|
カテゴリ:石川県の民話 伝説
石川県の昔話8 嫁おどし面
[嫁おどし面] 吉崎御坊(よしざきごぼう)は石川県加賀市と福井県のちようど境に有るお寺です(福井県あわら市吉崎)。お寺には「嫁おどし面」の現物と言われる奇怪な面があり、周辺のおみやげ屋さんでは「嫁おどし面焼」というまんじゅうまで売られています。このお話は浄瑠璃、文楽でも盛んに演じられ、ご存じの方も多いと思いますが、今回はこのお話をできるだけ分かりやすく、方言、表現など編集してご紹介したいと思います。 [加賀市の伝説より] むかしむかし、蓮如上人(れんにょしょうにん)というたいへん徳の高いお坊さんが、各地をめぐり教えを広めておりました。北陸の吉崎御坊と言うお寺へいらっしゃった時は、あちらこちらからたくさんの人々が押しかけお寺へ入り切らないほどでした。与三治夫婦も熱心な門徒で、群衆に混じり、一言も聞き漏らすまいと耳を傾けていました。二人は蓮如上人のお話を聞いていると震えるような感動が有り、身も心も軽くなる気がして、ひまを見つけては吉崎御坊へ通っていたのです。 ところが与三治の母はこれが面白く有りません。日頃金貸しなど営んでいましたが、世にいる人々の中で、坊主というものがもっとも嫌いでした。金貸し家業にゃほとけ心は禁物、それにちょいちょい家を出ていかれると細かい仕事が頼めない。これはみんな嫁のきよが悪いのじゃ、息子をそそのかして連れて行くからじゃと腹を立て、いつかきよを懲らしめてやろうと思っていました。 ある日息子の与三治が仕事で遠くへ出かけ、その夕方、きよだけがお寺へ参りに行った時、母は今こそ懲らしめの時がきたと、白い着物を着て薄暗い山道を走りました。村の氏神から鬼の面を盗み出し、やぶに隠れてきよの帰りを待っていました。 きよはそうとも知らず、なむあみだぶつをとなえ、暗い山道の階段を一つ一つ確かめながら降りてきます。あるやぶへ至った時、突然、 「おおお!」と叫び、やぶからおどり出てくる奇怪な鬼がある。その鬼はきよの前を両手でさえぎり大声をあげた。 「われこそは白山権現の使いである。おまえは日頃母に逆らい、吉崎参りする不届き者。今より母の言葉に従い、参りをやめねば決して許さぬ。」 きよは一瞬ひるみましたが、日頃となえている「なむあみだぶつ」の言葉に強く守られている自分を知っていました。きよはその鬼に向かって手を合わせ、さらに声を張り上げてなむあみだぶつをとなえ、やがて鬼の横をすり抜けようとしました。 「おい待て。まだ話はついておらんぞ。」 鬼はそう叫んで後を追おうとしましたが、白い着物のすそがイバラのトゲに引っかかりどさりと倒れてしまいました。そのうちにきよは家へと急いだのです。 家に帰ってみると夫の与三治が帰っていました。きよはさっそく今日出会った鬼の話や、今日のお参りでのお話を一つ一つ与三治へ語り伝えていた時、母の部屋からドタンバタンと何か大きな物音がしました。二人が急いで行ってみると、白い着物を着て奇怪な鬼の顔をしたものが七転八倒して苦しんでいる。 「おおお・・・はなれぬ・・・与三治、与三治、はなれぬわ。」 なんとそれは与三治の母ではないか。与三次は急いで母の面をはがそうとしましたが、まるで母の皮膚のようにぴったりついて離れない。無理にはがそうとするとなお食いこみ、ベリベリと母の肉までついてくる。母は痛い痛いと泣き叫びながら、 「わしが悪かった。与三次。お前を吉崎へ連れて行くきよが憎かったのじゃ。坊主の言うことばかり聞いて、わしの言うことを聞かぬ。おおお、与三次、早くこの面をはがしてくれ。」 与三次は何をしてもはがれない奇っ怪なお面に途方にくれていると、きよが母にこう言いました。 「お母様、吉崎御坊の蓮如様ならなんとか出来るかもしれません。でもお母様、お坊様におすがりすることはできますか。」 「おお、きよ、すまなかった。お坊様にすがって許してもらえるのなら、なんぼでもすがるぞ。きよ、頼む、この面をはずしてくれ。」 二人は次の日、母の顔を手ぬぐいで隠し、吉崎御坊を訪ねたのでした。それを見た蓮如上人は、こうおっしゃいました。 「そなたの人を憎む思いが面の思いに通じ、決して離れようとしないのじゃ。これより今までの思いを捨て、仏様の慈悲の心に触れ、なむあみだぶつをとなえることができましょうかの。」 不思議にも、あれほどかたくなだった母の耳に、その言葉がじつにやさしく、うるわしく聞こえ、心の奥までしみわたり、今までの苦しかった胸のつかえがとれてゆくのを感じました。これが徳の高い人の言葉というものでしょうか。すぐに蓮如上人の前にひれ伏し、涙をながし、 「今まで人をみれば儲けることしか考えておりませんでした。その世界は暗く、いつも不安で苦しみばかり。今ここに温かい言葉を頂き、私の一生を見てみれば、じつに恥ずかしい思いでいっぱいです。こんな私でも温かいほとけの世界へ行けるものでしょうか。できるものなら、どうか私もやすらぎの世界へお導きください。」 母はそう言い、顔をあげ手を合わせ、なむあみだぶつ、なむあみだぶつと、となえはじめると、とたんに面がはらりとはがれ、畳の上に転がり落ちました。 それから与三次の母は、与三次夫婦より吉崎参りに熱心になり、顔つきも態度も見違えるほどに安らいで、村人たちに慕われるようになったとのことです。(文責:津幡町 吉田恵一) [石川県民話・伝説 目次] 吉崎御坊に関するサイトや、その時の鬼の面と言われる写真をご紹介します。リンクするのは失礼だと思いますので、矢印のあとをコピーし、検索窓に貼りつけてトップをご覧ください。 (写真)→ ちょっと不思議なおはなし 嫁おどし肉付き面 (写真)→ 福井芦原温泉 嫁おどし面焼 (グーグルマップ)→ あわら市 吉崎御坊 □□吉崎御坊周辺宿泊施設□□ 上の1軒は近いですが楽天トラベルと契約が有りませんので詳細は不明です。ご希望の方は電話にてお確かめください。 長春亭 800m 0761-73-8355 加賀市 詳細不明 北潟湖畔荘 3.5km レイクサイド 天然温泉 人気宿 アパホテル 加賀大聖寺駅前 6km 安価なビジネスホテル ☆☆☆ 石川県 旅館 ホテルご紹介☆☆☆ [金沢駅前] [金沢繁華街・中心街・郊外] [河北郡] [七尾市] [鳳珠郡能登町] [能登町 農家民宿] [珠洲市] [輪島市 (1) (2)] [羽咋郡] [羽咋市] [白山市] [小松市] [加賀市] どうぞ きまっし石川→ホームへ戻る お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[石川県の民話 伝説] カテゴリの最新記事
|