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さて、今日は山岡淳一郎著「田中角栄 封じられた資源戦略」を読み終えました。 この本は、田中角栄と「エネルギーとの係わり合いという視線から見た」、田中角栄の伝記といっていいのかもしれない。 この鍵括弧が大事で、田中角栄の全体像を捉えた本ではないだろう。これをもって田中角栄だというと、ちょっと美化されすぎに思われます。ロッキード事件そのものにはあまりふれてはいないし、キングメーカーになって以降の話も書いてないし。そういうドロドロしさはこの本にはない。 が、この視点だけで本が一冊書けるくらいの大物政治家だったという見方も、もちろんできます。 そうしたレンズで見た田中角栄は、貴重な資源外交をまい進した、最後の政治家なのかもしれません。 戦前は日本の核兵器製造の仁科研究をスポンサーしていた、理研でバイトしていて、ここで科学的、論理的なものの見方というものを磨いた。そんなところから、エネルギーにつながっていたとはね。でも、さすが門前の小僧って奴です。 で、政治家になった当初は、もちろん土建中心だが、首相になると、エネルギー外交を猪突猛進していく。 最初は中国。ここで国交回復、ならびに石油輸入枠も拡大している。 たびたびここでも出光とイランの日章丸事件を書いたから、ご存知の愛読者も多かろうけれど、石油は欧米の石油会社、メジャーががっちりとカルテルを作って中東の主要油田を押さえてしまっている。 ので、新参者の日本が入ってくる隙間は、メジャーが入っていないような中国とかくらいしかない。 田中はインドネシアにも目を向けるが、やはりアメリカががんがんに投資とか援助とかいうアメを与えつつ石油を搾取する。それでも、岸派の握っているルートと平行して田中のルートも作ろうとする。 そこで、田中はまだカルテルが確立していない、ウランに目をつけてフランスの原子力産業と密着している大統領と会って、フランスも資源がないので、日本と似たような背景があることもあり、同じように独自系資源確保に動いていたから、意気投合。 かと思いきや、イギリスと北海油田に一枚かもうとしたら、日本のリークでご破算。他にも、ブラジルやメキシコ、オーストラリア、カナダ、ロシアなどと資源外交を展開していく。 その仕組みの中で、アメリカは原子力産業の独占体制(濃縮ウランの独占)を作ろうとしていたから、思いっきり国益が相反する。で、キッシンジャーが田中を恫喝していく。(何でこんなやつを日本はありがたがるのか、未だに不明である。こんな奴に日本が勲章なんかくれてやるもんじゃない。ふざけやがって。) こうした動きになぜ田中は執着したか。それは、「石油の一滴は血の一滴」ということをしみじみ思っていたから。資源がない国の切実な事情である。 オイルショックを2回もやっておきながら、石油が安くなると、ケロッと忘れてしまう。けれど、首相でしかできない部分があるのだ。 それはメジャーを抱えているような国々が、国際カルテルを作っては維持して、ぼろ儲けしようと国家元首や軍事力を総動員して資源国にアメとムチ(最悪クーデターを起こして親欧米政権を樹立させて資源を搾取する)でいうことをきかせるから。 だから、日本企業が個別に戦っていたのでは、何ら勝てやしない。(財界で一部軍事力を強化せよという動きがでてくるのは、こうした事情も絡んでいる。) で、田中が持病を押して世界を股に資源外交を展開しているときに、田中の支援に回った元通産省の両角良彦はこんな論説を新聞に載せた。いたく感銘を受けたので、以下引用。 「か細い資源国とのパイプ 機動性と責任欠く政府・官僚機構 商業的に動きにくい資源をなんとか動かすには、政治的配慮と経済的効果とをいかに組み合わせていったら良いのかが絶えず問われねばならない。二国間の経済協力は、採算ベースでの個々のプロジェクトの積み上げから、全体としての、包括的な協力効果により重点を移していくことになろう。 ここに、政府あるいは政治の新しい役割がでてくる。個別の、散発的なアプローチでは、それ自体いかに望ましい中身のものであっても、全体としての政治的効果に資するとは限らない。採算性のワクを越えた何かがプラスされることを資源国は望んでいるはずだし、その諾否はこちら側の政治的判断にかかっている。(中略) わが国の政治は体質からいって内向的であり、対外的に国益を背負って立てる人材は限られているし、官僚はまた資金と物資と外交に所管を分かち合って、一つの案件を巡って三つの権力が分立し、相譲らないという建前を崩さない。(中略) しかも、資金の供与と資源の輸入と協定の作成とがバラバラの意思によって拘束され、だれも包括的な責任は負えないし、負う資格もない体制を一向に改めようとしない。ために、あたら貴重な機会を失し、相手側の不信を高めるという苦い経験をいたずらに重ねゆくだけである。 (中略) 国際協力事業団は発足したけれど、インフラストラクチャー(経済発展の基盤となる施設)への融資だけでは総合的な経済協力の推進には程遠い。だが、世界の情勢はわれわれの困惑にはお構いなしに進展する。 いまのところは、個々の企業の地道な努力のおかげで、資源国とのパイプはどうやらつながっている。これを政治的に拡大してゆく名案があるだろうか。つき詰めてゆくと、実はわが国の政府組織と官僚機構自体のなかに問題があるのではないだろうか」(朝日新聞 74年9月15日付け) 日本は、この頃から、頭はストップしてるんですねえ。今でも、耳に痛い話じゃないか。田中くらいにがんばった政治家がもういないから、70過ぎの山下太郎が命がけで口説き落としたサウジのカフジ油田(アラビア石油)はとられ、イランのアザデガン油田は中国に去年取られる始末。 まったくやってられん。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
March 9, 2010 04:17:08 PM
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