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常連

2001年8月6日遅番勤務がスタートする。

遅番と言っても仕事内容は昼間と大して変わらないのですが、勤めていた店は基本的に昼間の方が

賑わって居たので夜の勤務は肉体的にかなり楽だった。

初めての遅番勤務の日…

迫り来る閉店時刻に、憧れの釘調整を目の前で見れるのかと期待を膨らませていた。

最後のお客さんを送り出すと一斉に閉店作業に取り掛かる、会話など一切無く黙々と閉店作業に勤しむアルバイト達。

何故か閉店したホール内を緊張感が支配していた。

その数分後…その緊張感の原因ともなっていた人物がゆっくりと店内に入ってくる。

『お疲れ様です!!』

アルバイト達が一斉に挨拶をする。

その人物は皆の挨拶に返事をする事すら無く、

黙ったまま黒い鞄からピカピカに輝く銀色のハンマーとゲージ板を取り出した。

もぅその仕草が私にはメチャクチャカッコよく見え完全に惚れてしまった。

この方が私をこの業界に導いてくれた師匠のN氏。何処からどう見ても普通の人には見えないが、

パチンコ店の店員から始まり40年近くパチンコ業界一筋で生き抜いてきた方。

そして…いよいよ目の前で本物の釘調整が見れるものと思っていたがマネージャーの一言で夢破れる。

『君は向こうに行ってなさい♪』

基本的に師匠は釘調整中はに誰も島に入れてくれない。

どんな人物で有ろうとも、師匠に認められた人物以外は釘調整中の島に入る事は許されなかった。

勿論、私もそれが許される事は無かった…ただゴツゴツと言うハンマーの重みの有る音だけが、

静まり返った店内に響き渡り、その島の裏側でヒッソリと聞き耳を立てるように黙々と閉店作業に

勤しみながら下積みの時期を過ごす日々が続く。

一通りの仕事を覚えてからは、持ち前の強引さを発揮しアルバイト達を支配し始める。

勿論、私の行動には反発する人物も多く居たが、あまり気にせず日々マイペースで仕事を続けていた。

そんな有る日店で大きなトラブルが発生する。

その日は朝からマネージャーもリーダーも店に居なく、私ががマネージャーの代わりを任されていた。

仕事を任されると言っても重要な事は一切無くお留守番程度の物で大した権限は与えられて無かったが、

その日は違った…

常連の多い店だった事も有り、責任者が不在に成ると、急に偉そうになる常連連中が

私は前から気に入らなかった。特に常連のボス的な存在…あだ名は『123番』

名前の由来は朝から晩までいつも123番台で打ってたから、

その日は朝から123番が負け込み、昼過ぎから掛け持ち遊戯を始めた。

空き台が有れば特に咎めはしなかったが、その日は日曜日満席にも関わらずマネージャーがいない事を

良い事にやりたい放題…注意はするが一向に聞こうとしない、何度もキレそうになったが客商売だからと

グッと我慢して丁寧な言葉使いで説得するも無視しやりたい放題。

そしてついに私はキレた。

掛け持ちをしながら2台同時に大当たりしたので片一方の台の電源を何も聞かずに切ってやった!

そこから先は大騒ぎ…

123番『ゴルァ~何やっとんじゃ』

 オラ 『何や文句有るんか!』

123番『おぅおぅ責任者呼べぃぃぃ』

 オラ 『俺が責任者じゃ!!』


警察を呼ぶだの何だの散々店内でわめき散らした後、『覚えとけよ』の一言を発して店から消えた。

夕方マネージャーが帰ってきたので怒られるのを覚悟でトラブルの内容と、自分が取った行動と発言を

全て説明した。完全にキレてしまっていたのでクビに成っても仕方ないか?と素直に思っていたが…以外にも

マネージャー『おぅそうか良くやった♪』

      『お前中々見込み有るでぇ~』


この言葉を聞いて、この業界で生き抜いて行く自信が確信へと変わった瞬間だった。


そしてその日以降、常連に舐められる事は一切無くなった。


【続く】

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