演奏会が終わった
昨日、所属している吹田市交響楽団の定期演奏会があった。私の出番はマーラーの交響曲第1番。大曲にして難曲。それが終わってしまって、現在私は思いがけずも抜け殻のようになってしまい、「ああ、オレ、結構この曲の演奏に力を入れていたんやな」と今更ながらに実感した。もうすぐ本番。 私の「2大道楽」の一方が登山であり、もう一方がオーケストラである。登山の方はこのブログにも散々書いている通りの熱の入れようであるが、実はオケの方が古くからやっている。私が吹田市交響楽団に入団したのは1992年。もう17年も経つのか。リハーサル風景。 学生の頃、吹奏楽部で名も知らぬテューバという、ラッパの化け物のような楽器に出会い、その魅力に惹かれた。同時にクラシック音楽に興味を持ち、吹奏楽ではなく、オーケストラで吹いてみたいと思っていた。テューバ。 ところで、テューバという楽器は吹奏楽では結構忙しいが、オケでは恐ろしく退屈な扱いである。曲の殆どをボーッと過ごす、と言っても過言ではあるまい。もはや休みの小節をいかにして過ごすかを考える楽器と言ってもいいだろう。吹き終わって次の出番が分かりにくいのなら、何十小節でも真剣に指折り数える。難しいパッセージの前なら適度に唇の運動をしたり胸のドキドキを確かめたりする。 いくらヒマだからといっても練習をしなければ吹けない。いや、ヒマだからこそ、皆で集まる合奏の時は練習にはならないのである。練習に行ったが一度も楽器を鳴らさずに終わってしまった、なんてことは、ま、たまにはあることである。指揮の方も百人からのメンバー全員に気を遣っていられない。で、個人練習をしないといけないのだが、勿論、家の中でブーブーやるわけにはいかない。実は昔、実家にいる頃、小さい音で練習したことがあった。向かいのおばあちゃんが、「なにやら振動で腰が痛い」と苦情を言ってきた。先輩の家に防音室があるので、そこで練習させてもらったこともある。階下の住人からソッコー苦情があった。低音楽器は音は聞こえにくいが、どうもよく響くらしい。そこで私はいつも近くの港に行って練習している。海に向かって吹く。 港の欠点は寒いこと。冬の夜、しかし、どうしても練習しておかねばならない時は、かなりツラい。そしてそんな中で練習して、果たして練習になるのか?という疑問もある。もはや楽器の練習ではなく、冬山の耐寒訓練である。完全防備で挑む冬季野外練習。ちょっと休憩している間にロータリーが凍って動かなくなってしまうので注意が必要だ。ポカポカ陽気の時は子連れで。不気味な音を出しているので、あまり人は寄りつかないが、ネコは寄ってきたりする。 昨日は新型インフルエンザの報道があって、いくつもイベントが中止になったようだ。しかも雨降りだったが、それでも多くのお客さんが聴きに来て下さっていた。私は2台のテューバにバケツのようなミュートと、出番が少ない割に大荷物で舞台奥の隅を占領。3楽章の冒頭にソロ(テューバは1本なので全部ソロといえばソロなのだが…)があって久しぶりにかなり緊張したが、4楽章はその反動からか凄く吹いた。リミッターオフ、というのも久しぶり。制御が効かなくなる恐れがあるので普段はしないのだが、前日のリハーサルから指揮者の鬼気迫る迫力にも乗せられて気分がいつになく昂揚していた。終わった後は…脱力、の一言。はあ、終わっちまった… その脱力感は今も続いている。演奏の時は緊張、興奮で無我夢中だが、やはり、ものすごく充実した、なにか空気までが圧縮されたような、他では味わえない、貴重なひと時だったのだな。