とわいらいと

機動戦士ガンダムSEED TWILIGHT

C.E70、「血のバレンタイン」の悲劇により地球連合・プラント間の戦争は激化した。
開戦、開発競争、戦争の激化、否応なしに巻き込まれていく国家・コロニー・団体・・

そんな中、何かが狂い始めた。
大局的にはささいな事であり、戦争そのものに影響を及ぼす事はなかったはずの事変・・


・・C.E70、「もしも」あの時「彼」が生きていたら・・・?


C.E70、「血のバレンタイン」の悲劇に始まった地球連合・プラント間の戦争は激化
地球軍VSザフトの血で血を洗う戦いは日々続いていた

そんな中巻き起こった地球軍のMS開発計画・・それを察知したクルーゼ隊の奇襲攻撃。
計画の中心地であった中立コロニー・へリオポリスは戦闘の最中に崩壊した

結果としてザフトはMS・GATナンバー4機を強奪する事に成功、しかしクルーゼ隊もオロール、マシューらメンバーの数名を失う結果となった

・・そしてクルーゼ隊が「足つき」を追って去った後・・・

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「なんで俺は生きてンのかねぇ・・・」


金髪の少年は椅子に座り、頬杖のままため息をついた
彼の着ているザフト色のパイロットスーツは何かの破片にやられたようで、所々がボロボロになっていた
・・彼は崩壊したへリオポリスの中にいて、ついさっきまで戦っていたはずだ。
MS・・ザフトの兵士として「ジン」に乗って、唯一奪い損ねたGATナンバーの機体に真っ二つに・・

されたと思ったら、この通り生きている。


「・・まさか・・まさかまさか現実感たっぷりのこのイヤーな世界・・「あの世」じゃねーだろうなァ!?」
「だったら俺は死神か何かっての?ミゲル先輩~、ジョーダン言わんといてくださいよ♪」


彼・・「ミゲル」の肩をぽん、と叩いたのは同じくさっきまでヘリオポリスにいた赤髪の少年。
同じ隊だが、彼のパイロットスーツはエリートを示す「赤」である


「だけどよー、俺の生き残る「確率」よりお前が生きてる「奇跡」の方がよっぽどスゲーと思うがねェ?」
「酷いよなぁアスランも・・勝手に死んだと思って行っちまうし(泣)」
「マジ泣きするなよお前~(笑)」


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赤髪の少年は「ラスティ」
GAT強奪に参加した五人の「赤服」パイロットの一人だったが、作戦の途中で連合兵の撃った凶弾に倒れた・・
・・と、クルーゼ隊の面々からは思われている。

実際のところは「弾はヘルメットのバイザーに刺さっただけ」で、弾の反動で倒れた彼は情けない事に意識を失い・・
気がついた時には周囲に人の姿はなく、脱出警報が鳴り響く大騒動の真っ最中
空には仲間のジンと自分が奪うつもりだったGATナンバー機が戦闘を繰り広げている
・・そのうちにコロニーが崩壊を始めて・・

慌てて近くの工廠に逃げ込んだ彼は調整中の外壁作業艇を発見し乗り込み・・
外に吸い出される寸前のミゲルを発見、回収したというワケだ。

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ミゲルとラスティ、二人を乗せた作業艇は進路をとある資源衛星へと向けていた
・・そこにあるものはミゲルの「相棒」である。

修理中で、今回ヘリオポリス強襲には間に合わなかった専用の「ジン」
専用色のオレンジは彼のお気に入り、ラッキーカラーの少々派手なMSだ

「相棒、直ってるかな~?」
「そりゃ大丈夫でしょ、腕だけなんだし・・先輩はいいけど、俺もなんか支給してもらわないとなァ・・」


呑気に談笑する二人だが、そうこう言っている間に作業艇のバッテリーはもう底をつく寸前だ
・・調整中の機体のため、十分にエネルギーも設備も補給されていなかったらしい。


戦闘からは奇跡的に生き残ったものの、果たして二人はこの状況で衛星に辿り着けるのか!?
前途多難な黄昏の伝説は、ここから始まる!(・・どこまで続くやら。)



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次回:「#02 黄昏色のMS」

資源衛星で再会する「相棒」。
何とか隊に復帰しようとするミゲルとラスティを待ち受けていた指示は・・?

もう少し存在感を示せ、ラスティ!

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・・前回のあらすじ・・

C.E70、「血のバレンタイン」の悲劇に始まった地球連合・プラント間の戦争は激化
地球軍VSザフトの血で血を洗う戦いは日々続いていた


奇跡的に生き残ったクルーゼ隊メンバー「ミゲル・アイマン」「ラスティ・マッケンジー」の両名
作業艇で崩壊するヘリオポリスを脱出し、とりあえずミゲルの「ジン」を取りに行く事にするのだが・・

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・・案の定、バッテリーの少なかった作業艇は機能を停止した。
しかし偶然通りかかったザフトの戦艦に回収され、何とか目的にしていた衛星には辿り着けていた


「・・お前ら、あんな事件があったら調査隊が来るに決まってるだろう?救助艇でその場に留まるのが正解だろうが・・全く、そんな判断能力じゃエリートの名が泣くぞ」
「いやいや、面目ないねェ(汗)」
「はっはっは・・(汗)」


ミゲルとラスティは大げさに笑い、思いっきり誤魔化した


「さ・・さてと艦長さん、今から出発して隊に追いつくのはどのくらいかかるんだい?」
「あのなぁ、軌道と距離の計算くらいアカデミーで習っただろうが!?お前ホントにクルーゼ隊の一員なのか!?」
「・・イヤそれはさ、俺って赤服様々じゃぁないし?(汗)」


にっこり笑ってラスティに振るのだが、ラスティは残念ながら明後日の方向を向いていた


「うっわー・・・もうこんなところまで行っちゃったのか・・」
「げっ、マジ!?ガモフがいてどうしてこんなに速いんだよ!?」


クルーゼ隊の「ヴェサリウス、ガモフ」を位置するカーソルは遙か彼方にあった。
・・すでに地球の衛星軌道に迫ろうとしている
ラスティは静かに肩を落とし、ミゲルは「あちゃー」といった調子で頭を抱えた

二人は三日近く漂っていたのだ、考えればわかりそうなものだが。


「どうするんだ、追いかけるつもりなのか?」


いい加減どこかに行ってくれ、といった感じの艦長の問いに二人は答える


「とりあえずメシ食ってから考えるわ」
「俺に使わせてもらえるMS探してからにします」

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「よう相棒、元気してたかー?」


無重力のMSドック内部、ミゲルが見上げるそこには一機のジン・・オレンジに染められた派手なカラーリングのMSがあった


「すっかり元通りにしといたよ、あんたが戻ってきた時のためになぁ大将!」
「・・へいへい、ありがとさんよ。」

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数時間後、二人の元にクルーゼ隊が本国へ帰投するという連絡が入った
まさか迎えに来てもらう事も出来ず、二人は本国へ向かう哨戒艇に乗せてもらいプラントへの帰路についた。


「・・結局使えるMSが「ワークスジン」しか見つかんなかったんですけどー。」
「しょうがねぇだろ、ココだってザフトの基地ともありゃいつ襲われるかわからないんだぜ?本国行くんだからあっちで探せよ。」
「ミゲル先輩は良いですよねぇ~、専用機があるんだし?」
「んっふっふ・・実績が違うんだよ実績がァ?分かるかい新人くん?」


わざとイヤミったらしく言うミゲルを、ラスティはふてくされて睨み付ける事しかできなかった





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次回:「#03 赤の再会」

本国へ帰還した二人は無事クルーゼ隊に復帰する
そして先に地球に降下したイザーク、ディアッカに合流するため地球へ降りるのだが・・?

バラけるメンバーをまとめあげろ、アスラン!

・・前回のあらすじ・・

C.E70、「血のバレンタイン」の悲劇に始まった地球連合・プラント間の戦争は激化
地球軍VSザフトの血で血を洗う戦いは日々続いていた


奇跡的に生き残ったミゲル、ラスティの二人は資源衛星へ無事到達、ミゲルのジンを受け取り一路本国へ帰路につくのだった。

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「ミゲル・アイマン、ラスティ・マッケンジー・・両名到着しました。」
「ご苦労だったな二人とも・・いや、よく生きていてくれたと言った方が良いか。」

プラント内部のターミナル・・二人を出迎えた仮面の男「ラウ・ル・クルーゼ」は労いの言葉をかけた
対する二人はきっちりと敬礼をしているが、顔は少し緩んでいた


「何だ?死にかけたというのに何か楽しい事でもあったのかね?」
「いやぁ、こうして隊長の顔を見てると生きてるんだなぁ、って実感が沸いてくるんスよ」
「そうか、それは光栄だよ」

・・そうそう、その怪しい仮面を見てるとなんだかこみ上げてくるものがあるんだよなぁ・・(笑)

「・・だが、人の顔をみていつまでもにやけているのは感心しないな」
「は・・はい、すみません隊長!」

大げさに敬礼を決める二人

「フッ・・まぁそれは良いとして我々の次の目的地は地球になった、大気圏降下後は先行しているイザークとディアッカに合流する予定だ」
「はっ、了解しました!」

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・・数時間後、クルーゼ隊一行はヴェサリウスにて地球圏へ移動・・降下船にて大気圏突入の準備を進めていた
パイロット達は船内のシートに着き、準備の終了を待っている

「しかしホントに信じられないですね、ミゲルもラスティも・・」
「死んだと思いこんでたんだろ?・・バーカ、俺はこうして息してんだろーがよ?(笑)」

シートから立ち上がり、ラジオ体操のように大きく深呼吸を始めるミゲル

「おいおい・・よせよミゲル、わかったから(汗)」

アスランになだめられてミゲルはシートにどかりと座り込む

「ところでどうしてイザークとディアッカは先行したんだ?例の「足つき」を追うとしても仕事熱心過ぎだと思うんだがねぇ・・」
「・・ストライクとの戦闘に執着し過ぎたんだ、二人とも離脱不可能な高度まで行ってしまって・・」
「要するに「落ちた」ってのか?・・はー・・・情けないねぇ、離脱高度くらい頭に入れておけっての」
「そういうミゲル先輩は移動時間の計算式くらい頭に入れておいてくださいよー。」
「だってさ、ミゲル?」
「・・・・・・・・・ま、それはそれだな(汗)」

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地球へ降下したクルーゼ隊は砂漠の戦いを終えたイザーク、ディアッカと合流した。
「砂漠の虎」バルドフェルドは戦死し、隊の追撃目標「足つき」は現在大西洋へ抜けたという


「き・・キサマ、幽霊の類じゃないだろうなぁ!?」
「・・あ、会うなりそれかよ・・アスランといいニコルといい、お前ら素直に喜んでくれないワケ?」
「うるさい!オロールや他のパイロットは死んだんだぞ!?おかげでどれだけ士気が下がったと思ってるんだ!?」
「いいじゃねぇか、俺たちはあいつらの分まで生きてやりゃぁさ。それが一番弔いになるし士気向上につながるって」
「・・・相変わらず軽いねぇ、あんたさ」

決して物事の見方が軽いワケではなく、もちろんミゲルは仲間の死を悼んでいる
・・ただ、口はどうあってもどの状況でも言い回しが変わらないのだ(汗)

イザークとミゲルがその後も問答を続けていると、アスランが現れた

「隊長から指示が出た、これより俺たちはカーペンタリアへ地上母艦の受領に向かう・・指揮一般は俺が任された」
「何ィ!?アスラン、貴様が隊長だとぉ!?」
「へぇ~・・それじゃ俺たちは「ザラ隊」って事になるのか♪なんか面白い展開になってきたねぇ」
「しっかり指揮しろよアスラン、俺たちあんまりまとまりねーからなぁ?」
「でもまぁ、アスランなら安心ですね(笑)」

・・そう言いながら何故か一同はイザークをちらっ・・と見る

「貴様ら!!どーいう意味だぁ!?」
「・・だぁぁもう、頼むから落ち着けよイザーク・・(汗)」


・・ディアッカが後に多大な迷惑を被ったのは言うまでもない事だった・・



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次回:「#04 伊達じゃない!」
アスランのMIA(行方不明)で始まった前途多難なザラ隊の初陣。
オーブ潜入作戦が慣行、足つきの所在を探る事になるのだが・・ひょんな事からミゲルが「歌う」事に!?

この青空に響かせろ、「Meteor」!

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・・前回のあらすじ・・

C.E70、「血のバレンタイン」の悲劇に始まった地球連合・プラント間の戦争は激化
地球軍VSザフトの血で血を洗う戦いは日々続いていた

地球へ降下したクルーゼ隊、アスランを隊長に別行動を取る事になった
「ザラ隊」としてカーペンタリアへ向かう予定だったのだが・・?

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「・・全く、手間のかかる隊長様だなァ?」
「ホントホント。」

イザーク、ディアッカの悪態が「また」始まり、アスランはちょっとだけむっとした表情を浮かべた
・・現在ザラ隊は「足つき」追撃の延長戦で、オーブ本国へと潜入している。

「あのな、何度もイヤミ言うなよお前ら?俺たちだって聞いてて気の良いモンじゃねーぞ?」
「フン、隊長だと言うなら初陣くらいは決めて見せるものだろうが」
「・・まぁまぁ、あんたら落ち着け落ち着け(汗)」

アスランがイライラしてきたのでラスティはイザーク達を押さえた

「とにかく、足つきの所在と出航予定・・その情報を得たら早めに引き上げましょう」
「・・そうだな。」

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二手に分かれた隊はそれぞれに情報を探る事になった
アスラン達は居住区のある北へ、イザーク達は工場区のある南へ・・

・・アスラン、ミゲル、ニコルを乗せた車は黄昏時の海岸線を快調に進んでいく

「おー!いい景色だァ!」
「うわぁ・・夕日がすごく綺麗ですよアスラン!」
「・・運転中によそ見しろって言うのか?」
「いーからこっち見ろ、ほら!!」
「うわぁぁっ!?綺麗なのはわかった!危ないからそういう事をするなっ!!!」

ミゲルは初めて見る美しい夕暮れに魅入っていた
・・そう、彼の通り名である「黄昏の魔弾」の「黄昏」の光景だ・・
オレンジの機体を駆る事からついた名だが、肝心の彼自身は本当の夕暮れを見るのは地球に降りてから・・
まして、ここまで綺麗なものは初めて見る。

「いいねぇいいねぇ、いい感じだ!」
「・・はいはい・・」

子供のようにはしゃぐミゲルを、アスランは適当にかわしていた。

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しばらく行くと・・居住区に入る
アスラン達の目的は居住区自体ではなく、その中央付近にある軍施設・・そこで「足つき」に関する情報を手に入れる事だ。

・・問題の建物が見えてくる
アスラン達は手前で待ちかまえていた内通者の男と合流し、「仕事の話」をしているようにカモフラージュした

「進入経路は出来ているんだが・・問題の「足つき」に対して警戒しているのか、警備レベルが上がっているんだ」
「・・上陸の時に渡されたあの偽造パスじゃ通れないのか?」
「セキュリティゲートは解析して解除しなくては無理だ、毎度パスコードが書き換えられてるからな。」
「すると・・せめて「人目」をなんとかしないと情報にたどり着けないワケですね。」
「人目・・ねぇ」

不意にミゲルの耳に聞こえてくる音があった

「・・・歌?」
「はい?歌?」
「・・・歌がどうかしたのか?」

音の方向には小型のドームがあった
・・そして、その「歌」が何かを理解するなり、ミゲルのカンが奇抜なアイデアをはじき出す

「俺が兵を引きつける、少し時間をくれればな!」

言うが早いかドームの方向へ走り出すミゲル

「っておいミゲル!?お前何を・・ああ、行ってしまった・・・」
「まぁまぁアスラン、ここはミゲル先輩に任せてみましょうよ、策があるんでしょうし」
「だが・・心配だなぁ・・」

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「行くぜ!!」

・・数分後・・ドームで静かに行われていたご老人方の歌唱会は一人の男のスタンドライブに変貌していた(汗)
どうやったのかはよくわからないが、関係者を抱き込みバックダンサーまで付けて、ミゲルはステージの上でマイクを握っている

・・曲のイントロが始まった
もちろんさっきまで歌われていた静かな演歌や民謡ではない、ミゲルの「持ち歌」だ
やがてドームの正面が開き、街の方向へ向けて音楽が響き渡る!

「オーブ全国民よ!!俺の歌を聞けェェェェェェ!!!」

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・・その響き渡った声はアスラン達の耳にも届き、ドリンク剤を飲んでいた内通者の男は思いっきり吹き出していた

「正気かあいつはっ!?」

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「・・孤独をいま~描き始めるぅぅ~♪」

ミゲルはノリノリで歌い続けた
・・てっきり警察がやってくるかと思ったが、その想像を覆すように彼らは一観衆と化してミゲルのライブに歓声を飛ばしている
・・やがて、ドームとその前には凄まじい数の市民や、様々な人々が集まり始めた!(汗)

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「・・あ、軍の人たちも行っちゃったみたいですね・・」
「・・・マジかよ」

アスランは心底頭の痛くなる思いがしたが、現実を見る事にして内部に進入していった。



こうして、なんとか情報を手に入れる事が出来たのだが、ミゲルはオーブ中に顔が知れ渡る結果となった

・・報告を聞いたクルーゼは「本国に帰ったらラクス・クラインとジョイントコンサートでも企画しようか?」と冗談交じりに言ったとか(汗)


なお、アスランは帰りがけに「メカ鳥を連れた少年」と出会ったそうだが、真相はよくわかっていない。



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次回:「#05 極寒の地で」
足つきの追撃を続けるザラ隊、その内にニコルのブリッツが撃破されてしまう
重傷を負った彼の分まで奮戦するアスランだが・・?
そして「足つき」に捕らえられたミゲル、ディアッカの運命は!?


燃えるハートで立ち上がれ、ミゲル!

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・・前回のあらすじ・・

C.E70、「血のバレンタイン」の悲劇に始まった地球連合・プラント間の戦争は激化
地球軍VSザフトの血で血を洗う戦いは日々続いていた

オーブへ逃げ込んだ「足つき」の状況を探るべく潜入したザラ隊。
「足つき」のデータ入手は難航するが、ミゲルは「歌」で人々を引きつけ見事任務を成功に導いた

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・・その後、「足つき」との戦闘は激戦に次ぐ激戦となり、ニコルの乗るMS「ブリッツ」が大破してしまった
ニコルは一命を取り留めたものの重傷を負い、アスランは思い詰めた表情で出撃を迎え・・

敵方・・「足つき」の艦載機「ストライク」との一騎撃ちの末アスランの乗機「イージス」は自爆、どちらも生死不明の状況に。

さらにラスティの乗っていたディンは撃墜され海中に水没、以後MIA(行方不明)となり、
ディアッカの「バスター」は「足つき」の攻撃で行動不能、連合の捕虜になってしまった

ザラ隊の残存メンバー、イザークとミゲルはディアッカの救出に向かうが失敗し捕まり・・
まともな状態なのはかろうじて難を逃れたイザークただ一人だった


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・・「足つき」・・もとい、地球連合の戦艦「アークエンジェル」の艦内独房
ミゲルとディアッカはそれぞれに所持品を取り上げられ、別々の房に収容されていた

「ついてねーよなー、あっという間にザラ隊崩壊だぜ・・はぁ。」
「・・あのねー。そんな事気にしてていいわけ?俺達敵さんに捕まっちゃってんだよ?」
「敵?・・敵ねぇ・・」

ミゲルの脳裏にはこれまでの戦いと、オーブで見たナチュラル・コーディネイターの共存風景・・
さらにはアスランが語った「友人」の話やニコル達の「戦争が終わったら」という話までが浮かんでは消えていく

「・・ナチュラルってのは本当に俺たちの敵なのかねぇ・・」
「・・・・・何言ってんの?そんなの敵に・・・」

決まってるさ、と言いかけてディアッカは口ごもる
・・彼に何か心境の変化があったのは、ミゲルにも何となくわかった

「女か?」
「っていきなり何口走ってんだよ!?」
「さっきメシ運んできた子?」
「ち・・違うっ!」

ディアッカは顔を真っ赤にして反論する

「ほ~ほ~、こりゃ帰ったらアスラン達に楽しい話が聞かせてやれそうだなぁ(笑)」
「あのなぁ!?」
「・・ま、アスランもニコルもラスティも・・みんな「無事だったら」の話だけどな」
「・・・・・・・・」

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しばらくしてアークエンジェルはアラスカ基地に入った
ミゲル達に知らされる事はなかったが、外から聞こえてくる声を頼りに、それを察知していた

「・・さて、そろそろ脱出しますかねぇ」
「はぁ!?敵地のど真ん中で行動しようっての!?・・しょ、正気かよ!?」

ミゲルはディアッカの言葉も聞かず、どこからとなく取り出したキーで独房の錠を外した

「って言うかどっから持ってきて、どこに持ってたんだよそれ!?」
「潜入段階でキーのコピーくらい作っておくさ、そして俺はこう見えても奇術師を目指した過去がある、隠し持ったり消したりってのは得意技でね♪」
「・・初耳だけど」

しばしの沈黙の後、ミゲルはディアッカを置き去りにしてさっさと行ってしまった

「ってミゲル!?冗談キツイぜおい!?俺放っとくワケ!?」

ディアッカはしばらくわめいてみたのだが、どうやら彼が戻ってくる気配はさらさらないようだったので諦めた(汗)

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外に出たミゲルは潜入の際に発見していた通路を通り・・予備の制服を入手すると手早くそれに着替える
念のため眼鏡をかけて、髪型を変えて・・

「・・よし・・っと。」

艦内を何事も無いように歩く・・が、誰一人として彼を怪しむ者はいない
連合軍アラスカ基地の人間が何人か入ってきているらしく、その一人だと思っているのだろう

「さーて・・狭いところがイヤで脱出したものの・・どうしますかねぇ?」
「どうかしました?」

不意に声をかけられて、一瞬びくっ・・と反応してしまうミゲル
振り返った先にいたのは小柄な、気弱そうな表情をした少年だった
・・とは言うものの、連合軍の制服を着ていてこの艦にいる以上は・・彼も軍人なのだろうが

「ああ、いや、えーと・・MSデッキはどちらかなー・・と探してたんだけどー・・」
「え?・・デッキは反対側ですよ・・?」
「そうか、そりゃどーもありがとうっ!!」

オーバーに彼と握手をして(ぶんぶん振り回して)軽く挨拶を飛ばすと早歩きで去るミゲル
一方の彼(カズイという名だったらしいが)はぽかんとあっけにとられた顔でそれを見守っていた

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・・で、ミゲルは何をするでもなくMSデッキに到着していた
脱出した理由は全く持って単純明快な「狭いトコにはいたくない」の一つだけ。
だから目的はない、外に出てする事など考えもしなかった(ディアッカも救出しなきゃならんし)

「・・相棒・・なんか変わったねぇ・・?」

デッキに降りたミゲルを、この前戦った戦闘機の一つと、宇宙で戦ったオレンジのMA、そしてディアッカとミゲルのMSが出迎えた
ディアッカの「バスター」は壊れたパーツを修理され、いつでも稼働できる状態になっている
そしてミゲルの、オレンジ色のジンは・・

「ハイマニューバーユニットなんてドコで入手したんだ?この艦の連中は・・」

・・「ハイマニューバー」・・ジンに高出力のバーニアとエンジンとを装備させ、機動力を上げた高性能機。
自慢じゃないが彼のジンだってそれなりに強化を施されている、だが、それ以上に出力を得られるのがこの装備だ
ミゲルのジンは、両肩、胸部、両足、背部に増加装甲とバーニアを付加され、シルエット自体が全く新しいものになっていた

「これはこれでイケてるんじゃない、相棒?」

と、彼が相棒に近づこうとしたまさにその時だった
爆音、艦どころか、地球の全てが揺れているかのような凄まじい衝撃・・!

「なんだ!?」
『緊急警報!基地上空・周囲よりザフト軍MS・戦艦多数接近!』
「ま・・マジ!?」
『アークエンジェルはこれより基地防衛のため出撃します!』
「・・・って・・マジなのか・・」

外から味方が応援に駆けつけた・・という調子ではないようだ
考えてみればたった二人を救出するのに、敵の要塞にわざわざ飛び込むような事はするまい
・・そして、ミゲルのようになかなか賢い者がいるならば、手助けの必要はないはずだ

「この船が沈められたらまずい事になるよなぁ・・ディアッカ助けるチャンスどころか、当の本人が死んじまったらどうしようもないし・・・しょうがない!」

考えるより先に体は動いていた、相棒の横についていた作業用リフトに飛び乗り、コクピットへ上昇していく
すでに整備は完了しているらしく、相棒の周りには誰もいない・・コクピットへ滑り込むミゲル

ジンの目が光り、黄昏色のMSは作業用のタラップやリフトを押しのけて動き始めた

「ゲイン良好・・バッテリーの状態もOK、でもって背中のバーニアもイケるみたいだな」

背中に背負った大きな二つのバーニアが推進剤を軽く吹きだした

「おい・・あんた誰だ!?何をする気だ!?」

拡声器で怒鳴っているのはどうやらメカニックの男らしい
無精髭を生やした彼が怒鳴りつけているのはもちろんミゲルだ。

『この艦を守るのさ』
「だから・・そうじゃなくて、あんた誰なんだよ!?」
『俺はミゲル・・「ミゲル・アイマン」・・コードネームは「黄昏の魔弾」だ、よけりゃ覚えておいてくれな♪』

ミゲルはジンに敬礼を決めさせると、そのままカタパルトを走り抜けて外へと飛び出していった


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次回:「#06 大脱出」
アークエンジェルを守るため、識別を連合に変えて出撃するミゲル
敵は味方、撃つ事が出来ない彼が取った行動は・・!?
そして自由の翼が舞い降りる!

黄昏の空に舞え、ジン!

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・・前回のあらすじ・・

C.E70、「血のバレンタイン」の悲劇に始まった地球連合・プラント間の戦争は激化
地球軍VSザフトの血で血を洗う戦いは日々続いていた

連合軍の戦艦「足つき」こと「アークエンジェル」に捕虜にされたミゲルとディアッカ
アラスカ基地到着後、さらりと脱出したミゲルは「相棒(ジン・ハイマニューバー)」と共に発進した

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・・久しぶりに乗る相棒、それもバーニアの出力は遙かに向上し洒落にならない事になっている。


「ぐぅぅぅぅ~っっ!?こ・・これがホントにお前か相棒!?」

ミゲルは予想外のGに圧迫され、瞬間、操作レバーを離しそうになるのをこらえた

「・・じょ・・・上等ッ!!これなら俺一人でもやれそうな気がしてきたぜェ!」

ミゲルは識別コードを瞬間的に切り替えた
敵味方入り乱れての大混戦の中、何をしようというのか?

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「彼は味方なの?」
「さぁ・・」

アークエンジェルのブリッジも混乱していた
脱走したザフトの・・コーディネイターの少年は自分の乗ってきた機体を奪って逃走した
・・しかしそれならばなぜ、連合のコードにわざわざ変更するのか?
・・そして、「重斬刀」以外の装備を持たないジンでこの戦いの中に出撃したのはどういう意図なのか?

「ラミアス艦長!友軍戦闘機より着艦要請です!・・カタパルト要員に至急退避命令を!!」
「ドコの馬鹿なのそれは!?」

激戦の中にあっては一つの事に集中する事もできない、こうしている間にもアークエンジェルの周囲には敵MSが群がり、迎撃に追われる状況だ

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ミゲルは戦闘の中をかいくぐりながらジンHMの腰に装備された重斬刀を振るった
・・決して機体に致命傷を与える事なく、相対したMSの武器のみを奪う戦闘法で

「やってみると結構厳しいねぇ・・」

連合の識別を出せば連合からは狙われなくなる(怪しまれはするだろうが)
そしてザフトから見れば自分の機体に一瞬惑うはずだ。(一瞬だろうが)

もう少し早く脱出すればよかったと悔やむ心もあるが、今は現実を見つめる事にしたミゲル
ディアッカを救うためにはアークエンジェルを死守しなくてはならない
・・誰が見ても皮肉な光景を自ら演じているのだ。

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「・・あれは・・ミゲル?」


イザークは「デュエル」でこの戦闘に参加していた
ザラ隊が崩壊した後ニコルは本国へ戻り、彼は再びクルーゼ隊としてここに来たのだ

・・参戦してみれば、どこかで見たような色のMSが縦横無尽に飛び交っている

「・・いや、それならば戦うべきは連合のはずだろうが!」

彼はそれを「ミゲル機」とはせず、「敵に奪われたただのMS」と解釈した
デュエルが乗っているリフター・ユニットは急加速し、「ただの敵MS」に迫る

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「デュエル・・イザークか!?」
「何っ!?貴様・・本当にミゲルなのか!?」


アークエンジェルの正面で斬り合うジンHMとデュエル・・


「・・なら・・何故連合の味方などをする!?ナチュラルの味方などぉぉぉぉ!!!」
「熱くなるなイザーク!これにはちゃんと理由が・・」

激昂した彼の耳にはミゲルの声が届いていない
デュエルの抜いたビームサーベルが、数瞬前までジンHMのいた空間を切り裂いた
ジンHMは加速して一度アークエンジェルとデュエルから距離をとる

「あのなー・・お前入隊の時から人の話を聞かない節があったが!今くらい聞いたって損はないぜ!?」
「裏切り者の言葉に耳を貸す必要はなぁぁぁぁい!!!」

再度交差する二体のMS
サーベルを回避したジンHMの装甲表面を、わずかに飛んだビーム粒子が焦がした

「ディアッカがまだ「足つき」・・「アークエンジェル」に捕まってんだよ!沈められたらマジで困るだろ!?」
「ディアッカが!?・・てっきりもう処刑されたとばかり・・」
「・・お前な(汗)」

デュエルはビームサーベルを下げると、ジンHMに背中を向けた

「そういう事は最初に言え!てっきり裏切ったかと思ったぞ!」
「・・最初から言おうとしてたんじゃねーか・・」

素直じゃないなぁ、と思いつつもミゲルは嬉しさを覚えた
・・とりあえず再会できたのだ、仲間と。

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デュエルはアークエンジェルから離れた位置で戦っていた
・・流石にイザークまで一緒に戦ったのでは戻ってからが問題になる
だが、さりげなく味方を誘導する事で極力アークエンジェルへ向く戦力を減らそうとしていた


しばらくするとミゲル、イザークは気がついた
・・連合軍の数が圧倒的に少なくなっている事に・・

「そうか、すでに主力は撤退したのか・・!?」
「ここが連合の本部なのだろう?何故そんな事をする必要がある!」
「・・さっき「サイクロプス」がどうとか言ってたが・・」

・・その時、空から大きな翼を持ったMSが急降下してきた!

「何っ!?」

その「白いMS」は青い翼を大きく開き、アークエンジェルの正面に迫っていたジンを斬り飛ばした


『連合・ザフト両軍に伝えます!アラスカ基地はまもなくサイクロプスを起動、自爆します!できるだけ遠くへ撤退してください!!』


「白いMS」のパイロットはそう叫んだ

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アークエンジェル・・を含めた連合・ザフト艦隊はその後撤退を開始
まもなくアラスカ基地は「サイクロプス」を起動し自爆、撤退の遅れた者達は皆巻き込まれ、多数の戦力と多数の命が失われる事となった

イザークはザフト軍と共に行ったが、ミゲルはアークエンジェルと共にいた。

「白いMS」のパイロットが機体を降りてアークエンジェルのクルーと会話をしている
・・その内容から察するに、彼は例の「ストライク」のパイロットらしい。
彼が無事だとするなら、きっとアスランもどこかで無事にいるのだろう
ミゲルは一つ、ほっとした

「・・・で、お前さんは?」
「おおっと!?」

いきなり自分に話を振られたのでわかりやすく驚いてしまった(汗)

「俺はミゲル・・・ミゲル・アイマン。ザフト軍ザラ隊所属のコーディネイター」
「・・敵さんが何故俺たちの艦を守ったんだ?」
「まぁ、もう一人いるワケだし?この艦が沈んじまったら俺も困るワケよ。」
「それならどうする?今度は俺たちと戦うか?」

金髪の男・・連合の士官らしい、背の高い男がそう言うと、ミゲルを見ていた皆の顔が一瞬曇る
当のミゲルはぽりぽりと頬をかいて・・

「・・そんなつもりねーよ、俺はあんた達と戦うつもりはさっぱりだぜ」

いきなり「きっ」と真面目な顔をして、クルーの方を向くと頭を下げて言った

「・・むしろお願いする、俺をこの艦に置いてくれないか?」




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次回:「#07 再会の大地」
逃げ込むようにオーブへ立ち寄るアークエンジェル、そのクルーとなったミゲル。
しかし連合の侵攻が始まってオーブは燃え、否応なしに戦闘が開始される
・・窮地に陥るオーブ軍、そこへ懐かしい面々が帰ってきた!!



新たな戦いを切り抜けろ、アークエンジェル!

・・前回のあらすじ・・

C.E70、「血のバレンタイン」の悲劇に始まった地球連合・プラント間の戦争は激化
地球軍VSザフトの血で血を洗う戦いは日々続いていた

「相棒」ジンHMを駆り、アラスカでの激戦を乗り切ったミゲルとアークエンジェル
同艦に所属する事になり、ミゲルは実質ザフトを裏切った事になるのだが・・?

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オーブへ逃げ込んで数日・・
アークエンジェルのクルーともそれなりに打ち解け、ミゲルは数名と共に市街地へ向かっていた
ディアッカも解放されたのだが、こちらはまだとっつきにくいようで、艦に残り「バスター」の整備を手伝っている

「あいつも変なトコお堅いからなぁ・・」
「しょうがないんじゃないかな・・この前まで敵同士で戦ってたのは事実だし。」

ミゲルの隣を歩いていた「キラ」はそう言って物憂気な顔をする
・・彼がアスランの友人・・親友であったのは何度か話には聞いていた
実際に話してみるとアスランが話していた人物像より、少しだけ大人の印象を受けた
・・当然か、彼もアスランも学生時代のままのワケがない、今まで戦争の中にあり数々のつらい思いもしてきたのだから。

「・・ま、今はしばしの休息を楽しもうぜ?・・ずっと肩肘張ってたら疲れるだけだからな」

・・まぁ、少なくとも一番気楽に見えるのは、ミゲルだろう
こうして呑気な発言が続けば、敵であった事すら忘れそうだ(汗)

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市街地に入ると散会し、それぞれの目的に向かう・・
もちろん本当に遊びに来たワケではない、必要物資の調達が本来の目的なのだ

「さてキラ、「お買い物リスト」貸してくれな?」
「えーと・・・」

キラがポケットからリストを取り出そうとしたその時だった

「歌ってよ。」
「・・・へ?」

5、6くらいの子供がミゲルの上着の袖を引っ張り、見上げている
一瞬きょとんとするが、すぐについ先日の事を思い出した

「・・そうだっけ、俺って有名人?」
「な、何の事なの?」
「いやぁ、実は・・」

何かを言おうとしたミゲルだが、どこからともなく沸いた子どもたちに引っ張られて行ってしまった(汗)

「わ、悪いなキラー!!買い出しは頼むー!!」
「・・・・・・・・・」

キラは狐につままれたような顔をして、立ちつくしていた

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・・そのころ、アークエンジェルでは・・


「・・降りたければ、降りていいんじゃない?」
「え・・?」

MSデッキ、「バスター」の前でぼーっとしていたディアッカに、「ミリアリア」が声をかけていた
・・ここのところ彼の様子がおかしかった原因が、この少女である
彼女の恋人であった「トール」という少年はアスランとキラの戦いに巻き込まれMIAに
そこへ捕虜になったディアッカが現れた事で、一悶着あったのだ。

ディアッカは敵味方の考え自体に疑問を抱くほど、考える事が定まらなくなっていた

「・・降りる?俺が・・?」
「あんたは元々ザフトなんでしょ?・・この艦はいずれザフトと戦う事になるわ」
「だけど、ミゲルはこの船に残ると言っ・・」
「あっちは自分の意志を決めてるわ、だけどあんたは?・・ザフトの友達と戦える自信があるの?」
「・・・・・・・・・・・」

ディアッカはうつむいたまま、顔を上げなかった

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・・再び市街地・・


「久しぶりだな、みんなァ!!!」

わぁぁぁぁ・・と会場からわき起こる歓声
ミゲルは再び、あのドームにいた。
そして今回も収容人数以上の人間が殺到している(汗)

「早速行くぜェ!!俺の歌を聞けェェェェ!!」


・・オーブの国民は彼が元ザフトで、しかも前回が(ある意味で)作戦の一環であった事を知ってもなお彼の歌を聞きに来ているのである
それほどまでに、それこそプラントにおける歌姫「ラクス・クライン」のように、彼の歌は人々の心を引きつけてやまないのである

「つながる瞬間・目覚める永遠、待ち焦がれる!」

ミゲル自身も、この「歌」に何かを見いだしつつあった

・・しかし、歌が5曲目に入った時だった
不意に警報が鳴り響く・・


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数時間後、オーブ国民は一斉に避難を開始していた
地球軍が一方的な宣戦布告・・そう、解釈する他ない要求を突きつけてきたのである

オーブ首長「ウズミ・ナラ・アスハ」はこれに対し徹底的に抵抗する意志を表明、アークエンジェルのクルーにも決断の時が迫っていた
・・戦闘に参加し、今後もアークエンジェルと行動を共にするか、艦を降りて避難するか・・

「お前は降りろディアッカ、足手まといだ」
「そ、そーいう言い方ないだろ!?」
「・・迷ってるんだろ?」
「・・・・・・・」

・・ディアッカは無言のまま、バスターと共にアークエンジェルを降りた

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時間は一瞬のごとく過ぎ去り・・地球軍が、ついに動き出した


これまで平和だった、「永遠に幸福である」とされたシャングリラのごとき国は、戦火に包まれていく

敵のMS・・地球軍の量産MS「ストライクダガー」が群れをなして襲いかかってくる
それに応戦するのはオーブの量産MS「M1アストレイ」の軍団である
・・ビームが飛び交い、白兵戦をするサーベルの光と撃墜の爆発、その光が辺りを派手に照らした

青い羽根を持ったMS「フリーダム」・・キラの搭乗機が瞬時に2機、3機とダガーを破壊していく

「おーおー、格好いいねぇ!」

この状況下でミゲルのように軽口を叩いているパイロット、それはミゲルに一番最初に話しかけた士官「ムウ・ラ・フラガ」
キラの代わりに「ストライク」に搭乗し、慣れないながらもなかなかの腕前を披露している

「さぁてこっちに来るぞ、魔弾くん?」
「あんたこそ油断すんなよ、鷹さんよ♪」
「二人ともヘラヘラしてないで真面目にやってください!!」

前にいたM1アストレイからお叱りを受けて、二人は表情を引き締めると機体を前に跳躍させた

ジンHMは相変わらずの高機動性を生かし、オーバーと思える程長い重斬刀を振り回して突貫する
ストライクは背中に背負ったエールパックのバーニアを使い、空中から敵にビームライフルを見舞う
フリーダムの次に機動力に勝る2機は、その性能を活かして敵陣に切り込んでいく
ザフトの「黄昏の魔弾」と地球連合の「エンデュミオンの鷹」・・奇妙な形でダブルエースが組む事となった。

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皆が必死に戦う中、キラはフリーダムを駆り、ある意味独壇場のように戦いを繰り広げていた
フリーダムの性能とキラの類い希なパイロット技能、二つが合わされば「敵パイロットを殺さず機体を止める」など易い事だった

そのフリーダムの前に、三機のMSが姿を現した
・・ダガーとは違う、見るからに凶悪な装備を施された・・

「こいつらっ!?」
「なんだ、この変なMS~」
「やっちまえ!撃滅!!」

緑の機体・・「カラミティ」のビーム砲がフリーダムを狙う、避けた所に「レイダー」のハンマーが飛んでくる
シールドで弾くと、今度は「フォビドゥン」の偏光ビーム砲が機体をかすめる・・

「くっ・・!!」

三機に集中攻撃を受けるフリーダムだが、そこへ割って入ったのは先ほど戦場に出たばかりのダブルエースだった

「ミゲル!フラガさん!」
「任せな!一人ずつやりゃぁいい!!」

ジンHMがレイダーに重斬刀を振り下ろし、ストライクはフォビドゥンにダガーを投げつける

「何すんだよ!!」
「まったく、口の悪い連中だねぇ・・」
「うっせーな!関係ねーだろそんな事ォ!?」

・・「口どころか柄の悪い三人組」と戦いを始める3人。
しかし全体的な戦況は、どう考えてもオーブにとって思わしくなかった。


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重斬刀が、その名の通り重い剣である事を忘れさせる速度で振り回される
レイダーはそのことごとくを回避し、直撃する一撃もPS装甲にて弾き返した

「っ・・サギだぜ!」

ビーム兵器の付いていないジンHMにはPS装甲を破る手段はない
レイダーの撃つ機関砲、ハンマーを回避するのが精一杯だった

「うるせー!お前なんかにやられるかってんだよ!!・・撃滅ッ!!」

またハンマーが来る、そして左手についたシールドが吹き飛ばされた
いかに機動力が向上していても、主に宇宙用のジンHMで大気圏内用のレイダーに対しては条件が不利だ。
バーニアを使い機体を制動、急ブレーキのように止まって一気に切り返す
間合いに入って、また重斬刀をレイダーに直撃させる!

「バーカ、効かないって言ってんだろ!?」

レイダーの「口」からビームが発射される
・・予想外の攻撃に慌て、ミゲルは反応を遅らせてしまった

「・・ッ!!」

左肩の装甲と、バックパックの左バーニア・・二つのパーツが一度に吹き飛んだ

「ぐわぁぁぁっ!?」

爆発が機体を揺らし、機体を浮かせる力が失われる・・
ジンHMはあっという間に急降下していく

「さぁ死ねよ!楽になっちまえッ!!・・抹殺ッ!!」
「!」

レイダーの放ったハンマーがコクピットの直前にまで迫る
PS装甲の機体ならともかく、強化されているとはいえジンの装甲でどうにかなるものか?
・・ダメか、と操作系を握る手が力を失っていく

刹那、機体が「浮き上がった」

「大丈夫ですかね、先輩?」
「なっ・・!?」

ジンは「何かの背中」に乗っていた
・・MAのようだ

「ラスティ!やっぱ無事だったか!」
「へっへっへ・・忘れてもらっちゃ困るって事ですよ」


ジンを乗せたMA「メルカバー」はもう一度レイダーと同じ高度まで上昇していく


「安心してくださいよ、俺が来たからにゃもう安心・・」
「・・不利な状況は変わらないみたいだけどな」
「せっかく来たのに・・酷いなぁ」

軽口を言いながらも、メルカバーはレイダーの攻撃と、地上からのダガーの攻撃とを回避した

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戦闘は意外な形で幕を閉じた
地球軍は三機の新型MSが撤退するのと時を同じくして、一斉に撤退を始めたのだ

・・何がどうなっているのかわからないが、どうにか難を凌いだオーブ軍。

途中で参戦したのはラスティだけでは無かった事も、戦闘終了後に判明した
話に聞くMSの名はバスター・・そしてジャスティス、そのパイロットの名は?


「・・アスラン?」


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アスラン、ラスティ、ディアッカが新たに加わったオーブ軍だが、戦況は依然として思わしくない。
疲弊した兵士、MSの損壊も思ったより厳しい状態になっている

・・翌朝には地球軍の侵攻が再開されるだろう、果たしてそれを凌げるのだろうか?



ウズミ議長は静かに、しかし大きな決断を下そうとしていた




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次回:「#08 この空の歌」
第二次攻撃が開始され、燃えるオーブの領土・・
地球軍と交戦するその最中、ウズミ議長はついにその時を告げる
戦艦アークエンジェル、オーブ艦クサナギは空へ発つ!


全ての想いを継いで行け、ガンダム!



※文中の「メルカバー」はオリジナルMAです、気にしないでください(汗)



「機動戦士ガンダムSEED TWILIGHT」 後半戦


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