T.C.UNIONRIVER ~ユニオンリバー社~

第11話-5

・・周りの忙しい声で、僕は目を覚ました

・・うっすらと、朦朧とする意識の中でも痛みがかすかにある

どうやら撃たれたのは夢とかそういうのじゃないようだ

瀬奈ちゃんは逃げ切ってくれただろうか?


少しずつ意識がはっきりしてくるに従って、自分が天井から手を縛られ吊されている事、やはり銃弾によるダメージはほったらかしにされている事が理解できた

・・しかし・・何故僕は襲撃グループに捕まったんだろう?


普通ならその場で射殺なり、放っていくなりされるハズだ

何故こいつらは僕を・・?

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そのころ・・ユニオンリバーのメインスタッフ・・アル、ラグナを含めたメンバーは工業衛星・・今日からリゾート衛星に変わる「アルト」にいた


「首相の襲撃・・殺して死体から情報を得るか・・単調だがロストテクノロジィを得られるとあれば一番楽な方法だな」

「首相さん以外は照合できないもんね?」


指紋照合・網膜確認・DNAチェック・・ありとあらゆる情報が必要だが、要は該当人物の「指」「目玉」「血液」があればどんなチェックも足りる。

襲撃に予告をかけてきた以上、どんな策で来るか知れたものではない・・

ユニオンリバーの面々もそれは理解していた

ロディ達なら当たってからどうするか決めていたが、彼らはその意味ではプロの集団である

当時のユニオンリバーからは想像もつかないほどに堅実で正確な、凄腕ばかりだった


「しっかしアルも今回は奮発したねぇ?」

「何が?」

「トップメンバーをそろえたばかりか試作のゼンガーまで持ち出すなんて・・」

「乗れるヤツがいればな。・・俺ですら手こずるようなギアなんだぜ?」

「・・・だからってアトラス持ってくることも・・」


アトラス・・それはアルがかつての「帝国」との戦いで使っていた40メートル強のロボット。

彼の姉・ロディの妻シルヴィーが作った多機能戦闘兵器・・総合力ではデストロイにも匹敵する

しかしこのビル群の間にこんなものがあっては目立つ目立つ(汗)


「置いてきなさい」

「・・・ちぇ。」


アルはラグナに言われて、しぶしぶ機体を下げに行った

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・・その数時間後・・パレードは始まった

襲撃予告をかけてきた連中は今の所見えない


「・・このまま何事も起きないのが一番なんですがねェ」

「そうそうスムーズに済まないだろ、相手は暴力手段しか持たない理想主義者共だし」

「テロリズムってのぁ怖いもんで。」


アルと狙撃要員の数名は、進行上の左右にあるビルの屋上に配置している

アルの隣にいる男はスナイパーライフルを構えているが、アル自身は小型のレーザー発振器を持っているだけだ

いつでも白兵戦、何があろうと白兵戦

・・それこそが彼の主義である。


「社長代理、動きがありました!」

「だからアルでいいって・・・・動いたか!?」


瞬間、アルは眼下に閃光を確認した

混乱が生じ、一気に周辺がどよめきに包まれる

銃声がして、ラグナ達が何者かと交戦を始めたようだ


「全員、任務を遂行しろ!!」


アルはナビに叫んで、そのままビルから飛び降りた・・

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・・人の気配が少なくなったな・・

オミは傷の痛みすら薄らいできている事に危機を感じていた


・・・もしかして俺、死ぬのかな・・・

意識が薄らいでいる

自分で自覚こそないが、これは危機的状況だろう


「・・ぐあっ!?」


吊されている彼の前に、男が滑り込んできた

・・蹴り飛ばされた・・いや、それ以前にケンカでもしたかのようにボコボコにされている

ふっ・・とオミが顔を上げると・・どこかで見た事のある青い髪の女がいた


「・・・君は・・・・」


女は黙ってオミの顔を見ている

直感的に「助けが来た」・・そんな感じがした

死ぬかどうか・・と考えていたさっきまでの緊張がきれて、オミは気を失った

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「ん・・・」

「やっと起きましたか、変態さん」


次に目が覚めた時は空が青く・・隣に瀬奈がいた


「よかった・・無事だったんだね」

「フン、何が無事ですか・・おかげで私の手間が増えていい迷惑でしたわ」

「・・?」


手間・・何の事を言っているのかよくわからなかった


「・・・何故私をかばったんですの?」


いきなり切り出されてきょとんとするが、オミはにっこり笑って答えた


「・・僕はああするくらいしかできないんだ、何やってもダメなヤツだから・・」


・・装備品を支給してもらうのを忘れていた。

メイが持っているようなハンドバリア、あの類があれば撃たれるような事もなかったハズなのに・・

これもまた、彼の言う「ダメな」所なのだろう


「・・・だけど、私は別に撃たれた所で・・・」


言いかけた所で、瀬奈ちゃんの肩を赤い光がかすめた

・・レーザーサイトの光・・!!


・・どんっ!!!

あの時と同じような光景だ

水族館の前と同じように、僕はかろうじて動く右足を使い、最後の力で飛び出して盾になる


「うッ・・・!?」


普通の拳銃以上の威力の弾丸、つまりスナイパーライフルの大きく、貫通力のある弾丸を右腕に受けた

・・千切れた

・・・・千切れてしまった


鈍い衝撃と僕の身体の「無い」・・「無くなった」という感覚は同時だった

オミの右腕・・瀬奈の前をふさぐように突き出した彼の利き腕は、彼の身体を離れていた


ずざぁぁ・・と地面を滑り、そのままの体勢で動かなくなる

・・腕が完全に弾道を反らしたおかげで、瀬奈の身体には全く・・傷一つなかった


「・・・瀬奈ちゃん・・無事?」

「な・・何を!?なんて事を!?」


・・もろい物だった

スナイパーライフルの衝撃はオミの骨を砕き、貫通力を持って腕を吹き飛ばしてしまったのだ

瀬奈は膝をつき、オミの顔をのぞき込みながら叫ぶ


「・・どうして・・そこまでして私の盾になるんですの・・腕が・・・・!」

「・・・クオリファイドの言う通り僕はダメなヤツなんだ・・」


オミは絶え絶えの息で語る


「何一つまともに出来る事はないし、得意だと自慢できる事もない・・」


傷からの出血を見て、瀬奈の顔が青ざめていく


「・・だから身体張るくらいの事しか・・・・できないんだ・・・」

「・・・・・・・・・」

「僕はあの人になりたい、あの人みたいに・・・・・・・・」


オミはそこまで言って、気を失った

・・まだ死んではいないようだが・・出血がヒドイ上に、最初に撃たれた時の傷の状態も気になる

一刻も早く病院に運ばないと危険な状態だった

・・・あるいは手遅れなのかもしれない


「自分の意地ですか・・・でも、そのために私の盾を・・私の命を守ろうとしてくれたのですね」


瀬奈は涙をこぼし、にっこりと笑った

・・こんな気持ちになったのは初めて・・いや、かつて一度だけこんな気持ちになった事があったか

オミの理由が何であれ、命がけで自分を守らんとしてくれた事はもはや賞賛に値する

瀬奈は息をしていないかのように静かなオミの口に、静かに自分の顔を近づけた


「ありがとう・・ございます。」


オミから離れると、マントのように上着を翻し、つかつかと通りの方向へ歩いていく

・・スナイパーライフルの赤い光が、ずっと追跡してくる

・・撃つつもりはないようだ


「・・さっさと降りて来たらいかがですか?」


瀬奈は右上の方向、ビルの上を見上げてつぶやいた

・・タイミングを同じくして、上からIFRとおぼしきロボットが飛び降りてくる

そして瀬奈の後ろ・・オミの倒れている側と反対から、十数人の男達・・水族館で瀬奈を狙った連中が現れた


「ずいぶんと警備が手薄でしたわ・・あなた達、私を舐めてらっしゃるのかしら?」

「他の連中は別用でねぇ・・」

「・・・首相の誘拐・あるいは暗殺の後死体の確保・・ですか・・ご苦労様。」

「俺たちの仕事はお嬢ちゃんの確保だ・・大人しくしないと痛い目に遭うぞ?」


瀬奈の正面・・振り返ったので今は背後、その先にいるIFRがマシンガンを引き抜いた

男達も各々に武装し、瀬奈に向ける

・・最も・・男達も本意ではない、何故こんな子供に銃が必要なのか・・それが今、この瞬間もわからないでいた


「殿方は女性に優しくするものですわ・・全く、礼儀のなっていない方達。」


たっ・・と、瀬奈の右足が地を蹴っていた

目にもとまらぬ速さで男達の背後に飛び、手にした「拳銃」を放った


「ぐあっ・・何!?銃・・!?」

「子供がそんなもの持つんじゃねぇ!危ねぇだろうが!?」

「あ~ら、あなた達のような単純行動・低脳集団よりは、大人のつもりですわ♪」


瀬奈の銃・・小柄な身体でも扱えるように調整された銃「リグレット」は簡易リニアレールによる加速を行っている

貫通力はもちろん、弾速はかなりのものになる!


「私を舐めた罰ですわ・・せいぜい苦しんで地獄へお逝きなさい・・・」


いちいち「お嬢ちゃん」だの「小娘」だの、瀬奈の気に障る言い方しかしない

今までの襲撃者もそうだった

実はことごとくが「護衛を引き受けたT.Cや警備会社の連中ではなく、瀬奈自身によって片づけられている」のだ

・・「瀬奈の怒りに触れたばかりに」

しかし、今回の瀬奈はまた違った理由で怒っていた


「・・許すわけには行きませんわ・・泣いてわめこうが土下座しようが、私は絶対あなた達を許す事はできませんわ!!」


瀬奈は小柄な身体とウサギのように素早いフットワーク、そして驚く程の反射能力で銃弾をかわし、男達の手をことごとくすり抜けていく


「フン・・」


必死に飛びかかってくる男達を鼻で笑い、瀬奈はリグレットの銃弾を次々と見舞う

瞬間、目の前に大男・・

足払いで転ばせ、腹に思いっきり拳の一撃

見合わない程強い、そして速くて戦闘慣れしている


・・7歳やそこらの子供にできる芸当でないのは一目瞭然だ

彼女の生活を見ていなければ、今この場だけの情報では戦闘ロボットにも匹敵する戦闘力・・それこそ人間であるかも信じられない


「・・・!」


マシンガンを持っていたIFRが飛びかかってくる

瀬奈は片手でその1メートルに満たない機体を受け止めると、掴んだ胴体を右手一本でねじ切った!


「に・・人間なのかよ!?」

「失礼な・・私のような可愛い女の子を人間とも思えないなんて・・」

「撃て、さっさと撃てよ!!」

「無駄無駄・・銃弾なんて効きませんわ。」


あくびが出るほど眠い、そういった口調で受け止めた銃弾をバラバラとこぼす

・・これが決定打になった


「ひ・・退け・・退けぇぇ~!!」

「逃がさない・・というより、許さないと言ったはずですわ。」


リグレットの銃身がやや伸びる

後部の薬莢排出スロットが大きく上下に開き、瀬奈が取り出したカードリッジがセットされる


「・・・・・一応礼儀だけは振るっておきましょう・・「さようなら」・・ですわ。」


リグレットが火を噴いた

・・青い炎・・プラズマ化した弾丸が空中で弾けて、拡散した青い光は連中を一瞬にして「消し去った」

そう表現するよりなかった。

十人前後いた男達の形跡は本当に何も残っていないのだ、全く・・・・


・・煙を噴くリグレットのスイッチを操作し、内部の熱を外へ逃がす


「・・私に手をあげたくらいなら、死なずに済んだハズですけどね・・」


瀬奈はつぶやいて、オミの元へ駆け寄っていった

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