50の手習いは幸福のあかし
気分転換に遠出したスーパーで級友にあった。会うのは十年ぶりくらいかしら。その時もばったりだった。彼女の今一番のニュースは、自動車学校に通い始めたってこと。もうすぐ運転免許が取れるから、車買って、行きたいところに行くんだ。という彼女は本当にうれしそうだった。50を過ぎて車の運転を始めるのもすごいし、それにチャレンジする彼女も、認める家族もすごい。来月の今頃はカワイイ軽自動車に初心者マークをつけたおばちゃんドライバーが誕生する。高校を卒業すると一人一台車を持つ田舎なのに当時彼女の家はそれができなかった。私も子供を育ててわかったけど、高校卒業と同時に運転免許、中古でも車を一台用意するのは金銭的に厳しいものがある。高卒で就職して、二十歳の時には病気の祖母を扶養してたという彼女の家庭ではどんなに望んでも免許も車も手に入らなかったのだろう。聡明だった彼女が家庭をもって、自転車とタクシーを駆使して(田舎なので車を使わないと病院に行けないことが多い)働きながら子育てして、家を建てて、おばあさんを看取ってようやく自分にお金を使えるまでに生活が落ち着いたのだと思うと本当によかった、よかったねえ、としか言えない。どんなに苦労して頑張ったかは想像もできない。とりあえず、今がたいそう幸福そうなのはいいとして、これからの彼女の人生が豊かで満ち足りたものであってほしいと思った。