ORANGE JUICE / FALLING AND LAUGHING '82 LP「YOU CAN'T HIDE YOUR LOVE FOREVER」
ネオアコという言葉はフリッパーズギターが作りあげた造語という説があるそうだ。そしてフリッパーズギターによってこの当時のORANGE JUICE、AZTEC CAMERAなどが日本でも注目されるようになったと誤解されている人がいるかもしれないので念のため書いておくが、ORANGE JUICEは私が大学生になり上京した83年4月時点で既にカルト的人気があった。
同じ学科で同じクラブの先輩もORANGE JUICEを揃えて持っていたし、「RIP IT UP」は「きらめきトゥモロー」としてラジオで宣伝までされていた。新宿EDISONには、この曲のシングル盤「FALLING AND LAUGHING '80(POSTCARD 80-1)」が非売品として仰々しく飾られていた。(すぐに私の友達が頼み込んで10万円で売ってもらっていた。)御茶ノ水のJANISには「TWO HEART TOGETHER 10"」がレンタルされていた。(すぐに私が紛失代金を払って頂いた。)私が参加していた某ミニコミ誌でも彼らの特集を組む人がチラホラいたほどだ。記憶ではロッキングオンなど音楽雑誌ではほとんど取り上げられなかったと思うが、口コミ、ミニコミなどで彼等の魅力はどんどん伝わっていた、そんな記憶がある。
この曲は、所謂ネオアコの記念碑的アルバム収録の第一曲目。またネオアコの最重要レーベル、ポストカードの第一弾シングル曲。ということで全てはこの曲から始まったと断言して間違いないネオアコ始祖曲だ。POOR STICKS / ON TAPES でも『この曲のシングル盤「FALLING AND LAUGHING '80(POSTCARD 80-1)」を持っている、テープでね!』と歌われているほどだ。(関係ないけどここに出てくる「MIGHTY,MIGHTY」って誰の曲?)
歌詞はナイーブで気弱な青年の恋愛に関する他愛もない小言だ。ちょっと元気な今時ギャルになら鼻で笑われてしまうような内容だな。実際エドウィンコリンズもそんな青年だったのだろう。今にして思えばあまり自分とシンクロする人間像ではないが、それでも当時はちょっと共有できる部分を見つけては自分とシンクロさせ、かなりその気になって聴き狂った。特に「喜びを傷みとともに得たいんだ」という歌詞にはずいぶんと感情移入したものだった。それと、このか細く弱々しいエドウィンのヴォーカルのなんと人の心を惹きつけることよ。
サウンド的には瑞々しくきらびやかなギターの音色、明るく小気味良く躍動するベースライン、スピード感がありかつ歯切れの良いリズムギター、ナイーブで痛々しいヴォーカルなどが甘酸っぱいメロディと絡み合い、おそらくはこの時点であまり存在しなかったであろういわゆる「ネオアコサウンド」の原型を作り出した。決して根明な明るさを持った曲ではないけれども間違いなくネオアコ界の最重要曲だ。
明るく元気 | テンション | 高揚感 | 疾走感 | グルーブ | メロディ | 器楽 | 瑞々しさ | ボーナス(痛々しさ) | ポップ偏差値合計 |
6 | 9 | 8 | 8 | 8 | 9 | 9 | 10 | 5 | 72 |