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ザ・スーパー・ポップ宣言

穂口雄右氏が語る

穂口雄右氏インタビュー
ご自身の作品(アイドルポップ名曲)を語る



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アイドルポップの世界(1) (2) (3) (4) (5) (6) (7)

アイドルポップ映像の世界

穂口雄右氏インタビュー




【 穂口雄右氏インタビュー 】

当ブログ「アイドルポップの世界」でご紹介してきた楽曲のうち、「フィーバー 熱い気分のさめないうちに」、「林寛子 素敵なラブリーボーイ」、「トライアングル / トライアングルラブレター」、「キャンディーズ / 微笑がえし」、「BIBI / スカイピクニック」、「キャンディーズ / 年下の男の子」と実に6曲も手掛けられた、作曲家の穂口雄右先生にメール・インタビューをお願いしましたところ、ご快諾、ご回答頂きました。

その内容を不定期ですが、数回に渡って掲載させて頂きます。当ブログにとってアイドル以上にアイドルとも言える穂口先生ご自身によるアイドルポップの歴史的名曲を紐解く貴重なインタビュー(解説)をお楽しみ下さい。

【第1回】

(穂口雄右氏の前口上)ひょんなことからzouky氏と知り合いになった。なったとたんに質問が送られて来た。それも、第一問がフィーバーについて!! ご存知ですかフィーバー? どうですかこのマニアックさ加減。余程の関係者でないとなかなか記憶も覚束ないでしょう。フィーバーは美人3人揃いのボーカルグループ。さて、質問はフィーバーを含めて全部で6項目。それでは順次ご質問にお答えします。

フィーバー / 熱い気分のさめないうちに '79 穂口雄右作曲 大村雅朗編曲
(渡井なおみ 岡広いづみ 北川まゆみ)

FEVER

Q(zouky): この曲では、先生のメロディが素晴らしいのはともかく、特にスピード感やスマートで軽快なグルーヴが目をひくのですが?

A(穂口雄右氏): そう、はじめに私は言いたい、「ごめんねフィーバー」「私達が悪かった」。私達と三人称にしたのは一人で背負うには責任が重過ぎるからです。つまり、スタッフ全員の責任です。未成年のフィーバーには何の責任もありません。あのキャンディーズ旋風の後では、3人という企画自体に無理がありました。そんなことははじめから気付いていたのに、人間どうしても、これだけの3人ならもしかしたらなんて考えて・・・。

 「熱い気分のさめないうちに」には、それなりに頑張った痕跡が残っています。そう、34年が経過して楽しめるサウンドはなかなかありません。きっとみんなフィーバーをスターにしたかったのでしょう。ところで、ご質問は「スピード感やスマートで軽快なグルーヴ」。実のところ、私にはお答えする資格がありません。なぜなら、この曲のアレンジは大村雅朗氏にお願いしたからです。是非、大村雅朗氏に聞いて欲しいと言いたいところですが、残念ながら大村雅朗氏は1997年6月29日に46才の若さで逝去されました。彼は八神純子、渡辺美里、松田聖子、佐野元春などを手掛けた辣腕アレンジャーです。

 グルーヴ感は大村雅朗氏の細かい配慮が創り出しています。一見大胆に聞こえますが実に繊細です。キーボードとストリングスの絡みなど、普通のアレンジャーなら簡単にリズムセクションに任せてしまうところを、きちんと書き譜でグルーヴを表現するなど、言い出せば切りがないほど随所に彼のプライドを感じます。

 フィーバーの企画にもっと時間的余裕があったら。もっとレッスンをして、そしてサウンドに負けないアクセントの使い方をマスターしてもらっていたら。残念ながら時間は取り戻せませんが、もう少し違った結果が出せたと思います。不幸にもあの頃はみんな忙し過ぎて、基本を構築する時間がありませんでした。だから「ごめんねフィーバー」です。

Q: 先生が作曲家としてクレジットされている以上に、フィーバーというグループ自体に関わり、考えられていたこと、また、曲作りにおけるアレンジャーの仕事の大切さ等がよく分かりました。以後のご回答もとても楽しみです。どうも有難うございました。

穂口雄右氏インタビュー【第1回】フィーバー / 熱い気分のさめないうちに

軽快なモダンダンサー 熱い気分のさめないうちに フィーバー

輝く第3位 フィーバー 熱い気分のさめないうちに

【第2回】

HAYASI

林寛子 / 素敵なラブリーボーイ '75 作詞千家和也 穂口雄右作曲編曲

Q(zouky): なんとも洒落たフレーズや洗練されたメロディラインですね?

A(穂口雄右氏): 「素敵なラブリーボーイ」は良く頑張りました。なにしろ林寛子さんと小泉今日子さんのお2人で全部で2回のスマッシュヒット。残念ながら大ヒットにはほど遠い順位でしたが、林寛子さんが31位、小泉今日子さん19位とまずまずの成績で、合算すればベストテンと同等の頑張りです。

 それにしても、デビューからなぜか低迷していたあの林寛子さんをベスト31まで押し上げたのはそれだけで敢闘賞もの。それまではどうも重たくて、いえ、体重ではなく曲調が。それで担当ディレクターが「年下の男の子」を聞いて閃いた。「そうだ、彼女にも明るい曲を」と極めて単純な発想で千家・穂口コンビに白羽の矢を立てたようです。

 頼まれてから彼女の歌を再試聴したところ年齢の割になかなかの歌唱力。これなら少々の無理はOKと踏んであのリーピングメロ、サビ出でいきなりの6度跳躍連続技は聴く方は快適でも歌う方は結構大変なところを彼女は当然なんなくクリアー。当時は彼女の恐ろしさを知る由もなく、ひたすら可憐な美少女と信じて、知らぬが仏の書きたい放題で無邪気に作ったのが良かったようです。知っていたら私のメロも重くなったかも知れません。

 さて、「洗練されたメロディーラインですね?」との嬉しいお言葉にお応えして、メロディー創作法の蘊蓄を一言。なぜ「素敵なラブリーボーイ」のメロディーが快適か? ここには深い訳があります。何を隠そう、それはメロディーラインのプロポーションが快適だから。暮らしも人間もプロポーションが良ければ快適だし見ても気持ちが良い。ならば音楽もと言う訳で当時いろいろと研究したところ、やはりプロポーションが調っている音楽は聴いてて気持ちが良いし何回聴いても飽きない。

 ところが音楽にはプロポーションを調えるべき要素が膨大にあって、全部を説明するには少なくとも500ページは必要なので、ここではメロディーのプロポーションを調える方法の中のたった一つだけを大公開。はじめに自慢をしておきますが、一つの簡単なメロディを作るために、アレンジも含めた膨大なプロポーションを予め想定します。そしてメロディーのプロポーションは「いろは」の「い」であることを忘れないで下さい。

 そう、メロディは大別して次の3つのタイプに分類できる。メロディック、ハーモニック、リズミック、そしてこの3つのタイプのメロディーを1曲の中にバランス良く配分すると、メロディーのプロポーションが調って聴いても気持ち良く、しかも長持ちするメロディーになります。そして 「素敵なラブリーボーイ」は、サビはハーモニックに続いてリズミック、Aメロになるとメロディック、など注意深くプロポーションを調えてあります。興味のある方はゆっくりと研究して下さい。

ところで貴方は、どちらの「特別な男の子」になりたいですか?「林寛子さんの特別な男の子」か? それとも「小泉今日子さんの特別な男の子」か?私はなぜかどうしてもやっぱり「林寛子さん!!」いえ、あの、誤解しないで下さい「素敵なラブリーボーイ」の歌唱時限定です。どうぞ悪しからず、今後ともよろしくお願い申し上げます。

Q(zouky): これ程のメロディの完成には、やはり緻密な計算があったのですね。因みに個人的にはダイナミックでロック色の濃い林さん版が大好きですが、小泉今日子さんのファンの方でも林さん版の良さに気づいてくれる方もいるようですよ。どうも有難うございました。

穂口雄右氏インタビュー【第2回】林寛子 / 素敵なラブリーボーイ 作詞千家和也 穂口雄右作曲編曲

パンチが効いてて 第4位 林寛子 素敵なラブリーボーイ 穂口雄右作曲

【第3回】

トライアングル / トライアングルラブレター '78 穂口雄右作曲編曲

triangleloveletter

Q(zouky): この曲の発表に到るまでの経緯を教えて下さい。

A(穂口雄右氏): さて、いよいよ今回は、あの伝説の「トライアングル・ラブレター」です。「なにが伝説か?」と問われれば、すなわち、あの「キャンディーズフォロワー女性3人グループ全員玉砕アイドル史」の象徴として、そう、涙なしでは語れないトライアングルのデビューシングル制作の秘話。もっとも誰も聞きたくないでしょうから、一生秘密でも問題ないのですが、どうも世の中には物好きな方、つまり、例によってzoukyさんのような方もいらっしゃるので、全国の総勢およそ1、2名の皆様に特別に大公開を致します。

ことの始まりは松崎*(あのキャンディーズの大プロデューサーにして私のバンド戦友)からの一本の電話。電話に出るなり松崎が「おとうさん、やるよ」なぜか彼は私を、おとうさんと呼ぶ、しかし私には子供もいないし、ましてや彼の父親ではないので、なぜそう呼ぶのかははなはだ疑問であるが、それはともかく、私は即座に下記のような当然の反応を返した。

私「何を?」松崎「ジュニア」私「ジュニアって?」松崎「キャンディーズジュニア」私「え!キャンディーズに子供がいたのか?」松崎「おまえ、なにネボケてんだよ、新しい3人組だよ、つまり妹分」私「ちょっと、それ、止めようよ」松崎「もう決定だから、頼むよ」これって、覚えのある展開である。そうあの「夏が来た!」の悪夢*。松崎としても上層部の絶対命令で拒絶不能。私としては松崎が困る事は出来ないので、自動的に全面参加に突入致しました。

さて、覚悟が決まっての打合せは、キャンの時と同じように音域確認が初対面。しかしここでも、はたと我に返って後悔の第一幕。もちろん、可愛かったですよ3人とも、明るくて、素直で。でも当然過ぎるので改めて言うと、ミキもスーもランも居ない。3人とも普通に歌えることは間違いなく、いやむしろ、こと個々の歌唱力に関して言えばキャンディーズのデビュー当時よりも上ではある。

しかし恐ろしいことに、絶対音感のミキ、音質抜群のスー、輝くファルセットのラン、の強力3ウエポンなしでの、丸腰での戦いを覚悟しなければならなかった。次に、クーコ、ミッチ、マミ。この3人の中で誰をセンターとするのか、と考えた時。確かに甲乙丙も付け難い。裏を返すと誰でも良いとの見方もあったとは思うが、私は強くマミさんを推薦した。何故なら、マミさんならキャンディーズの特徴を少しでも継承できると思ったからです。

すなわち、奥ゆかしく、本来は目立つことが苦手で、なにより恥を知っている。これらは、簡単なようで難しい要素で、とりわけ芸能界でこれらの要素を強く持っている逸材を捜す事は一般的に困難である。ご承知の通り、おおむね皆さん目立ちたがり屋で、当然のように恥をものともしない強者
揃い。その点、キャンディーズは伝説の「普通の女の子に戻りたい」が象徴しているように、全員が恥を知る普通の女の子であった。

話をトライアングルに戻すと、デビュー時にマミさんのセンターを実現することが出来なかった。これが後悔の第二幕。しばらくして、島武実さんの歌詞が届いた。凄い! 何が凄いってポップ感がハンパない。「電話線に乗ってあなたのところへ」34年前の大昔ですよ。パソコンさえ満足になかった時代ゆえ、当然ながらEメールなどは影も形もありません。私はその時代を超えたスピード感にしびれました。

なにしろ、可愛い女の子3人がラブレターを握りしめ、ミニスカートをひるがえして、電話線の上を滑るように、全力で走って行くイメージにノックアウト。これは負けられないと、散々考えましたね。キャンディーズジュニアならなおさら、キャンディーズと同じではダメだし、キャンディーズ作品より印象的な曲にしないと完敗に終わることはすでに確定事項。

そこで、こうなったらもう、臆面もなくポップロックで、思いっきり明るく行こうと決めて、必殺の「ドミソド作戦」。そう「トライアングル・ラブレター」の出だしは「ドミソド」正確に言うと「ドッドミソッソドッド」。この作戦、普通はかなり効くんですよ。もしも本家が歌ったら大ヒット間違いなしの隠し技ですから。しかしながら、結果は皆さんご承知の通り。

でもですよ、冷静になって深く考えて下さい。よくよく考えて見ると、この「トライアングル・ラブレター」はオリコン最高順位28位。これ凄いことですよ。な・ぜ・な・ら、あのキャンディーズの伝説のデビュー曲「あなたに夢中」ですらオリコン最高順位36位でしたから。デビュー時のオリコンランキングを拠り所にすれば、明らかにトライアングルの圧勝です。では、何故こんなことに。

何を隠そう、プロジェクトの間違いは、デビュー曲に期待し過ぎたこと、したがって28位と健闘したにもかかわらず、何故かずいぶんとガッカリして、2ndシングルをアルバムからカットしたことです。アルバム用はあくまでもアルバム用なので、「トライアングル・ラブレター」よりも上位を目指すためには、さらなる隠し技を用意する必要があったのです。例えば「ラソミラソミラソミラソミレミソラドレドレド」これ本当です。ちなみに一つ目のレはレ#、つまりブルーノートですがリズムとコードは企業秘密です。あしからず。

話を元に戻すと、「2ndシングルに新曲を」と提案する暇もなく「0のメルヘン」が2ndシングルに決定。これが後悔の第三幕、すなわち「トライアングル後悔」の完結です。ところが、そんな「トライアングル・ラブレター」が、作者もそろそろ地獄から呼ばれそうな今日この頃になって、俄にひそかなブームになっているという異常現象を知り、張本人としてはもう、歳がいもなく喜々としているのであります。

なんと言っても1978年の強度挫折作品が、2012年に人類の記憶に残っているだけでも嬉しいのに、人によっては「トライアングル・ラブレターは日本ポップス史上の最高秀作である」とまで言い切り、しかも公言しくれているのでたまりません。もちろん、支持者が熱狂的な超変人約1名だとしても、言葉にできない喜びを感じてつつ、今明確に言葉にしている自分を感じています。

さて、伝説の「トライアングル・ラブレター」について、皆さんはどのような印象をお持ちですか? 良いと思った方は、思いを大声で表明して下さい。また良くないと思った方は、思いを心に秘めて生涯を全うされますようお願い申し上げます。いずれに致しましても、いろいろとお騒がせをしておりますが、今後ともご支援のほどよろしくお願い申し上げます。

Q(zouky): 大成功したキャンディーズの後釜という難しい立場をふまえ、苦心された様子が伺えました。また、この曲のポップ度の高さは歌詞のポップ感からも来ていることが分かり面白かったです。音楽的に何をもって成功したかと言うと、それは人それぞれだと思うのですが、個人的にこの曲がアイドルポップ史上に残るポップな名曲であることに疑う余地はあり
ません。素晴らしい曲を有難うございました。

*編集注1:松崎澄夫氏=GSバンド「アウト・キャスト」の元メンバー、キャンディーズの元プロデューサー。

*編集注2:「夏が来た!」の悪夢=「穂口雄右 キャンディーズとの別れ」をご参照下さい。

70'Sガールグループの醍醐味 トライアングル / トライアングルラブレター


【 当ブログで取り上げた穂口雄右氏の作品 】

フィーバー 熱い気分のさめないうちに '79 穂口雄右作曲 大村雅朗編曲

林寛子 素敵なラブリーボーイ 穂口雄右作曲編曲 '75

トライアングル / トライアングルラブレター '78 穂口雄右作曲編曲

キャンディーズ / 微笑がえし '78 穂口雄右作曲編曲

BIBI / スカイピクニック '79 穂口雄右作曲編曲

キャンディーズ / 年下の男の子 '75 作曲編曲穂口雄右

兵藤まこ / 片思いツイスト '81 作曲編曲穂口雄右



【 リンク 】

株式会社ミュージックゲート 代表者プロフィール(穂口雄右)

穂口雄右 - Wikipedia

穂口雄右 (Yusuke_Hoguchi) on Twitter



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