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星の国から星の街へ(旧 ヴァン・ノアール)

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2022.11.20
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 11月の
​「文春文庫」新刊の一冊、村上春樹著「猫を棄てる」を紀伊国屋書店で手に取ってみると120ページ程の薄い本で字も大きく挿絵も数ページあって12ドル90セント(円安なので1300円ぐらい)は高いなぁと迷いましたが、久々に「村上春樹ワールド」に浸りたくて購入し昨日読み終えました。

 読み終わった後は自称ハルキストにとって「薄い本でも内容は厚い単行本一冊以上の重みがある」という感じです。少年時代に父親と自転車に乗って海辺に雌の飼い猫を棄てに行ったある日の出来事から始まり、父親の戦争体験へと続きます。実家が京都のお寺(安養寺)で僧職になる勉強をしていた父親は本来は徴兵は猶予されるはずが正式な事務手続きを忘れ1938年に一回目の中国戦線に派兵されています。

 戦争で思い出すのは1994年に発行された「ねじまき鳥クロニクル 3部作」でこの中に「ノモンハン事件(満州国とモンゴルの国境線を巡る日ソ間の紛争
1939-1941 )」 についての箇所があります。戦争について村上氏が触れた最初の本で、ある意味この一冊から作風が変わったと私は思っていますが、子供の頃に父親から僅かながらに聴いた戦争体験をいつか文字にと思っていたのかなと想像します。

      
                     ​ カバー写真は奥さんの「村上陽子」さん。​
 
 ずっと以前ですが、ファッション誌「アンアン」に掲載の村上春樹氏のエッセイで、作家の村上龍氏から猫を貰い奥さんの陽子さんと2人&愛猫1匹の生活をしていること、そして子供の時の食卓の話題が両親共に学校の国語の先生だった事もあり「源氏物語」だったという事以外に家族については本の中で読んだ事がないと思っていましたが、2020年発行の「一人称単数」の中の「ヤクルトスワローズ詩集」の中に父親と母親の事が書かれていました。球場通いが好きになったきっかけやヤクルトファンになった経緯と共に両親の事もユーモアを交えて書かれていますが「猫を棄てる」の中では辛辣な父親との確執(父親が90代で亡くなる直前まで)が描かれています。

 三回目の召集の後兵役を解かれ、京都大学文学部に入学(或いは復学)した父親の「村上千秋」さんは「京大ホトトギス会」の同人となり「俳句」に終生打ち込んだようです。戦争中に詠んだ俳句もいくつか本の中で紹介され、何かそういう物が残されていて目にする事が出来るというのは子供にとって宝だなぁと羨ましく思うのと、両親や家族の事、自分と家族の繋がりをもっと知りたいと思わせてくれる「家族愛」を感じる一冊でした。



 

 








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最終更新日  2022.12.07 22:31:37
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