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2013/12/01(日)17:08

ここがヘンだよGPIF改革案

その他雑談など(21)

去る13年11月20日に「公的・準公的資金の運用・リスク管理等の高度化等に関する有識者会議」が年金改革に係る報告書を提出していました。 提言の要旨は「国債中心の運用を見直した方が良いですよ」といった内容であり、結論部には大いに同意しますが、以下の通りおかしな内容も複数含まれていました。 ここでは、その中から3つほど変な箇所を紹介させて頂きます。 ■ ■ おかしな提言その1:アクティブ運用比率を高めることを検討すべき アクティブ運用とは、ファンドマネージャーが自分の裁量で金融商品を売買する運用手法であり、株価指数等に連動させるパッシブ運用(インデックス運用)に対比されます。 そして、過去のデータを見る限り、アクティブ運用のリターンはパッシブ運用に負ける場合が多いため、アクティブ運用の比率は増やすべきではありません。 例えば、『インデックスファンドの時代』J・Cボーグル著という本で、1983年6月から1998年6月までの株価指数(ウィルシャー5000)と200本のアクティブ運用ファンドの成績が比較されています。 結果を端的にいえば、200ファンドのうち指数に勝ったのは33ファンドだけであり、残りの167ファンドは指数を下回りました。アクティブ運用の勝率は、15年間の長期で見ると16.5%しか無かったわけです。 では、なぜ優秀なファンドマネージャーが知恵を振り絞ったアクティブ運用が、機械的なパッシブな運用に負けてしまうのか・・・要するに以下の2つが理由となります。 ・アクティブ運用している人の合計=市場平均(=インデックス) ・アクティブ運用は、取引コストが嵩んだり、投資家に請求する運用手数料が高いため、コスト控除後のリターンが低下する 余談ですが、今回の有識者会議は7名の委員から構成され、そのうち3名の委員が金融機関系列から参加しています。(JPモルガン証券、大和総研、野村総研) 証券会社にとって見れば、アクティブ運用の方が相対的に大きな手数料を請求できるので、ポジショントークの一貫としてこういう主張を潜り込ませているのでしょう。 おかしな提言その2:運用コストを引き上げるべき 報告書を読んでいて、露骨なポジショントークに失笑してしまったのが、以下の一文です。 運用コスト等 各資金は、コストをできる限り抑える観点から委託手数料等の縮減に努めており、国際的に見ても極めて低い水準となっていることは評価し得るものの、その結果、かえって十分な情報を得られず、貴重な運用機会を逃しているほか、金融・資本市場の発達を阻害する要因になっている可能性がある。 上述した通り、運用コストの高いアクティブ運用は、一般的に証券会社に利益を、投資家には貴重な運用機会ならぬ貴重な運用損失をもたらしてくれます。この有識者会議はいったい誰のための提言をしているのかと疑問を感じざるを得ません。 さらに、日本の投資信託のコストは、購入時の販売手数料・運用残高に係る信託報酬ともに米国に比べ大幅に割高となっている現状があります。 (参考)投信手数料の日米比較(2011年度) ・販売手数料:日本2.73%、米国1.0% ・信託報酬 :日本1.48%、米国0.79% ※参考サイト:山崎元のマネー経済の歩き方 金融・資本市場を米国のように発達させることは、日本の経済の活性化のために必要なことだと思います。そのためにも、年金には更なるコストの引き下げを証券会社に迫って頂きたいものですね。 おかしな提言その3:ROE等を考慮した指数で運用すべき ROE(株主資本利益率)とは、企業が株主から出資を受けた資金に対してどれだけの利益を計上したかを示す指標です。一般的に、ROEが高い企業は収益が高く良い会社だと言われます。 とはいえ、良い会社を買えば儲かるわけではありませんし、ROEは投資指標として特に有効でもありません。 例えば、こちらのサイトでは1951~1996年の間、米国株式をROEで10分位に分けた場合の各グループの成績が紹介されています。 このデータから、米国における約45年間の実績を見ると・・・ ROE最高のグループ:年率リターン11.32% ROE最低のグループ:年率リターン12.27% となり、ROE最低のグループでも、ROE最高のグループと同じ位(というか少し高い)のリターンを獲得出来ています。 ちなみに他のグループを含めても、ROEが高くなるほどリスクが高まるものの、リターンが高まるという傾向は明確には見られません。 ■ ■ 以上、3点ほど有識者会議の提言の中からおかしな箇所を指摘してみました 総論として債券の比率を減らすことには賛成なものの、過去のデータから有効といえない運用戦略が提案されており、その一部は証券会社への利益誘導のためと思われるのがタチが悪いと感じます。 まぁ、日本の官僚さんは馬鹿ではないはずなので、適切な取捨選択をしてくれるはずですが・・・ にほんブログ村

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