T.C.UNIONRIVER ~ユニオンリバー社~

とわいらいと 2

・・前回のあらすじ・・

C.E70、「血のバレンタイン」の悲劇に始まった地球連合・プラント間の戦争は激化
地球軍VSザフトの血で血を洗う戦いは日々続いていた

オーブを守るために戦うアークエンジェル隊のフリーダム、ストライク、ジンHM
アスラン、ディアッカ、ラスティが合流し、一度目の攻撃は難を逃れるが・・オーブの危機は去ったワケではなかった。

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MSの整備の間、アークエンジェルの主要クルー、パイロット達はウズミ議長の下へ集められていた
彼らの目の前には、首長国連邦の長、ウズミ・ナラ・アスハとその娘、カガリ・ユラ・アスハがいる
インターミッション的な時間を経て、再び地球軍の侵攻に備える・・つもりだった一行は招集の意味がわからずにいた

「・・オーブは今後、ここでの戦闘一切を放棄する」
「!?」

一言、それだけでは気が触れたかとも思うような発言だった
国を守る、断固たる意志で臨んでいたはずの彼がそんな事を口走るとは・・

「お父様!?」

それは娘であるカガリにとっても同じだった
皆が驚きを隠せない、しかし次に続く言葉があった

「・・だが地球連合にこの地を渡すつもりなどは無い!この命に代えても我らオーブの信念が変わる事はあり得ないのだ!」
「・・・・・・」
「し、しかしそれではどうして戦闘放棄を!?」
「残りの国民も避難はもうすぐ完了する、アークエンジェル・・そしてオーブ軍はクサナギにて宇宙へ上がってもらいたい」

宇宙へ上がる・・それが意味する所は一つ

「地球連合の良いようにさせてはならない、奴らの狙いはモルゲンレーテとマスドライバーだ・・ならば・・」


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「・・モルゲンレーテの工場もマスドライバーのレールも全部ぶっ飛ばしちまう、ってか?」

その工場の外に出たミゲル達パイロット組は、正面から来る海風に当たっていた
先ほどの話が引っかかり、皆心なしか暗い表情になっている

「逃げるってのは性に合わないけどさ、まぁいいんじゃないの?それしか手段はないんだしよ。」
「しかし・・オーブはどうなるんだ?」
「どうもならねーよ、国民はほとんど逃げ延びてるし、アスハのお偉いさんも脱出するんだろ?「人ある所国あり」って事だろ。」
「そこまで気楽になれるのがホントにうらやましいよ、ミゲル(汗)」

アスランがツッコミを入れたのをきっかけに笑い始める一同
・・ひとしきりの後、再び真剣な顔に戻ってアスランがつぶやいた

「・・ここに来て言うのも何だが・・俺達は本当は何と戦わなくちゃならないんだ?」
「本当に戦う相手・・」

元はごく普通にオーブの住人だったキラ、ザフト軍として戦っていたはずのミゲル達
・・つい数時間前まで地球軍と戦っていたが、それも本当に戦うべき相手なのか?

全ての出来事が敵味方という考え自体を超越した結果、彼らは半分迷ったような状態でここにいる。


「なら・・探せばいいよ、これから探していこう、みんなで。」


その問いに・・キラは微笑みながらそう、答えた。

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それからわずかの後に作戦が開始された

空を飛べないバスターとディアッカ、ラスティはアークエンジェルで一足先に宇宙へ発ち、キラ、アスラン、ミゲルの三人は発進準備を進めるクサナギの護衛に回った
フリーダム、アスランの「ジャスティス」、そしてメルカバーと合体し、飛行機能を回復したジンHMの三機。

少しでいい、少しの時間を稼げば皆宇宙へ脱出できる
・・地球軍の攻撃に備え、三人は緊張感を切らさない

(・・しっかし、ラスティのヤツどこからこんなMAを持ってきたんだ?)

ジンHMを包むように合体したメルカバーは、合体が可能だった辺りを考えるとザフト製のようだが・・どこか雰囲気が違った。
・・まぁ、今はそんな事を気にしている暇はない


海岸線から爆発の煙が巻き起こり・・ビームの軌跡が次々と飛んでくるのが見えた

「さーて、生きて宇宙に上がるぞお二人さん!?」
「うん!」
「ああ!」

散会した三機は、前方から突撃してくる大多数のストライクダガーに突貫をかける
総数3に対して百数十はいるであろう量産型MSの群れ、絶対的不利な状況のはずなのだが・・

一人たりとも殺す事なく、手加減を加えつつ・・三人は銃を、剣を振るった

ストライクダガーがビームサーベルを振り下ろすが、フリーダムは腰から抜きはなったサーベルで受け、バルカンをもってダガーの頭部を吹き飛ばした
その背後に迫ったダガーをジャスティスから分離した「リフター」が弾き飛ばし、本体が倒れていたダガーのサーベルを拾い、投げつけ破壊した
メルカバーと合体したジンHM・・後に「Twi-Light」(トワイライト)と呼ばれるその機体はHM以上の加速を見せ、黒い装甲をマントのように開くと急制動、手に持った大型ビームソードを振り下ろした
・・ミゲルもまた、決して相手の機体に致命傷となるダメージは与えていない

(・・我ながらこんな戦い方、よく続くよな・・)

その考えに対する不信ではない、相手を殺さずに戦闘不能にする・・この戦い方は身体的に厳しいものなのだ。
アラスカで戦った時は戦力があったからこそ出来た、今は周囲に友軍機などいない
たった三人で、この戦い方をもって勝利・・いや、完全勝利でなくとも、時間まで生き残らなくてはならない

・・ストライクダガーの群れが放つビームを回避し、攻撃態勢に移るジン・トワイライト
しかし降下しようとした機体に向けて、突然大きなビームの光条が二本、飛んできた
ミゲルは咄嗟に後ろを向き、メルカバー側のラミネート装甲をもって受けきる事に成功した

「ちっ・・あいつらか!?」
「ミゲル、大丈夫か!?」
「あの三機・・!!」


フリーダム、ジャスティス、トワイライトは一斉に後退を始める
モルゲンレーテ・・マスドライバーではなく、人々の避難した市街地上空であの三機と交戦に突入した

カラミティが両肩のビーム砲を放ち、レイダーがハンマーと口部ビーム砲、フォビドゥンが偏光ビーム砲と一斉に攻撃を仕掛けてくる


「・・今度こそてめぇらを墜とすッ!」
「お前なんかに言われなくても分かってるんだよ、バーカ!」
「うるさい・・」
「緊張感の欠片もねー奴らだな・・ったく!!」

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その頃、大気圏を突破したアークエンジェルでは・・


「大丈夫かねぇ、あの三人・・」
「大丈夫でしょ?核エンジン搭載機が3機もいるんだぜ?」
「核エンジン・・って、ミゲルのアレって「核」機体だったのか!?」

ディアッカは驚いてラスティに問うが・・

「実は俺もよくわからないんだよ、あのメルカバーってMAは助けてくれた牧師さんが俺にくれたっていうだけで・・」

ラスティは苦笑いを浮かべながら答える
・・ディアッカはあまりにも非常識な答えに呆然としてしまった。

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・・再び地上・・

『全機に報告、間もなくクサナギは出航する』
「!」

三人はクサナギからの連絡を受けて、マスドライバーの方向へ急加速を開始した
・・刹那、モルゲンレーテ側から一隻の宇宙戦艦が滑走し始め、宇宙へのレールを猛スピードで進み始めた

「行かせるかぁぁぁ!!!」

後ろから三機のMSのビーム砲が飛んでくる
メチャクチャに撃っているせいか、直撃する一撃こそないものの・・危険な状態だ
・・その攻撃の中、フリーダムがクサナギに追いついた
続いてジャスティスが追いつき、フリーダムと共に転身、艦上から一斉射撃を三機のMSに見舞った

「後は俺が追いつくだけ・・」

後ろから来ていた三機が一斉射撃に弾き飛ばされたためか軽口が出そうになる
・・その瞬間・・
トワイライトの背部に、レイダーの放ったハンマーが直撃した

「なにィ・・っ!?」

高速で飛行していた機体はバランスを失い、マスドライバー横の海中に水柱を上げて水没した

「ミゲルさん!!」
「ミゲルっ!!」

キラとアスランの呼びかけに答える声もなく・・やがて、マスドライバーはウズミらの手によって自壊した


アークエンジェルとクサナギはその後無事に合流したが、そこにミゲルの姿はなかった。



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次回:「#09 夜明けの黄昏」

一人地球に残されたミゲルは宇宙に上がるための手段を探す
しかし、頼みのマスドライバーはすでに地球軍によって占拠されていた。
そこでジャンク屋連合の力を借り、ミゲルはトワイライトと共に一つの賭けに出るが・・?

夜明けの空に飛べ、トワイライト!



※文中の「メルカバー」「ジン・トワイライト」は唯一のオリジナルです、気にしないでください(汗)

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・・前回のあらすじ・・

C.E70、「血のバレンタイン」の悲劇に始まった地球連合・プラント間の戦争は激化
地球軍VSザフトの血で血を洗う戦いは日々続いていた

オーブ首長であるウズミの決断により宇宙へ脱出を計るアークエンジェルとクサナギ
フリーダム、ジャスティス、トワイライトの時間稼ぎもあって作戦は成功、無事出航したのだが・・
ミゲルは一人、トワイライト共々海中深くへ沈んでいった

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作戦開始より一時の後・・宇宙へ無事上がったクサナギは巡航形態へ組み替え作業を行い、アークエンジェルと共に進路をプラントへ向けていた

・・パイロットもクルーも、皆揃って表情は暗い
オーブ本国もろともウズミは炎の中に消え、パイロットの一人が欠員となってしまった
まして、アスラン達にとって一度は死んだと思った仲間なのだ、それがまたこんな状況に・・

(今度もきっと無事だよな、ミゲル・・・)

仮に助かっていたとして、彼が地球軍の攻撃から逃げ切れるかどうか・・
アスランはただ祈るばかりだった。

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・・祈って通じるなら神様を信じる人間はもっと多くて良いはずだが。
意外にも、当のミゲルはすでに地球軍の包囲網を突破していた

(・・ふ~ん・・スケイルモーターか・・何でも付いてるんだなぁ、このMA)

水中用推進システム・・空飛ぶMAには不要のはずの代物だ
オーブのモルゲンレーテ社で少しは調べてみたのだが、時間がそうなかったせいで全ての機能がわかっているワケではない

ミゲルはトワイライトをオーブから離れた無人島に上陸させると、コクピットで今後どうするかを考えていた

「あーあ、置いてけぼりくっちまったなぁ・・・」

そうぼやきつつも、特に絶望したような様子はない
・・あきらめずミゲルは宇宙へ行く方法を絞り出していた

(・・マスドライバーは使えんだろうし・・)

オーブが駄目とあらば地球軍はヴィクトリア辺りを狙うだろう、マスドライバーにて打ち上げる計画は全くもって無駄だ
・・しかし、マスドライバー以外に宇宙へ行く手段など・・


『おーい、誰か乗ってるかー?』
「うわっと!?」

いきなり通信が入り、驚いたミゲルはシートから落ちそうになる
モニターを再始動してみると、外にはどこかで見たようなマークの船が一隻・・
言うほど大きくもなく、甲板にはMSが一機、貨物シートをかけられて寝ている

「・・なーんだ・・ジャンク屋さんかい?」
『いやぁ、海岸にぽっつりMSが座ってるのが見えたんでな、廃棄されたヤツかと思ってよぉ』
「あいにくと休憩してただけだ、すまねぇな」

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・・トワイライトはジャンク屋ギルドの海上施設に案内された
プラントも地球軍もない、ここでは誰もが和気藹々と過ごしている

(ここの人間って・・オーブに似てるな・・)

無論一部に例外はいるにせよ、ナチュラルもコーディネイターも色々な人間が集まって生活している
ミゲルは居心地の良い空間に思わず顔をほころばせた

「へぇ、流石にショップが充実してるんだな♪」
「なんならあんたのMSに武器でも何でも積んでやるぜ?」
「・・いやいや遠慮しとく・・ポケットマネーで買えるなら別なんだが(汗)」

・・コクピットに隠しておいた財布には小銭が少し入っているだけだ

「ま、冗談はさておき」
(・・っておい、ハナから冗談だったのかよ・・)
「あんたの探してる宇宙への行き方はこれだ」

最初から貧乏人扱いされたのに腹が立ちそうだったが、すぐに希望の品が出てきたのでミゲルはそれを受け取った
・・「地図」には三つの「マル」がついていて、その横に文字が書いてある

「ロケット発着場跡・・?」
「そうだ、そして特に使われなくなったヤツがその三カ所だな」
「ロケットで宇宙に行け、ってのか?」
「さぁ・・現地に行っても、残ってるかどうかは五分五分なんだがね」
「まるっきり賭けかよっ!?」

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文句を言っていても仕方ない、とばかりに飛び出したミゲルは「タネガシマ」にある旧宇宙開発センター跡に来ていた

シャトル発着用のタワーは残っている、施設も全て完全な形で残っている
・・が、そこで待っていた人間は施設の職員であるワケもなく、ココを根城にしているジャンク屋の集まりだった

「宇宙に行きたいんだが」

・・と言うなり大爆笑された。

「あんちゃん、そら何でも難しいぜ?宇宙に飛び立つのがどれだけ大変か知ってるだろ?」
「そうそう、それに肝心のシャトルもロケットもないんだぜ~?」

ミゲルはそれでも、辺りを見回して

「ブースターと固形燃料はあるんだろ?それだけでもいいから使わせてくれないか?」
「使えない事もないだろうし、俺たちも使わないモノだけどさ・・これだけじゃ宇宙には行けないぞ」

あきらめろ、と促すジャンク屋たち
・・しかしミゲルは一歩も引かず、彼らの横を通り過ぎると奥に積んである固形燃料を運び出した

「・・使っていいなら遠慮無く、いただいてくぜ・・?」
「ああ、かまわんよ」

さっきの海上施設と違い、彼らはどうやら「冷めた」連中のようだ

(やっぱ色々いるんだな、同じ種類のヤツらでも・・)


ミゲルは一人、黙々と作業を始めるのだった

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・・作業開始より半日が過ぎた頃
クレーン機材や設置アームが残っていたおかげで、ブースターの取り付け作業は思ったより速く済んだ
・・ロケットがなかったのに何にブースターを取り付けたのか?・・それは・・

「なぁ、あいつMSに直接ブースターつけてるぞ?」
「マジかよ?頭どーかしてんじゃ・・」

そう、トワイライトの周囲をぐるりと囲むようにブースターが設置され、その横に即席でくっつけた固形燃料タンクがくっついている
ミゲルはトワイライトのラミネート装甲を頼りに、単独で大気圏離脱を考えたのだ

「・・ふぅ・・よしっ!」

額の汗を拭うと、ミゲルはトワイライトのコクピットに乗り込んだ
その様子を冷ややかな目で見守るジャンク屋達・・

しかし、そのとき

「やめときな」
「は?」

一人の男がミゲルに一声を発した
・・コートを羽織った、ジャンク屋とも違う妙な風貌の老人・・

・・言っちゃならないのかもしれないが、見るからに怪しい。

「なんだよあんた、手は貸さなくていいって言ったけど、邪魔してくれとは頼んでないぜ?」
「そうじゃない、今日は日が悪いと言っているんだ」
「・・・・はぁぁ??」

余計にワケがわからなくなってきた
混乱してきたミゲルはコクピットから飛び降りて、その男の前に立つ

「あんた何なんだよ、日が悪いってどういう意味だ?」
「ロケットを飛ばすのに天候が関係ないとでも思ったのか?風向きも考えないで宇宙に飛び出せると思うのか?・・お前、本当にコーディネイターか?」
「い、言いたい放題だなおっさん・・・だけどな、俺は急いで宇宙に行かなきゃならない用事があるんだよ!!」
「・・別に俺も、成層圏でバラバラになりたいというのなら止めるつもりはさらさらないがな」

そう言って男はくる、と振り返った

「・・・・・・・わかった、聞けばいいんだろ聞けば・・」

力一杯ため息をついて、ミゲルはその老人の後に続いた

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・・ミゲルは施設の奥で、ロケットの技術について「講義」を受ける事になった
語り口からすると、彼はやはりジャンク屋ではなく、昔ココで働いていた技術者のようだ

「するってぇと・・・脱出軌道をそろえなきゃならない以上、風の無い日を選ばなきゃ死ぬって事か・・」
「結論はそうだな。」

もう一回、ミゲルは力一杯のため息をついた

「じゃあ今日明日で宇宙に行く事もできねーのかよ・・」
「・・もしかするとココから行くのは不可能かもしれん」
「なんでだよ?」
「今までの話はロケットやシャトルの場合だ、MSを直接宇宙にやろうなんて馬鹿は初めてだからな」
「・・・悪ィかよ・・だが、俺はやると言ったらやるぜ?待ってるヤツらがいるんだよ!」

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翌日・・風は強い

ミゲルは老人に教えられた通り、ブースターと燃料の配置を組み替えていた
少しでも大気との抵抗を減らし、突破するスピードを得る
・・そのためにはある程度の軽量化も必要だ

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また翌日・・雨天
トワイライトのコクピットで、機体の装備をチェックして過ごす

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さらに翌日・・晴天、無風の絶好の日

ミゲルは雨露を払ってコクピットに滑り込むと、ジンの腕を使ってブースターの固定スイッチを切り離した
・・いよいよ、決行だ。


『本当にやるのか?』
「ああ、あんたには感謝しとくぜ・・いきなり死なずに済んだからな」
『・・だから準備してから死ぬのか・・全く、無鉄砲な男だ』

老人はやれやれ、と首を振る

『まぁせいぜい無事を祈らせてくれ、これでも何十機ものロケットを送り出した者のはしくれだ』
「・・ああ、ありがとよ」

ミゲルは通信を切ると、ジンの腕を「敬礼」の形にし・・メルカバーのウイングを閉じ、自らの乗るジンを黒い装甲の中に完全に包んだ
その装甲の周囲には即席で組んだとはいえ、なかなかに迫力のあるブースターが配置されている

「カウントダウン10・・・9・・8・・7・・・」


ブースターからガスが噴出し、スプリンクラーが水を散布した
発射台の周囲に白煙のように水蒸気が立ち上る・・

「6・・5・・・4・・・「3」・・・」

ミゲルの頬を汗が伝う

「・・・・「2」・・・・・「1」・・・・・・・GO!」

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その日、史上初となる偉業を成し遂げた男がいた
MSによる単独の大気圏離脱・・それも、何世紀も前の技術による旧世代的な発想の方法で。

奇しくもそれは、キラ・ヤマトが成し遂げたMS単独の大気圏突入、それと正反対の事であった

・・誰もが聞いて唖然とするであろう挑戦
だが・・・事実として、ミゲル・アイマンは早朝、明け方の空に、宇宙に飛んだのだった





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次回:「#10 天の車は空を行く」

ミゲルはアークエンジェル、クサナギの航路を辿り宇宙を駆ける
追いついたと思った二隻は戦闘の真っ最中、トワイライトもそれに巻き込まれ・・

新たなる道を示せ、メルカバー!

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・・前回のあらすじ・・

C.E70、「血のバレンタイン」の悲劇に始まった地球連合・プラント間の戦争は激化
地球軍VSザフトの血で血を洗う戦いは日々続いていた

いささか不安はあったものの、C.E初となる単独大気圏離脱という快挙を達成したミゲル
宇宙へ出る事はできたが、果たしてここからどうしようというのか?

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ラグランジュ・ポイントを漂う衛星にとりつくと、ミゲルは目的地へ進路を定めた
・・どうせ行き先はプラントだ、それならば道はほぼ一本に絞られる

「・・さぁーて、かっ飛ばそうかね相棒!」

スロットルを最大位置に押し込む
ジン本体ではなく、メルカバー側の背部バーニアが一斉に噴射され、爆発的な推進力を生み出す・・
どこからどう来たのかは詳細不明の核エンジン、それが成せる業だ

(追いつくだけじゃダメなんだ、追いついてからが勝負だ・・)

アークエンジェル、クサナギの両艦はどの辺りまで行ってしまったのだろうか?
・・だがそれよりもミゲルには、また自分が戦死扱いになっていないか、という少々の不安の方が強かった(汗)

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一方、アークエンジェル、クサナギ側では・・


「アスランからの連絡は?」
「・・まだないみたいだぜ」
「そっか・・」


キラとディアッカは食堂で顔を合わせると、まずその話題から入る
・・「父の真意を確かめる」・・
そう言ってアスランは一人、小型シャトルでアークエンジェルを発った

アスランの父は現最高評議会議長のパトリック・ザラ・・
連合・・ナチュラルの殲滅を計り、ラクスを反逆者と呼び、フリーダムの撃破を命令した張本人

・・それでも父だ、アスランはそう言ってプラントへ戻った


「・・・大丈夫なのかねぇ、アスランさ。」
「大丈夫・・だと思うよ、多分」
「そうだな、「あいつ」も上手くやってくれるだろうし・・」

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プラント本国・・
そのアスランは自身の予想通りの結果を受け・・失意のまま兵士に連行されていた

「・・父上・・」

ナチュラルを抹殺するために戦いを仕掛け、ラクスを反逆者に仕立て、フリーダムを撃てと言い、挙げ句アスランの声すらも聞こえない・・
・・先ほど、その父自らに発砲された事は彼の期待を、気持ちを完全に打ち砕いていた

(さて、どーするかねぇ)

・・影で見ていた警備兵の一人・・いや、警備兵に扮した赤髪の少年は機会を伺っていた
そう、「ラスティ」はアスランの後を追って本国に潜入していたのだ

(・・ん?)

ラスティが飛び出すかどうかを悩み始めた時・・銃声と共に突然飛び込んできた兵士がアスランを連れ、走り去った

「いっ!?」

周囲の警備兵達が一斉にそちらへ銃撃を開始する

(・・くそっ!!どーなってんだ!?)

ラスティは目眩ましのスタン・グレネードを放り投げるとアスラン達の後を追った


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・・数時間後・・

アスランが謎の兵士に連れてこられたのは戦艦「エターナル」の艦内だった
そのエターナルには死んだはずの「砂漠の虎」こと「バルドフェルド」が乗り込んでおり、さらにはあのラクス・クラインまでもがいた
・・そう、キラにフリーダムを託し、現在はプラントから追われる身の彼女が・・
アスランは複雑な心境でブリッジに立っていた

「・・・追手か・・」
「流石に早いですわね」
「戦闘になるんですか?」
「あいにくMSは一機も積んでないんでねぇ・・逃げるしかないんだが・・」


バルドフェルドの言葉は余裕ぶって聞こえるが、言っている事は本当だ
エターナルはフリーダムとジャスティスを運用するための艦であり、さらには建造直後という事も相まってただの一機も艦載機がない
交戦ともなれば艦の装備だけで戦うしかないのだが・・

「間もなく交戦圏内に入ります!グリーンより5機・・さらにナスカ級が一隻!」
「・・主砲は使えますか?」
「封印(シーリング)が解除出来ていません、今少し時間を!」
「その「時間」があるなら良いんだがな」


エターナルの正面にジンが数機、飛び込んでくるのが見える
ナスカ級戦艦からカタパルト射出された機体・・とは違う、別方向からのアプローチだ


「・・ここら辺に基地があるのは忘れてたワケじゃないんだが・・」
「囲まれた・・!?」


アスランも流石に焦る
・・このままでは・・
そう思ったが刹那、機体の周囲に何か揺らめくものが通った気がした

(・・陽炎・・?)


の、ように宇宙が揺らいだ
そして突然、正面から迫っていたジンの一機が火を噴き、光と共に四散した
直後、その揺らいだ空間が移動したように見える
・・またジンが吹き飛んだ

「何だ?・・ミラージュコロイド・・?」
「連合か!」
『勝手に敵にしないでくださいよ、アスラン』


聞き慣れた声がして・・正面のジンを全滅させた「揺らぎ」が消え、何もなかったように見えたそこから一機のMSが姿を現した

「ニコル!」
『お久しぶりです・・アスラン!』

後方から来た「ゲイツ」にビームライフルを放ちつつ、ニコルは搭乗機をエターナルに近づけた

『細かい話は後で!エターナルが破壊されたら元も子もありません、逃げ切ってください!!』
「ニコル!!一人では無茶だ!!」
『一人じゃねーよ!!』

続いて聞こえたのは、ラスティの声・・
ナスカ級の後方から飛び出したゲイツの一機が艦のカタパルトを破壊しつつ、エターナルに向けて飛び出した

「って・・どうしてお前が!」
『心配だからついて行けってディアッカが・・おい、俺が居ちゃなんか悪いのかよ!?』
「いや、そうじゃなくて(汗)」

艦の両サイドに展開したラスティのゲイツとニコルの「ナグルファル」が防衛線を張り、交戦が再開された

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フリーダムが救援に駆けつけ、無事にアークエンジェル、クサナギと合流したエターナル
以後「三隻同盟」と呼ばれるメンバーは一度、廃棄コロニーであるメンデルに身を隠した

そこで地球軍のアークエンジェル級戦艦「ドミニオン」とクルーゼ隊の挟み撃ちに遭うも、合流したミゲルの騎兵隊のごとき活躍で窮地を脱するのだった

アスラン達は復帰したニコルと生還したミゲル、二人との再会に沸いた
ディアッカもまた、クルーゼ隊との交戦中にイザークと再会し・・お互いの心が一つである事を確かめあった

・・しかしキラはメンデルの中に調査に入った際何かがあったらしい・・・始終思わしくない表情だった





・・「三隻同盟」の戦いはその後も続き、プラント本国までの距離は残りわずかとなった。



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次回:「#11 俺の歌を聞け!」
ジャンク屋からもたらされた「核」と「最終兵器」の情報。
ミゲル達は思い思いに単独行動をとるが・・?
彼らの作戦とほぼ同時に、ついに地球軍とザフトの最終決戦が幕を上げる!


決死の覚悟で挑め、エターナル!


※文中の「ナグルファル」はまたしてもオリジナルです。ブリッツにAS着せたくらいの性能を想像してください。

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・・前回のあらすじ・・

C.E70、「血のバレンタイン」の悲劇に始まった地球連合・プラント間の戦争は激化
地球軍VSザフトの血で血を洗う戦いは日々続いていた

ラクス、バルドフェルド、ニコルらが合流し、エターナルを加えて「三隻同盟」となったアークエンジェル、クサナギ一行。
決意を新たにする彼らをよそに、地球軍とプラントの最終決戦の時はすぐそこまで迫っていた

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メンデルを発った三隻同盟は進路をプラントへ向ける途中、コロニーでジャンク屋連合から補給を受けていた
一時の休息をとるパイロット組・・と、ミゲルの元へ近寄ってくる男がいた

「金髪の軽そうなMS乗り・・もしかしてあんたがミゲル・アイマンか?」
「・・「軽そう」って・・・・・(汗)」

・・近くにムウがいるというのに、それを無視して真っ先に「軽そう」と決めつけられるミゲル

「・・「軽そう」は余計だが、確かに俺がミゲル・アイマンだぜ・・(怒)」
「おお、やっぱり!・・俺よ、地球に知り合いがいてな、そいつが言ってたんだよ」
「はぁ?」

・・話が見えてこない

「このデータをミゲルってのに渡してくれ、ってな。」
「いきなり出すな・・って?これを?」

出された「データ」はディスクに入っていた
・・もっとも、プロテクトがかかっているらしく解析はできなかったようだが・・
男はそれを渡すと、さっさと行ってしまった

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・・アークエンジェル内、MS格納庫・・

バスター、ストライク、ナグルファル・・そして今は使われていないメビウスゼロ、スカイグラスパーの並ぶハンガーの一番端に、ジンHMとメルカバーは固定されていた
ミゲルはあの後早速データの解析にかかる。奇妙な事にプロテクトはあっさり解く事ができた
・・パスワードは適当に打ったものの一つ「Ignited」・・ミゲル自身のオリジナルな持ち歌の一つである。
それが何故パスワードなのかさっぱりよくわからないが(汗)

「怪しすぎ・・・ウィルスとかじゃねーだろうな?」
「そう勘ぐるなよディアッカ、開いてみなけりゃ箱の中身はわかんねーぜ・・・」
「慎重にして悪い事はないと思いますがねぇ。」

自機の整備も終わり、間の空いたディアッカとラスティが様子を見に来た
ミゲルはデータファイルを開き・・メルカバーと直結しているジンHMのコクピットモニターに何かの詳細情報が表示された
・・歌、スピーカー、メルカバー、暗号化されていたコードが繋がって一つのデータになっていく

「・・りょ・・・量子スピーカーユニット?」
「なんだそりゃ(汗)」
「すげェ、これって宇宙空間に直接音を流せるシステムじゃないですか!」

ミゲルは意図がわからずにしばらく唸っていたが・・もう一つ、一緒に入っていた画像データを見るなり一発で理解した


「・・誰だか知らねぇが、俺にそれをしろって事なんだろうな。」


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地球のジャンク屋・・ミゲルと接触のあった人物に届いたプロテクト付きのデータ、最初からミゲルに届くように仕組まれていたかのようなそれは、三隻同盟にこれからどうすれば良いか・・それを示唆しているものでもあった

ラクスとバルドフェルド、カガリとキサカ、そしてラミアス艦長と主要なパイロット組
皆が揃った所でブリーフィングが開始された
・・モニターの前に立つのは・・なんと、ミゲルだった


「前回のメンデルでの戦闘後、「核」・・「ニュートロンジャマー・キャンセラー」の技術が地球軍に流出した」

にわかにどよめく会議室・・

「・・これにより今後の地球軍の核装備は確実だな・・そしてプラント側の最終兵器「ジェネシス」の存在」
「・・ジェネシス?」
「本国から地球をぶっ飛ばせるような代物だとさ。」
「マジかよ!?」

双方の最終兵器に全員が驚愕する中、ミゲルは静かに・・しかし強く言った

「策はある・・もっとも、連合の方は俺にしかできない事だがな。」


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地球軍・・反コーディネイター組織「ブルーコスモス」の盟主たる「ムルタ・アズラエル」に率いられた艦隊は、月軌道から発進しようとしていた
・・まっすぐに目指すはプラント本国、ザフトの本拠地である・・

「せっかく手に入れた核兵器・・さぁ、有効に使ってあげようじゃないですか・・」

アズラエルはアークエンジェル級戦艦「ドミニオン」のブリッジでニヤニヤと笑みを浮かべている
・・その隣・・艦長である「ナタル・バジルール」は決してそれを快く見てはいなかった
かつてアークエンジェルの副艦長として共に戦った仲間とは敵対してしまった。
隣にいる男が正しいとは思えない、しかし彼女もまた、軍人である以上は・・

複雑な心境を隠しつつ、ドミニオンと地球連合軍の艦隊とを率い・・
・・発進しようとした、その矢先だった

宇宙空間を伝わり「振動波」が響き渡った


「四番艦・・つ、通信途絶!!」
「な・・なんだっ!?」

レーダーには何も映っていない、そして視界にも何も映っていない・・
ブリッジクルーも総動員で周囲を視認するが、「敵」の姿は全く見あたらなかった
・・しかし奇妙な事に、どの艦も健在でその場に留まっているではないか。

「!?・・続いて六番、八番!機能の一切がダウンしていきます!!」
「何がどうなってる!?何なんだ!?」
「そんなのはいいから敵を見つけろ!さっさと落とせよ!?」

アズラエルがシートから立ち上がり、叫ぶ
MS隊が発進し、索敵に向かうが・・その間にも艦は次々と機能を失い、漂うだけの「箱」になっていく


『・・さて、これで全部かね?』

・・「見えない何か」のコクピット・・スロットルの代わりに「ベース」を抱えたミゲルはそうつぶやくと、元来た方向へ撤退を始めた

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・・その後日、ついに地球軍はプラントの最終防衛基地である「ボアズ」へ向かっていた
この基地を突破すれば残すは本国・・

アズラエル率いる地球軍艦隊はボアズに対し、ついに核ミサイルを積んだメビウスの群れ「ピースメーカー」なる部隊を出撃させた
一斉に放たれるミサイル、撤収する地球軍・・
そして、ボアズは・・・


「・・・・・なに?」
「なんだ不発弾かよ、ナチュラルの野郎共、核マークなんぞ付けて脅かしやがって!!」

大量の「不発弾」をボコボコと当てられ、「なめられている」とばかりに防衛部隊の怒り(士気)を上昇させた。


「何で爆発しないんだよ!?ええ!?」
「私につっかかる事ないでしょー!?」

ドミニオンのブリッジではアズラエルが近場に居たフレイに掴みかかっていた

ナタルは今の出来事に呆然としていたものの・・ほっとして、再び艦の指揮を再開した

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核攻撃は失敗したものの、連合軍とザフトの全面対決が避けられたワケではない
ボアズで始まった戦闘を受け、パトリック・ザラはジェネシスの起動を命令した

「ジャマーの影響下で核だと・・?バカ者共が!思い知らせてやれ!」


ザフトの最終兵器たる「ジェネシス」はボアズをかすめるような射角でロックされ・・
その存在を隠すために使用していた、ミラージュコロイドを解除した

異形の砲台はエネルギーチャージを開始し・・・

管制官の操作で、第一波の発射が行われた。


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・・ボアズ宙域・・

地球軍と戦っていたザフト軍が一斉にボアズの後方へ撤収し・・・
後に、謎のエネルギー波が地球軍目がけて迫ってきた

「何・・!?」
「高エネルギー反応・・退避が・・ま、間に合いませんッ!!!」


兵の誰もが死を覚悟したそのとき・・
・・「歌」が聞こえてきた

「・・歌だと?・・ひ、非常識にも程があるぞっ!?」

常識の範囲内だ、真空の宇宙空間に音波は伝わらない!
それが通信を使わず、直に「艦の外から流れてくる」!!


「・・つながる瞬間、目覚める永遠!」


歌はエネルギー波の方向から聞こえ・・そして、何もない空間に、一機の「ジン」が現れた
黒いパーツを背負ったオレンジ色の機体は、非常識な「歌」を響かせながら、エネルギー波の前に真っ向から立ちふさがった!

・・真っ先に死に向かった・・

そう、誰もが思った瞬間!


目にも見える程の巨大なエネルギーの奔流は、そのジンの手前で「かき消えていく」!!


「なんだとぉーッ!?」


アズラエルは驚愕し、立ち上がって叫び・・・すぐにぺたん、とシートに腰を落とした


「・・あり得ない・・な、なんなんだよあいつはっ!?」


ボアズ戦に突入してからあり得ない事が連続している、彼の頭は完全に混乱している事だろう。
・・もちろんパトリック・・ザフトとて同じ事だ、自軍のMSと同じものが、たった一機であのジェネシスの一撃を止めてみせたというのは・・!

オレンジの「ジン」は変わらず、歌を響かせたまま戦場を駆け抜けていく

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「地球軍!・・ザフトも!・・俺の歌を聞けェェェェェェェェ!!!」




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次回:「#12 デイ・ブレイク」
大量破壊兵器を封じた三隻同盟は最後の作戦を開始する
全ての人々のため、ミゲルが、ラクスが、キラが、皆が宇宙に歌を響かせる!
コーディネイター・ナチュラルの垣根を越えた結末がついに・・・?


世界の夜明けに歌え、ミゲル!!

恐らく、それはミゲルが生まれる以前に・・彼に託されるべくして用意されていたものなのだろう。

・・三種の神器とも言うべき「メルカバー、量子スピーカー、天性の歌声」
機械である前者2つはともかく、「歌」は彼の両親が望んで授けた技能ではない

無論、その技能をコントロールする事も可能なのがコーディネイターではあるが、彼の場合は自然に・・「天性」としてそれを授けられたのだ


トワイライト・・彼の駆る「黄昏」が何者に授けられた力かはわからずとも良い、今のミゲルにとっては彼自身の望みを叶える最高の魔法、最高の相棒なのだから


・・アークエンジェル、クサナギ、エターナル・・三隻の並ぶ前に立ち、トワイライトは量子スピーカーのサウンドを響かせ始めた

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「・・つーか、本当にやるとはねぇ・・(汗)」
「びっくりしました(汗)」
「へーへー、もう言うことないスよ、先輩・・。」

ディアッカ、ニコル、ラスティ・・発進するなり口をついて出たのは、素直な感想だった。

「歌ってのはそこまですごいものなんだな。」

ピンク色のストライク・・「ルージュ」に乗ったカガリもまた、感慨深げにつぶやく

「歌の力は素晴らしいものでしょう?・・気持ちを込めて歌えば、どんな事でも可能になる、できるって思えますわ。」
「・・ラクスの歌とはちょっとジャンルが違うけどね・・」
「キラ、歌にジャンルは関係ありませんわ♪」
「・・・・・君たちは・・(汗)」

キラ、ラクス、アスランが漫才のような会話をしていると・・ストライクダガーの部隊が突っ込んでくるのが見えた


「そうこうしている間に来るぞ!!・・ミゲルの援護を!!」
「キラ、アスラン!ミーティアの全ミサイル・・いや・・「全スピーカー」を一斉射しろ!!」

バルドフェルドが通信で叫ぶなり、キラとアスランのフリーダム、ジャスティスに巨大な「贈り物」が飛んできた
両者の背中に合体した白く巨大な「贈り物」は長いアームと多数のミサイルポッドを備えた強化パーツ「ミーティア」である。
両のアームから巨大ビームソードを、ミサイルポッドからは戦場を一瞬で火の海に出来る程のミサイルを積み込んで・・

あるはずが、放たれたモノは全く違うモノだった。
形状で言えばミサイルには見える・・が、一回り小さいうえに火薬の類も、薬品の類も、爆発するモノが一切積まれていないのだ

「うわっ!?」

ストライクダガーのコクピットを直撃する「ミサイル」
目の前に「ミサイル」の先端が見え・・「もう自分は死ぬのか」と思ったダガーのパイロット・・
・・しかし、「ミサイル」は先端が覗いただけで、爆発もそれ以上こちらへ食い込んでくる事もなかった
無論、パイロットは無傷である

「・・・な?・・・なんだこれ・・??」


顔を近づけるなり先端が開き・・「大音量の歌声」がいきなり流れ込んでくる!


「絡み合う熱の、伝えたい真実を!」


ミサイルのように飛んできて突き刺さる、直に音を流すためのスピーカーポッド・・

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「・・こ、この耳障りな歌をなんとかしろォっ!!」

ドミニオンのブリッジ・・両手で耳を塞いだアズラエルは叫び、怒鳴るばかりであった
しかしどうだろう、彼以外のブリッジクルーは揃って歌に聴き惚れているように見える
・・ナタルやフレイすらも、その一員となっていた

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「ぐぅぅぅぅぅぅっっ!!!」

ジェネシス管制室・・こちらではパトリックが同じように、うずくまる形で歌を聴くまいとしている


「・・伝えたい真実を・・・・・♪」

しかし逆に、その歌を聴き・・口ずさむ者が出始めた


「き・・き、貴様らぁっ!!!」


パトリックは懐から銃を取り出し構えようとしたが・・すぐに落としてしまった。
そして、また耳に直接届く歌声に必死の抵抗を試みている


「誰から守ればいい?」


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戦況は、今までの戦争で類を見ない様相へと変化していった
量子が運ぶミゲルの歌声、まき散らされるスピーカー、ライフル・サーベル・・得物を下ろして漂い、歌に聴き惚れる両軍兵士。


「もっとだ、もっと!・・燃え上がるぜェ!!!」


なおも量子サウンドは広がり・・ボアズ、ヤキン・ドゥーエ、さらにはプラント本国を超えてその範囲を急激に広範囲へと広げていく!


「・・じっと目を凝らしても♪」


ふと、キラが歌を口ずさみ始めた
つられるようにアスランが、ラクスが、カガリが、ディアッカが、ラスティが・・伝染するように歌い始めた!

三隻同盟のメンバーも、地球軍も、ザフトも、もはや敵味方ではなく・・ミゲルという一人の歌手に魅了され、コンサートを聞きに来た観衆と化していく
ザフト側にいたイザークも、その歌を聴いた宙域の住人も・・

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「こんな・・歌・・ごときでぇぇぇぇぇぇ!!!」


頭痛のように響く声にうなされながらも、アズラエルが強引にドミニオンのコントロールを奪い・・ジン・トワイライトめがけて「ローエングリン」を放った
・・当たり前とでも言えば良いだろうか、ジェネシスの大質量エネルギーを消し去った歌が、それ以下の陽電子の流れを食い止められないハズがない

トワイライトの所へたどり着く事すらせず、ローエングリンの輝きはチリも残さず消え去った


「コーディネイターなんかの歌に・・僕がぁぁぁぁぁ!?」


なおもドミニオンはトワイライトを執拗に追い回し、ヤキン方面ではジェネシスの再チャージを開始している
両軍の最高権力者は、あくまでも互いを敵と認めたまま引こうとはしなかった

「コーディネイターなんかにィィィ!!」
「ナチュラルごときにかッ!!」


「くだらねぇ・・くだらねぇぜェ!!」



・・ドミニオンはアズラエルの手によって進撃していくが・・それを護衛すべき三機のMSはもはや動く気配がなかった


「・・てか、なんで落ち着くんだ、この歌・・?」
「へー・・かなりイケてんじゃん、あいつ」
「なんか戦うの面倒になってきちゃったよ、全く・・。」

カラミティ、フォビドゥン、レイダーは漂いながら、周囲の者と変わらず歌に聴き惚れていた
数刻の戦い・・いや、「コンサート」の末・・連合もザフトももはや敵味方の意志を無くしていた
同じ一人の人間を・・コーディネイターであるミゲルを、彼の歌を賞賛し、すっかり意志を一つにしていた

・・だが、決して全てを統一出来たワケではない。



トワイライトはフリーダム、ジャスティスの援護を得てクルーゼの・・この戦争の黒幕とも言える男の機体「プロヴィデンス」との戦闘に臨んでいた

「せっかく生きながらえた命を私の邪魔に使ってくれるな!!」
「はっ・・そりゃ悪ィ冗談ですよ!クルーゼ隊長!」


プロヴィデンスの背部から分離した遠隔操作のビーム発射装置「ドラグーン」が一斉に火を噴く
無論全てを回避しきる事は不可能であり非常識であり・・
ラミネート装甲と量子サウンドとでビームを吸収し、遮断してさらに回避運動を行う

「あいにくだが歌一つで私をどうにかできると思わない事だな!」
「どういう事だっ!?」
「私は出撃前に「耳栓」をしてきているのだよ!!」


・・ここまでの・・一連の・・・少しはシリアスな展開の・・・本腰を折るような発言が、クルーゼの口から漏れた
交戦中だったミゲル、キラ、アスランは「やっちゃったよ・・この変態仮面」という軽蔑にも近い眼差しをクルーゼに向けている


「・・隊長?」
「何だね、今更聞くことなど・・」
「俺の声聞こえてるよな?」
「・・そうだが?」
「・・・バックの音楽も聞こえてるよな?」
「ああ」
「・・・・・・耳栓、意味無いだろ・・それ。(汗)」


「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・!!!」(泣)




・・こうして・・
両軍全てが魂の歌声の元に一つになり、ナチュラル対コーディネイターという図式は完全に崩壊した
C.E71、地球とプラントの間に協定が結ばれて、戦争の歴史に幕が下りた。

かつての惨劇の地・・戦乱の始まりの地であるユニウスセブンにて「ユニウス条約」が締結、世界は新たに平和への歴史を進み始める・・

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ところでギリギリまで歌に抵抗していた約三名はどうなったかと言うと・・
結局アズラエルもパトリックもクルーゼも、歌の力には敵わなかったようで。

ブルーコスモスは狂信的なミゲル指示党と化し、プラント最高評議会ではオフの日に必ずカラオケ大会が行われるようになった
クルーゼは歌のおかげでなんか治ってしまったらしく、現在は謎の仮面俳優として様々なドラマで話題をさらっている


・・ここまで様変わりするものか、人間(汗)

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条約締結から半年後・・


かつての三隻同盟のクルー、皆が一堂に会していた


「しかし、ご大層にこんな式を開かなくても・・」
「良いんじゃないの?美味いモノが食えた方が再会も楽しくなるって」
「・・フラ・・・こほん、「ムウ」さん?そんなにがっついてはお行儀が悪うございません?」

タキシードのフラガ、パーティドレスのラミアス艦長とナタル・・そして近くにはアークエンジェルのメインスタッフが揃っている

「俺こんな豪華なモン食うの初めてなんだけど・・(泣)」
「・・ラスティ、見てる方が恥ずかしくなるから泣きながら口に詰め込むのはやめてくれ(汗)」
「フン、アスラン!ならば貴様はそうやって見ているがいい!その間に俺はお前の分まで存分に食わせてもらうからな!!」
「っておいイザーク・・何を、どーして、誰に張り合ってるんだよ!?(汗)」
「ふふふ、きひゃらろるんはほほこひへほはふはらは!(貴様の分など残しておかんからな!)」
「・・・・・・・わかった・・相手してやるよ・・死なない程度に。」
「こんな時までいつもの調子なんだな、俺ら・・」
「そ、そうですねぇ・・・」

・・「いつも通り」のザラ隊の面々を見て、ディアッカとニコルが呆れたようにつぶやいた。
ニコルが視線を向けた先にはキラ、ラクス、カガリの姿がある

「で、結局お前が兄貴なのか?それとも私がお姉さんなのか?」
「・・・ねぇ、それは後にしようよカガリ・・(僕はどうでもいいと思ってるワケだし)」
「ところで・・一番の功労者様が姿を現しませんわね?」

ラクスの発言で一同がはっとする
・・そうだ、そういえば誰かがいないような・・

「待たせたなァ!!」


メルカバーに乗ったオレンジ色のジン・・今回の戦争を終わらせ、現在は大スターの愛機として活躍しているその機体が会場の外に降り立った
そのままブースターを展開し、量子スピーカーを散布し始める

「おいおい、それしかないのかよ(汗)」
「ま・・アリなんじゃないですか?」
「だろうな・・。」

無論、決して悪い意味ではない


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ミゲルの歌はその後も世界中で愛され、歌われ、永く続く平和の象徴として語り継がれた
しかし、平和記念式典でラクスと共に歌った「METEOR」を最後に、ミゲル自身は謎の失踪を遂げた


それでも、世界は平和を維持し続けるのだった。



C.E70、血のバレンタインから始まった全ての戦いの連鎖は一度幕を閉じる
ミゲル・アイマンの歌、ただそれだけの力で。


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