T.C.UNIONRIVER ~ユニオンリバー社~

第02話-3

「さて・・それでは少々失礼します。」


潜入チームが深度3の終盤にさしかかった頃・・サクラはおもむろに席を立った


「滝村博士、どちらへ・・?」


この状況で何故席を立つのか疑問に思うS.G隊員


「いえいえ、ちょっと身だしなみを整えてくるだけですわ。」


サクラは愛想良く笑うと、そそくさと近場のトレーラーに入っていった

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十数分後・・・

シュウ達は深度4、それも問題の・・礼拝堂まであと一歩に到達していた

さすがにシュウも疲れるらしく、メイはまたひぃひぃ言いながら後ろの方をついてきていた


「・・道の選択はこっち(左)になって、この先が問題の「礼拝堂」か・・」

「こっち(右)には何があるんだろうね・・シュウさん?」


シュウは「わからない」と両手を上げるジェスチャーで答えた

セラもなぜかハンドサインで「まぁそうだよね」と納得する


「・・いけない、危うくお兄ちゃんみたいな事してた・・」


頭を抱えてしまうセラ

段々格好いい兄の偶像がかすれていくように感じる

・・でも・・元々格好いいトコないもんね、お兄ちゃん・・

自己完結して満足そうに微笑むセラ


・・ヒドイ言われようだ。


「とりあえず「礼拝堂」を拝んでくるんはどーや?」

「ナイス。」


シュウはくすり・・と笑ってシードの頭にぽん、と軽く手を置いた

・・今のは「今からの行動として正解」という意味と、「なかなか洒落が聞いてるね」の意味である


「・・皮肉か、シュウ」


シードの周りにどんより空気が立ちこめ始めた

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深度「5」・・・

シュウ達がまさに礼拝堂にはいらんとしていた時、その一つ下の階層では、先行調査隊が「敵」に追いつめられていた

・・礼拝堂での初戦敗退から何時間、ここでこうして立てこもっているだろう?

一部戦闘のベテランであるS.G隊員はいいが、民間人であるT.O.Dのメンバーはすでに疲弊しきっていた


「そろそろ限界ね・・・何、いざとなればあたし一人でカタをつけるわ!!」

「無理です!・・いくら二佐でもあれだけ敵がいちゃ・・!!」


S.Gを率いているのは二佐・・上級ランクの女性隊員。

金髪にやや大きめの丸いピアス、スカイブルーとダークブルーの制服が決まっている


先行調査隊に唯一いるという「特Aクラス隊員」は彼女の事だ。

特殊能力を持っていたり、訓練成績や経歴から判定され、彼女らはそのクラスに位置される

・・それなりの階級が与えられ、彼女のように部隊長を務めている者も少なくはない


彼女・・部隊長であり特A隊員である「リィズ=トリーシア」は焦っていた


・・その内、敵を防いでいるあの「扉」も破られてしまうだろう

そうなれば今持っている装備だけでは全滅必至だ・・


リィズはきゅ・・と唇を噛み、隣にいた部下の「ラルフ=オルドー」一尉を睨む

バンダナを巻いた青いロン毛の青年は、ライフルを扉に向かって構えていた

S.Gの制服を着ていても、こちらはあまり着映えしない・・

緊張しまくった顔からも、なんだか頼りない印象がにじみ出ていた


「・・な、何ですか隊長?・・俺見てないで「扉」を見ててくださいよ~!」

「なんでもないわ・・他のヤツらはマシに見えるのに、なんであんただけモヤシ君に見えるのかな~って思ってただけよ。」


ぐさっ


「えええっ!?・・なんでこの状況でそーゆー事言うんですかっ!?」

「感想を述べただけ・・・・・・ていうかね、何となくイライラしてきただけなのよ。」


・・・なーんて、冗談はこのくらいね。・・・問題は「あいつら」の特徴がつかめない事にある・・・


リィズは子供のように泣きながら吼えるラルフのわめきを聞き流し、思考を素早く巡らす

彼女の特Aたる所以は、戦況が素早くシミュレート(予想)できる能力と、その決断力にある

自分の作戦を取り決めてすぐに行動を開始する・・


しかし、それも敵の情報あってこそ・・

今のままでは、ただ全滅するしかない。

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・・そして、上の階層「礼拝堂」・・


シュウ達をここで出迎えたのは、無数の不気味な銅像と、小さなコンピューター端末だった


「・・やっぱり、これは遺跡のメインシステムに直結してるんだ」


シュウはこほん、と咳払いをすると、背後で頭をひねっている三人に説明を始める


「遺跡のメインシステムっていうのは未だに稼働しているこの遺跡の全てを管理しているシステムであって、ここの端末からそこへ直接つながっているという事は当然そのメインシステムに簡単にアクセスすることができる、全てを管理・・司っているという事は安全対策が施されている可能性が高い、つまりセキュリティレベルが格段にあがってる
という事は不用意にここの端末を操作しようとしてトラップが発動、調査隊はそのトラップによってどこかへ追いやられてしまった可能性が高いってことさ」

「長いっ!!」

「うん、この端末を動かしたから、トラップでやられちゃったんじゃないかな?」


シュウがささっと短くした説明で、やっと納得できる三人。


「・・でも、ボクたちはどうするの?」

「僕がこれを操作してみるから、それからだね。」


シュウは背中のコンピューターからケーブルを引っ張って、額のバイザーを降ろすとケーブルを接続した

もう一本を、今回は端末の端に無理矢理差し込んでいる


「ふぇぇぇっ!?あ、危ないよぅ!!!」

「だ、大丈夫お姉ちゃん・・シュウさんなら、多分・・」

「・・イヤ、わからんで・・こいつは肝心な時にとんでもない事やらかすんや」

・・うぃーむ。


奇妙な唸り音が聞こえた

周囲の、銅像の辺りからだ。


「・・何?」

「ゴメン、初歩的なミスしちゃったよ。」


シュウは悪びれる様子もなく、またにこっ・・と笑った


シードの顔が蒼白になり、セラが口に手を当て、メイが目に涙をためて、恐怖に引きつったような顔になる


・・銅像が動いた


「もとより銅像じゃなかったんだよ、これは遺跡のガーディアンを務めているロボットで・・」


シードとセラは、怯えるメイと説明に走るシュウの首根っこを掴むと「ばびゅん」と駆けだした

進路は一目散に、礼拝堂の奥・・意味深に開いた巨大な「扉」だ。


走る二人の後ろからは、その奇妙な形のロボット・ガーディアンが追いかけてきていた

ガーディアンは銅像に見えた時人型をしていたが、今はタイヤのような形態に変形し、ものすごい勢いで迫ってくる


相談を交わす間もなく、セラとシードはひたすらに走った

・・引きずるようにシュウとメイが振り回されているが、お構いなしで


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「・・暇だな。」


セルムラント国立病院・・

ロディはベッドに寝たきりで、腕組みをしたまま目を閉じている

色々と考えてみるが、今できる楽しいことなんてそうそうない


・・ゲーム(スパロボ)は全部クリアしちまったもんな・・

・・マンガ読んでるなんてどっかのガキみてーな事してるのもバカらしいし・・


「・・そろそろ・・フケるかなぁ」


ロディはそう言ったものの、数分後には寝息を立てていた

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「ちょいとストーップぅ!!!」

「あい分かった」


なぜかシュウのやる気のない返事と共に、シードとセラはブレーキをかけて急停止する

「な、なんやメイはん!急に止め・・」


・・んといて。

止めるな、と言いたかったシードはすぐ口にした事を改める


「止まってよかった・・・(汗)」


四人の前方、二メートルもない地点・・

暗がりになっているため分かりづらいが、そこにはぽっかり開いた「穴」


穴を越えた向こうに通路はあるようなのだが、穴の大きさを考えるととてもじゃないが・・


「・・ヤツらを止めよう」

「本気かシュウ!?」

「・・・や、やるしかないよ!!」


シュウは奇妙な箱を懐から取り出し、セラは右手のグラブを少し緩める


「シード、君もやるんだ」

「ちっ・・・しゃーないなぁ・・ワイのライオットサバきを見せたるわっ!!」


シードが両肩に背負っていた二丁のライオットガン「レギオン」を構える

シュウの持っていた箱は一瞬で変形し、箱のような砲身をもつ携行型キャノンになった

セラは臨戦態勢を整えて、「ヤツら」・・「敵」をじっと待つ


「撃てシュウ!!」

角を曲がって敵が姿を現した瞬間に、シュウの「スタンライフル」・・対人・対ギア用の超高圧電流砲が火を噴いた


ばぢぃっ!!


拡散して飛んだ電流は辺りを照らし、的確に当たった標的を機能停止に追い込んでいく


シュウが撃つ横ではシードのライオットガンが目にもとまらぬ速さで速射され、ガーディアン達をなぎ払っていく


「・・調査団が行方不明になるワケだ」

「なに・・がや!?」

「数だよ」

「数・・敵の数の事!?」


セラはシュウ達の攻撃を逃れた敵を、格闘で破壊していく

その間にも敵は全滅してしまいそうなのだが・・次から次へと向こうからやってくる


「さすがはガーディアン」

「納得すなっ!!」


シードが油断した瞬間・・

一体のガーディアンが、弾幕を突破してきた


「セラはんっ!!」

「大丈夫・・ええいっ!!」


回し蹴りが届いて、頭部を派手に破壊されるガーディアン

・・その隙をつかれてしまった。


「もう二体!?」

「あかん・・!!」


シードが毒づいた瞬間には、その二体はシュウ達の真横を通り過ぎていた


「いっ・・!?」

「まさか・・!?」


シュウとシードはそれを追うように振り返る!

しかし、そこで見たのは・・


少し、タイミングの悪い光景だった

「え・・?」


身体が宙に浮いている感覚・・

セラが目の前で、自分に手を差し出している

しかし・・届かない

シュウはともかく、シードの叫ぶのが見える

・・声は聞こえない


とっさにハンドバリアを発動し、敵をはじき返す事には成功した

しかし・・メイはバリアの反動で吹き飛び、真後ろの、真っ暗な闇の底へ吸い込まれていく


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ・・・・・!?」

「メイはんっ!!!」

「お姉ちゃん!!!!!」


手を差し出したまま、こちらを見ているセラとシード

シュウが撃っているらしい電撃がいくらか見えた後、メイは・・自身も、意識も何もない暗闇へ消えていくのを感じていた

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「お待たせにょーん♪」


シュウ達の現在位置を示すマップが消えて、騒然とするテントにそんな声が聞こえてきた

騒然としていた一同・・ネス以外は手を止めてしまう


「滝村・・はか・せ・・・???」


真面目なS.G隊員の顔が間抜け面に崩れる


サクラの着替えはそれほどインパクトがあったのだろうか?


「にゃーに、慌てたってどーしょーもないっしょ。ね~?」


なんだこの喋り方・・!?


先ほどまでの清楚な雰囲気の落ち着いた女性とは違う、まったりまったりした雰囲気・・

そこにいたのは眼鏡をかけてピンク色のコートに身を包み、白衣をだらしなく着込んだサクラの姿があった


「ホントに博士・・ですか?」

「ヘンな事聞かにゃいの~!・・どっからどー見たってあたしっしょ!!」


・・ダメかも

こんな二重人格者だったとは・・


ネスは「いつもの事」とため息だったが、一同は重く苦しい雰囲気に飲み込まれていた。

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