T.C.UNIONRIVER ~ユニオンリバー社~

2話-前編

人類が宇宙へ進出して幾何時・・
世の中物騒になってきていた「2990年」。

TC会社の一つ、地球を拠点とする「ユニオンリバー社」
少々責任感に欠ける彼らもまた有力なTCとして活躍しているのであった・・




 第二話
「遺跡探訪」


1・・ 「事の始まり」
2・・ 「列車事故」
3・・ 「社長欠勤」
4・・ 「月」
5・・ 「深度4」
6・・ 「反撃の手順」
7・・ 「ゼファー到着」
8・・ 「予想外」
9・・ 「まつりのあと・・(?)」

2990年、7月27日
この日は大変な猛暑がセルムラントを襲いました
私も大変でしたがマスター達はもっと大変な目にあったようです
・・夏っていうのは色々起こる季節なんですねぇ・・
まぁ・・それはどうでもいいことですが・・・

1・・ 事の始まり

夏は暑い。
そんなことは当たり前なのだが、セルムラントを含んだ北半球は異常気象に見舞われている
少し前まで台風が吹き荒れていたかと思えば、あっという間に猛暑が街を襲った。
・・そしてそれは海岸のユニオンリバー事務所も例外ではない。

「・・・・・話す気も起きねぇってのはこのことだな・・」
「・・どうも静かだと思ったら
そんな理由だったんですか・・」
ロディは汗だくで、虚ろな表情をして言った
ネスは暑さのせいか様子がおかしい
「・・これ以上温度上がったら、オーバーヒートですねぇ・・・」
「いや~・・大変やなぁ。」
一人涼しい顔のシード
余裕こいて笑っている
「・・・お前、暑くないのか・・」
「いんやぁ、なんてったってワイはこれでも恐竜さんやからなぁ!」
なおも笑う
・・こんの爬虫類・・いつか焼いて食ったろか・・・
ま、正確には「恐竜(など)の遺伝子を組み込んだ合成生物」だが
「おっはよーぅ!!」
メイのやかましい声が事務所にこだました
「うっせぇーっっっ!!!!!
このくそ暑っちぃのにでけぇ声だしてんじゃねぇよっ!!!!」
「・・・ごめん。」
熱いわりに彼女は呑気に笑っている
・・・・こいつも同じか・・・
「今日ってなんか暑いねぇ~・・」
「その程度で済んでるお前は恐ろしいぞ・・
・・今何度だと思ってんだ?」
「へ?・・・・ん・・・二十五度くらい・・かなぁ?」
「・・三十四度。」
「ほぇ~・・そないに暑いんかぁ?」
ちなみにこの部屋唯一の空調装置はシュウの発明材料にされてしまった
「・・おや・・・・」
ネスは先ほどから日課の掃除をしているが、どうも動きがふらふらしている
「大丈夫?ネスぅ・・?」
「・・ええ、ちょっと・・ダメかも・・・ぉ・・・」
ばたん・・
「ネ・・ネス!?」
「どないしたんやぁ!?」
話している途中で彼は倒れてしまった
モニターになっている目には、ノイズがかって雑な映像が映しだされている
「オーバーヒートですね」
「うわぁっシュウ!?お前いつの間に!?・・
・・っつーか何とかせんとネスはんがぁっ!!」
「とりあえず冷凍庫にでも放っておけば大丈夫ですよ」
対策はそれこそ簡潔だった
「おいおい・・そんなコトでいいのかよ」

「ええ。
彼には仮にも最新鋭のシステムを組み込んであるんですから」
目を光らせて言うシュウの言葉には、妙な説得力があった
「・・いいなぁネスって
そんな簡単なことで治せて・・」
メイがぼそっ・・と言った
「せやなぁ・・部品交換であっさり治るんやから、ワイらより便利なことは確かやぁ」
・・俺はお前らの方がうらやましいぞ
このエセ爬虫類と鈍感娘・・・
かたやシードは人でないにしろ彼女の場合どういう神経をしているのだろう・・
「・・やべ・・レイノスの修理頼むんだった・・」
別にそれがどうした・・というところだが、面倒な点が一つ
「この暑っ・・・・・ちぃ中街まで出かけんのかよ・・・・
・・やってらんねぇなぁ~・・」
気温三十五度
外の気温、三十六度強
・・しかしこの銃は仕事上とても重要な役割を果たす
彼の所有する武装のコア・ユニットはこのレイノスである
コレなしでは全く意味をなさないタイプが多い(シュウに任せるといらん改造されるので拒否)
「・・しゃーねぇなぁっっ!!・・・・
・・・・・おめぇら、留守番頼むぞ」
一声叫んだ後、ロディは睨むようにしてシュウたちに言った
「街までおでかけ?
・・いいなぁ~・・」
「・・・お前、どこまで鈍感だよ・・
・・とにかく行って来るからなぁ!!
ネスの面倒は任せた!!」
「もちろんですよ(つーか冷凍庫に放り込むだけですし)
どうぞゆっくりいってらっしゃい。」
・・そう言ってにこにこ笑うシュウの服装は、今まで通りの「分厚いロングコート」であった
・・暑苦しい・・


・・ 2 列車事故

あれから二時間後の十時二十三分・・
シュウとシードの前に、横倒しになって燃えさかる六両の列車があった
・・ロディはその車両で帰ってくるはずだったのだ
消火作業を急ピッチで行うSG隊員
しかし火は依然として燃え盛っている
「・・まだロディさんは見つかっていないね」
「・・そ・・・そないアホなぁ・・
あのロディはんがこうもあっさり・・」
「・・・・・・・・本当にそうかな・・?」

・・いきなりこんなではわからないので少し前のロディの様子から・・
「くぅ~っ・・やっぱ修理したてはいいよなぁ~」
新品同然になったレイノスをかざしながら、目を輝かせていた
「うん、これこそ暑い中苦労した甲斐があるってモンだな」
しかし依然として気温が高いことには変わりない
ロディの上着は大量の装備を積んでいるために結構蒸すのだ
「・・・・・とっとと帰るか・・
・・ま、帰ったところで暑ぃんにゃ変わりねーけど・・」
彼はふらふらとしながら、でもうれしそうに駅へ歩いていった(周りから変な目で見られながら)

・・セルムラント中央区
商業の発展した地域であり、政治の中心国会議事堂の役目も果たす多目的建造物
・・「セントラル・ターミナル」・・
高速道路が直結し、その上には鉄道が直結してさらにショッピングモールすらもある
・・詰め込みすぎでごちゃごちゃした玩具箱のような建物だ
ロディはそこから鉄道で帰るつもりで、プラットホームへ向かっていた
(事務所にあるラディオンは、ガレージから出すのがヘタでめったに使わない)
「やっぱこういう公共の場っていいよな・・・
冷房効きまくってるし・・」
さきほどより笑顔のロディ
しかし、ホームに出た瞬間に彼の表情は一変した
右も左も「人」、「人」、「人」・・
「・・・・今日って休日だっけ・・?」
とにかく人ごみがごった返している
気合いでかき分けながら、目的の列車までたどり着くことはなんとかできた
二両目の奥のイスに座り込むと、ロディは大きくため息をついた
「今度は日を選ぶか・・」
・・教訓である
「・・えらく空いてるな」
・・ま、あんな何もねぇ方向に用事があるヤツなんてそうそういないわなぁ・・
自分であの場所が田舎であることを納得して、ロディはしばし寝ることにした
・・ユニオン事務所のある、「ユーニス国立記念公園」駅まで四十分。
寝ている余裕は十分だった
・・・数分後
・・銃声でロディは目を覚ました
「・・あん・・?・・なんだ・・?」
大きく伸びをして、彼は眼鏡をかけながら呟いた
・・異様な光景を目の当たりにして、ロディは思わず黙った
まばらな乗客は全員手を上げており、後ろにテレビで見たことあるようなサングラスの男がいた
・・いまどき列車強盗?・・流行らねえことやってんだな・・
「・・ドラマでも撮るつもりかよ」
彼はそんなもの無視。もう一度伸びをして、眠ろうとした
「・・・そこのてめぇも手を上げろ」
男はロディの額に銃を突きつけた
「お?・・俺も出演者か?」
「ふざけてんじゃねぇぞ
死にたくなければ手を上げろ」
ぶ・・ん
「どっちの台詞だ?」
「!?・・・」
ロディの頭に男の銃が、その男の頭にはロディのレイノスがポイントを張った
「さぁ~て、どっちが早いかなぁ~?」
「う・・っ!?」
「答えは・・俺の勝ちぃっ!!!!!」
トリガーに手のかかった銃を素早くはたくとポイントをずらし、男の右足を撃ち抜いた
「わーったらそこで寝てろよ・・
人の昼寝を邪魔すんじゃねぇ」
面倒そうにぼやいた時だった
きぃぃいいいいい・・・・・・・
「・・何だ?」
ブレーキの音とともに車両が揺れた
乗客のどよめきが聞こえてくる・・
・・と
がしゃっ・・
「うおっ!?」
レールから外れたらしい、車両が大きく振動し始めた
そして
「ば・・バカ野郎!?なんて運転してやがんだ運転手っ!!」
ロディが前の車両に殴り込もうとしたところで、列車は次の駅のホームへ正面から突っ込んだ

・・シュウとシードがその事故の情報を仕入れるのは、そうそう遅くもない頃だった
「・・社長がいなくなってもーたら・・ワイらどうすりゃえーんやああああああ!!!!」
「・・おいおい、怪我人はいるけど死人は出てないんだって・・」
がしゃ・・がしゃん・・・
変な音が列車からしたのはその時だった
「うえっ・・・・気持ち悪ぃ・・・・
・・・・ったくぅ~・・ひでぇ目にあったぜ・・」
すすや煙で黒くなっていた上にボロボロだったが、それは紛れもないロディだった
「うわ!?いきなり化けてでよった!?」
「・・そうじゃなくて・・生きていたんだと思うけど?」
「・・くそっ・・ヘボ運転手め・・
ぜってぇー慰謝料請求してやるからなぁーっ!」
「おい、こっちだ!」
「・・あん?」
ロディが顔を上げた瞬間、数人のSG隊員に取り押さえられた
「うわっ!?」
「君!動いたらいかんだろう!!」
「ちょ・・・っとまてぃ!
俺は別にケガなんぞ・・」
「病院へ搬送だ。」
「わかりました」
彼のことなど無視してSG隊員間で勝手に話が進んでいく
「おい・・!てめぇらっ!人の話を聞きやがれぇ!!!
・・・待てって言ってるだろーがっこの税金ドロボーっ!!!!!」
すかさず一人が彼の頭を思いっきり叩いた
「っ!?」
かくり・・と首を落とすロディ
「では運んでくれ」
「はい。」
・・てめぇら・・本当に警察官かぁ!?・・
遠のく意識のなか、彼はささやかな(大きい気もする)疑問を抱いた
「・・行ってもうたなぁ・・」
「無事とわかればそれでいいよ」
二人はそれを見届けて、早々にその場を離れた


・・3 社長欠勤

・・同日、午後2時
・・・都心のとある病院にて・・・
「ま、つーわけでこの様だ」
別にさほどのケガがあったわけではないと本人は言うが・・
「あのですね、マスター・・」
彼の状態を見れば誰でもネスと同じ事を言うだろう
「左腕と両足ヒビ入ってて、なおかつあばら骨四本折って絶対安静なのに・・
どこの世界でコレを無傷というんですっ!?」
「・・・俺的に言えばの話だ。
それにしてもおまえ、ホントに治るの早かったなぁ」
「・・少々冷やせば済むことでしたからね・・
それはともかく、「絶対に」寝ててくださいね。
あなたの場合こっから抜け出して・・とか考えているでしょうが、そうはいきませんよ・・
そんなことしたらゼファーの電力チャージ費用とレイノスの弾丸補充費用全面カットしますから。
・・わかりましたねっ!?」
「・・・・・へいへい」
・・うるせぇヤツだなホントに・・
本当なら彼はいくつか調べたいことがあった
あの車両を脱線させたのは、運転者だったのかそれともあの男だったのか
・・テロならニュースで本当のこと報道しないだろうからな・・
比較的平和な国であるセルムラントだが、思わぬ所で事件に遭遇する事が多い
・・普通じゃない連中もかなり潜んでいるのだ。
何が起きてもおかしくない中で、普通に時間が過ぎている国である
「・・・・ヒマだぁ」
といいつつも、のんびり出来ること(と冷房があること)に喜びを隠せないロディであった

と、いうことがあって・・現在のユニオン事務所・・
「一週間くらい入院?」
「ええ。
しっかし、怪我人二十三人中ただ一人の軽傷者ですか・・(あくまでも一番軽傷であるということ)
まあこのくらい頑丈でなくてはTCなどつとまりませんけども」
「・・頑丈っつー問題なんかなぁ・・」
「いや、どちらかと言えば根性の・・」
「あの?・・変な議論始めないでくださいね・・?」
いつになく冷静な突っ込みを決める
ネスが完全に治ったのもシュウの耐熱装備のおかげである(そんないいモノ付けなくてもいいのだが)・・だが・・原因作ったのもまたシュウだ。
「たっだいまぁーっ!!!!」
またしてもばたん、と大きな音を立ててドアが開いた
「・・メイ様・・そのうちドア壊れちゃいますよ・・
・・・いい加減にやめてくださいね?」
「・・ん・・?
わかった・・できればそーするよぉ。」
「・・・・・・・・・・」
「そんなことより、これこれ!」
彼女は一枚の封筒を取り出した(この国ではまだ郵便が続いている)
「?・・・・・おや、手紙ですか・・」
受け取ったネスはそれを開いてみた
「マスター宛ですね・・
・・って!!これは・・・・・・い・・依頼ですとぉ!?」
「そんなこと聞いていないけど・・
・・昨日も仕事探していたし、第一ネス君が全部手続きを行うはずじゃあ・・」
「じゃ、それはなんやのん?」
ネスは手紙を握りつぶして言った
「マスターが勝手に契約取っていたんですよ・・!(怒)
全く!暴れたりないからって勝手に仕事持ってくるとは!!!」
「んで、日付明日みたいだけど・・
どうするんだい?当のロディさんはいないし・・」
「まさかボク達でやるの?」
「・・そうですね
・・理由はともあれ、引き受けた以上は・・信用問題ですからねぇ・・(困惑)」
「仕事の内容は?
そこらに書いてあるハズやろ」
「え~、遺跡内行方不明者捜索・・
場所は・・月の「遺跡」ですか・・。」
「・・ロディはんにしちゃあめんどい仕事引き受けたもんやなあ・・?」
「遺跡に眠ってるロスト・システムをくすねようって魂胆じゃないかな・・
ゼファーやブレードバッシャーにはロディさんの気に入るような必殺兵器がついてないから・・」
「必殺兵器ぃ?・・
ちゅーとあの・・戦隊モノとかで最後に「どーん」とやる派手なバズーカみたいな?」
「マスターは武器に異様な執着心がありますし、えーカッコしぃなトコもありますから・・」
ブレードバッシャーの武装は対艦ファランクスレーザー、ごく普通のレールガンと収束プラズマ砲。
ゼファーには「必殺技」しかない。(しかも一刀両断とか唐竹割りとか、どマイナーな技)
基本武装のレーザー・ブレードと追加装備のクォーク・ライフル・・ただの二つこっきり。
新しい武装を買う余裕などないために、ゼファーは破壊力の面でメイのドーマにも劣っていた
「そういう理由だとしたら・・感心しませんね」
・・仮にも私のマスター様なワケですし、そんな犯罪まがいの考察など・・
「えーんやないか?当の本人は病院で寝とるんやし」
「言われてみればそーですね・・
なら・・私達で速急に終わらせてしまえば。」
「月の遺跡・・ね・・
思い出すなぁ・・SS版バーチャロンのオペレーション・ムーンゲート・・」
「・・なんやそれ?」
「・・なんでもないよ・・ただの独り言。」
シュウはため息混じりに笑った
・・ロディが居ずともこの程度の仕事、簡単に片づくだろう
・・・だれもがそう思っていた。
・・4 月

月とは、元は地球の一部である小型の衛星・・
そんな簡単な説明が通用したのも二十一世紀末まで
今では旧文明人が建造したデス・スターもびっくりの機械衛星であることが判明している
・・そこらから旧文明の遺跡が大量に発掘されたためだ
しかし、発見から七世紀たった今でもその深層部には何があるのか解っていない
星ひとつ分の迷路が広がっているのだ、それをクリアするのは一苦労どころの騒ぎではない
様々なトラップや妨害システムが探索者達を妨害し続けてきた

・・今回ユニオンが請け負った仕事というのも、その遺跡のひとつでの事。
今述べたように迷路へと迷い込んでしまった調査隊を探すため、
SGとの共同作戦・・
「・・せきゅりてぃ・・って何?」
「よりにもよって重要な仕事やんかぁ~
こないなモンはSGに任せとけばえーんやないのん?」
「引き受けてしまっては後の祭りですよ」
「そ、とにかくやるしかないよ。」
シュウはそう言いながらブレードバッシャーのブリッジを後にした
「・・・せやな・・
ま、打ち合わせ通りよろしゅう頼むでネスはん。」
「よろしくねぇ~」
「了解ですとも・・・」
・・打ち合わせ・・
今から二時間ほど前、艦内で行われていた話し合いのこと。
いろいろと対策を考えている中、シュウ、メイ、シードの三人が内部へ向かう事に
ネスは通信士として別行動する

・・というわけで一行は遺跡の入口までやってきた
「遺跡言うたらどないなモンやと思うたけど・・
・・意外にSFっぽいんやな、なんぞ工場跡地みたいに・・」
「SF「っぽい」んじゃなくてSF「そのもの」なんだけどなぁ・・」
「細かいこと気にすんなやぁ!」
「まぁまぁ・・とにかく、お気をつけて・・
・・・いってらっしゃいませ・・」
「・・なに、心配いらないよ(口からでまかせ)」
「ワイがおるからなぁ!(一切自信なし)」
「だいじょーぶ(何も考えなし)」
不安一括のネス。
・・ううう・・(泣)マスターが悪いんですよ・・マスターがぁ・・
文句ぼやきながら三人を見送るのであった

・・27日 午後一時・・
「ほえ~・・結構広いんやなぁ・・
遺跡っちゅーから石造りみたいな狭いモンかと思たわ・・」
「そりゃ現実は違うさ。
旧文明はビーム兵器を使うくらいの超高度技術があったんだから」
「・・へぇ・・それでこーいう風になってるんだ・・」
遺跡の入口は、さながら基地の発進口の様相を漂わせていた
壁には無数のケーブルが垂れ、硬質金属製の板がそこいらに張られている
「とりあえずSGが後発で潜入しますんで
・・もし、万が一の時は救援要請を・・」
「・・万が一・・ねぇ・・」
ネスからの通信が反響する
「なぁ・・SGにもらったこの地図なんやけど・・」
「・・どうかしたんですか、シード君?」
「いや・・こないな不完全な地図・・どこまで信憑性があるモンか思うてなぁ・・」
「最近いい加減ですからね、SGも。」
「行ってみなけりゃわかんないよ
ほら、二人とも早く行こうよぉ」
「・・・あんさん・・お気楽でよろしいなぁ・・」
不安はおおいにあったが、ここでくすぶっていても仕方ない
・・彼らは、暗い迷路をゆっくり進んでいった

・・数分後のこと
ネスはSG小隊の一人、「ラルフ」とちょっとした世間話をしていた
「情けない話なんだけども・・うちの小隊長も先発で行ったまま連絡つかずで・・」
「・・なんですと?」
「捜索隊が捜索される羽目になっちまったってわけだね。
・・まぁ、あなたがたなら何かいい策でもあるんでしょう?
TCってのはある意味SGより装備が整ってる職だし」
「へ?ええ・・・ま・・一応・・」
・・「昨日聞いたばかりで準備など全く整ってはいません!」・・
・・などとはとても言えない
「・・で、通信可能だったのはこの・・」
隊員は遺跡の簡略図を見せてある場所を示した
「深度4まで。
この部屋に入った直後に何かの転がる音と爆発音を残して通信途絶・・
最初の調査隊も同様に行方不明。」
ラルフは苦笑いを浮かべながら続けた
「・・あの人のことだし、まぁ無事でいるだろーけど・・」
「・・けど・・何かあるのですか?」
「・・・・極度の方向音痴で・・
しかも人の話を聞かないことで有名。」
「それは・・・確かに戻ってこないかも・・」
そう言って返答しつつも、自分の仲間も似たようなものであるため笑えないネスであった

・・そのころの三人は・・
「・・同じ道ばっかでつまんな~い・・」
「仕方ないよ、遺跡なんて重要部位以外は粗末なものなんだから」
「・・なぁ・・地図やとそろそろ広いトコに出るハズやけど・・
一向に見えて来ぃへんでぇ?」
「・・そういえば・・そろそろ深度3なのに・・」
「迷ったんか!?」
「そうとも・・言うかな?」
「・・ダボっ!!!
やっぱダメやんかこんのヘボ地図ぅぅぅぅっっ!!!!!」
シードは手にしていた地図を丸めて壁に投げつけた
「・・ま、このまま勘だけで進んでみよう
・・ロディさんみたいにね。」
「でもロディってハズレ引くほうが多いよねぇ。」
ぴし
シュウは一瞬固まってしまった
「そ・・それは僕がハズレを引くとでも・・?」
「ううん。」
「・・ならいいけど。(安堵)」
「えぇーわけあるかーいっ!!!!」
そんなこんなで順調(気味に)進行していた
問題の「深度4」へあと十数メートルの所まで・・

・・一方・・

「・・・結果出ぇるまで・・勝負はわからなぁ~い・・・♪」
病室のロディは一人寂しく歌を口ずさんでいた
「・・・年がら年中旅してぇわぁ~・・ほんとの自分を探すのっさぁ~
もう戦いはぁ~・・はぁじぃまっていぃるぅ~っ♪」
個室なため、うるさいとか苦情こそ飛んでこないものの誰もいない部屋で歌うのも寂しい。
「・・何が悲しくて歌わなきゃいかねーんだろ・・
・・つーかヒマだヒマ、もうめっちゃヒマ、すっげぇヒマ、どうしようもなくヒマ。」
一連の独り言を終えると、彼は起こしていた上半身をベッドに沈めた
彼の次の行動は・・
「・・そろそろエスケープすっかな」
その、ただ一言で決まった。


・・5 深度4

「勘が当たったみたいだね」
「やっぱロディが運悪いだけなんだ・・」
シュウの適当なルート選択の結果、彼らは広い空間へと出ることが出来た
目的地とはズレていたかもしれないが、結果オーライですませた
「ネスはーん。
とりあえず目標深度まで降りたでぇ?
あとはどないにすりゃえーのん?」
「了解しましたぁ・・
とりあえずその先は警戒してください。
先発捜索隊がその深度で奇妙な音とともに消息不明になっています」
「・・・「何か」出た・・とか?」
「いえ・・何でも・・「転がる音」と「爆発音」が最後に聞こえたそうで」
「転がる?」
「ああ・・あの「インディ・ジョーンズ」って映画に出てた大岩みたいなモンやろ。」
「・・仮にも文明人がそんな簡単な仕掛け作らないと思うけど・・」
ネス君、とにかく今の映像をそっちに転送するよ」
空間・・そこは中型ホールくらいのスペースがあった
まわりは先程と同じ硬質製の壁であり、天井はドーム型に展開している
・・そして、その周りに四つの通路がつながっていた
「ふぅ・・どうやら何もないよう・・」
・・ですね。と言いかけてネスは黙った
画像の端・・シュウたちの後ろの通路から、巨大な球体が姿を現したのだ
「しゅ・・シュウ様、後ろに!!」
「?」
慌てた様子のネスに疑問を持ちつつ、後ろを振り返ると・・
鈍い銀色の「巨大な鉄球」がこちらに突っ込んできた
「シードっ!メイちゃんっ!」
二人に呼びかけるのと同時にシュウは横へ飛んだ
彼のいた場所を高速で鉄球が駆け抜ける
「なんやぁ!?」
「・・遺跡のガーダーってトコでしょ・・多分僕らを排除しに・・」
「うわわぁ!?また来たよぉぉっ!!!!」
「どないすんねんや!?」
「ここはもう一度ロディさんを見習って・・」
シュウはコート右のポケットに手を入れた
「逃げよう。」
取り出した拳銃を数発放ち、シュウはさっときびすを返して来た方向へ走りだした
鉄球に命中した弾丸が爆発し、中から粘着剤が飛び出した
「これで少しは・・」
「しゅ・・シュウぅっ!?」
シードの声で振り向けば、あの鉄球がいくつも転がって来るではないか
「・・さすがに一機だけじゃないよな・・」
「こないなったら走るしかないで!」
「は・・早くしないと追いつかれちゃうよ・・!」
来た道を駆けて戻る
後ろからは鉄球が坂道すらものともせず上ってきた
速度こそそれほどないが追いつかれればまずいことには変わりない
「二人とも!こっちや!」
シードが二人を誘導し、横道へ飛び込んだ
狭いために選択しなかったもう一つのルートである
しかしそれが幸いした
幅が狭いがために鉄球は通過できなかったのである
「・・・・・・・助かった・・・」
「でもこりゃあ戻れないな・・・・
・・・・・仕方ない、こっちへ進んでみよう」
「こっちにもおったりして・・」

しかし、シードの予想とはまた違う展開が待っていた

「なに?この部屋ぁ・・?」
先程のように広い空間があった・・が、
無数のケーブルが天井から垂れ下がり、地べたもそこら中ケーブルで敷き詰められていた
辺りにはコンピューターの端末のようなモノさえある
「・・なんやろ・・」
「ちょっと、うかつにさわるとまずい・・・」
シュウの忠告も遅い
シードはその「端末」のキーに触れてしまった
そして
うぃぃぃぃぃぃぃ・・・・
「警報音・・・?」
「いわんこっちゃない・・」
「な、何!?何なの!?」
不気味な警報音・・
そして・・
「・・・・・・・何も起きへん?」
思ったのもつかの間
「うぉっ!?またあの鉄球やぁ!!!」
「またなの!?」
再度駆け出す三人
「君の行動は不用意だよ」
「しゃーないやん!なんもわかれへんのやし!」
「ひぇ!?・・ととと・・止まってぇぇぇぇ!!」
先を走っていたメイが後ろの二人を制止した
「なんでや!?」
「道がないよぉぉっ!!!」
「・・最悪やん!!!」
元々暗いが下はさらに漆黒の闇が広がっている
しかも通路が先程より「広い」
鉄球は通路いっぱいに、三~四列に連なって突っ込んでくる
「ネスはん!・・ネスはん・・・・・ってつながらない!?
・・・ここって妨害地域かぁ!?」
「・・抵抗戦でいくしかない」
シュウはバイザーを下ろすと、再び拳銃を取り出してとにかく撃った
爆発が立て続けにおこり粘着弾が鉄球を止めた
「やぶれかぶれでやるしかないっちゅーこっちゃな!!」
シードもライオットガンを構えて乱射する
しかし、鉄球はあとからあとから湧いてきた
「増えるの早すぎや!」
・・次第に射撃が追いつかなくなってくる
「あ・・・!」
止められなかった一機がシュウたちの元へ突っ込んだ
すんでの所で回避するが、勢いがついた鉄球はまっすぐメイの前へ転がった
「ふぇ!?」
とっさに身構えるメイ
接触の瞬間手のグラブから電気が走る音がして、彼女の前に電気の壁が出来上がった
シュウの発明、対人防御用のバリア・システムが緊急時に際し展開したのだ
「メイはんっ!」
しかし質量差が生じている
・・バリアの出力は鉄球を押し戻すほどの力を持っていなかった
「・・え・・・・・!?」
鉄球が前進したと同時にバリアは弾け、メイの身体は宙に投げ出された
「うわ・・・・ぁっ・・・!!!!」
「しまった!」
シュウが毒づくが間に合わない
「め・・メイはぁーんっ!?」
「シード、撃つのをやめちゃダメだ・・
・・・ちょっと・・まずいかも・・・」

・・シュウたちが大変な目にあっていたころ・・

「押し迫る時を越ぉえて僕らはぁ行くぅ~・・♪」
ロディは地球の衛星港にいた(しかもまた歌ってる)
・・へへ・・せっかくやりたい仕事を引き受けたんだ
・・寝てなんかいられねーっつーの
骨が折れているわりに平然と歩いている
やはり普通の人間と違うのかもしれない・・
ところで、ブレードバッシャーがないのにどうやって月まで行くのか
・・相変わらず資金はないのに設備だけは充実し放題のユニオンリバー。
戦艦だけでなく小型のUSくらいはあった
・・航宙船「リニアバード」・・
SGの突撃艦(中古)を例によってシュウが改造した高速艇である

ロディは当然、シュウたちに起きていることなど知る由も無かった


・・6 反撃の手順

「ああ・・心配通り連絡不能になってしまうとは・・」
ネスは頭を抱えながら次の策を探していた
「・・私が行ったところで原因が分からなくては何も出来ないし・・
ましてや支援など送ったところで同じ事・・」
SG隊が後続隊を送るため、準備に追われているその隣でぼやくネス
「・・どうしようもないですよね・・」
ネスはあきらめ気味になっていた

・・深度4・・

「これだけは使いたくなかったけど・・」
シュウはそう言って何か箱のようなモノを取り出した
「なんや!?」
「超重力圧縮破砕砲!」
シュウが箱を投げると、小型のランチャーが姿を現した
「そないなもんあるなら早うださんかいっ!!」
「でも・・これ、ちょ~っと欠点が・・」
「なんや!?このさい何でもいいから撃てや!!!」
「・・どうなっても知らないよ」
シュウは安全装置を投げ捨てると、トリガーを引いた
どん・・という音とそれに伴う反動の後に、弾丸が着弾した
黒い爆発が一瞬にして広がる
「シード、壁につかまっておいたほうがいいよ」
「な・・なぜや?」
「今の弾丸、早い話がブラックホール弾で・・
射程が短い上に今のところ対策がなくて吸い込まれれば・・アウトなんだよね。」
「なにをう!?
そないに物騒なモノなら先にいわんかい!!!」
「いいからしがみついてないと危ないって。」
そうこう言っている間に超重力場が辺りの空間を歪め始めた
鉄球がひとつ・・またひとつと圧壊していく
「シュウ・・めっちゃしんどいでぇぇぇぇ!?」
「なんとかなるなる。」
「な・・なれへんっ!!!」

・・一方
「・・・・・・」
メイは、さらに深い所・・深度「8」にまで落ちていた
「・・いったぁ~・・・・っ!」
地面と接触の瞬間にバリアを発生させ、その反動で衝突は逃れた
しかし着地のタイミングがずれて結局はあちこち打って気絶してしまった・・というわけだ
・・どうやって上まで上ればいいのかな・・
考えていても始まらない
とにかく、そこら辺でさっきみたいに通路を探してみよう・・と決めて歩き出した
「ふぇっ!?」
が、身体が前に進まない
「な・・なんで・・・?」
視線を落とすと・・自分の身体中に何重にもケーブルが巻き付いていた
目が覚めたばかりで感覚マヒしていたのもあったのか、それに気付かなかったようである
「うわ・・・・!?何これぇぇぇっっ!?」
蛇のように伸びたケーブルの群れが生き物のようにまとわりついてくる
「やだ・・やだ・・!やめてってばぁ!!」
何度か抜け出そうともがいた時・・
ぷしゅ・・
「うあ・・!?」
首筋に一本のケーブルが深々と突き刺さった
身体が急激な脱力感を覚える
・・あれ・・?・・
眠りに落ちるかのように、メイの意識は一瞬の内に途切れてしまった

・・同時刻

「ああ・・どうしようどうしよう・・」
地上ではネスが策も浮かばずおろおろしていた
・・後続隊はまだ準備が終わっていないため、頼る術がない
「よう!」
「・・・・・?」
後ろから声をかけられてネスはくるり、と振り返った
そこには・・
「・・ま・・ま・・・・・マスターっ!?
あなたなぜここにいるんですか!?」
「なぜって?・・
そりゃ仕事だし・・」
「そういうことではなく!!
あなたは病院で寝ていなければならないんですよ!?
怪我人は帰って寝ててください!!」
「いやだ!」
「ダメです!!」
「帰らない!」
「帰ってください!!」
「社長は俺だ!」
「現場管理は私の仕事!」
「・・じゃ・・あきらめる」
「やってもらわなきゃ困ります!!!
?・・って・・ああああああああああああ!?」
「今言ったな?
確かに「やってもらわなきゃ」って言ったよなぁ!?」
「ず・・ずるいですよ!!卑怯ですよう!!」
「へん、卑怯で結構っ!・・第一ロボットのくせに誘導尋問に引っかかるヤツが変なんだよ!!
俺はやると決めたらやりとおしてやるのが信条でなぁ!!
・・でだ、今の状況教えろ
あいつらはどこまで行ったんだ!?」
「・・・・・それがですねぇ・・」



・・深度4

「感謝感謝やでホンマ」
「おかげさまで何とか助かりました。」
「今言わなくていいって。
どーせ私達も出口はわかんないんだし・・出られてから聞くようにするわ・・(暗)」
そう言って苦笑いを浮かべるSG制服の女性
さきほどネスが話を聞いていた先発隊の小隊長、リィズ少尉である
シュウたちは鉄球を一掃した後、彼女ら小隊(七名)に遭遇。
今後のことについて協力し、策を練っていた
依然としてセキュリティが動いており、鉄球・・「ガーダー」がいつまた襲ってくるとも限らない
「さて・・どうしたもんかな?
敵の行動パターンにこちらの戦力・・
シュミレーションゲームみたいに考えてしまえば楽なモノなんだけど・・」
「ゲームみたいにうまくいかへんと思うけんなぁ?」
「・・・・・・・だったら・・」
シュウはいつになく不気味な笑みを浮かべて立ち上がった
「こういうのはどうだろう?」

・・再度、地上

「深度4で消息不明・・ねぇ・・
そんな浅い深度で迷うようじゃダメだな、俺ならせめて深度7で迷うぜ!!」
「迷っちゃ意味ないでしょう!!!!」
「まぁそんなこたぁどうでもいいんだ!
ようし・・見てろよ・・・・!」
そう言うとナビに向かって叫んだ
「転送!!」
瞬間、ゲートからゼファーの機体がゆっくりと現れた
「・・・・何をする気ですか・・?」
「まかせろ!俺にだって考えくらいある!!」
ロディが飛び乗り、肩部バーニアを噴射してかなりの高度まで上がるゼファー
「必殺!!!」
「ま・・まさかマスター!?」
「一・撃・貫・通ぅぅぅぅぅぅっ!!!」
ゼファーは最大出力に発振させたレーザー・ブレードを構え、一直線に遺跡に突っ込んだ
「なんてことをっ!?」
思わず叫ぶネス
「なぁーに!このくらい気にすんなぁ!!」
・・問答無用であった


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