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ザ・スーパー・ポップ宣言

私の好きな甘茶2

私の好きな甘茶ソウル(2)
MY FAVORITE SWEET SOUL (2)



スウィート・ソウル・ベスト10 集計一覧

甘茶ソウル百科事典の世界(1) (2) (3) (4) (5) (6)

私の好きな甘茶ソウル(1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9) (10)

甘茶ソウルコンピの世界(1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9) (10) (11) (12) (13) (14) (15) (16) (17) (18)

湯村輝彦 GANGSTA LUV

山下達郎 サンデー・ソングブック

山下達郎 SSB スウィートソウル オンエアポイントランキング(1) (2)

山下達郎 SSB スウィートソウル特集

甘茶ソウル入門の部屋

U.S.BDG 究極のLPコレクション - グループ編(1) (2) (3)

マニアック甘茶ソウル@YOU TUBE



【 甘茶偏差値 75

SOFT TOUCH / IS THIS THE WAY TO TREAT A GUY (SHOUT 259)'73

SOFT TOUCH

文句なしの甘茶ソウルの王様曲、いや女性ヴォーカルだから女王様曲ということにしておくか。人生でこれまで何万曲を耳にしてきたか分からないが、間違いなくその頂点に君臨する1曲である。甘茶ソウル、別名スウィートソウルは大抵がスロウなバラード系のものが多い。厳しく言うとスロウなバラードは誤魔化しが効きやすいとも言える。どんな駄曲でもスロウでメロウに歌えばそれなりに聞こえるものである。しかしこの曲は見事にミディアムテンポでいて素晴らしく情感たっぷりにメロウな甘茶ソウルを体現している。しかも甘茶には珍しくポップである。

プロデュースはニュージャージーの甘茶王GEORGE KERR。華麗で高揚感のあるコーラス&ストリングスアレンジはBERT KEYS。それにSYLVIAばりの囁き系の大甘ヴォーカル(誰?)。途中に入る語り、男性ヴォーカルや畳み掛けるドラムなどもメリハリをつけていてかなり良いセンスだ。それと何と言っても黄金律と呼ぶに相応しい大甘旋律だ。

残念ながらこの曲は7インチシングルでしか出ておらず、人気、レア度、値段も高い(それでも相場は5千円程度だと思う)。SOUL FROM THE VAULTという怪しげなコンピに一応収録されてはいる。驚いたことに先日、山下達郎のサンデーソングブックでオンエアされた。(次の週にはなんと THOMAS BAILEY / WISH I WAS BACK までもが!)何故か複数リクエストが来ていたそうな。実は私も昔この曲をリクエストして葉書が読まれたことがある。その時、山下達郎はお皿を持っておらず、知人に借りようとしたらケチなことに貸してくれなかったとか。

REFLECTION / JUST REALIZED (WAND 11237)

reflection JUST.jpg

SがついてないけどこのグループもU.S.BDG 318、甘茶ソウル百科事典P.104,P.249で取り上げられているREFLECTIONSだ。このグループはLPも悪くないが何と言ってもシングルオンリーのこのお皿と後述する、やはりシングルオンリーのI'M GONNA LET YOU GO THIS TIMEに尽きる。この「JUST REALIZED」は、きれいに響きわたるエレピの音色からあれよあれよと甘茶ソウルでは珍しい甘美なミディアムテンポの世界へと突入していく。かすれた、けれど味わい深いリードをメリハリのあるコーラスがたたみかけるように盛り上げていくところなんて甘いうえにスリリングで最高!胸をえぐるように甘いバックのストリングスなんかもグレートです。途中幾通りかへと展開していくメロディも全てのパートが美しく、全く無駄の無い完璧な曲。2分50秒と短かすぎるのがチトはかないね。ロングバージョンが聴ける12"、、、なんて出てないのかなあ。ソフトタッチがオンエアされた今、山下達郎さんがオンエアすべき伝説の甘茶ソウルNO.1となった、、、気がする。

TOMORROW'S PROMISE / HE DON'T LOVE YOU LIKE I DO (CAPITOL 3566)'73

tomorrows_promisehe_dont_love_you_like_i.jpg

甘茶ソウル百科事典P.60,304参照。シングルオンリーだけどグレイトな甘茶ソウルを連発したグループといえば、このグループとガスライト。傑作がゴロゴロしてるグループだから仕方ないとも言えるが、甘百ではどなたもこの曲に言及してないし、彼等の作品でこの曲こそが最高傑作だという声もあまり聴かない。しかし、胸をキュンと締め付ける(いわゆる胸キュン)度合いではこの曲に勝る甘茶ソウルは無いと思うのだがいかがなものか。

触れれば壊れそうなぐらいに繊細な格調高いストリングスやヴァイブなどのサウンドとコーラスを従え、リードのヴォーカルもこのうえなく情感豊かな表現です。テナーとファルセットを滑らかに縦横無尽に行き来するその様はまさに芸術品。感極まって声が震えているようにさえ感じられるのは気のせいか。これだけ上質で甘い黄金旋律を歌える光栄を考えればそれも納得がいくが、そういった相乗効果を含めてここでの歌声は甘茶ソウルにおける臨界点に達したと言える。胸を切り裂く泣きの弦や「ラララー」といった単純ながらもビリビリと痛みの走るコーラス等と一体になって誰も触れることの出来ない美しくも儚い夢の世界を作り上げた。

TOMORROW'S PROMISEのお皿はどれもさほど値は張らない。LP「SOUL FROM THE VAULT RARE SWEET DYNAMITE」へは収録されておらず、CD「SOUL VOCAL GROUP DELIGHTS - Volume 15」にかろうじて収録されている(もちろんどちらもブート)。

[TOMORROW'S PROMISE 7" LIST]

GASLIGHT / I'M GONNA GET YOU (GRAND JUNCTION 1100)'73

gaslight im gonna

70年代初頭に4枚のシングルを残して儚く消えた伝説の甘茶グループ。アルバムを残しておらず、残した数少ないシングル皿がどれも高品質という意味においてTOMORROW'S PROMISEと双璧を成す甘茶者にはとても評価の高いグループです。BUTCH AND THE NEWPORTSという前身グループを経て、後にソロアルバムも出すOLIVER CHEATHAMが率いていたデトロイトのグループです。甘茶偏差値74のDRIFTING AWAYなど既に当ブログでは複数紹介済みですが、今回はいよいよ大本命盤の73年の3rdシングル。

アレンジはPaul Riserで淡く寂しげなピアノから始まるイントロなど繊細なサウンドを作り上げている。特筆すべきはその後いきなり来るサビのフレーズで、甘く優しくなだらかな「I'M GOING TO GET YOU」というコーラスと儚くか弱いリードの掛け合いが絶妙に美味。切ない想いを全放出するかのような甘い雄たけびも魅力に満ちています。バックも郷愁を誘う大泣きのサウンドでそれらが凝縮され一体となったこのサビは甘茶ソウル史上に燦然と輝くサビの頂点と言えるでしょう。当然ですが、それらは決して万人受けする内容ではなくソウルミュージックの持つ甘さという要素を容赦なく極限にまで突き詰めた所業の瞬間で、だからこそマニアにだけは絶大な支持を受けるのだと思います。なお、私の推す他の偏差値70越えの超優良甘茶ソウルと比べるとサビ以外の出来がいまいちですが、このサビの存在だけで最高の甘茶ソウルと格付けしてしかるべきかと思います。

「YOU TUBE」で聴けます。

ぬわんとスタジオライブ映像も見れます。

二大甘茶ソウルグループのもう一方 GASLIGHT(シングルリスト有り)

70年代ソウルの「一つの頂点」 GASLIGHT / DRIFTING AWAY

触れば崩れそうな繊細なファルセット GASLIGHT / IT'S JUST LIKE MAGIC

JAMES PERRY / LOTTERY OF LOVE 12"(ULTRA-SONG 1000)

JAMES PERRY  LOTTERY OF LOVE.jpg

甘茶ソウル百科事典P.25で紹介されているKaleidoscope。暗めの甘茶ソウル「THANK YOU '75(TSOP 4770)」、やはり暗めのフィリーダンサー「WE'RE NOT GETTING ANY YOUNGER '75(TSOP 4765)」で有名。それらは共に「SOUL FROM THE VAULT RARE SWEET DYNAMITE」で紹介されているぐらいだから、いかに当時マニアに人気が高かったのかが分かります。ムーニー氏によると共に裏付き7"は激レアだそうで、どんな内容か気になります。ご存知の方教えて下さい。

このJAMES PERRYという人はそのグループのリードだった人らしいです。確かに声同じです。音の感じからすると80年代に入ってからの作品のようです。マイナーグループの更にそのリードのソロということでかなり無名に近いお皿ですが、そのマイナーさが手伝ってかある意味ギリギリの極限にまで達した大甘な世界がここにはあります。

出だしのとろけるように甘いギターの調べ。それに続くファルセットは淡々と、しかし狂おしいまでに甘く粋に愛の世界を歌い上げます。ピアノと控えめなシンセ中心のバックはかなりシンプル。全体に薄味で淡白な曲調ながらその甘いメロディは全てのパートが全く例外なく甘く美しく響きます。なんという美しさ!なんという甘さ!歌詞は「愛の宝くじにかけてみないかい?」てな感じでしょうか、途中で男女の語りが入るのもいいムード。

「CHOSEN FEW / YOU MEAN EVERYTHING TO ME」のような分かりやすい大味な曲ではないので、一聴しただけではその魅力に気づきにくいかもしれませんが、薄味甘茶ソウルの究極の姿がここにはあると思います。お皿の相場は1万から2万ぐらいとチト高いのですが、この辺の音がお好きな方になら全く問題にならないお安い買い物だろうと思わせる至極の名曲です。

その後頂いた情報によりますと、KALEIDOSCOPEの二枚の7インチの裏面は、
(TSOP 4765) '75 WE`RE NOT GETTING ANY YOUNGER / I WANNA LIVE FOR YOU
(ミディアムアップの曲)
(TSOP 4770) '75 THANK YOU / I'M A CHANGED PERSON
(ミディアムアップのとても爽やかなフィリーアップ)
とのことでした。どうも有難うございました。

更に、山下達郎氏によるとそのカレイドスコウプの前身はやはり甘茶ソウル「SUGAR FROSTED LOVE」で有名なFIRST OF JANUARYで、本作は「SPINNERS / Could It Be I'm Falling In Love」を作ったMERVIN STEALSなどによるフィリー制作とのことでした。

なんという美しさ! JAMES PERRY / LOTTERY OF LOVE 12"(ULTRA-SONG 1000)



【 甘茶偏差値 74

BLACK SATIN FEATURING FRED PARRIS / ALL OVER NOW LP(BUADAN 5654)'76

BLACK SATIN

ここまで上位3曲は全部甘茶ソウルとしては珍しいミディアムテンポの曲となった。甘いのにテンポがある、テンポがあるのに甘い、この組み合わせのなんと美味しいことよ。どうしてこれほどまでに私は甘茶ミディアムが好きなんだろう、、、。BLACK SATINは甘茶ソウル百科事典でもFIVE SATINSのコーナーでちょっとだけ触れられているように、名門DOO-WOPグループFIVE SATINSの後継グループだ。その唯一のアルバムは他にも良い曲がいくつかあるが甘茶ソウル百科事典はじめあまり甘茶ソウルファンには受けは良くないようだ。この曲も確かにファルセットあんまり入ってないしメロディもちょっと白っぽいか。しかし幾通りにも展開していく複雑なメロディ進行はとっても良く出来ているし、各パートがそれぞれに胸キュンな素晴らしいものだと思うんだけど、いかがでしょうか?ちょっと明るい未来感が見えるところもいいなあ。私にとっては至極の名曲です。

SOUL GENERATION / IN YOUR WAY LP(EBONY SOUND 2000)'72

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スウィートソウル名盤として間違いなくその5指に入るであろう歴史的名盤「BEYOND BODY AND SOUL」収録曲。U.S.BDG #289,甘茶ソウル百科事典P.48,MOONY'S SELLECT #087の彼ら唯一のこのアルバムは、味わい深い銘甘茶がたっぷりと注がれているのに内容も判り易いので、将に初心者から上級者まで万人向けの超お勧め盤となっています。

出だしのベースやピアノ、弦が一体となった濃厚な甘さ漂う第一音はドラマチックこのうえなく、この曲の糖度、グレイドの高さが凝縮されています。フュージョン系ミュージシャンが名を連ねるこのサウンドはニュージャージー甘茶としてはかなりしっかりとしていて実に心地よく響きますね。甘くまろやかなメロディラインは哀愁を帯び、情感のこもったファルセットリードによる切々とした唱法、感極まったかのように高揚した遠吠えは胸をキュンキュンと締め付けます。

更にその悶えまくる遠吠えをバックにそれとは対称的に淡々とした語りが絡むのですが、そのコントラストが妙味たっぷり。これは甘茶ソウルにおける絶対領域と言っていい一番の聴き所。この曲にコーラスは入らないんだけど、結果的に引き算がうまく作用して生まれた究極の甘茶ソウル名曲です。

NATURAL EXPERIENCE / HIDE AND SEEK (PT.1) (SOUND WAVE 4552)'77

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「かくれんぼ」と名のついたこの曲は私の甘茶三原則『甘く、ノスタルジックで、胸キュンメロディー』をこのうえない形で具現しきった、ノスタルジック甘茶曲の最高傑作と言えるでしょう。静かで淡白でムーディーな曲調とコーラスと透明なストリングスが美しい。また時折入るバリトンとファルセットとの絡みも良い。そしてコーラスと唄の歌詞を微妙にずらし、しかも字余り的にくずした歌いかたをする所謂『下手うま』的な手法等、甘茶の醍醐味が凝縮された超一流甘茶ソウル。このお皿のB面はこの曲のパート2になっているんだけど展開の関係でちょっと大味になってしまい、この曲の淡白な持ち味が損なわれる感じがする。そちらも悪い内容ではないが私はお勧めできないなあ。なお、お皿は二種類出ていて、BL&J盤とSound Wave盤とは両面とも時間が違い、BL&JではA-3:40,B-3:16,Sound Wave盤ではA-4:15,B-3:05と変則になっているそうです。

RUDY LOVE & THE LOVE FAMILY / THIS SONG IS FOR YOU LP(CALLA 35012)'78

rudy love

甘茶ソウルシーン的には全く無名に近いグループのようで、甘茶ソウル百科事典でもU.S.BDGでも取り上げられていない。ヴォーカルがファルセットではなく、コーラスには女性が参加している?という甘茶の王道から離れたスタイルも騒がれない要因だろう。曲調はこれといった派手な所の無い静かなバラード。然しながら甘く美しい黄金旋律を持ち、そのメロディはズシリと胸を撃つ。ちょっと白っぽい感じがする曲調も不人気の要因かも知れないけど、ゆったりとしたグルーヴと淡々としたコーラス、浮遊感のあるバックサウンドなどが心地よく個人的にはツボな曲。甘茶ソウル入門編的曲として考えてもいいかもしれない。このアルバムにはフリーソウル的人気を博してもおかしくない「MY IMAGINATION」という、より浮遊感、高揚感のあるミディアムナンバーもある。

SKIP MAHOANEY & THE CASUALS / WHEREVER YOU GO (A-BET 9465)'76

skip land of love Skip ABET 9465.jpg interlude wherever you go.jpg

彼等のセカンド・アルバム「LAND OF LOVE」収録曲。ストリングス、鉄琴(グロッケン?)、ハイハットの出だしの気品あるゆったりとした優雅なアンサンブルの濃厚な甘さは超特級品。この部分だけでも甘茶ソウル史上に燦然と輝く名曲と言えるのに、この後、更にこってりと濃厚なファルセットが美メロを切々と歌い上げてくれちゃうんですから堪りませんネ。優しくソフトで夢心地なムードなのでメイク・ラブ用ミュージックとしてもすこぶる役に立ちそう。70年代ソウルの美味しい「甘い」部分をこれでもか!とばかりに肩に力を入れまくり、力みまくりで過剰に演出した甘茶ソウル代表曲。私が黒人音楽に求めているのは、まさにこういう部分なんです。

因みに詳細不明ですが「INTERLUDE / WHEREVER YOU GO (STAR VISION INTERNATIONAL 1107)'82」(PROD&ARR BY JIMMY DOCKETT)というカバーがあって、スキップ・マホニー版より更に長い6分44秒ものバージョン(12インチ版?)。内容は忠実なカバーで特に独自解釈は無く、長い分は単に間延びしただけという感じ。更に80年代臭が加味された分魅力が失せていますね。悪い内容ではないのですが。



【 甘茶偏差値 73

DELFONICS / DELFONICS' THEME LP(PHILLY GROOVE 1154)'72

delfonics tell me

デルフォニックスの3RDアルバム「DELFONICS (PHILLY GROOVE 1153)'70」収録曲。ピアノやハープ、ホーン、ストリングスといったオーケストラ編成のサウンドをバックにコーラス主体で展開するインスト色の強い曲。ゆったりとした曲調に大仰なメロディは悠久の時の流れを感じさせ、幻想的な雰囲気を醸しています。その流れに身をまかせるかのように時折気持ち良さそうにファルセットで歌うウイリアム・ハートはまるで空を舞う妖精のよう。

「DELFONICS' THEME (HOW COULD YOU)」

そして4THアルバム「Tell Me This Is Dream(PHILLY GROOVE 1154)'72」では、更にインスト色を増したバージョンが収録されています。(表記は「HOW COULD YOU」部分が無い「DELFONICS' THEME」です。)このインスト版ではヴォーカル&コーラス抜きなので、フィリーの豪華&流麗なサウンドがたっぷりと堪能できます。コーラスの代わりに情感深さを感じさせるシタールが主旋律を奏でるのも、これはこれで違った魅力を味わえてイイのです。いやむしろ、ヴォーカル&コーラスを自分の都合のいいように脳内補完でき、飽きが来にくい分インスト版の方がイイという説、、、を私が唱えています。そして忘れた頃にコーラスが入るという演出に涙がホロリ。

「DELFONICS' THEME 」

WILLIAM HART / FOLLOW EVERY DREAM (LORIMAR 8007)'79

William Hart Follow every dream2.jpg william hurt

この曲を初めて聴いたのは山下達郎のサウンドストリートのスウィートソウル特集だった。当時受信の状態が悪く、雑音で雨が降っているように聴こえたものだが、まさに曲全体が雨でしっぽり濡れそぼっているかのような甘く切なく美しい曲だ。まず、イントロのなんとも静かで淡白な不思議なグルーブだ。この世のものとは思えない別世界、そう、まるで酸性雨が降りしきる未来のロス市街、ブレードランナーの世界だな、そんな場所にいるかのような錯覚に陥る甘茶ソウルきっての素晴らしいグルーブだ。静かで淡白なバックにあわせるかのようにウィリアムハートのあまーい歌声も淡白で繊細に夢の世界を歌い上げる。有名なデルフォニックスのヒット曲などのように大味ではないから全く飽きが来ない。残念ながらこのお皿はかなりレアで値段も高いようだ。山下達郎は当時この曲をおそらくほとんど新譜に近い状態でオンエアしたのではないかと思うのだが、ろくにヒットもしなかったであろうこのマイナー甘茶ソウル、20年以上経過した今聴いても全く輝きを失わない究極の甘茶ソウルを、しっかりとオンエアした功績は絶賛に値する。私にとっての山下達郎のオンエアNO.1曲だ。
(T.BELL - L.M.BELL - C.JAMES)(ARRANGED,CONDUCTED AND PRODUCED BY THOM BELL)
(画像2はこの曲が収録されている映画サントラ「The Fish That Saved Pittsburgh」)

KAIYA / KAGO (NORTHERN 463002)'87

KAIYA KAGO ep.jpg KAIYA ADC BAND.jpg

甘茶ソウル百科事典 TERRY'S SELLECT 001。男なのか?女なのか?とテリーさんは悩まれていましたが、このページを見ると、このケイヤは女性で、Johnnie Mae Matthewsという人の娘さんだそうな。ケイヤは本名はAudrey Matthewsと言って、78年にLong Strokeというアルバムを出したADC BANDというファンクバンドでヴォーカルをとっていたとのこと。U.S.BDG 519ではカイヤではなくケイヤと表記されています。ただこの曲で聴けるヴォーカルは私は男だと思うんだけど、、、。

曲の方は唱法としては囁き系、ムード的には淡白系、声質は中性系といったところでしょうか。ゆったりとしたウォーキングテンポの甘茶ソウル。灼熱の70年代から大部時が経ち、いい意味で熱の冷めた程よく力の抜けた作品です。浮遊感のあるきれいなメロディに乗せて、愛の言葉を耳元で囁くかのようなヴォーカルは甘く響きます。それと長めに入る男性の甘い語りも、熱すぎず冷めすぎずの小粋な語りっぷり。全体に感じられる余裕綽々の態度が実に大人大人しています。将に大人のあまちゃ、って感じですネ。派手で華美な箇所、特別際立って凄いと思わせる箇所は無いんだけど、トータルとして凄くグレードの高い作品だと思います。それと制作された87年という年や製作陣のバックグラウンドを考慮すると、たまたま、あくまで偶然に出来てしまった奇跡の甘茶ソウルと言っていいかも知れませんね。

EDDIE HOLMAN / YOU'RE MY LADY (RIGHT OR WRONG) (SILVER BLUE 807)'73

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ファルセット歌唱の大御所、エディ・ホルマンが高品質甘茶ソウルの宝庫シルバー・ブルー・レコーズに残した73年のシングル曲。アレンジはBOBBY MARTINで、ゆったりとした悠久の時の流れ、厳格で孤高なまでの静寂さ、達観した世界観を感じさせる素晴らしいサウンドを聴かせてくれます。なだらかで優しいメロディは最初から最後まで全てが美しく、エディの甘いファルセットと絶妙に調和。間奏のストリングスのむせるような芳醇な調べとそれをサポートする甘いコーラス。それら全てで、とろけるような夢世界を実現しましたね。この曲もまた70年代スウィートソウルが残した金字塔の一つと言えるでしょう。なお、シングルのB面はこの曲のパート2となっています。

FANTASTICS / THE BEST OF STRANGERS NOW (BELL 279)'72

fantastics_bosn.jpg

出だしの郷愁を誘うメロディに打ちひしがれない甘茶者がいるだろうか(いやいない)。と断言したくなるような狂おしいまでに甘くノスタルジックなメロディが全体を過剰なまでに包み込む。リードの声も甘く優しくまるで「母さんの歌」でも聴かされているように無条件に体が、魂が反応してしまう。サビがとてもキャッチーでもしかしてどこかに元ネタがあるのかも知れないですね。それ以外の部分も含めて全体としてとっても良く出来た黄金旋律で大泣き必須です。途中「教会の鐘が」のところで響く鐘の音に思わず胸キュン。ベルだけに鐘なのか、、、。「ストレンジャー」という言葉も泣かせます。

この曲の作曲とプロデュースがTony Macaulayで、この人はこちらのページによりますと、60年代後半から70年代を中心に多くの作曲を手掛けた方のようです。この中では「Flying Machine / Smile A Little Smile For me '69」辺りが一番有名でしょうか。言われてみれば「STRANGERS」と何処となく似た雰囲気を持ってますね。(他にもこの人の作品でお薦め曲が有ったら教えて下さい。)

「ポピュラー色強すぎ、、、 FANTASTICS LP(BELL 2308 030)」 (唯一のアルバムのレビューとシングルリスト)

「ノスタルジック甘茶 FANTASTICS / THE BEST OF STRANGERS NOW 」(オンエアポイントランキング)

「Best of Strangers Now - Fantastics」(歌詞つき動画)

「The Best Of Strangers Now by Eddie Kendricks」(カバー・バージョン)

CLIFF NOBLES / THIS FEELING OF LONELINESS (ROULETTE 7142)'73

cliff nobels

「THE HORSE (PHIL. L.A. OF SOUL 313)'68」の景気のいいアップテンポ・ダンサーで有名なディープ系シンガーのクリフ・ノーブルズ。そのイメージからは相当かけ離れた実に甘いバラード名曲をシングル・オンリーで残しています。控えめで上品なトラックに超極甘と言っていい、なだらかで優雅な旋律。それをしゃがれぎみの歌声で終始泣きを入れて情感たっぷりに歌いこみます。シンガーとしてどうこう言われる人ではないけど結果的に曲調ともうまくマッチし、ソウル史上に燦然と輝く至極の名曲を残せたということでしょうね。日本人の琴線を撫でまくる内容で、ディープ/甘茶にかかわらずソウルファンなら誰でも好きになることでしょう。U.S.BDG #76では高沢仁氏に「シングル盤中のシングル盤」と言わしめたものの、甘茶ソウル百科事典、楽ソウルでの言及が無いのは残念。

GASLIGHT / DRIFTING AWAY (GRAND JUNCTION 1002)

GASLIGHT DRIFTING

二大甘茶ソウルグループのもう一方 GASLIGHT
( ↑ シングルリスト有り )
にも書きましたが、このガスライトはアルバムこそ発表しなかったものの甘茶ソウルファンに絶大な人気のあるシングルを複数残した、甘茶ソウルの最高峰に位置するグループです。この曲も私の大好きな宝物曲で、その甘美なムードが織り成す世界は奇跡的ですらあります。

もちろん歌の上手い下手、コーラスワークの出来不出来、メロディのキャッチーさ、ヒットの有無、一般的知名度などなどといった世俗的な見地からするとB級C級グループに位置づけられるのは当然です。然しながらメジャーグループでは決して持つことの出来ない、マイナーだからこそ持ち得た音世界がそこにはあります。

絶妙に味のある繊細な柔らかで滑らかな歌声・唱法、熟成された旨みあるコーラス、過剰なまでに飾られた美しいサウンド等が一体化。全体として美しさ・甘さを、容赦なく、徹底的に追及した過剰なまでのスウィート・ソウル・ワールドが完成。この点において、間違いなくこの曲は70年代ソウルの「一つの頂点」に達しています。

「ガスライト、この名前じゃ売れませんネ」とは山下達郎氏の言葉で、いかにも商業主義に毒づかれた発言です。「ガス灯」、「ガスの灯火」、控えめで淡く味のある感じが表現された、曲調にもうまく合った良い名前だと思う。全てのグループが多く売れることだけを考えて作られたのではないから、こうした名作が生まれた訳であります。

FIESTA / ONE MORE CHANCE LP(ARISTA 4196)'78

fiesta

延々コーラススタイルオンリーのこの曲は、脊髄を直に刺激するようなというか、私という個体を超えたところで DNA が直接反応してしまうというか、なんかよく表現できないけど、そんな妙に懐かしい感覚を体験させてくれる素敵なメロディーを持った曲です。かなり私の嗜好のツボ(ノスタルジック&胸キュンメロディー)を押さえている大推薦曲ですが、甘茶ソウル百科事典、U.S.BDG、ともにこの曲に対するコメントがないのは、ちょっと寂しいところです。

REFLECTIONS / I'M GONNA LET YOU GO THIS TIME 12"(RCA 11409)'78

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U.S.BLACK DISK GUIDE #318で唯一のアルバム「LOVE ON DELIVERY (CAPITOL 11460)'75」が取り上げられているリフレクションズのシングル・オンリー曲。同じくNOT ON LPな「REFLECTION / JUST REALIZED (WAND 11237)」ともども彼らはアルバムよりもこの二枚のシングルの方こそが抜群の出来なのです。U.S.BDGでも書かれていますが、リードは甘茶ソウルとしては珍しい「かすれ気味のテナー」。最初に聴いた時は一瞬とまどいましたが、曲の良さも手伝ってか直ぐに慣れました。っていうかコレこそが味なのだと感じましたね。

曲の基本は至極オーソドックスなスローバラードで悪く言えば平凡な内容。しかし何度も聴けば非常に良く出来たきれいで滑らかなメロディラインだということに気付くはず。リードは甘く切なく真摯に歌いこみ、譜面を外してはコロコロと変るその表情もバラエティに富み素晴らしい。控えめなバックのコーラスも甘く郷愁を誘い、やはり控えめで優雅な弦や管の響きが高級感を醸しだす。胸を打ち、心を洗う、実に感動的な甘茶バラード。

JONESES / MERRY GO ROUND LP(EPIC 34898)'77

JONESES

MERRY GO ROUNDは“非日常”を表す甘茶なキーワードの最たるものです。かつて山下達郎がオンエアしたISLEY BROTHERS / LOVE MERRY GO ROUND というめくるめく甘い曲がありますが、マイナーなところでは MONDAY AFTER / MERRY GO ROUNDも軽快なアップ曲。SMOKEY ROBINSON / MERRY-GO-RIDEはフワフワ感が格別な傑作甘茶子守り歌ですね。PERFECT TOUCH / MERRY GO ROUNDも甘ーいファルセットが魅力の甘茶ソウル。そしてなんといっても、このJONESESのスポロロ甘茶、MERRY GO ROUNDまであるのですから相当甘茶度が濃いキーワードです。それにしてもなんとこの曲のコーラスの明快にして独創的なことよ!バリエーションに富んだ構成であるにもかかわらず、ポピュラリティの高いことよ!でもって甘くて、明るくて、ノスタルジックで、胸キュンメロで、しかもミディアムなんだよなー。究極のポップ甘茶とでも名づけてしまいましょう。


私の好きな甘茶ソウル(3)


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