T.C.UNIONRIVER ~ユニオンリバー社~

Introduction・Day

「お父さん、今日はお花摘んできたの」


少女は砂と埃にまみれた身なりで、手にした3本の小さな花を父親に差し出し、見せた
その笑顔は無邪気で、外の殺伐とした世界の事など全く知らないが故のものである
・・少女は椅子に腰掛けている父の膝の上にその花を一本置くと、次に奥のリビングにいる母親の元へ駆けて行った

「お母さん、これ、綺麗でしょ?・・えへへ・・」

もう一本の花を、今度は寝ている母の髪にアクセサリーのように結んで、少女はその場を後にする
・・不思議な事に、父も母も彼女の行動に応答もしないし、全く何かをしようとする気配もない
少女は家の外の小さな階段に腰掛けて、髪についた砂を手で払った
・・身なりには気を遣っているのか、綺麗な金髪が風に流されている

「・・お父さん達、まだ起きないのかなぁ・・・返事もしてくれないし・・・」

三本目の、自分の分として摘んできた花をじ~っと睨みつけながら、少女はぼやいた
・・二人とも、数日前に「突然」こうなってしまったのだ
その時、何歳も年の離れた彼女の兄はこう言い残してどこかへ行ってしまった


「お父さんとお母さんはよく眠っているんだよ」
「えぇ?・・・なんで?兄さん・・」
「・・「疲れた」んだよ・・色々ね」


ふらっ・・とそれっきり、出て行ってしまった兄
少女の家は近所に人もいなく、街からも離れている
・・わずかに残っていた蓄えを自分で何とかして生活していたが、一週間となると流石につらくなってくる


「・・兄さんもいないし、お父さんお母さんは起きてくれないし・・・どうして?」


少女は気付いていなかった
数日前、兄と共に家に帰ってきた時点で、両親はすでに「死んでいた」のだ
・・返事をするワケもない、それぞれの行動ができるワケもない
兄は妹を放ってドコへ行ってしまったのかわからないが、少なくともこのままでは彼女はいつか両親と同じようになってしまうだろう
・・世界は荒廃している、街の外には治安もなく、そういった所に住むのは覚悟のいる事だった


・・果たして彼女は、現実を知る事が出来ただろうか?


それから7年の時が流れた・・・

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INTRODUCTION DAY

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・・SINCE 9987・・

運び屋稼業を行う者のトラック・・いや、トラック代わりに使われている「変形する大型車両・MC」
地球が閉ざされる以前の遺物で作られた高性能なそれらは、正しくは「モビルチェンジャー」という名前で呼ばれる
この閉ざされた世界で、唯一のまともな独立機械だ。

9987・・という刻印がなされているのは、それらが歴史の切れる所、ターニングポイントである9987年に作られた故である
その後記録の途絶えた世界であるが、現在は年数を数える事が再び始まり・・・
あくまで「帝国歴」ではあるが、まもなく10000年に達しようとしている


帝国歴9999年
反乱軍の活動は活発化し、ついに彼らは行動を起こそうとしていた
密かに戦力を固め、閉ざされた地球に平等という言葉を取り戻すため、彼らは帝国打倒を目指している


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帝国領を離れる事、数十キロ・・
管理の行き届いていない荒野を、一機のMCが貨物カーゴを率いて通り過ぎる
岩と砂とボロ土だらけの道・・
・・基本的に街とその周囲以外は、皆このように荒れ果てていた

帝国支配を撤廃させようとする者達の考えは、この大地の再興という目的からもきている
しかしそんな事は気にしていないであろうMCのコクピット内・・全高20メートルにはなろう機体の、その中央に位置している場所
大抵の場合こういう事は力仕事が多く、男がやるのは基本なのだが・・
・・そこにいたのは女、しかも元気な盛りの13才の少女であった

『本日未明に発生した襲撃は・・』

ナビからはそういった情報を報道する、ニュースが流れている

「ふ~ん・・物騒なお話で」

少女はハンドルから手を離し、自分の髪を整えながらつぶやいた
彼女のさらりとした金髪はとても綺麗で、とても巨大なMCを操り荒野を転々としているようには見えない
・・それでも作業しやすい軽装にしている辺り、彼女の仕事は端から見ても何となくわかりそうなものだったが
物騒とは言っているが、ホントにそう思うならば何故こんな仕事をしているのやら・・

・・しばらく進むと、彼女のMCの前を横切る影があった

ブレーキをかけ、探知用のレーダーではなく・・自分のカンで、周囲の気配を察する


「言ってるそばから物騒な人達のお出ましか・・やれやれ、あたしってば人気者?」

にっこり微笑むと、少女は指を鳴らして伸びをした

車のシフトレバーと同じ配列の、一見8速ギアのように見えるもの
それのレバーを素早く操作し、ギアをドライブさせる
すると・・機体が真ん中辺りで、大きく起きあがった
後部の連なったカーゴは分離され、その先頭車両である彼女のMCは、「腕」と「足」を伸ばした


そう・・MCがそう呼ばれる所以は、この変形にある
・・「ビークルからのチェンジ」それをもってモビルチェンジャーと呼称する

全長20メートルの巨人となった彼女のMCは、両肩に巨大な大砲を装備していた
両肩に担ぐのではなく、両肩が大砲になっていて、そこから腕が生えている・・
その「腕」を振り回すようにして、大げさにポーズをとってみせる
周囲からは予想通り、襲撃に現れた野盗のMCが5機
見た所数での戦力差は完璧に、野盗に傾いている


「なんでぇ、ガキじゃねーか」
「お嬢ちゃん、とっとと荷物置いて失せた方がいいぜェ?・・さもないとお嫁さんにいけない体にしちゃうぞ~?」
「あっははははは・・」


・・・うっわ~・・なんてベタで品性がなくてバカっぽい会話・・・

一瞬で戦う気も失せそうになったが、とりあえず「いつも通り」やることにした
まず・・肩の巨大な大砲「ガーンズバック」をどどんと一発、威嚇射撃でお見舞いする

どぅん!

・・どぉぉぉ・・・・

反動でも滑ったりよろけたりすることなく、彼女のMCはその場にとどまっている
・・機体の両肩、ガーンズバックの後部シリンダーが大きくバックし、衝撃を緩衝したためだ
野盗達の後ろにあった岩山(10メートルくらいあったか?)は、その直撃を受けて吹き飛んでしまった

「な・・なんて破壊力・・だっ!?」
「よ、要塞攻略兵器かこいつっ!?」
「んっふっふっふっふ・・・これぞ「アルファ」の十八番!まーいグレネードランチャーの威力を特と見たか~!!」


十八番と言ったのは、威嚇射撃の事である
少女は勝ち誇って、天井のコクピットハッチを開け外に出た
野盗に姿が見えるようにして、さらに今度は荒野に響き渡る大声で叫ぶ


「ザコがあたしの「アルファ」に勝てるつもりならいくらでもかかってきなさい!ただし・・手加減容赦情け等は一切無用だかんね!!」
「アルファ・・・あ・・・あ、アルペリオン!?まさかお前は・・」
「ふ~ん・・ザコでも知ってるのね・・あたしってやっぱり有名人♪」

少女は気合いたっぷりで叫ぶ

「ラミューズ=エアマスターとその相棒「アルペリオン」!この名を恐れぬならかかってきなさいよ!さぁさぁ!!」

一目散、とはこの光景を言うのだろう、野盗はさっさと逃げ出してしまっていた
それほどまでにこの少女・・「ラミューズ=エアマスター」は恐ろしいのだろうか?

「ふっ・・さすがあたし・・ダテに「野盗狩りのレミィ」の二つ名で呼ばれてないわ♪」

よく考えると結構不名誉な二つ名なのだが、彼女的にはお気に入りのようだ(汗)
ラミューズ・・「レミィ」は、コクピットに戻ると再びアルペリオンをビークルモードに戻して、カーゴと接続させた
そしてまた・・帝国領への旅に戻る

運び屋の稼業は、こういう事がよくあるのだが、いちいちかまっていたら荷物を運ぶのが遅れる
ヘタすれば生活の糧を失うのだから、多少の急ぎ足はいつも必要になるのだ
・・まして、彼女はその実力と共に相当の自信家だったりする
だったら、よほどの大物かうざったい敵でない限り戦おうとはしないだろう


ラミューズ=エアマスターはそこら辺を良く心得ていた。
・・生きていくにはどうすれば良いか、を・・。


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