2009/08/26(水)18:01
宮日連載、友の自分史「ブラジルに五十年」-19
大学卒業と同時に渡伯した学友長友契蔵君の自分史「ブラジルに五十年」の紹介、第19回
No41「ヤシの木王国」故郷を思い出す樹木
私が育った宮崎市の実家は、市指定の名木白ツバキ、タブ、ヒトツバ(イヌマキ)ヤブツバキがある。市内の住宅周辺にこれだけの大木が残っている所は少ないのではないだろうか。ブラジルに渡った後は、山を眺め、大木を見ると故郷を思い出す。
ブラジルはヤシの木王国で、ヤシの実は豆粒ほどからラグビーボールの大きさまである。森の中ではほかの木を威圧するように立っている。ふるさとの木戸に植えてあった棕櫚の木を思い出す。
北伯を旅すると海岸線や街の中にココヤシの並木が目に付く。「金のなる木はココにあり」と日系人がリオヤやパイヤ方面に大々的に植えたこともあるが、ココヤシほどブラジル人に恩恵を与えた木はないのではないか。
若いココヤシは実に蔗糖、蛋白を含む500CCくらいの汁液がある。熟すとビタミンB、C、粗繊維、脂肪が豊富。北伯では、タピオカの粉と干し肉とココヤシの水を飲んでいれば、何とか飢えをしのげるのである。「ココヤシ」は東南アジアから導入されたといわれている。
最近ブラジルでは、国家プロジェクトとしてアフリカから導入されたデンデヤシをアマゾン地方約100万ヘクタールに栽培してバイオディーゼル油を採集する計画が立てられている。
アボガドの果実を見ると宮崎の実家木戸のタブを思い出す。アボガドはクスノキ科で、幼果はタブの実にそっくり。またパイネイラの花は遠くから見ると日本の桜の花を思わせ、多くの日系人が俳句や短歌に詠んでいる。
No42「番犬を飼う」雑種を襲い警察沙汰
現在、ラブラドールとテリアを飼っている。ラブラドールは夜眠れないほど吼えるが、昨年空き巣に入られて1万ドル以上盗まれた時、何の役にも立たなかった。
スザノ市に引っ越した当初、自宅は中心街から離れていて治安もよくなかったので非常に獰猛な大型の番犬「フィラ・ブラジレイラ(土佐犬に似ている)」を飼った。ある日義父がエサやりに犬小屋の戸を開けた隙に2頭のフィラが飛び出して別に飼っていたコリーの首に噛み付いた。耳に水を入れてようやく引き離したが、コリーはその日のうちに死んだ。
また別の日には、車を車庫に入れ、門扉を閉めようととした時、フィラが鎖を切って飛び出してしまった。大声で犬の名前をを呼びながら追いかけたが遅かった。近くの人が飼っている子犬をかみ殺してしまった。
飼い主から「死んだ犬と同じ犬を返せ」と抗議され、集まった野次馬は口々に「フィラを殺せ」と言う。サイレンを鳴らして警察が来る。最終的には警察署長が中に入って、近いうちに同じくらいの犬を見つけて返すことで勘弁して貰った。
泥棒に入られるのも腹が立つが、犬の問題で頭を痛めるのも困ったものである。
(フィラ・ブラジレイラという犬種は多分土佐犬のルーツの洋犬と同じだと思う。そっくりな姿、重さが60キロというので土佐犬よりは小型?元は、逃げた黒人奴隷の探索、先住民対象の奴隷狩り用に改良された非常に獰猛な犬。ブラジル人はこの犬には絶対近づかないという)
No43「研修生受け入れ」各所に案内して歓待
宮崎農業青年ブラジル国派遣研修制度は1982年に開始、今年で27年。これまで51人がブラジル農業を体験した。
帰郷後は、ブラジルからの留学、研修生の受け入れや世話に尽力していただいている。この事業がなかったら、宮崎とブラシルの関係はもっと疎くなっていたことだろう。
ブラジルの国土は、日本のざっと23倍、宮崎県内を案内するのとは事情が違う。県人会員はアマゾン河口のベレンや1200キロ離れたポルト・アレグレにも居る。どうしても見せたい「イグアスの滝」はアルゼンチンとの国境にある。気候も熱帯から雪の降る温帯まである。
できるだけブラジルのいいところを見せたいと歴代役員が手分けをしてお世話してきた。私も、1984年、第3回生3人を自家用車で約3千キロの案内旅行をした。宿泊は行く先に住む宮崎県出身有志宅、イグアスから次の目的地への途中、ガソリンスタンドで会ったトラックの運転手に間違った道案内を受けて300キロ余計に走る羽目に。時間になっても着かないのを心配した県人会の人が警察に問い合わせるやら大騒ぎになっていた。夜中になってようやく目的地に着いた。宿泊先の国府さんへは大変な迷惑をかけてしまった。
今年は、2月10日から10日間、ベレンからリオ、ポルト・アレグレ、イグアスと約1万キロの旅をしたがすべて飛行機を利用したので快適な旅だった。