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言葉を“面白狩る”

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2007/03/17
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カテゴリ:カテゴリ未分類

「町・地方之もの願解と相唱、大勢申合せ寺社方へ相集り、酒・さかな相携呑喰いたし、終夜騒動いたし候様子相聞、素より信心一通り之儀は可為格別候得共、畢竟根元は保養慰ミ之事と相見へ甚タ不風俗之至、以来右様之類在之ニおゐてハ屹度可申付候条、心得違致間鋪候事」(天保四年(1833)『三原市史』)
町や地方の者共が「願解」といって、大勢が申し合せ、寺社へ集り、酒・さかなを持参して呑喰をし、終夜騒動していると聞いている。勿論、信心のことは一応格別ではあるが、結局は保養慰み事と考えられ、はなはだ不風俗の至りである。以後このようなことがあれば「屹度」処置するので、心得違いをしないこと。

屹度・急度(『広辞苑』)
〔副〕(キトの促音化。「屹度」「急度」は当て字)(1)時間的にきわめて短いさま。急に。すばやく。とっさに。(2)急に、はっと。(3)厳しいさま。状態や表情にゆるみのないさま。厳重に。きっぱりと。しっかりと。(4)行為の確実に行われるさま。たしかに。必ず。相違なく。


上記の「屹度」は「厳重に」の意味です。「屹度」「急度」と表記してあり、珍しい言葉ではありません。これによく似た言葉で、「無屹度」「無急度」も使われます。

「右之通、万石以上之面々え、無急度可被相達候事」(『御触書天明集成』)
右の通り、一万石以上の大名へ、「無急度」伝えなさい。
「平野群次死去ニ付、葬送之節聖光寺へ諷経被参候寺院も可有之候間、檀縁・心易面々は格別、其外ハ用捨有之候様断申度、同性豊次郎存寄ニ候、此段無急度通達之事」(弘化四年(1847)『国前寺御触留帳』)
(広島町奉行)平野群次死去につき、葬送のとき聖光寺へ諷経に参られる寺院もあると思われるので、檀縁や心易い面々はともかく、その外はご遠慮頂きたいと、同性豊次郎の意向です。「無急度」通知しなさい。

辞書では見ることができませんでしたが、「急度」=「無急度」と解釈してよさそうです。「無~」を付けても意味が変らないという、“面白い”例です。

殿様此度無屹度郡中御廻在被遊、御領分東西御両度ニ御廻可被遊旨被仰出候所、此度之義は深キ思召も被為有候御様子ニて」(文久元年(1861)『三原市史』)
殿様はこのたび「無屹度」郡中を巡視され、領内の東西を二度に分けて御廻りになると仰せられました。この度の巡視は、深いお考えもお有りの様子で、

この場合の「無屹度」は「必ず」「是が非でも」だと思います。ところが、

「夕方山村静登を無屹度招寛話、酒鮓を饗」(明治元年(1868)『村上家乗』)
夕方、山村静登を「無屹度」招き、寛いで話をし、酒鮓でもてなす。

和やかな雰囲気の話に、「無屹度」という厳しい言葉が使われているのは、どうも納得がいきません。







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最終更新日  2007/03/17 10:51:06 PM



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