冬の連続講座 値付けのポイント その12 客単価の設定が悪いとだれも来ない その1
冬の連続講座 値付けのポイント その12客単価の設定が悪いとだれも来ない その1~日経レストラン 連載コラム2014年7月分より 「先生、東京に来週行くんですが、おいしいお寿司屋さんありますか?」これは、地方の会員さんからよくいただく電話です。「ご予算はいくらですか?」と、この質問に私は決まって同じ質問をします。テレビで紹介された店や気になる店などを選ぶとき誰しも「この店だったら、いくら(支払う)かな」と考えます。このことは日常生活での気軽なランチでも同じです。ただし、日常生活のランチは決まった店を選ぶことが多いためその都度、意識されることはないかもしれません。すっかり日常生活に溶け込んでしまっており、その店で支払う対価はインプット済みで、少なくとも思わぬ出費となる不安材料はありません。ただし、何気なく利用するまでの間には何度とない失敗の歴史があるのかもしれません。 私は、食べログには利用した人の平均支払額が書かれているので、初めての店で食事の最中に「いくらかかるんだろう」というどきどき感や支払の不安がない点はとても便利な要素だと思います。「どれくらいかかる(支払う)のか」はお客様にはとても重要で利用するかしないかを決める大きな要素と言えるでしょう。飲食店が“客単価”という言葉を使いますが、裏を返せばお客様にとって「どれくらいかかるのか」を意味するために安易に決めるべきものではないのです。むしろ、客単価設定は戦略そのものであり、客単価をもとに個々の商品に値付けをすべきなのです。 客単価は大きくわけると日々のランチやひとりでの夕食のような日常的な利用と人をもてなす、おいしいものを食べに行くなどのようなレジャー的な利用で大きく変わります。ただし、人間そのものが違うのではなく、使い分けているだけです。 どの店でどれくらいお金を使うかはそれぞれの可処分所得やお小遣いの額と利用シーンに依存します。 例えば、新生銀行の「ライフスタイル・ラボ2013年サラリーマンのお小遣い調査」および「ライフスタイル・ラボ サラリーマンのお小遣い調査30年白書(2012年12月)」によれば、2013年のサラリーマンのお小遣いの平均は38,756円(前年との差▲1,299円)で、最大だった1990年の77,725円に比べて半分以下の水準で、金額ベースでも38,969円もの減少です。また、同調査によれば昼食代の平均(昼食代÷勤務日数)は2013年の実績で518円(前年比+8円)で、最高だった1992年746円に比べると約3割減少です。 サラリーマンの日々のランチの予算はワンコインになったと言えます。また、同調査によれば、昼食にかける時間が1983年では33分ありましたが、2012年には三分の二の19.6分に減少。2012年の調査では店を選ぶ基準の回答の1位が価格で74.2%、2位が近さで50.6%、3位が味で27.0%でした。そして、71.6%の人が現状の昼食に満足していると回答しています。このことから、利用頻度が高い日常的なランチを狙うならせいぜい700円くらいでないと厳しく、できれば500円はきったほうがいい。これがコンビニエンスストアや牛丼チェーンが確固たる地位を築いている理由と言えるでしょう。つまり、一見すると利用頻度が高そうで毎日来ていただいて胃袋のシェアを拡大できそうなランチでありますが、競争が激しい昨今、残念ながら多くの店はそんなに容易な環境ではありません。仮に都内で1,000円弱くらいの客単価であったとしてもお客様がわざわざやってくるなんらかの要素が必要なのです。私が長年「飲食店はランチをやめなさい」と言ってきたのはこんな事情が背景にあるのです。大久保一彦の本【中古】 ダントツ飲食店の儲けを生み出す「集客」の秘密/大久保一彦(著者)