カテゴリ:所得税
皆さんこんにちは。木村裕です。
前回の話の続きです。 何十年も前に購入した土地の取得価額を証明する証拠資料がない、相続により承継した土地で亡くなったお父さんんがいくらで購入したかわからない、といった事例はよく生じます。 土地の譲渡所得の金額は次の計算式により算出するのが原則です。 譲渡収入△(土地の購入代金+土地の譲渡費用)=当該土地の譲渡所得の金額 例外的に、土地の譲渡収入の5パ-セント相当額を土地の取得費(土地の購入代金)とみなすことが認められています。このように計算された金額を概算取得費といいます。 例えば私のところに上記のような事例で相談があった場合には、まずは、本来の土地の購入代金はいくらか、ということを調べます。直接的な売買契約書はなくても、本人が幾らで購入したか覚えていないか、通帳に購入代金引出しの記録が残っていないか、銀行からの土地購入代金の借用書が残っていないか、仲介に入った不動産業者に確認することはできないか、などです。 それでもわからない場合には、仕方ありませんので、その当時の土地の購入代金(時価)を推定して、これを売却土地の取得費として確定申告を行います。当該確定申告書には実額取得費は不明なため推定により取得費を算出した旨の書面を添付しています。なお、土地の取得費の推定には市街地価格指数を用いています。グ-グルで検索をかけると具体的な計算方法がいっぱい出てきますので、必要であれば、検索してください。 依頼者には、後日、本来の取得費が推定値である取得をを下回ることが判明した場合には、修正申告が必要になることを説明したうえで上記処理を実行しています。 譲渡所得は資産の値上り益に対して課税するものですから、購入代金を証明する書類を亡失したからといって、直ちに概算取得費を適用して売却代金の95パ-セント相当額が所得として把握される性質のものではありません。 譲渡所得の起因となる資産の購入代金を証明する書類を亡失した事例に初めて出会ったのは今から十数年前、会計事務所勤務時代でした。 バブル時に500万で購入したゴルフ会員権をバブル崩壊後に会員権業者に50万円で売却した。でも購入代金を証明する書類は亡失してしまったという事例でした。 ちょうどそのころ税理士試験の所得税を勉強していて、概算取得費を使うのはおかしいと考え、日本橋税務署(非常に優秀な人材が集まった税務署です)の担当部門に電話をかけ、照会したところ、本人の記憶に基づく金額である旨の書面を添付して申告してもらって大丈夫(もちろん本人の記憶違いが後日判明した場合には訂正手続きが必要になります)と聞き、本人の記憶値に基づいて申告をしました。もちろんその後修正申告等の訂正手続きは必要ありませんでした。 一応、念のために言っておきますが、税務署や国税局への課税関係の判断に係る照会電話は、税理士になってからは7年半で一度しかありません。その照会電話も「税理士(税理士事務所職員)からの電話照会お断り文書」が届く前のことですので(笑)。 今は、判断に迷う事例は、自分で調べるか、同僚税理士と議論して決断しています。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2012年09月22日 19時12分51秒
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