読み女、現る。

『さんまのからくりＴＶ』を見ていて、浅田美代子だか中村玉緒だかが、誰かから

「この人は、外に出るとそれだけで何かハプニングが起こる」

みたいなことを言われていたのを聞いた。それで私はずいぶんと笑ったものだ。

笑いごとではない。それはどうやら自分のことであった。

パートに行き始めて数日、以前の仕事と同じような感じの職種をチョイスしたので、まぁそんなにろくでもないことにはならないだろうと思ったのに…。

昔取った杵柄、ただ今行方不明。

ひょっこり私の腕に戻ってくる可能性、今のところゼロ。

「勘が戻るまで、時間がかかりそうで」

とか何とか、格好の良いことを言ってみたが、そういう言葉は元々勘のある人が使うべきなのだ。

8月末までの短期パートの間で、杵柄と勘が戻ってきてくれることを願う。

電車で3駅の場所へ通っているのだが、今日は帰りに大恥をかいた。

「じゃあ、お先に失礼します」

と言って会社を出たら、駅の方向が分からなくなっていた。

先週は、家が同じ方向の方がたまたま同じシフトだったので、親切に車で送迎してくださり、実は電車に乗って帰るのは今日が初めて。

出る前に、上司の方が

「もちこさん、駅はここを出て右ですよ」

と親切に教えてくださったのに、もういきなり左に曲がってしまったのだ。

そしてウロウロ歩いていたところを、今日会ったばかりの人に会社の窓から

「もちこさーん！！これからどちらかへ、お出かけなの！？駅は反対よー」

と、教えてもらった。

あやうく、パート先の会社の周りで迷子になってしまうところだ。

あわてて上司が飛び出してきて

「分かる？大丈夫？」

と心配してくれたので

「ハァ、実は私、ものすごく方向音痴なのです…」

と答えたら、彼女は一抹の不安を覚えた表情を柔和な顔面にたたえていた。

そりゃそうだろう。

いくら20日前後の期間とはいえ、自分の部下に、“駅から徒歩5分”の場所から駅へ帰れない者がいたら不安で一杯だ。

なんとか、再び教えていただいた経路で駅にたどりつき、自分の書類を届けるために、今度は私の地元にある本社に寄った。

「働いてみて、どうですか？」

と、これまたとても優しく聞いていただいたので

「ハァ、あちらで“もう、彼女には来てもらわなくて結構です”と言われるかもしれません」

と、答えておいた。

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