったくと言った顔でティムがつっこむ。
「アハハ。ホントだよぉ。」
メイも同じくつっこむ。
「そうかなぁ・・?」
一人悩むジータ。そのとき。
・・・ゴゴゴゴゴゴゴッ!!
「余震か?!」
ティムがすばやく判断するとジータが
「この揺れ方は余震じゃないだろ。早く下に降りようぜ!」
冷静にジータが指示を出す。珍しいことだ。
タッタッタッタッ・・・
3人が急いで階段を駆け下りる。そのとき!
ブチッ!!
最上階にワイヤで吊るされていた飾り物が落ちてきた。先頭にはジータが走っていた。
ティムがその落ちてくる飾り物に気付くのは遅すぎた。
「ジータ!危ない!!」
「・・えっ?!」
次の瞬間、ジータの頭にその飾り物が直撃した。
大きな音を立ててバラバラになった飾り物が階段から落ちていく。
「マジかよ・・・。」
ティムは唖然としていた。逃げることも忘れて・・・。
メイは手で顔を覆っていた。
飾り物の破片とともにジータの体が落ちていく。
ティムは階段を6段飛ばして一発で踊り場に着地した。
「おい!ジータ!!大丈夫か?!」
ジータの口から血が出ていた。もちろん頭からも。
「ぁあ・・・。早く・・・降り・・・ろ・・。」
「チッ!」
ティムは軽く舌打ちをしてジータを背負い、メイに叫んだ。
「メーイッ!早く降りるぞ!!」
ゴゴゴゴゴゴオオオオオッ!!
その瞬間、ビルの窓から地割れする瞬間が見えた。
この国は島国だ。このまま亀裂が走り続ければこの国は二等分される。
「どんだけプレートが歪んでんだよ・・・!」
とティムは言って階段を下りた。
メイも必死について来た。あのままあの踊り場に居たら確実に死んでいただろう。
一階に下り、地下への階段を下ろうとした時、高い金属音を立てて階段が崩れた。
キィィィィィッ!メチッ!ギシギシッ!
妙な折れ方をして階段がフロアにぺしゃんこの状態で静まった。
地下への階段からそれを見ていた二人はある物音に気付いた。
カシャンッ・・・
メイが振り返った瞬間。ジータの手からフラッシュドライブが落ちていた。
「ジータ・・・君・・?!」
その声に反応してティムも後ろを見た。
「やべぇ!!」
ティムは走って自動ドアへ向かった。
「ちょっと!ティム?!」
「病院に連れてってくる!」
「えぇ?!」
ティムはすぐに倒れていた自転車を立てたが積雪が凄く、とても自転車じゃ無理だ。
そのとき。
「ティム!コレ!!」
と言い、メイがブライダーに乗って自動ドアの窓ガラスをギリギリでよけて外に出てきた。
ブライダー。半無重力装置が装備されていて、地上から最大10M浮くことができるバイク型の乗り物。
メイはそれの免許を持っていた。
「早く!乗って!!」
「あぁ、サンキュー!」
「行っくよぉぉ!」
メイはハンドルを握ると人格が変わる。
今まで繊細なイメージだったのが一変して、ワイルドで荒くなる。
もちろん運転も・・・。
地面にはすでに深い亀裂が走っていた。
「それっ!」
メイが掛け声をかけると、ウイリーしたような状態で一気に10Mまで急上昇した。
その反動でこの亀裂を飛び越えようという策である。
しかし、亀裂の幅は広かった。
最高潮に達したとき、メイは無理だと判断し
「ちょっとつかまっててねぇ!」
と言い、前を睨んだ。
次の瞬間、メイはエンジンを思いっきり吹かし、マフラーからバックファイヤーが出た。
その火の爆発力は大きかった。一瞬で亀裂を飛び越し、普通の道路に出た。
そのまま猛スピードで近くの『国立医療総合ステーション』に着いた。
すでに自動ドアの前にはあふれるほどの患者が居た。
玄関前で止まってもらい、ティムとジータは降りた。
「じゃあ終わったらメールするから。」
「わかった。じゃあ、気をつけてね!」
そういってメイは荒々しくアクセルを捻り、ウイリー状態で玄関前から姿を消した。
問題はこれからである。
呆然と立ち尽くしていると看護士がきて
「急患ですね。こっちへ来て下さい!」
「あ、はい。」
小走りの看護士について行くためこちらも必死に小走りした。
なんといってもジータが重い。さすが身長が学年一位だけはある。
そんなことを思いながら、来た先はナースステーション前。
ここで早急な治療の必要度を見定め、患者の具合を表す色紙を渡す。
重傷者から順に「赤」「オレンジ」「黄色」「黄緑」「緑」「黒」となっている。
ティムは看護士から赤色のカードを渡され
「12番廊下で待っていてください。他の看護士が対応します。」
とだけ言い残し、走り去っていった。
「やっぱ災害があるとドラマみたいになるんだなぁ。。。」
ナースステーション近くのベンチに座っていた若い男が言った。
彼の持っていたカードは黒色だった。見た感じ、怪我をしてる様には見えない。
「こういうのがホントの『邪魔』ってやつだよな。」
ティムは小さい声でそう言った。どうせ暖房の効いた病院内に居座りたいだけだろう。
そう思った。
ティムはその場を後にし、12番廊下へ急いだ。
ナースステーション前からティムが消えた瞬間。
黒色のカードを持っていたあの男は吐血した。
実は鉄の尖った破片が右側の肺を刺していた。
すでにその金属は体から抜いて、病院に向かうと
「ほぼ無傷」と見なされたらしい。
黒のカードが赤い血に染まるころ、ティムたちは12番廊下を探して歩き回っていた。
「どこだぁ・・・?」
当ても無く歩き続けていると一人の貫禄ある看護士と出会った。
「君、カードは?」
深みのある声で尋ねてきた。ティムは左手に持っていたカードをその男に見せて
「これ・・ですか?」
と言った。その「赤色」のカードを見た看護士は
「なぜこんなところに居る!患者が危ないだろ!」
と叱った。ティムは一瞬、自分の父親を思い出した。
「あ、はい。すみません・・・。」
この際、12番廊下の場所を聞いてみるか。とティムが思ったそのとき
「付いて来なさい。その子は危険度6だ。今すぐに手術する。」
「えぇ?!今ですか?」
「今しないと確実にこの子は死ぬ。そのくらい、この傷を見て分からんのか?」
「はぁ。。。」
「だから、来なさい。」
そういって男は歩き始めた。ティムもゆっくり付いて行った。
『第5総合手術室』と言う部屋の前にはすでに3人の看護士がスタンバイしていた。
「患者が来たぞ!手術だ。」
「OK~!スタンバッててよかったな!少年!」
ティムは話をいきなり振られ、戸惑いながら
「あぇ?!あ・・そ、そうですね・・。」
とギリギリの返答をした。危なく「ハァ?!」とか言うところだった。
ティムは『返答を改めよう。』と感じた。
その『OK~!』と言った男にジータを預けた。ジータは入院するみたいなので
部屋の番号札とベット番号、面会可能な状態になる日時が書いてあるメモ紙を渡され
「見舞いに行ってやれよぉ。」
と言われた。
「あぁ、はい。分かりました。」
とティムは返事した。
スタンバイしていた看護士らが全員手術室に入るのを見届け、ティムはメイにメールした。
「ジータ入院するみたいなんだ。明後日には会えるんだって。」
「そっか。ジータ君も大変だね。。。明後日って事はクリスマスの日だね!」
「そういえばそうだな。んじゃ、迎え頼む。」
「OK!玄関で待ってて!」
ティムが帰ろうとしたとき、手術室からあの威勢のいい男が出てきた。
「おーい!そこの少年!忘れ物だぞー!」
「ハァ?」
思わず言ってしまった。いつもの嫌味な返事。
「これだよっ!」
そういって男は白いちょっと分厚い板状のものを投げてきた。
「おっとっと!」
あわててキャッチすると、フラッシュドライブだった。
「ブリザードの情報が要るだろぉ?んじゃあそれまで生きてろよぉー!」
そういってドアを閉めた。
「なんだったんだろ・・・。今のは・・・。」
普通に渡せばいいじゃないか!・・・と思いつつ玄関に足早に行った。
こういう時に遅刻するとメイの後が大変だ。亀裂で振り落とされてしまうかもしれない。
ティムは急いで階段を下りた。


前の話へ 小説ページトップへ ブログトップへ 次の話へ


© Rakuten Group, Inc.