T.C.UNIONRIVER ~ユニオンリバー社~

第07話-L

翌日・・

自分の存在する理由をハルカに話した事で、多少なりともシュウの心は晴れていた

中途半端な「失敗作」

そうして、生みの親・・そう呼んでいいかも確かではない両親には、切り捨てられた

ところが別な実験中にその「両親」は事故死・・無事に姉、サクラとの生活が始まった

サクラ自身も自分たちを生み出した遺伝子実験という分野をかじり、様々な遺伝子の集合体であるシードを造った

反応速度・筋力・解析能力・判断力・・

メンタルな要素まで完璧に仕上げられた、常人の域を脱し造られた「天才」

・・だが、今・・シュウは変わりつつあった

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「おはよう・・ハルカさん」

「おはよう、滝村くん」


・・後の言葉はいつものように続かなかった・・

ハルカの顔は思いっきり真っ赤になる・・よほど昨日言った言葉が照れくさかったと思える

シュウにとって初めて言われた言葉・・「嬉しい」という感情がわき上がってきた。


「・・・・」


たった一人のために、くだらない生活が一変、そんな周りの事は些細な出来事になった


・・僕は理由を見つけられたのかな・・?


にこっ・・と微笑みかけて、シュウは最後の決心をした

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ブリッツァーとしての行動を、今日で最後にする

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『シュウ・・ほんまにお前は変わったわぁ(泣)』

「・・泣くのもいいけど後にしてね」


ブリッツァーの姿になったシュウは壁を蹴って跳躍し、博物館の屋根に上る


『ほな、最後の大仕事!一丁行ったろーやないかい!!』

「・・・フィナーレ、だね。」


警備員はいない、完全自動のセキュリティシステム

シュウが今までここの攻略をしなかったのは、一番のお楽しみ・・とでも言える、まさに宇宙一の最新鋭システムだったからだ。

ゲートの突破に失敗すると巡回ロボットが現れる

肝心の展示物に触れようとするとトラップが発動する・・

仕掛けは単純ながら、その構造が複雑で、シュウといえども解析には難を生じた


・・さすが警備レベル「SS」・・・


それでもシュウは、一つ目のゲートを突破・・内部に侵入した

シードは外で構え、周囲を警戒する

・・イザとなったら大暴れして、シュウの脱出のチャンスを確保する

彼はシュウの相棒として、彼の考えを理解していた


・・安心せぇ、お前の気が済むまでワイは協力したるわ・・

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静かな廊下を進み・・巡回ロボットを避け、シュウは無事に展示室に辿り着いた


・・いよいよ、最後の獲物にかかろうとした矢先・・


『シュウ!敵や!・・見つかった!!』

「シード?・・・・何に見つかったの?」

『ギアや!・・こ、こないなトコにギアがおるなんて!!』


・・ギア・・10メートルほどの機動兵器・・

シュウもかねがねその設計をしていたが、作った事はない

そちらの方が面白そうだと思った彼は、展示室から廊下に出て、屋根の上に戻ってきた


・・眼下にはシードと、一機のギアが追いかけっこをしている様子が見える


シード専用に作られた強化服・シードシェル

外見を3メートルのロボットに変えた彼は、全長10メートルという巨大なロボットと格闘戦を繰り広げる

相手のギア・・白い機体にマントという、変わった装備のギアはなかなかの機動性で、シードを捕獲しようと次々に攻撃を繰り出してくる


・・アレは・・「70」ナンバーズ?・・・・なんで廃棄された機体がここにいるんだ・・?


シュウの目にはシードのピンチより、相手のギアの珍しさの方が優先されて映る


・・騎士の甲冑を模した流麗なライン、専用にしつらえられたマント、そしておそらく、どこかにあるであろうオプションのランサーとシールド・・

・・趣味の機体とは、この70シリーズをおいて他にあるまい。


『ちょこまかと・・いい加減に捕まれ!このドロボー!!』


パイロットの声は荒々しく聞こえた

それはもう、その性格を現わすように・・


『シュウ!・・ど、どないするんや!?』

「シード・・シェルから脱出して。」

『わかった!・・きっちりカモフラ頼むでっ!!』


シードはシェルの音声認識コードを入力する

・・「EXIT」

シェルの背中が開いて、シードの身体が撃ち出されるように飛び出す

その直後・・シェルは目映い輝きを放ち・・・


・・ずどぉぉぉぉ・・・・・・


自爆した。

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・・眼下では、かなり愉快な光景が広がっていた

シードシェルが爆発した事で、それを捕獲しようとしていた70式・・騎士のギアがボロボロになったのだ

70式と言えば展示用に作られたのが本来の目的・・装甲なんて飾りに過ぎない。


『あ・・相棒~っっ!?』


パイロットの絶叫が聞こえてくる

・・シュウはブリッツァーの衣装を解くと、シードを連れて何食わぬ顔でその現場に現れた


「どうしたんですか、コレ?」

「どうしたもこうしたも・・」


シュウの前に降りてくるその70式のパイロット・・

オレンジ色の髪に、お世辞にも似合わない眼鏡・・ラフなスタイルの男

・・左胸のプレートには、「T.C UNIONRIVER」とあった


「ブリッツァーとかいう野郎のロボットが自爆して、こうなっちまったんだよ・・」

「災難でしたね」


・・現場にはその男と、数人の警察官が来ていたが・・他には人影が見あたらない

どうも・・安心しきっていたようだ。

男はがっくりと肩を落とし、泣きそうな声で言った


「ああ・・すまねぇなスターゲイザー・・・・せっかくの初仕事なのにいきなりこーいう事で壊しちまって・・」


シュウは・・ここぞとばかりに投げかけた


「よければ・・・僕が修理しましょうか?」


男は、大泣きしながらシュウにすがってきた


「た・・頼むぜ~!!大事な商売道具(相棒)なんだ~!!」


シュウは対照的に、思いっきり嬉しそうに笑っていた

・・心の中に決心した事があった

無いと思っていたものが目の前にある

すでに歴史から失われたハズの70ナンバーのギア・・

・・そんなものに好奇心の沸く自分が、そこにいる

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それから彼のした決心は、その男のギアを直すため、彼のホームとするヨーロッパへ行くという事だった

すなわち日本を出る・・そういう事である

世の中に出て、もう少し自由な生活を送ってみたいと・・ブリッツァーとしての活動の中で考えていた

本当は・・「ハルカのように自分を普通の人間と思ってくれる人がいるかもしれない」

そう考えた末の決断だった

誰にも告げずに去る・・

本当ならそうするだろうが、ハルカが空港まで来ていた以上、シュウに追い返す理由はなかった


「・・僕はみんなが嫌いになったんじゃないよ」

「わかってる」

「あなた・・いや、「君」みたいな人が他に一人でもいてくれたら、それで僕は戦える」

「うん」


シュウはそこで、初めて照れくさそうな笑いというものを見せた


「・・「あの答え」は・・・また・・ここに戻ってくることがあったら、その時に答えるよ」


ハルカは泣かなかった

シュウも泣くような事はなく、始終笑っての別れとなった

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「・・フ・・・ッ」


シュウはラディオンを整備し終えて、入社前の記憶を自分で笑った

・・天才天才・・悩むだけで逆に「大バカ」じゃないか、僕は・・

現在ではたかが身分を偽っただけで、彼が「滝村修」である事はなんでもなくなった

腰のあたりまで長かった髪も短く切り、ロングコートを羽織る事で身体を隠したシュウ


・・ロディ、メイ、セラ、ネス・・彼ら入社当時のユニオン社員達は彼を普通の少年として迎えてくれた

シュウはロディのスターゲイザーを修理したら、また旅に出るつもりでいた、それを・・

ロディ自身の言葉で「ウチのメカニックをやらないか?」と言ってくれた


・・もっとも、今でもロディはシュウの秘密を知らない

果たして今、自分の秘密を知ったら・・あの男は自分を認めるのか、否定するのか

誰かのように自分を普通の人として扱うか、それとも天才として避けるようになるのか


・・あれから一年経った今でも、シュウの心にはそれが引っかかっていた

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「だぁぁぁぁぁっ!?」


シュウがガレージを閉め、階段を上って事務所に向かおうとすると・・ロディが上から転げ落ちてきた

シュウも声を上げる間もなく、巻き込まれて本日2度目の階段落下を体験することになってしまう


どがっ・・・


痛そうな音がして、下に落着する二人


「・・・・」

「・・・・」


ロディもシュウも、言葉が出なかった

・・いや・・うかつに動けない理由があったため、無言の時間が必要だった


二人は意図しない所で、口づけを交わす事になってしまっていた(汗)


「・・ぐぇ・・うげ~・・・・・・・(泣)」


ロディは壁に手を突いて、吐くような動作をした

・・ちなみにファーストキスである(笑)


「・・わ、悪いシュウ・・だけど一応俺にも謝ってくれ・・うううう・・・男と・・男とかよ・・・(泣)」


いかに社員といえども、家族同然といえども・・ロディは泣くしかなかった


・・母さん・・俺の夢がまた一つ消えちまったぜ・・・・


・・シュウは無言で起きあがると、乱れた衣服を直そうとした

それとロディの目が合うのは同時だった


「・・!?」


ロディはシュウに急接近すると、いきなりコートのボタンを外してひんむいてしまった

流石にシュウも、困惑する


「な・・何するんですか・・?」


彼の目はシュウの身体に向けられていた

コートの下にはワイシャツを着ていて、そのワイシャツの下には・・

普段は余裕のあるコートに隠れているので、彼は以前のように布きれを巻くような事はしていない

・・つまり・・今、シュウの身体は・・


「・・女・・・・・・だったのか、お前・・・・」


ロディは口の端を引きつらせて苦笑いしている

シュウは予想通りの反応が返ってくると判断して、いつもの笑みではなく・・以前やっていた「愛想笑い」を浮かべた


「いいえ・・正しくは、「両性具有者」・・・という奴ですね。」


シュウは少しだけ、肩を振るわせて続けた


「・・さて・・どうしますかロディさん?・・・僕はこういう、中途半端な存在なんですよ・・」

「よかったぁ~・・・」


シュウはずるっ・・とすっ転んだ

ある意味期待して・・予想していた全ての反応と、全く違うリアクション

ロディは安堵のため息をついて、清々しい顔で言った


「ファーストキスは誰と?って質問で「男としました」なんて将来どっかで語る事になったら俺は死ぬつもりだったが・・」


シュウの肩に両手を置いて、これ以上ないほどの微笑みを浮かべて言った


「お前が女(?)でよかったよ、これなら俺も安心して後世に語り継げるぜ♪」

「・・語り継ぐのはどうかと思いますが・・」

「イヤぁ~・・それにお前ってなかなか軽装にならねぇだろ?・・みんなでどっちなのか予想しあってたんだよな」

「・・・・・・はは」


シュウはまた、愛想笑いではない笑顔に戻っていた

もちろん今でも愛想笑いや苦笑いをするが、「以前の」愛想笑いではない

思い切ってシュウは自分の過去、サクラの手によって隠蔽された自分たちの真実、全てを語ってみた

・・案の定、ロディは関係ないと笑っていた

セラも、メイも、ネスも、ガンマも・・みんながみんな、シュウを一人の人として見てくれていた


「だって、シュウが頭良いのは考えているからでしょ?」

「・・考えていない奴が言うか(笑)」


メイのパンチがヒットして、ロディが事務所の床にめり込んだ


「・・それにしても・・いいよね・・・シュウって男の子なのに、ボクより胸大きいんだ・・・・」

「・・ン・・・・まぁ・・僕は気にしてないけど?」

「・・む~・・・・・」

「お、お姉ちゃん・・本気で悩まなくても・・そのうち大きくなるよ・・」

「そうだね・・・セラより大きいからまぁいっか♪」


・・セラは無言で歯ぎしりをし、右手を握りこんだ


「ご・・ごめん(泣)」

「ううん・・・別にお姉ちゃんに怒ってるんじゃないの・・・」


その部位にコンプレックスを抱えているのは、セラの方だった(汗)


「・・とりあえず・・です」


まとまりがつかないので、ネスが咳払いをしてシュウの元に歩み寄った


「シュウ様、別に気にする事なんてないんですよ・・私達は今まで通りで良いでしょう?」


あいにくと、今でもシュウの心にはいくつかの感情が存在していない

・・本当なら涙の一つも流して喜ぶのが、この場に相応しいのだろうが・・・


「そう言ってもらえると、ありがたいよ」


いつもの笑顔、そして言葉数も普通より少ないが・・自分の全部を受け入れてくれた「家族」に対する最大の賛辞であった

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NEXT-EPISORD・・

第08話「REVERSE TO 10days(前編)」




メイ「そういえばシュウ~・・ホントは男の子?女の子?」

シュウ「・・ゴメンね、どっちでもないんだ」

メイ「えぇ?・・・だからぁ、ホントはどっちなの?ごまかさないで教えてよぉ~・・」

シュウ「・・だからね、僕は半分男だけど半分は女なんだよ」

メイ「ふ~んだ、シュウのイジワルぅ~!!(怒)」

シュウ「・・・・・(少し困惑)」

ロディ「ところで、ゼファーの頭身は直ったのか?」

シュウ「?・・・前回まで地下でやっていた作業は、別にゼファーとは関係ないですよ」

ロディ「てんめぇぇぇぇぇぇっっ!!!!






・・第07話・・・終・・・・・



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