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ザ・スーパー・ポップ宣言

STRICTLY ROCKERS

STRICTLY ROCKERS (REGGAE)

「STRICTLY ROCKERS /菅野和彦 酒井裕子」で取り上げられていたものを中心にレゲエの曲を紹介します。

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STRICTLY.jpg NATTY DREAD.jpg TAXI LANE.jpg


「STRICTLY ROCKERS 訳詩でみるレゲエの世界 / 菅野和彦 酒井裕子 著
1983年3月20日 発行 自費出版? 定価1500円 168P」

STRICTLY ROCKERSは、菅野和彦さんと酒井裕子さんのお二人が83年に自費出版したレゲエの本だ。主としてタイトル通り訳詩とサウンドの両面からレゲエを紹介している。然しながら168ページにもわたりこの時点での相当数のレゲエのレコード(約500枚?)を紹介した情報密度の濃さを考えると十分ディスクガイドと言い放つことが出来る内容だ。(実際私もこの本を片手にあちこちとレコード漁りをしたものだった。)

取り上げられているレコードは当時全盛のルーツものが大半だ。アルバム中心だがシングルも紹介している。この本の以前に出版された「ザ・ブルース増刊 レゲエ・ブック 79年6月」という本ではレゲエアルバム88選というコーナーがある。一応名の通った出版者からの本でさえ88枚しか紹介されていなかったのだから、お二人が足掛け2年をかけて500枚もの紹介をしたことは当時は非常に画期的なことだったと記憶している。(お二方、どうも有難うございました&お世話様でした。)

それともうひとつ声を大にして言いたいことは、この本に書かれていることに媚び、偽りが一切無いことである。確かな耳を持った人が十分吟味して、何らしがらみに囚われることなく書いているということだ。(当たり前と言えば当たり前だが、日本では現在、そうでないレゲエディスクガイドが存在するのだな。どう聴いても駄作でしかないレコードを堂々と写真入りで名作と褒めていたりね。)

残念ながらこの本を語るにはルーツレゲエの、こういっては何だが、当時の暗い状況を反映した暗い詩の内容を抜きにするわけにはいかないのだが、それは私はとても苦手なのでお二方には申し訳ないがここでは音楽的な部分だけ取り上げさせて頂く。



1.PABLO MOSES / MUSIC IS MY DESIRE LP「A SONG ('80)」収録 P.81掲載


MOSES

岩谷宏さんが聴くレゲエとはどんなものだろう?彼が稀にレゲエについて言及する時、よく想像したのがこのことだ。なんせ固い文章を書く氏のことだ。能天気なレゲエなどとうてい聴きそうもない。更に彼のセンスや音楽的嗜好を考慮し、いつも唯一思いつくのがこのPABLO MOSESだった。驚異的な体温の低さ、その冷めたボーカルと厳しい視線、淡々としていながら強い意志を感じるところは両者に共通する。

この「MUSIC IS MY DESIRE」という曲は、PABLO MOSESの楽曲の中では珍しく、ちょっと洒落たエレピ?が導入されているのが非常に大きな特徴だ。時折入るチープなオルガンの音も効果的。ミディアムテンポで流暢なリズムにのって歌われるのは、あくまでも体温の低い淡々としたPABLO MOSES節だ。これが見事にマッチして摩訶不思議で、かつ絶妙な音空間を作り出している。もちろん私の大好きな曲で、全レゲエのベスト20に必ず入る。(だけどこの曲を他の方が褒めてるのを見たことは皆無。なんで?)

2.ETHIOPIAN / WHEN WILL BE THE END LP「EVERYTHING CRASH」収録 P.39掲載

ETHIOPIAN

スタジオワン製のこの約6分と長めの曲は、イントロのチープなピアノの音色が実にきれいで悲しげ寂しげだ。そんな曲調の中でオーソドックスなリズムにのせてデュオのハーモニーが淡々と歌い上げている。その対比が実に素晴らしいのだ。後半はダブ的処理が入る。冒頭のピアノフレーズも随所に効果的に挿入されとても心地よい。

この曲を始めて聴いたのは確か高校二年生の頃だったと思う。曲の良さに感動した私は聴かせてくれたレゲエの師匠に歌詞の聞き取りをしてもらった。(STRICTLY ROCKERSには訳詩の掲載がなかった。)飢餓、腐敗、戦争などについて歌った素朴なものだった。ちょっと悲惨で暗めの内容なのだが淡々と歌い上げていることで余計にグッとくるんだな。

3.レゲエ評論 / 曲単位での紹介が少なすぎる惨状

ここまでの2曲だが、STRICTLY ROCKERS では特にこの2曲は取り上げられていない。まあSTRICTLY ROCKERS は詩を中心においたガイドブックなので許せる。収録アルバム自体はしっかりと取り上げられているしね。しかし「レゲエディスクガイド」、「ROOTS ROCK REGGAE」ともに取り上げていないのはどうだろうか。特に同じETHIOPIANSの他のアルバムは取り上げられてるのにね。明らかにおかしいと思う。どうしてだろう。誰か理由を教えて。

まあ、それだけ日本におけるレゲエのガイド、評論がダメ、未成熟であるということだな。これはきっぱりと断言しておく。上記2曲にスポットを当てられないガイドブックは完全に欠陥品だよ。少なくとも私には存在意義は無い。そもそもアルバム単位でのガイドに固執しすぎるね。正直レゲエはアルバム単位で考えると他ジャンルと比べると駄曲がべらぼうに多い。アルバム単位で語るのは不適当なのだな。(誰か個々の曲にスポットを当てたガイドブックを作る気ありませんか?)

さてインターネットではどうだろう?と「ETHIOPIAN EVERYTHING CRASH」で検索をかけてみてヒットしたページは、日本人によるものは一箇所だけのようだ。(単にヒットしないだけで実は沢山あるのかもしれないが。)因みにそのページを見ても、このアルバムについては取り上げていても「WHEN WILL BE THE END 」については全く記述なし。それどころかコレクターのお皿自慢中心というなんとも滑稽で哀れな内容に失望。とほほ、、、。

4.CULTURE / JAH PRETTY FACE LP「TWO SEVENS CLASH ('77)」収録 P.50掲載

CULTURE TWO

CULTUREは私が高校一年生の頃、一番最初に好きになったレゲエのグループだ。プログレやハードロックなどを経てようやくNEW WAVEを聴くようになった頃、大学生など私より年配の方やロック雑誌などがこぞってレゲエが良いと言うものだから、どこがいいんだか良く分からぬまま、まるでコーヒーの味を覚えるべく一生懸命レゲエのレコードを聴き込んだ覚えがある。そうした中でこのCULTUREは明るく軽く、一番とっつき易かったのですぐ好きになった。

このアルバム「TWO SEVENS CLASH」はジャマイカでは77年度のベストアルバムに選ばれただけあり、かなり一般受けする要素が多い。収録されている曲は軽快で明るいものが多く初心者にも迷わず薦められる。好きな曲はいくつもあるのだが、特に私が好きなのがこの JAH PRETTY FACE だ。レゲエにしては珍しくスピード感のある軽快なリズムに明るいメロディ。ジョゼフヒルの明るく陽気な歌声は愛嬌があっていいよね。明るく元気な気分にしてくれ、体に優しいリズムは高校時代の私の癒しの音楽だった。最後のフェードアウト中の「JAH RASTAFAR I」の掛け声も決まってるゥー。
明るく元気テンション高揚感乾燥感グルーブメロディ器楽瑞々しさボーナス(スピード感)ポップ偏差値合計
968109797469


5.OSSIE ALL STARS(OSSIE HIBBERT) / Bubble Up Style 「Leggo Dub ('78)」収録 未掲載

LEGGO

驚いた。こんな世紀のレア高値盤が再発されていたなんて。「STRICTLY ROCKERS」未掲載だが、これは菅野和彦さんらが当時入手も聴く事も出来なかったからではないかと思う。私はこれまで現物も見たことないし、噂では10万円とかそのレベルで取引されている世紀のレア高値盤だったようだ。「ザ・ブルース増刊 レゲエ・ブック」ではダブの名盤8枚の中の1枚としてきちんと紹介されている。「衝撃的かつ革新的なダブ」云々。ただしOssie Hibbertという記述はなかったので私は今まで彼名義のアルバムだとは全く知らなかった。私がこれを聴いたのはレゲエの先輩からのあまり録音のよくないテープダビングだったのだが、その内容の良さからずっと良い音で聴きたいと願っていたものだ。今、20数年来の念願がかなってとても満足している。

音の方はGREGORY ISAACS/MR.ISAACS中心のダブなんだけど、はっきり言ってグレゴリーのアルバムは今ひとつだ。個人的に彼のヴォーカルに全く惹かれないという一因もあるけれど、やはり本アルバムで聴ける創造的なダブを先に聴いてしまったというのも大きな要因かもしれないなあ。

1.Dubby Dubby 2.Leggo Dub 4.Winners Dub 5.Dub Down Babylonとどれもホーンの奏でる主旋律がのんびりと気持ちよい。それをメインにChannel One Sly Dunbar のドラムもタイトで気持ちよい。軽めのダブ処理や電話、車、鳩時計、チャイムといった町や家庭の音が随所に挿入されているのがこのアルバムの大きな特徴でもある。しかしどれもこれも曲調が似てるな。3.Doberman Skankもこれまたホーンの奏でる主旋律が良いが、犬の鳴き声を沢山挿入したアイディアが面白く秀逸である、中華ドラもいいね。そして犬の鳴き声がダブ処理されエコーしていくところなんて最高(笑)。

そしてこのアルバムの最大の聴き所は一番最後の9.Bubble Up Styleの何とも郷愁をそそるどこか懐かしい大甘なメロディだ。素晴らしいレイドバック感。小学校のプールから帰って体がだるくなり昼寝をしていた時に流れていたBGM、あるいはつげ義春/ねじ式、うる星やつら/ビューティフルドリーマーとかの永遠に時間が止まったかのような異次元の、でもどこか懐かしい世界がここにはある。ヴォーカルが無いからこそ、この素晴らしい異空間世界が味わえる。最高のダブ/インスト作品だ。

6.TWINKLE BROTHERS / BITE ME '80 「COUNTRYMEN (VIRGIN RECORDS CDFL29)」収録 P.58掲載

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これは私の周りでは当時大騒ぎされていたアルバムで菅野和彦さんも「実にショッキングなアルバム。」と取り上げられている。彼はサウンド面での革新性に衝撃を受けたようだが私はむしろメロディの情感深い部分に感銘を受けた。1.I DON'T WANT TO BE LONELY ANY MORE 2.PATOO 3. NEVER GET BURN 4.FREE US (凄い!A面全部だ)と続く暗いけど温かく深く味わい深いメロディは当時のレゲエグループにはかなり珍しかったように思う。

5.FREE US DUBのオルガン、ホーン、ギター、ドラムなどに適度にエコーをかけた各種ダブ処理などは実に絶妙で、必要最小限まで差し引いた中にそれらを見事に散りばめた音世界は日本のわびさびの世界に通じる素晴らしいものだ。

9.BITE ME で聴けるメロディもA面同様素晴らしく奥深く味わい深いものなのだが、サウンドが少し明るめで、まるでヴァイブのようにポップに転がるギター?の音色、やわらかくリズムを刻むオルガン、幻想的に鳴り響くふにゃふにゃギターなどどれも優しく心地よい。途中明るく転調するメロディはこのアルバムで唯一明るい光が差し込む部分だが、その僅かな光源に希望を見出すように歌い上げる様子には胸を締め付けられる。

この時代のルーツレゲエは聴く人を選んでしまうほど個性的で一般性、大衆性をほとんど持たない。例えばこのTWINKLE BROTHERSのアルバムなどは同時代同レベルのソウルグループのそれと比べるとその知名度は圧倒的に不当に絶対的に低い。個人的には「SOUL GENERATION / BEYOND BODY AND SOUL」や「TERRY HUFF AND SPECIAL DELIVERY / THE LONELY ONE」クラスの黒人音楽ファンには『絶対』なアルバムだと思っているのだけれども、このアルバムはいつまでたってもそれらの10分の1ほども評価されることはないだろう。因みにこれだけ素晴らしいアルバムを作っておきながら彼らは観光客相手の営業音楽をやらねば食べていけなかったそうな。(アマゾンで試聴出来るようですので、どうかよろしく。)

7.DADAWAH / ZION LAND '75 「PEACE & LOVE (TROJAN CDTRL 400)」収録 P.37掲載

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DADAWAH名義だが実際はラスマイケルのグループとのこと。そんな訳でRAS MICHAEL & THE SONS OF NEGUS / NYAHBINGHIとカップリングされ再発された。このアルバムも当時激レア高値盤としてならしていた。まさかCDで再発される時代がやってこようとは夢にも思わなかった。こういった現象はレゲエだけに止まらない事象だがそれでも世界的にレゲエの評価が格段に高まってきた証左とも言えるだろう。

LPでは長尺の曲が片面2曲づつの収録、また全体に漂うムードもプログレッシブロックのそれと似ていたことから当時プログレ少年だった私には親近感の持てる取り付きやすい内容だった。所謂ナイアビンギサウンドだが、リズムは非常にゆったりとしているのでレゲエのンチャンチャリズムが苦手な人にも馴染みやすいだろう。楽器は少なくヴォーカル含めて深いエコーに包まれ実に神秘的な雰囲気。メロディも甘く優しく、まるで子守唄のように心地よく響くので就寝前にも最適。もやに包まれた謎の異世界といった趣きで完全にマリファナをやりながらトリップするためのメディテーション音楽として作られたものだろう。感覚が研ぎ澄まされれば相当「きそう」な内容だ。そうでなくとも聴く者を未だ見ぬ桃源郷へと誘ってくれることだろう。

8.MIGHTY DIAMONDS / YOUR HEART'S DESIRE '82 (ISLAND 12WIP 6838) 未掲載

YOUR HEARTS DESIRE.jpg MIGHTY DIAMONDS  YOUR HEART.jpg

12"「PASS THE KOUCHIE」のB面収録。CD「MIGHTY DIAMONDS / The Classic Recordings Of Jamaica's Finest Vocal Trio」にも収録されてます。Augustus Gussie Clarkeプロュース。派手さはないものの実にハートの温まるメロディを聴かせてくれる。そしてゆったりとしたリズムが実に心臓の鼓動と相性がよく、一旦聴き出すと延々1時間ぐらい心地よいマッサージを受けているかのような錯覚に陥るほど。抑制の効いたコーラスもいいし時折聴かれるヴァイブの音色などはまさに宝石の輝きだ。約6分の曲のうちの後半はまるまるオルガン中心の簡素なインストなのだが、これまた最高のリラックス効果をもたらしてくれ、聴いているといつの間にか深い眠りの世界へと誘ってくれる。この単調なリズムの繰り返しの持つ妙味を感じ取って頂きたい。(短いバージョンも存在したはずですので、購入に際してはご注意下さい。)

9.PRINCE LINCOLN & THE RASSES / PEOPLE'S MIND CD「NATURAL WILD '02(ORANGE STREET CDUB 19)」 P.61掲載

PRINCE LINCOLN & THE RASSES.jpg

80年にジョージャクソンバンドの競演ということで話題になったアルバム。02年になってダブCD付きの二枚組みとなって再発されたものだから驚かされた。これは当時ロッキングオン誌にも全面広告が掲載されたほどの話題盤だった。個人的にそれまで持っていたレゲエに対するイメージが覆ったほどのショッキングなアルバム。JOE JACKSONバンドというのが普段どういう音楽をやっているのかは全然知らなかったけど、ここではとても洗練されたサウンドを聴かせてくれる。特にこの曲では英国白人的エレピの調べがきれいでクールでカッコイイわ気持ち良いわでもう大変な出来。しなやかで流れるようなスピード感のあるリズムもいいネ。PRINCE LINCOLNのソウルフルでファルセットぎみのヴォーカルも高揚感いっぱいで、この二つの異なるジャンル同士の融合が素晴らしい世界を作り上げた。このアルバムには他にも素晴らしい曲がいくつかある。いつも辛口の菅野和彦さんも珍しく白人サウンドを賞賛してます。しかし同時期の各々の名義のアルバムを聴いてもこのアルバムの魅力の足元にも及ばない出来なんだよなあ。

10.JACOB "KILLER" MILLER / ONCE UPON A TIME '80 LP「MIXED UP MOODS(TOP RANKING)」 P.97掲載

JACOB MILLER

ジェイコブミラーの遺作。このアルバムは他にも「COME SEEK JAH」,「MR.OFFICER」,「CHAPTER A DAY」といった偏差値65クラスの素晴らしいルーツレゲエが収録されている。現在ではLP盤とは違い、画像のジャケでダブなどを加えた構成で発売されているようだ。

この曲はMarvin Gaye & Mary Wellsがオリジナルのようだが、原曲の物静かで柔らかな歌唱とはうって変わって、ここでは非常にDEEPでねちっこい歌となっている。リズムもタイトで生き生きとした躍動感があり、曲調も明るいので全く別曲に変身してしまっている。マービンゲイの原曲の存在など特に気にとめなかった方も、この曲を聴けばそのメロディラインの素晴らしさに新たに気づくことうけ合いであろう。

ジェイコブミラーは「Tenement Yard」など初期のヒット曲が評価されることが多いが、この曲を含め先に挙げたこのアルバム収録曲は、よりDEEPでソウルフルな歌唱が素晴らしいのでソウルファンにも是非聴いて欲しい。こちらで試聴できます。

11.CARLTON AND THE SHOES / LOVE IS ALL '76「LOVE ME FOREVER」(STUDIO ONE PSOL 003)P.40掲載

CARLTON AND THE SHOES.jpg

ロックステディ/初期レゲエを代表する名作アルバムから。アルバムは76年リリースだが録音自体は68年頃に行われていた模様。他にもLove Me Forever, Never Give Your Heart Away, Sincerely Yours(ロックステディ偏差値72), Me And Youといった名曲がゴロゴロしているのだが、その中でも「LOVE IS ALL」はロックステディの頂点に君臨する名曲中の名曲だ。

基本は軽快でノリノリなロックステディのリズムで、骨太なベースは音が歪みまくっている。それがこのリズムのイキイキとした躍動感の表現に一役買っていて生命感を大いに感じさせる。チャキチャキして忙しいギターとチープな音色のオルガンの響きも素晴らしい。それらこの時期の黄金リズムにのってCARLTON AND THE SHOESの淡白で甘く優しいハーモニーがさわやかに響き渡るのだから堪らない。

因みに橋本徹氏はFREE SOUL 2001においてこのアルバムではなく、長らく幻の名盤とされていた激レア激高値盤のセカンド「THIS HEART OF MINE」からGIVE ME LITTLE MOREを選曲しているんだけど、そんなにいい曲ですか?これ。メロディも曲の出来もリズムもいまいちパッとしないし、この程度の曲ならどこにでも転がってるヨ。せいぜい偏差値55程度。氏の耳を節穴とは思っていないので、結論としては単にお皿自慢をしたかっただけだと思うな。
明るく元気テンション高揚感疾走感グルーブメロディ器楽瑞々しさボーナス(音の歪み)ポップ偏差値合計
77910109108575


12.MIGHTY DIAMONDS / CHO ME BRETHREN '78 「STAND UP TO YOUR JUDGEMENT」 STRICKTLY ROCKERS P.45掲載

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MIGHTY DIAMONDSというと1ST「I NEED A ROOF」ばかりに脚光があたりがちだ。確かに「I NEED A ROOF」,「RIGHT TIME」,「GO SEEK YOUR RIGHTS」,「AFRICA」などの美しいメロディ&ハーモニーはレゲエファンばかりでなく甘茶ソウルファンなども虜にしてしまう名曲揃いだ。しかし逆に言えばどの曲も偏差値65程度の魅力に止まっていると思う。甘茶ソウルと言うにはメロディはいまひとつ突き抜けた魅力はないし、レゲエのリズムとしても取り立てて騒ぐほどの内容は無い。

そこでこの「CHO ME BRETHREN」である。収録アルバムの録音は76年とのことだから実質的に2ND LPと言える。1STで聴けた瑞々しく美しいメロディ&ハーモニーは引き続き健在。更にこの曲ではチャンネルワンの引き締まったリズムでアップテンポに迫り、全体を通して聴けるシンセの短いキャッチーなフレーズがかなり胸を締め付ける。淡々と歌い上げるリードとその旋律を外して絡みつくファルセットコーラスの妙味。甘茶ソウル同様テンポの早い胸キュンメロは私のツボ中のツボ。圧巻は間奏部分でエコーが深くなるシンセの「ンチャ、ンチャ」フレーズの振幅感だ。この間奏部分だけでも何度でも何度でも繰り返し聴きたくなる絶妙なプチダブ音空間、派手さは無いけど素晴らしすぎます。このページで間奏の一部を含めて試聴できます。「JA WILL WORK IT OUT」も抜群の出来だが、また別の機会に。

画像はCD「THE BEST OF THE MIGHTY DIAMONDS 20 HITS」(GRAYLAN JJ020/MDRP001 CD)のジャケを開いた状態のもの。このCDはベストと謳っているものの実際はLP「STAND UP TO YOUR JUDGEMENT ('78)」と「TELL ME WHAT'S WRONG ('80)」を2ON1にカップリングしたもののようだ。曲順のクレジットが滅茶苦茶なのだが「CHO ME BRETHREN」は14曲目で「JA WILL WORK IT OUT」は11曲目。

13.AUGUSTUS PABLO / FAT GIRL JEAN '74 「THRILLER」収録 STRICKTLY ROCKERS P.131掲載
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明るく乾いたキャッチーなメロディを涼やかにメロディカが奏でます。夏の日の午後、プールサイドのパラソルの下でのんびりと聴きたい爽やかさ、ひんやりとした空気感を持った曲。メロディの雰囲気としてはパーシーフェイスオーケストラの「夏の日の恋」のような感じだけど、元ネタは何かなあ?きっと有名な曲なはず。パブロのメロディカはフラフラとたどたどしいんだけど原石の輝きというか、まさにヘタウマ的魅力に溢れています。バックのダブサウンドも強調されたハイハットの響き、オルガンの微妙なエコーの具合、ドラムやベースの低音の振幅感などが素晴らしく、派手さは無いが、実にタイトに乾いた音を聴かせてくれる。湿度ゼロ%の最高に爽快な逸品。

アルバムとしては「PABLO NUH JESTER」、「DUBBING IN A AFRICA」というタイトルでも同内容で出ていてチトややこしい。CD「ORIGINAL THRILLER」として再発されています。更には最近発売されたTROJANの「Dub Rarities Box Set」にも収録されているので捜せば試聴出来ると思います。

14.BLACK UHURU / SPONJI REGGAE (12"VERSION) '81 P.63掲載
BLACK UHURU LIBERATION THE ISLAND ANTHOLOGY.jpg BLACK UHURU 84.jpg
傑作アルバム「RED」収録曲の12"VERSIONで、2CD「LIBERATION:THE ISLAND ANTHOLOGY」に収録されている。菅野和彦さんのアルバム「RED」に対するコメントは「マイケルローズのボーカルがロック的でうんざり」といった程度のサラリとしたものだが、このアルバムで聴けるSLY+ROBBIEのヘビーなリズムが当時のレゲエファンに与えた衝撃は大きく、ロックファンにも大受け、レゲエのファン拡大に大きく貢献した。菅野和彦さんは同じユフルの「GUESS WHO'S COMING TO DINNER」に対して「機械的かつ人間的な強烈なリズムは革命的」と評しているのだが、この表現はそっくりこの「SPONJI REGGAE」にも当て嵌まる。(フィリーダンサーにおけるMFSB/EARL YOUNGのドラミングに近い。)

圧倒的な重量感で迫りながらも実にタイトなリズム。攻撃的な雰囲気をプンプンさせながらもグロッケンの切ない響きなどメロディも心を打つ。意外性、創造性に富むドラミング、マイケルローズのねちっこいボーカルも魅力的だ。重量級のファンク作品として聴いても面白いだろう。レゲエの多面性を実感できる、実に素晴らしいブラックミュージック。画像2は84年の来日公演の模様。

15.TOOTS & THE MAYTALS / LOVE IS GONNA LET ME DOWN '73 「FUNKY KINGSTON」収録 P.68掲載

Toots  the Maytals.jpg TROJAN REGGAE CHILL OUT BOX SET.jpg

ソウルファンにもお馴染みのレゲエシンガーのド・サザンソウル。出だししばらくはレゲエのリズムが入らなく、チープなオルガンの音色はどこか郷愁を誘う胸キュンもの。このイントロ部分をブラインドで聴いて胸ときめかないサザンソウルファンはまずいない、、、かも。その後はしっとりとしたレゲエのリズムになるんだけど、オーソドックスな器楽、演奏ながら中音域、低音域の音の振幅ぶりは素晴らしく、メロディの出来、サザン臭漂うヴォーカルとも相まって素晴らしいグルーヴを作り上げている。レゲエもソウルもいける人なら一粒で二度美味しいお徳な曲で、レゲエが苦手な人には入門編として良さそう。

尚、STRICTLY ROCKERS掲載のTROJAN盤や画像のイラストジャケの「FUNKY KINGSTON」でさえ収録されているCDとそうでないものとがあるので購入時は要注意。あまり良い部分ではないけれど、こちらで30秒ほど試聴出来ます。「TROJAN REGGAE CHILL OUT BOX SET」にも収録されていてNAPSTERで試聴できます。そちらの方のが魅力は伝わりやすいかも。

16.HORACE ANDY / PURE RANKING (GETTO STYLE) 「PURE RANKIN」収録 P.88掲載

HORACE ANDY  PURE RANKIN.jpg

ルーツ・シンガーとしては珍しいハイテナー・ヴォイスの持ち主ホレイス・アンディの傑作アルバム収録曲。同じアルバム内で同名曲をバージョン違いでほんわかと穏やかにやっているんだけど、こちらのゲットー・スタイルでは攻撃的で不穏なムード満点にやっています。「純然たる階級」とただただ延々と繰り返すコーラスは、厳然と存在する貧富の階級の悲惨な状況をヒシヒシと伝えてきます。

ロッカーズ・スタイルのバックの演奏も闘争心むき出しの超攻撃的なもの。ハイハットやシンセなど高音域は鋭く研ぎ澄まされた刃物を彷彿させ、中音域のオルガンやパーカッションのエコーが体に麻薬常習的快感を呼び起こす。重量感のあるベースの低音とあわせ見事な振幅空間を作り出していますが、それらがヴォーカル・ワークと合わさり緊迫感が一層増幅されています。

年代と国こそ違いますが同じ黒人音楽として、良質なギャングスタ・ラップの持つ緊迫感と酷似した雰囲気が有ります。こういっては何ですが、悲惨極まりない絶望的な状況だからこそ噴出できた音楽というものがある、ということです。

17.LENNIE HIBBERT / SWEET LOVING 「CREATION (STUDIO ONE)」収録 未掲載

LENNIE HIBBERT  SWEET LOVING.jpg

ジャマイカにしては珍しいヴィブラフォン奏者がスタジオワンに残したアルバム「CREATION」に収録されている和めるインスト曲。基本はレゲエですが、ヴァイブの軽やかで透明な音色を主体としたものなのであまりレゲエ色は感じさせない。スタジオワンの質素で飾り気の無いバックサウンドは、特に中音域のギターの刻み音が心地よく、うまくヴァイブの繊細な音色を盛り立てているようです。

特筆すべきはそのヴァイブの奏でるメロディで、甘く優しく、どこか思慮深さを感じさせる仙人的な達観したムードを漂わせていること。郷愁を誘うおセンチさをも感じさせるのはヴァイブの音色によるものでしょうね。そして全体として漂うムードは南国ジャマイカのそれではなく、かなり無国籍的で捉えどころのない摩訶不思議なもの。MARTIN DENNYとかLES BAXTERとか初期のBRIAN ENOとかそんな感じ。なのでフリーソウルというよりはむしろCAFE APRES-MIDIシリーズが好きな人に向いてます。

、、、などと思って自分の音源(レゲエ精選MD)の出所を確認したところ、なんと橋本徹氏の非売品セレクトCDR「JAZZ RENAISSANCE for MUSICAANOSSA vol.3」からのものでした。うーん、やっぱりそんなところなんだよね。

18.G.G.ALLSTARS / BARABUS 「Trojan Instrumental Box Set」収録 未掲載

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おそらくは70年代に作られたレゲエのインスト曲で「Trojan Instrumental Box Set」収録。こちらのページのディスクグラフィを見るとプロデューサーAlvin RanglinのスタジオバンドでキーボードのWinston Wright等が在籍しているようですね。曲は歴史的名盤「Leggo Dub」と良く似た雰囲気の、どこか懐かしい感覚を思い起こさせてくれるような内容。現世では有り得ない、永遠に足を踏み入れることの出来ない異世界を垣間見せてくれます。

曲の基本は控えめな音量であまり目立たない哀愁を帯びたギターのリフレイン。単調な繰り返しだけどこれが最大の聴き所で、遺伝子とかDNAとかそんな身体の奥深くに直接作用するかのような感覚に陥る。質素な音色のキーボードが時折主旋律を奏でますが、その郷愁感たっぷりのフレーズも泣かせます。そのキーボードが打楽器的にサポートするリズムトラックも良質で、特に重量感満点の太ーいベースラインの迫力が素晴らしい。高音域をほとんど排除し中音から低音域をのみ強調したトラックであることも魅力の一つ。浮ついた感じの全くない、いぶし銀のような渋い魅力のある大人のトラックです。

クレジットが不明となっているので分からないけど、やはり「Leggo Dub」同様GREGORY ISAACS辺りの作品が元ネタになっているのかも知れませんね。(ご存知の方教えて下さい。)


19.ABYSSINIANS / THIS LAND IS FOR EVERYONE '78 「ARISE」収録 P.41-42掲載

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アビシニアンズは名盤の誉れ高い1STアルバム「SATTA MASSAGANA」収録の「Declaration of rights」「The Good Lord」そして「SATTA MASSAGANA」といった暗く重たい、まるでヨーロッパの宗教歌を思わせるような崇高な曲で有名です。ちょっとレゲエにしては湿っぽ過ぎて、この辺の作品は苦手、と彼らを毛嫌いする人も多いと思います(私もその一人でした)。しかし、解散後に各々のソロをかき集めたものと言われる当アルバム収録のこの曲は大部趣が異なる作品でオススメです。

レゲエにしては珍しくスピードを感じさせるリズムで歯切れの良いトラック。メロディは明るく温かみが有り全体を通して魅力的でよく出来ています。ヴォーカルは少しくどい目で、それに絡むファルセット・コーラスのハーモニーが繊細で美しい。更に特筆すべきはイントロの希望に満ちた瑞々しい管のメロディで、なんとも胸キュンものです。全体として感じさせる平和で穏やかな雰囲気が実に70年代的でいいですねエ。因みに歌詞はP.42に対訳が載ってますが、ほぼタイトルに集約される通り「この土地はみんなの物」といった内容です。「YOU TUBE」で聴けます。

20.CULTURE & THE DEEJAY'S AT JOE GIBBS 1977-1979 '08 P.51掲載

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CULTUREの代表作と言えば私も大好きな70年代後期の「TWO SEVENS CLASH」と「BALDHEAD BRIDGE」の二枚のアルバムです。そのアルバム収録曲を中心にDJとのコラボレーションで12インチバージョンでシングルカットされていた作品をまとめたのが本CD。そのマニアックな内容から、先の二枚のアルバムを十分に堪能された方のみが手を出すべき作品ということになりますね。最近それらの12インチシングルがボチボチと再発されてきているようですが、遥か昔30年以上前に「STRICTLY ROCKERS」でその存在を知った頃は店頭などでほとんど見る機会が無かったので、こんな風に1枚のCDで纏めて聴けるくる日が来ようとは思いもしませんでした。

結論としては全て後半にDJ接続ということで、基本的にこの頃のDJものが好きではなく、JOSEPH HILLの陽性なヴォーカルが大好きな私にとっては先述した二枚のアルバム収録曲を超えるテイクは有りませんでした。ただしトラック自体が素晴らしいものが多いので、DJの出来がいまいちでもアウトテイク集的に楽しめる内容でしたね。(これらの曲のダブ・バージョン集を是非とも出して欲しい。)

1はDJが間延びした感じでノリが悪くガッカリ。3はポップな曲の旨みを損なうことなくDJもうまくスピードに乗っていてかなりイイ内容。まあ元曲がいいからね。5は「ロンドン橋落ちた」のメロディを引用した替え歌仕様でポップな曲。後半はDJにダブ処理、更にヴォーカルも交えて賑やかな内容。6も3同様に元曲はスピード感満点の素晴らしい内容。前半部分はオリジナル通りですが、後半のDJに勢いが無くちょっと失速した感じで惜しい。7も明るく乾いたカルチャーらしい名曲。ここでのDJはリズムにうまく乗っていて気持ち良さそうに歌ってます。8はゆったりとしたムードの元曲の「THIS TRAIN」をディスコ・ミックスにしたような内容。

(偏差値65以上)
(偏差値61以上)
(偏差値60)

1.Two Sevens Clash / Prophesy Reveal [feat. Bo Jangles] 06:09
2 I'm Not Ashamed [feat. I-Roy] 08:19
3 See Them A Come / Natty Pass Him G.C.E. [feat. Shorty The President] 06:28 (ポップ偏差値67)
4 Natty Dread Taking Over [feat. I-Roy] 06:15
5 Baldhead Bridge [feat. Ranking Joe] 07:15 (ポップ偏差値63)
6 Jah Love / Selassie I Cup [feat. Bo Jangles] 05:50 (ポップ偏差値65)
7 Zion Gate / Forty Leg Dread [feat. Prince Mohammed] 07:32 (ポップ偏差値63)
8 Disco Train [feat. Nicodemus] 08:55
9 Send Some Rain [feat. Clint Eastwood] 07:05
10 Burning All Illusion / The Same Knife [feat. Prince Far I] 05:47
11 Innocent Blood / Rock It Up [feat. U Brown] 06:03

21.SENSATIONS / THOSE GUYS & THIS YAH DUB 「HOTTEST HITS VOL.1」,「TREASURE ISLE DUB VOL.1」収録 P.106,141掲載

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硬派なレゲエ中心に紹介されている「STRICTLY ROCKERS」だけど軟らかなロックステディも紹介されてます。P.106掲載の「HOTTEST HITS」シリーズはVOL.3まで出ていてTREASURE ISLEに残された1960年代後半のロックステディ・ヒット曲集となっています。このシリーズはかなり粒揃いの内容でロックステディ入門として最適と言えるもの。特別際立った曲がある訳ではないけど、「宝島で発見した宝の箱を開けたら、古臭いけど色鮮やかな大小様々な貴金属に思わずニッコリ」的な魅力のある内容でオススメです。

VOL.1のA-1収録のこの曲も派手さは無いけど、ロックステディの魅力がコンパクトに詰まった宝物のような作品。ちょっと情緒的で物悲しげなメロディは上質で、優しく包みこむように歌うリードとコーラスワーク、必要最低限に抑えられたリズムトラックも地味ながら体に心地よく作用。時折入るキーボードの可愛らしい高音の響きがいいアクセントになってますネ。間奏のメロディもしんみりと心に染み渡ります。

尚、このシリーズ収録の幾つかの曲のダブ・バージョンがP.141掲載の「TREASURE DUB」シリーズVOL.1,2で聴くことが出来て、これが輪をかけて素晴らしい内容。この合計5枚は是非セットで揃えて聴いて欲しい。「このダブで聞けるリディムスが後のレゲエのすべてのダブのお手本となった正真正銘のオリジナル」だそうで、レゲエとは一味違う素朴な響きを持つロックステディならではのダブの魅力がここに有ります。

特に奇をてらうことなく(というかダブそのものは本来、奇をてらったものだけど)ひたすら気持ちよく夢見心地にさせてくれる小幻想的音世界。もちろんトリップ用としてだけでなく、南国リゾートのプールサイドなどでゆったりと惰眠を貪りたい時などのBGMにも最適でしょう。当然この曲のダブ版も入っていて、ヴォーカル/器楽の出し入れ、エコーのかけ方、重低音の振幅具合など、一聴すると単純だけど隅々まで繊細に練り上げられた実に素晴らしい内容となっています。


22.CHOSEN FEW (TROJAN時代) 未掲載

甘茶ソウル百科事典P.50と「U.S.BDG 究極のLPコレクション - グループ編」で「YOU ARE EVERYTHING TO ME (NEWMAN 900)」が紹介されているチョーズン・フュー。彼等の代表曲と言えば、なんと言っても大仰で華麗な甘茶ソウル「YOU MEAN EVERYTHING TO ME」ですが、その日本盤「愛はすべてをこえて」のライナーによると、彼らはジャマイカ出身の4人組黒人(レゲエ)グループ。レゲエグループとしてTrojanレコードに次の3枚のアルバムを残しています。(シングルも多数あり)

Hit After Hit '73
Everybody Plays The Fool '75
Night and Day aka The Chosen Few In Miami '76

これらの中に果たしてUK POLYDORに残された「YOU MEAN EVERYTHING TO ME」級の甘茶ソウルは存在するのか調べて見ました。

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Hit After Hit (TROJAN TRLS 56)'73

1.You're A Big Girl Now (Ver 1)
2.You're A Big Girl Now (Ver 3)
3.Shaft
4.Stranger On The Shore
5.I'm Sorry (甘茶レゲエ)
6.Mexican Divorce
7.People Make The World Go Round (甘茶レゲエ)
8.Everybody Plays The Fool
9.Going Back Home
10.Melting Pot
11.Ebony Eyes
12.Do Your Thing

ほとんどがレゲエでおそらくデビューからのヒット曲の寄せ集め。安易なソウル・カバーが多いですね。DELFONICSの5、STYLISTICSの7はそれぞれファルセット甘茶カバー。特に独自解釈がある訳でもなくレゲエとしても凡庸で妙味は有りません。10はファルセットを交えた非レゲエ曲で、この辺りに彼等のソウル志向の片鱗が伺えます。

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Everybody Plays The Fool (TROJAN TRLS 106)'75

1.I Love The Way You Love
2.I Second That Emotion (甘茶レゲエ)
3.Make Way For The Young Folks
4.Hide And Seek
5.Reggae Stuff
6.My Thing (甘茶レゲエ)
7.Everybody Plays The Fool
8.Tears Of A Clown
9.Hang On Sloopy
10.Queen Majesty
11.La La At The End
12.I Love The Way You Love (Part 2)

これもほとんどがレゲエでやはり過去のヒット曲の寄せ集めと思われ、決して75年に録音された訳ではなさそう。やはり安易なソウル・カバーが多いですね。2はSMOKEY ROBINSON & THE MIRACLES、6はSYLVIAの甘茶レゲエ・カバーですが特に妙味ある内容ではありません。まあ、こうした幾度ものカバーによって徐々に甘茶センスに磨きをかけていったというところでしょうか・

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Night and Day aka The Chosen Few In Miami (TROJAN TRLS 131)'76

1. Night and Day
2. I Am a Man
3. In the Rain (甘茶レゲエ)
4. Wandering
5. Funky Buttercup
6. Candy, I'm So Doggone Mixed Up(甘茶偏差値63)
7. Why Can't We Live
8. Drift Away
9. Daniel
10. Hit Me With Music

11. Sun Will Shine
12. All Things Change
13. Music Maker
14. Don't Let Me Down
15. Girl I've Got a Date
16. Thinking of You
17. Self Destruct
18. Dancing Mood
19. Black Foxy Woman[Instrumental]
20. Young Girl
21. Reggae Rock Road
22. I'm Going Down for the Last Time [Take 1]
23. I'm Going Down for the Last Time [Version]

3作目は最近CDで再発され、13曲もボーナスが追加収録されました。レゲエと非レゲエ(ソウル、ファンク)が半々ぐらいの内容で、だいぶ洗練されてきています。(風の噂によると結構クラブDJに受けの良いファンクが入っているとか。)比較的サウンドがレゲエ色薄めの2などはソウルファンにも受け入れられそうな甘めの良曲。3はDRAMATICSの甘茶レゲエ・カバーだけど特に妙味なし。そして6が待望の甘茶ソウル。軽めのミディアム・リズムに、ストリングスやファルセットを交えた甘めのソウルで、その快活なリズムはフリーソウル・ファンにも受け入れ易そうな内容です。「YOU MEAN EVERYTHING TO ME」のようなコッテリとしたものではないけど、甘茶ファンならば一聴の価値ありでしょう。

夢よもう一度 甘茶ラヴァーズロック CHOSEN FEW / ON THE RIGHT TRACK

23.HEPTONES / SOUL & POWER '68 「ON TOP」収録 P.43掲載

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黒人ポピュラー・ミュージックにおける名盤中の名盤でジャマイカの音楽はどうも、、、と敬遠しがちな方であっても黒人音楽好きを自称するならば、一聴してしかるべきアルバム「ON TOP」の収録曲。レゲエの前段階のロックステディなので、レゲエが苦手な方でも比較的聴きやすいハズ。このヘプトーンズは初期レゲエを代表するコーラスグループで、リード・シンガーのLEROY SIBBLESはそのソウルフルなヴォーカルが魅力的。

特にこの曲で聴けるヴォーカル・ワークは活力みなぎる「しゃくり上げ」唱法が特徴的で、譜面を無視して縦横無尽に暴れまわるスタイルは痛快ですらあります。カラリと晴れ上がった陽性の声質で粘着質に、時にシャウトを混じえて力強く歌い上げる様を聴いているとこちらにまで力が漲ってきそう。シャウター・タイプのディープソウル・シンガーが好きな人ならきっと気に入るんじゃないかな。スタジオワン産のシンプルなサウンドも、骨太なベースが心地よく響く明るく乾いた快活なもので素晴らしいです。「YOU TUBE」で聴けます。







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