般若ー82
#般若にほんブログ村にほんブログ村にほんブログ村「こんどは難しい相手じゃ。心して掛からんと死ぬからな!」シヴァ神は皆を叱咤した。皆に気を引き締めないと、危険な相手なのだ。「悪霊は、人間が生み出した『悪意』の産物。よいか。般若がロボットだとしたら、この『悪意』は、悪魔なのだぞ。儂は、お前たちの与力だと思え。お前達を殺すわけには行かぬから、かく、申して居る、心得よ」「こんどは、悪魔が相手ですか。とすると、内藤さんは悪魔に逮捕されている・・・」「なに?逮捕じゃ?そのような甘いものでは無いぞ。捕縛されておるのじゃ。いや、捕虜、虜囚じゃ。捕虜じゃ!捕虜にされておるわい。そうして、お前たちの世界も、人質に取られておる」シヴァは言う。「悪魔は、いまでこそ、まだ般若の動きに乗じて、時空の乗っ取りを考えておるが、いつかは、般若を使い捨てて、次には、『悪意』を利用するであろうよ。『悪意』こそは悪魔の生みの親。お前達、人間の生んだ、醜悪なものだ」「それでは、いよいよ、神山先生の出番ですね!神山先生は、クロスで悪魔封じだって、なさったんですから。ねえ!神山先生!」先だっても、青年助手が、どす黒いあの、ドブの底のような、『悪意』に包まれた病院の一室で、シヴァたち、異次元の神々に会いに行くために、肉体を離れている時、その恩師から譲り受けた十字架によって、青年の肉体を、『悪意』から護った時の事を思い出して言う。「神山の学識や経験は、儂もこの『姿見』で、異次元からみておった。神山は滅多におらぬ、学者じゃ。ノーベル賞を貰っても、おかしくは無いがの。だが、今回の相手には神山の全知善霊を込めても大変な程の、悪魔だぞ。神山よ、クロスは持っておるな?」シヴァが訪ねた。「はい。このクロスは、恩師から譲り受けた、大切なクロスです、いつも肌身離さず、ここにあります」と、神山は身に付けた質素な、木製の十字架を見せた。 それを見て、海野は、この、神山と言う人物の人柄を思うのであった。 彼を、心理学者へと育ててくれた神山の恩師が、カソリックの聖職者であることは、海野も知っていた。 神山の恩師は、彼を、出来ればカソリックの神父に育てたかったのだろう事は、海野も話の中で、神山から聞いていた。然し神山は、聖職者を選ばずに、心理学者の道を歩んだ。研究者でありつつ、善き信仰を保って生きて行こうとしたその、神山の半生や、自分が聖職に就かずに、研究の道を歩もうと決意した時の、神山の気持ちが、よく海野には分かった。 生臭坊主である海野は、禅寺を兄一人に任せて自分は、海洋生物学の研究者としての道を歩んだが、彼もまた善き仏教徒である事には、代わりは無い。だから神山のその心の内が、海野には、よく理解出来るのであった。 海野は宗教の施設である筈の寺院を、私物化するのも、その住職の身分を、世襲する事も嫌いなのだ。海洋生物学者の海野でも、住職と言う身分や、その寺院の多くが、太平洋戦争前には、世襲されていなかったのだ、と言う事ぐらいは知っていた。そして、それらが、世襲されるべき性質のものでは無く、檀家の総意で決められるべきものであると言う事も。 こうして、敢えて厳しい選択肢を選んだ、神山の人生の結果が、今の神山を作っているのだ。そこに、海野は善き信仰者としての神山と、優れた研究者としての神山の両面を見ていた。「神山先生がいればもう!シヴァ神様の前ですが、勇気百倍ですよ!!」海野が言った。「うむ。神山もようやく生還を果たしたのだからな。水杯とならぬよう、しっかりやれよ」こんどは、シヴァが、静かに言った。「はい、相手が、悪魔ですか・・・」と神山は、またいつものように、思慮深く対応を考え始めていた。「陣を張りませんと、いざと言う場合、危険なのでは?」神山が聞く。「この儂が護るので、その心配は要らぬ。神山も皆も、儂が張ったこの白い光で護られておる。この中におれば良い。一団で内藤を探すのだ。神山よ、この光のシールドから、出るでないぞ」シヴァがこのシールドが初めての神山に言う。「はい、心得ました。でも、シヴァ神様?」「なんじゃな?」「シヴァ神様も、インドの神様でいらっしゃいますので、悪魔となれば、どこの悪魔かしれませぬ。万が一、と言う事がありますから、これを」と、神山は、紙を取り出し、いつかの様に「大自在天計」と書いている。 神山は、これをまた、さらに紙に包むと、『護符』と書き入れて、「これが、逆にシヴァ神様のお力を強め、またお守りするかもしれませんから」と、シヴァ神に渡した。「ありがとう、神山よ。儂も、人間から護ってもらうのは、初めてじゃ。お前らと儂とは、これで、一味同心だ」と言った。「では!また、大捕り物ですね!」と青年が言う。「悪魔をひっ捕らえに行きましょう!!」「バカ者!浮かれていると、やられてしまうぞ!」シヴァがまた、青年を窘めた。「はい」青年が素直に反省をする。「では、参ろうぞ!」と、シヴァ神は、シールドの、白い光で出来た乗り物を、内藤がいるフィリピン沖に進めた。 『悪意』は、フィリピンの海を暗くしていた。いつか日本の空を、ドブの底のように、どす黒く包んだあの『悪意』はまた、フィリピンを、その醜悪な、どす黒い壁で蔽い尽くそうと、その上空にあった。 『悪意』は人間のある所、どこにでも、自由に出没する事が出来るのである。『悪意』は底意地の悪い小細工も、悪毒の牙を剥きだしにした、征服欲を発揮して、化け物どもを現出させる事も、悪い事なら何でもする。 今、シヴァ神の一同が、こちらに向かっている事も『悪意』は既に、察していた。 『悪意』にとって、内藤を取り返されては都合が悪いのだ。内藤と言う人質がいてこそ、神性の高い善なる者たちも、その力を発揮し難くなる。だが、いま『悪意』に対抗する敵はシヴァ神という恐ろしい、生成と破壊の神だ。神山と言う、悪魔退治の術を深く理解し、研究している一流の、心理学者もいるでは無いか。神性高き善なる力が、このような大将に率いられてこちらへ来るとは。これなら、天使の軍団を敵とした方がずっと楽な相手だったのに・・・・。 然し『悪意』は、その戦意を弱めはしなかった。寧ろ、強敵を迎えて、『悪意』は逆に、闘志を燃やした。 『悪意』は、悪魔を生み出す親である。そして、この悪魔の親は、人間ある所、どこからでも力を得る事が出来るのだ。その悪意を餌にする事によって。 悪意ある人は、最も美味しい悪毒を出す。妬みの強い人の心は、『悪意』にとって、人類の中でも、最も美味しい餌なのだった。『悪意』には、妬みと恨みほど、良い餌は無い。『悪意』は人の悪意を餌食にして、いよいよその力を増していた。 悪の味わいは、民族ごとにもそれぞれに異なっている。 欧米人の心は、強いキリスト教の信仰の力によって、妬みや恨みもほどほどだが、猜疑心が強く、あっさりした味わいだ。天使が、彼らを護っているのも邪魔だ。 東洋人でもそれぞれに、悪の味わいは違う。中国人には孔子が、日本では八百万の神々が、それぞれ守護しており、『悪意』には居心地が悪かった。フィリピン人は、美味しくない。心が清いのだ。『悪意』は妬む心が大好きなのだ。フィリピン人の心は清らかで、妬みや憎しみへの捕らわれがあまり見られないので、『悪意』には、美味しくないのであった。 だが、悪意ある人達は少なくない。『悪意』は、世界の悪意ある人から、力をたっぷりと貰って、『悪意』は、最もその力を出す時なのである。人類の心が出す、恨みと妬みは、旨みが一番なのだ。 『悪意』は、シヴァ神や、神山たちに率いられた、善の軍団を相手に迎えて、いよいよ、その醜悪な力を強め、毒牙を剥きだしにしている。 フィリピン人たちが今度はその毒牙の標的になるのだ。天空はすでにどす黒い、あの醜悪な雲に覆われていた。全てのフィリピン国民は、一体何が起こったのか分からずにいた。フィリピン政府は、いま、インドネシア政府に連絡を取り、「貴国のパームオイル生産のための、行き過ぎた、焼き畑農業が原因ではないのか?」と聞いている。「それとも火山か何かが噴火でもしたのか?」 無論、インドネシア政府はこれを否定し、フィリピン政府に人道上の、救援を申し出た。 荻野達も、このフィリピンを覆っている、どす黒くて醜悪な、ドブの底のようになった天空の様子を、日本亡命政府が仮庁舎として使っているホテルから眺めていた。 在フィリピン米空軍、クラーク基地の将兵らにも、この様子は鮮明に見えている。このどす黒い暗雲に、既に数機の米空軍機は未帰還となっていた。「こんどは、こっちに来たんだ・・・・・」荻野がつぶやく。もう荻野も、呆然とするしかなかった。「しつっこいですねえ!こいつはあ!」川島も心底から、憎らしそうに言う。川島には自分達、海上自衛隊員を始め、多くの日本人を殺したこの『悪意』こそが、仇敵そのものに見えていた。 いつか、この、同じ光景に、海野が宮崎の空に向かい「こらっ!」と叫んで見せた時の怒りと同じく、今の川島は、この『悪意』に、どうしても対抗してやるのだと、怒りを燃やしていた。 荻野は、今度襲われたら、さすがの川島もプラットにも、手も足も出ないのではないかと、対応に困っていた。何せ手元には、海自の潜水艦が、僅かに9隻しかないのだ。然も自分達は飽くまでも、亡命政府として、フィリピン政府の元に、庇護下にあるのだ、どうして良いか分からなかった。 そこへ、米国防総省の、プラット国防次官補が来てくれた。 「Mr,Ogino,You can become to be a observer of the Philippine Goverment.So you should to be as a Top of the Jananease Goverement under the Philippine"s Goverment So You shuld to be to continue to Japan as a Nation ,Mr.Ogino.」 「そうか!自分がオブザーバーとして、体験者の一人としてフィリピン政府の助言者になれば良い!自分はこの怪事象の経験者なんだ!」 荻野は、怒れる、海自の川島一佐に告げた。 「川島さん。僕が代表して、日本政府のオブザーバーとして、フィリピン政府に助言して、政府をこの地で、存続させます」 幕僚長の川島は凝と、荻野の顔を見て、そうして荻野の肩を叩いた。(続く)にほんブログ村にほんブログ村にほんブログ村にほんブログ村