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テーマ:読書(8950)
カテゴリ:読書 原田マハ
![]() 昨年の12月に友人から頂いた原田マハ著「ゴッホのあしあと」は「たゆたえども沈まず」や「リボルバー」でも描かれなかったゴッホ自身と彼の作品の新たな面を知る事が出来た一冊です。 1886年に弟のテオを頼りパリにやった来たゴッホはおよそ2年間、結局彼の画業がパリで受け入れられる事なく都落ちのように未だ見ぬ日本の景色を求めて南仏アルルに向かいます。そして原田氏はパリの象徴であるセーヌ川をゴッホは生涯に一枚も描いていない事に言及しています。 ![]() 1889年「ニューヨーク近代美術館」所蔵 「星月夜」は1889年6月、アルルでのゴーギャンとの共同生活がゴッホの耳切り事件で終止符を打ったおおよそ半年後にサン=レミ収容所で描かれています。原田氏はそこからはこの景色は見られる事はなく、ゴッホの孤高さを表す「糸杉」とそれを横切る雲のようなうねりは「セーヌ川を表しているのでは?」と解釈しています。写実性を重んじていたゴッホに対して想像で絵を描く事を得意としていたゴーギャンの影響が色濃く出ている作品ではの視点はd興味深いものがあります。パリはやはりゴッホにとっても憧れの地であった事を彷彿させます。 ![]() 1889年5月「J.・ポール・ゲティ美術館」所蔵 そしてサン=レミ収容所に入ったゴッホを最初に温かく迎え入れてくれた庭に咲く「アイリス」についても詳細がありました。アイリスの絵は個人的にはメトロポリタン美術館で「アイリスのある花瓶(1890年5月)」を見て一目惚れした絵で思い入れがあります。著書で取り上げていたアイリスは1889年5月(星月夜の1ヵ月前)に描かれたアイリスで、調べた限りはアイリスの絵はこの2枚を含めて4枚です。実際にゴッホが入っていた部屋は原田氏も訪れ「冷たい石壁の3畳1間くらいの狭い部屋。窓には身投げしないように鉄格子がはめられています」とあり、こんな状況下でも絵を描く力、強い意志、光のある方向に向かって行こうという前剥きな気持ちに改めて心からの称賛を示しています。 今年もまた新たなゴッホの一面を見る事が出来る事を願って。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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