星の国から。ヴァン・ノアール

2021/11/27(土)09:29

アカデミー主演男優賞は逃したけれど・・「存在の耐えられない軽さ」

ドラマ&映画等など。(112)

​「The Unbearable Lightness of Being」 1984年発行 ​  原作はチェコスロバキア生まれのフランスの作家「Milan Kundera(ミラン・クンデラ) 1929-」が1968年のソ連軍によるチェコスロバキア侵攻によって起きた「プラハの春(変革運動)」の時代を舞台に男女2人の心の機微を描いたものです。  アカデミー主演男優賞を3回受賞している(この記録は未だ破られていません)イギリス人俳優の「ダニエル・ディ・ルイス」とフランスを代表する女優「ジュリエット・ビノシュ」が演じました。  首都プラハで脳外科医をしている「トマシュ(ダニエル・ディ・ルイス)」は診療に向かった田舎町で写真家を目指すカフェのウェイトレス「テレーザ(ジュリエット・ビノシュ)」に出会います。野心を持つテレーザはトマシュを追ってプラハに行き同棲、何とか結婚へとこぎつけることになります。  ただトマシュの結婚前からのプレボーイぶりは全く変わることがなく、それがテレーザを精神的に徐々に追い詰めていきます。  そんな時にソ連軍の侵攻が起こり、トマシュの愛人サビーナを頼ってテレーザと一緒にスイスのジュネーブに逃亡します。そこでもトマシュの素行は全く変わることがなく「私にとって人生は重いものなのに、あなたにとっては軽い。私にはその軽さが耐えられない」と書き置きを残し、テレーザは一人プラハに戻ってしまいます。  その書き置きを見たトマシュは失ったものの大きさに気づき彼女を追ってプラハに戻り、2人は初めて束の間の幸せな時間を過ごすことになります。  ここまでが結構長く2時間半以上です。家でビデオ観賞だったので何度か寝てしまいそうになりましたが、何とか最後までと見ていると最後のシーンに目が釘付けになりました。今でもそのシーンが頭に浮かびます。タイトル「存在の耐えられない軽さ」に込められた「人生の儚さ」を象徴するような大きな余韻を残す終わり方でした。  映画評では「ハリウッド映画で初めてヨーロッパ映画の品位を持ったものが発表された」という激賞のコメントもありました。原作の邦訳は1993年に発行で同僚に薦められタイトルにも惹かれて読んだ後、ビデオで映画を見ました。  映画の「終わり方」という意味では今でも私にとっては一番印象に残る映画かなと思っています。   因みに2006年に村上春樹氏が受賞したチェコの文学賞「フランツ・カフカ賞」を昨年ミラン・クンデラ氏が受賞しています。この賞を受賞した作家の中でノーベル文学賞を受賞した作家がいるため、今年も期待しましたが残念ながら両氏のノーベル文学賞の受賞には至っていません。

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