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言葉を“面白狩る”

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2010/10/01
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カテゴリ:カテゴリ未分類

「同二月六日朝四ツ時頃東風吹来り候ニ付、松前へ向可申と申値、帆桁を柱として再度帆を上ケ、戌亥之方へ向ケ三十日斗り走り、閏二月六日昼九ツ時小島二ツ見へ候に付、其島近所迄参候所、雪夥敷降居、無程夜に入、翌七日朝右島之近辺を船ニて廻り候得共、海辺ニは人家見へ不申、ほら貝を吹かねをたゝき三度廻り候得とも人も出不申儀ニ可有之と船中段々評議仕、是ハ八丈島ニ可有之、左候得ハ戌亥ニ向走り候ハ、伊豆国下茂田へ着船可仕と申値、其儘走り申候、但此所追て地球図ニて考合仕候得は、亜細亜州の内カムチヤツカノ沖カメントロスケと申す島ニて御座候、八丈島ニ可有之と一応申値候ハ大ひ成方角違ニ御座候、同廿八日(八日)夜八ツ時頃砠へニ乗揚候様に覚候処、風ハ吹不申候得共波甚高く、船二ツニ別レ候得共、夜中之儀ニて委敷難相分、乗組之者共驚入、やくらの上へ一緒ニ集居、同九日朝見合候処、海上都てかふりニて夫へ船ヲ乗揚居……」(魯斉亜国漂流聞書)

(文化八年(1811))二月六日朝十時頃、東風が吹きだしたので、「松前へ向おう」と話合い、帆桁を柱の代りにして再度帆を上げ、北西に船を向けて三十日ばかり走らせ、閏二月六日真昼頃小島二つを発見、その辺に近づくと激しく雪が降っていた。やがて夜になり、翌七日朝、この島の近辺を船で廻ったが、海辺には人家は見えず、法螺貝を吹き鉦を叩き三度も廻わったが人も出てこないと船中で段々と評議、「これは八丈島に違いない。八丈島なら北西に進路をとれば、伊豆国下田へ着船する筈」と話し合い、そのまま走った。後日、世界地図を見て考えるに、ここは亜細亜州の内カムチヤツカの沖、カメントロスケ(コマンドルスキー)という島であった。「八丈島に違いない」と話合ったのは大きな方角違い。同廿八日(八日)夜二時頃、船が「砠へ」に乗上げたように覚えた。風はなくとも波が甚だ高く、船は二つに別れたが、夜中のことで詳しくは分らず、乗組の者共驚いて櫓の上へ集まった。同九日朝、あたりを見廻したところ、海上はすべて氷で、それへ船を乗上げており……」

長い引用になりましたが、これは安芸国賀茂郡川尻浦の久蔵が乗組んだ摂州三影浦の勧亀丸(千百石積)が和歌山沖で遭難し、カムチヤツカまで漂流した事件の聞書です。(吉村昭「花渡る海」参照)。

文中「砠へ」をどう読むのか、考えてみました。

辞書を見ると、
】(『広辞苑』)
〔音〕ショ。ソ。(1)いしやま。石でおおわれた山。(2)秤の錘。


船が乗り上げる(座礁する)のは「石でおおわれた山」ではなく、海中の石山「暗礁」なら考えられます。

「一磯砠 五ケ所……壱ヶ所 同山鼻より少シ沖ニ隠レ岩と申ス小岩あり、大汐之節能ク干落チ候得ば相見へ申候、尤小汐之節ニハ干落候ても見へ不申候」(『廿日市町史』)
同岬より少し沖に「隠レ岩」という小岩があり、大汐のときによく潮が干落ちると見えるが、小汐のときは干潮でも見えない。

「砠(磯砠)」とは「暗礁」のことでしょう。「砠へ」と「へ」が送ってあります。「?へ」と読み、「暗礁」を意味する言葉はないか……。『広辞苑』で「暗礁」で全文検索をすると、ありました。

はえ】(『広辞苑』)
海中の暗礁。そね。くり。

瀬戸内海の浅瀬名】(http://www1.kaiho.mlit.go.jp/KAN6/mame/topic-asase.htm)
碆、ハエ、バエ、砠
 すでに述べたように碆は紀伊水道、四国南岸、九州東岸で岩礁をいう言葉であるが、その分布域の北部を含んでいる瀬戸内海にも、この流れが入り込んでいる。すなわち西部では豊後水道の速吸瀬戸付近から別府湾周辺、東部では紀伊水道周辺から鳴門海峡の東口に集中し、その他の海域にはほとんど見られない。広島湾にあるこの礁名には、の字が当てられている。


これで「砠へ」は「はえ」と読むと解りました。






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最終更新日  2010/10/01 11:00:00 PM



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