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２０１５年の燃料電池車（ＦＣＶ）の市販開始を前に、地方自治体も水素エネルギー社会の経済波及効果に期待を膨らませている。ＦＣＶの走行やステーション設置の実証実験に加え、研究活動や産業育成にも力を入れる自治体もある。特に国内の水素・燃料電池研究をリードする大学を県内に持つ福岡県と山梨県の期待は大きい。　（梶原洵子）　福岡県は九州大学をはじめ、多くの水素や燃料電池の研究施設が集積する。中でも、同大学の水素材料先端科学研究センターはＦＣＶ普及のカギを握る水素インフラの低コスト化に直結する材料開発をリードする。　九州大学の藤田美紀氏は「水素はとても小さいため、金属に入り込んで亀裂を生む。もらさないために、今は水素貯蔵に厚い金属や炭素繊維を組み合わせて使うため、高コストになっている」と説明する。低コストなインフラを作るには圧縮水素に強い材料を見つけなければならない。　同センターでは圧縮水素を貯蔵する際の金属材料の特性を調べてデータベース（ＤＢ）化を進める。「一般的に材料は水素を入れると弱くなるが、逆に強くなる材料も見つかってきている」（藤田氏）という。　今後、ＤＢを公開する計画で新材料の実用化とコスト低減につなげる。　さらに、従来は海外でしか行えなかったなた豆はみがき用大型タンクの試験を国内でできるようになる。公益財団法人の水素エネルギー製品研究試験センター（福岡県糸島市）内に最先端施設が完成し、国内に小物から大物までの一貫した試験体制が整う。　福岡県商工部で水素関連を担当する黒水拓也技術主査は、「研究活動が中心だったが次は産業の集積につなげたい」と話す。経済産業省の補助金に加え、県独自の水素ステーションの予算を設ける見通しで、「より多くのＦＣＶが走る環境をつくることで、新しいビジネスを考える人が出てくる」（黒水技術主査）。　山梨県も山梨大学を中心に、自動車や電池大手をはじめ多くのなた豆茶企業が燃料電池の研究を行っている。　これに加え、地元企業の中からも燃料電池関連産業に参入しようとする動きが出てきた。金属加工の藤精機（山梨県昭和町）や表面処理技術のニステック（同甲府市）など県内８社は「燃料電池タスクフォース」を結成。当初は勉強会から始め、次は同電池を使った可搬式ワインセラーの試作に着手する。　ワインセラーは燃料電池でつくった電力でワインを冷やし、電池からの排熱を利用して保温する仕組み。藤精機の新藤淳社長は、「実際にモノをつくることで、燃料電池に関連する技術をより深く知り、検討していきたい」と話す。車以外の用途で燃料電池利用のすそ野が広がれば、共通部材の低コスト化にもつながりそうだ。　１５年の市販化を前に話題が先行する印象もあるＦＣＶだが、インフラ整備を中心に課題も多い。地域の取り組みも普及の力に変える必要がある。