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THE Zuisouroku

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2025/10/01
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カテゴリ:小説
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                   地獄の鬼は公務員?




 転んでもましな方に転べ「そうだよなあ・・。我々の時代なんか倫理も何も無かった、そんなことまでが受験に出るかで無いかで判断されていた。変てこな価値観だったなー!」「ジョン・ロックと言う名だけは覚えたって、一冊も読んでなかったり。星も見えないのに正座の観察だとか言われて、日記に書けとか。ナンセンスだけどそれで当たり前。それでもマシだった方で、もっとひでえ事だって多かった」そうそう。「中国人をプラグマティストだと言う割に、日本人はなんなんだ?それよりすげえ、プラグマテイックな!そもそも客観化ができないんじゃあさ、受験もへったくれも無い訳だろ?」全くだ!「変わった連中なんだよ、あいつらは、カネの事しか頭にないくせに!」「国連を自国で独り占めにしやがって!なんだ!貢献と言ったってカネしか出してないくせに!!」 それは内藤尋が小耳に挟んでしまった日本人への悪口であった。
 大物政治家で国連国家日本をその双肩に背負って人生生命の全てを賭けていると言って良い内藤にそう言えるものなどいないはずが、実際には、内藤がいまその妬みの最先端で突き刺され、身動きもできないでいる。常人ならとっくに死んでしまうほど酷い状況だった。 

 だが幸いにして週刊誌報道も無ければ報道自体が存在しない。そんな下らない事は知らない顔でいたら良い。報道が邪魔をして本末転倒、或いは偏向報道が当たり前。そんな状況はそれ以前から幾度も繰り返されていたのに、人はそれを知らずにいただけなのだ。 報道が嘘を言う時代やそんな社会がいつしか当たり前になっていた。観察力の弱い一般人はその嘘を知らず。バレた時には幾らそれに対して怒り、そして騒いだってだれも責任など負わない。その責めを負う必要はあっても、知らぬ顔をして責任を免れてしまえば良い。
 責任なんて、この状況なら知らぬ顔をしていれば、そのうちに忘れ去られるのだから。
 責任などを考えていたらそれこそ、なんにも出来っこないで終わってしまうではないか。

「せっかくの人生を責任責任と、そんな事を言っているのは小者だよ、権力者は無責任で丁度良いか、それでも足らないぐらいだ。できればもっともっと巨悪になりたいねえ!えー?君もそうならんか?え?!あーっはっはっはーあ!」 

 そこに秘書官がやって来た。したり顔で内藤へ耳打ちをすると彼はドアを閉めて去った。あー、君済まんね~え!ちょっと、やぼ用がはいっちまったーあ!」と言うと同時だった。「総理!」勢いよく入って来たのは官房副長官だ。副長官と雖も官邸内ではナンバー5に入る。一介の記者風情など、一たまりも無い。「じゃあ、また!な」と悪びれて見せながら内藤が、副長官に引っ張られるようにして執務室から出て行ってしまった。 

 そのあと記者会見室へ行くと副長官は意地の悪い笑みを浮かべたと思う間に、片方の唇だけを吊り上げて顔を引き攣らせながら「けけけけけ!」と、狂人みたいに笑うのだ。内藤が会見場に入った途端、扉がバタン!と大きく音を立てて閉じられ、序でに表からは鍵をかける音が聞こえた。出口が塞がれてしまったのだ。 
 記者100人が手ぐすねを引いて内藤を待っている。彼らは内藤を苛め抜き、何だったらここで殺したってかまわんと言われていた。煮て喰おうが焼いて食おうが、君たちの自由だよ、と言われた100人の記者たちは無論そのつもりであった。然し、簡単には殺さない。勿体ないでは無いか!内藤を思う存分痛めつけ、いじくりまわし、泣きべそを掻いて土下座するまでは、苛め抜く!「いーいっひっひっひーい!!」 

 気が付くと内藤は自分の額から脂汗がしたたり落ちているのに気が付いた。狂気の沙汰がそこに待ち受けていたのである。(図られたっ!あの副長官奴!俺をハメやがったなっ!)と思った時にはすでに時遅し。騙された民衆と同じに首相が記者によってこれから虐め殺されるのだ。ここはその刑場だったのである。 にじり寄る100人の記者たち、しかし後ろには壁際が迫っていた・・。 
 汗が流れてる!滝の様だ・・!暑くて暑くてしぬ!水だ、水をくれっ!
 
 そこで内藤は終に取り囲まれた・・。 
 
 がばっと!飛び起きた!!声も立てぬ。悲鳴の一つも出せぬほど、恐ろしい夢だったのだ!! 
 はあ!はあ!はあ!はあ!! 
 呼気が矢継ぎ早に出る。唇も喉もからからに渇き切ってどのみち声も出せない。
「!っくあ!くあ!か!」

 声にならない声を上げるが諦めて自分で立ち上がり、小卓まで歩いた。水指から乱暴にコップを取り上げて、それを置くと、コップががたん!と音を立てた。そこへ水が飛び出てあふれる様に注いで飲み干す。まだ全く足りない!もう一つ。

 ぜんぜん!飲めども足らぬ渇きだ、水指しが空になったが咽喉は未だ、渇いたたままだ。いや、なおさら非道く渇いた!水指しに水を入れて欲しいが声も出ない。仕方なく自分で水を汲みに行こうと、水指しごと取り上げてドアーを開けた。すると目の前は、切り立った断崖絶壁だ!おちるっ!おちるーっ!!! がばっ!と跳ね起きた!! はあ!はあ!はあ!!はあ!!・・・。「夢かっ!」と言ったつもりだが、また声も出せないほど、喉も唇も渇き切っていた。水を飲みに小卓の前まで歩き、水指しから乱暴に・・。 

 内藤は都合三度、似た夢を見せられて、夜の夜中に都合四度も飛び起きた。喉は本当に渇いていた。
 だが、あんまりだ、と思った。二度までだったら、夢の中で夢を見ていた夢を見た事があった。だが四度も飛び起きる事になったのはこれが初めての事だった。

「えーい!もう起きてしまおう!」 時計は三時半だ。これからもう一度練るなんて無理に決まってる! 

 起きてしまう決意をすると、不思議に落ち着いた。
 内藤はようやく水を、味わいながら飲む事が出来た。

「しっかし!なんだったんだあ?今の夢はあ!」と、呟いてから、ソファーに腰を降ろし、そして「はーあっ」!と、深くため息を吐いた。 

 どの道、この先も碌な事は無いんだ!こんな時期に首相になるなんて!内藤にしては珍しく、ネガティヴな気分がする。
 真っ暗な夜中だからこそ、一人こうやって言いたい事だって言えるんだ。いいじゃあないか!たまにはと、終に内藤はそこで開き直った。
「おし!酒でものもー!」 
「つまみはっと!あ!そうだそうだ!レーズンバーターがあったんだ!あれが好い!そう思うと今度はなんだか、ウキウキする! 早起きはするもんだ!冷蔵庫を開けると中にはサラミソーセージにレーズンバターにシウマイに・・。なーあんだ!いろいろあるじゃあないか! 
 内藤はその中からとりあえず、ビールとレーズンバターに、鰹のたたきを取り出して、盆に載せ小卓へと運んでから腰かけた。

 こんどは「ふっ!ふっ!っふーう!」と背後からの声・・!
「なんだ!今度はなんだってーえんだっ!さっきっからまったくーう!良い加減にしろよっ!!」
 内藤はグラスの2センチばかり注いだウイスキーをきゅっと!一気に飲み干した。
 そしてグラスにもう一杯注ぎ、声のした背後へと、そのまま前を向きながらグラスの中味をぴしゃっつ!と叩きつけた。

「ほらっ!お清めっ!」
「のみやがれ!」

 そしてグラスまでを背後の床へと放り投げた。

  ・・・・。



 時間的には朝が来ていた。内藤は執務室でひとり徹底して酒を呑んでいる。眼は据わり、三白眼になって凝っと前方を睨んでいる。そのあまの姿勢を崩さず、眼もそのままにグラスで半分ほども注いだ酒をまたぐーっと!干してしまうと、レーズンバターをつまんだ。

「もうどうにでもなれ!あんなに早朝から俺を起こすから悪いんだっ!何があったって今日はとことん!呑んでやるからなっ!」

 叫びとなって廊下まで聞こえるほど、大きな声だ。
「政治家の顔だ!悪いかっ!政治の何がわるいっ!え!?」
 もうこうなったら誰も執務室には行きたがらない。泥酔こそしてはいないが、少なくとも良い酒の飲み方とは到底。・・、いえなかった。

 何だって総理はあんなに?
「さあ?何だか夜中から飲んでおられたみたいなんだよ・・」

「ケチなやろうだぜ!まったく~う!」

 内藤はあらゆるイヤな思い出を吐き出してやると、とことん!想い出しきってやると!そう思って飲んでいた。
「おい荻野お!荻野っ!」
 
 荻野は無論知らん顔だ。「あんな酔っ払い、知るか!」

 これにはさすがに、大酒飲みの海野もあきれた。
内藤の酔いの毒舌を、ハルゼイも聞いていた。
「あれでもお辛い事があるんだろうさ・・。それに、内藤閣下はハロッズ閣下に較べたら、マシだよ。
 野生動物にはなっていらっしゃらないんだからな!」
 こう、言い終えると常の様に、ハルゼイは大笑いだ。

「ウミノ!知ってるかい?日本の地獄!鬼は公務員なんだってよ!」
「へ_!誰がそんな事を?」
「へへへ!驚いたか?実はカミヤマに教わった」
「へ!」
 キョトンとした海野を見ながらハルゼイはまた大笑いをしている。


 (続く)

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Last updated  2025/10/10 09:18:44 PM



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