デモ逮捕は見せしめ?
デモ逮捕は見せしめ? 「9・11脱原発」半数以上立件見送り 過剰な規制に憲法違反の声 「背景に19日の5万人集会」 東京新聞(2011/9/16)朝刊「ニュースの追跡」 東京・新宿で十一日に行われ、参加者一万人(主催者発表)を数えた「9・11原発やめろデモ!!!!!」。十二人もの参加者が逮捕されたが、十五日までに七人が釈放された。半数以上が立件を見送られ、「見せしめの不当逮捕だったのでは」との批判の声が上がっている。そもそも、デモ行進は表現の自由を掲げた憲法二十一条で保障された国民の権利のはずだ。(小倉貞俊) 「理不尽、との思いが拭えない。脱原発の思いを広く訴えたかっただけなのに・・・」。悔しさをにじませるのは、デモの主催団体「素人の乱」のメンバーで音楽ライターの二木信さん(30)だ。二木さんはデモ開始のわずか二十分後、東京都公安条例違反の現行犯で警視庁に逮捕された。「デモの許可条件だった五列での行進を守らず、参加者を歩道に広げさせた」のがその理由だった。 二木さんは原発事故後から八月までに、四回の脱原発デモを主催していた。だが、今回は当初から”異変”を感じいたという。 デモは事前に警察署を通じて都道府県の公安委員会に申請し、許可を受けることが条例で義務付けられている。二木さんらは「大勢の人にアピールしたい」と新宿駅東口のアルタ前を発着するルートで申請。ところが九日、同西口の中央公園を発着するルートに変更させられた。「(変更を)知らずに参加できなかった人もいる。デモを小さく見せようとの意図があったのでは」 当日も警官が車道を進むデモ隊に「早く進め」「幅を狭めろ」と威圧的な口調で指示。「いたずらに刺激しているように見えた。参加者に緊張感が漂った」 私服警官は二木さんに、歩道の参加者を車道に入れるよう指示。だがデモ隊は大勢の警官に囲まれており、車道と歩道との出入りができない状態だった。しばらくして七、八人の私服警官に囲まれ、「検挙する」と告げられた。そのまま車で新宿署に連行された。 三日間の勾留後、釈放された二木さん。「取り調べ中に、『やり方がひどい』と抗議したら、刑事さんも『確かにやりすぎだった』ともらした。内部でも疑問を感じた人はいたようだ」と明かす。 二木さん以外の十一人は、公務執行妨害の現行犯で逮捕された。うち、東京都の無職男性(六七)は警官に「広がって歩くな」と突き飛ばされ、思わず肩で押し返したところ、十人近くの警官に押さえ付けられた。男性は「こんなことで逮捕されるなんて」と憤る。インターネット上でも、複数の逮捕現場を撮影した動画が流れ、物議を醸している。 当の警視庁は、取材に「適切な職務執行行為だった」と回答。 ただ、人権団体「救援連絡センター」(東京都港区)の山中幸男事務局長は「明白な不当逮捕。釈放された七人は立件できないと判断されたわけで、いわば見せしめだった」とみる。 また人権問題に詳しい川村理弁護士は「そもそも、デモを過剰に規制する条例自体が、表現の自由に抵触している」と批判する。 なぜ、警察はこれほど強行に出たのか。前出の山中氏は、十九日に予定される五万人規模の脱原発集会とデモ(東京・明治公園)が背景にあるだろうと分析する。 「(脱原発の)運動が盛り上がらないよう、けん制しようとの意図が見える」。その上で参加者にアドバイスを送る。 「警察は圧倒的優位でなければ逮捕しないから、過剰に心配することはない。でも危険を感じたら抵抗せずに逃げて」