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あの有名な「ライ麦畑でつかまえて」を、村上春樹が新たに訳しました。
それが「キャッチャー・イン・ザ・ライ」です。 何とも情けないことに、これまで「ライ麦畑でつかまえて」は、 タイトルだけ知っていても1ページも読んだことがありませんでした。 読む前の勝手なイメージはスティングの「フィールズ・オブ・ゴールド」でした。 恐らく、広々とした黄金色の畑を舞台に繰り広げられる 切なく甘酸っぱい物語なんだろうな…と思っていたら、全然違ってました。 まぁ、勝手にイメージしていたのが悪かったというか何というか…。 そういえば「アルジャーノンに花束を」も、 タイトルだけではラブストーリーに思えてしまうところもありますね。 それはともかくとして、一週間かけて読み通しました。 主人公のホールデンが「君」に向かって話しかけることで物語は進展します。 途中から、ものすごいスピードを増してきて、 何でこんな事になっているんだろうかと読み返すこともありました。 しかし、その展開の急激さも「これが若さというものか」ですね。 小説の中では、主人公はいつまでも16歳なのです。 どうにも主人公は世の中のいろいろなものが嫌いなようで、 かなり頻繁に「めげちゃうよね」と同意を求められます。 まぁ、確かにいくつかのエピソードは実際にめげてしまうものもありますが、 読者としては「いやぁ、それほどでも…」という感じで進んでいきます。 「まぁ、そういう見方もできなくもないよね」という感じ。 そんな風に、すべてに対して否定的な見方をひとしきり聞いた後、 もっとも印象的なやりとりがなされます。 「けっきょく、世の中のすべてが気に入らないのよ」 それを聞いて、僕はさらにぐんぐん落ち込んでしまった。 「そうじゃない。そういうんじゃないんだ。絶対にちがう。 まったくもう、なんでそんなことを言うんだよ?」 (略) 「気に入っているものをひとつでもあげてみなさいよ」 この直後の台詞が、この物語の静かなクライマックスではないかと思うのです。 あまりに正直で、あまりに奇妙な希望。 I'd just be the catcher in the rye and all. 全体を通して、さすが村上春樹の新訳です。非常に読みやすい作品でした。 いわゆる「不朽の名作」と言われるような古い作品には 頻繁に古くさい表現が出てきて、一気に冷めてしまうことがあるのですが、 (まさに、めげちゃうよね、という感じでしょうか) 少なくともこの本には、古さを感じませんでした。 分量も内容も、少しずつ読み返すのに適しているので、 これからじっくり細部まで読み込んでみたいと考えています。 そして次は「サリンジャー戦記(村上春樹)」を読むつもりです。 サリンジャーの文章を翻訳するプロセスが「戦記」なのか、 訳者あとがきを諸事情で載せられなかった背景が「戦記」なのか…。 読後も楽しみが多い本(しかも不朽の名作扱いで)なんて、 なかなかあるものではありません。
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Last updated
2008.02.05 22:37:32
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