2658886 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

漫望のなんでもかんでも

漫望のなんでもかんでも

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

PR

Profile

まろ0301

まろ0301

Freepage List

2018.01.08
XML
カテゴリ:カテゴリ未分類

二『エレファントム』ライアル・ワトソン 木楽舎 福岡伸一 高橋紀子訳

 

 『動的平衡』のp238以降に引用されている、象と鯨とのコミュニケーション

の場面を読んで、ワトソンの本を読んでみたくなった。

「海で最も大きな生き物と、陸でもっとも大きな生き物とが・・・超低周波音

の声で語り合っている」

 この本の副題は、「象はなぜ遠い記憶を語るのか」だ。

 まず、ワトソンの少年期の行動が語られる。それは、「仲間の少年たちと自然

の中で暮らす」というもので、象と、オランダ人からは「ホッテントット」(

もる人)と呼ばれた牧畜を生業とする「コイ」の男と出会う。なんとかコミュニ

ケーションをとろうとし、彼から多くのことを学ぶ。この少年期の体験がワト

ソンのその後を決定づけている。

 以下、「コイ」「サン」の人たちのことが語られ、象の生態、特にアフリカで

暮らす人たちの間で象がどのように崇拝され、扱われたかが記される。

 第四章は「象たちの受難」であり、読んでいて胸の悪くなるような人間たち

の行為が記される。正に大量虐殺としか言えない行為である。

 「ヘミングウェイの生きていた時代には、1000万頭のアフリカゾウがサバン

ナを歩きまわっていた。いまでは、その数は50万頭にも満たない。・・象は平

均して65歳まで生きる。65歳になると歯が使い物にならなくなり、飢えて死

ぬ。・・個体の増加数は年にせいぜい4%」。P136

 象を楽しみのために撃ち殺す、牙目当てに撃ち殺す輩が次から次へとアフリ

カに押し寄せる。開拓の進行は象の棲息地と重なりはじめ、「人間の生活を守る

ために」象は殺される。

 日本の例を見るまでもなく、動物たちの棲息域にまず踏み込んだのは人間で

あって、その逆はない。象殺しは正当化される。

 何が起こったか。象たちの牙が小さくなっていったのだ。大きな牙を持った

象が殺され、その遺伝子は伝わらない。牙の小さな象は牙目的の殺戮を免れる。

 ワトソンが調査の対象としたクニスナでは、1914年には13頭だったのが、

1918年には17頭までに持ち直している。

 なぜか?人間たちが戦争に熱中していたからだ。戦争が終わると象たちの危機

は再発する。象狩りが始まった。

 またまた胸が悪くなるような光景。

 そしてワトソンは、クロースと云う男に出逢う。彼は、すぐれた象の追跡者

である。

 「動物の跡を追う技術は最古の科学である」という言葉をワトソンは紹介し

ている。納得する。これは、『野生の思考』で、レヴィストロースが展開してい

る論と限りなく近い。「偶然発見された技術」などはないのだ。緻密な観察と推

測、仮説、そのようなものから導き出されるものを私たちは「科学」と呼ぶ。

 軽い小噺のようなエピソードもある。

 オーストラリアに初めて牛が持ち込まれた。大陸全体に悪臭が発生、地元の

甲虫は牛の糞を処理できなかった。そこで出稼ぎ労働者の手を借りようとアフ

リカからフンコロガシが輸入された。彼らは象の糞で鍛えていたので牛の糞を

上手く処理してくれた。P195

 クロースとワトソンは象に襲われる。クロースの弟もその象に殺されていた。

 象の凶暴な行動は、人間から撃たれて傷ついたり、虫歯になったり、発情期

であったりと様々のようだが、彼らの棲息圏内に入り、大量殺害を引き起こし

た人間に責任の大半はありそうだ。

 ワトソンの知り合いに、レイモンド・ダートがいる。彼はアウストラロピテ

クスの化石を発見、当初は無視されたが、ダートの発見に感激したブルームと

いう同志を得て猿人の化石を発見、いまでは高校の世界史の教科書にも載って

いる。

 ワトソンは動物行動学者の道を選び、様々な人たちと出会い、動物園の象を

観察することから始めている。そしてそこで彼は、デライラという象と出会い、

彼女の行動を子細に観察する。引っ越しをしたデライラは、部屋の中のある一

点に意識を集中しはじめ、干し草の山の中から大きな束を選んで運び、その地

点をすべて覆い隠して緊張が解けた状態になった。飼育係に訊ねると、病気で

体調を崩した象がもう始末するしかないと判断されて銃で撃ち殺された場所だ

ったという。

 私たちは好んで「超常現象」という言葉を使う。ただそれは、我々人間の感

覚器では捉えることのできない何事かが起きていることかもしれない。私たち

は、この地球に棲息している生物のすべてについて完璧な知識を手に入れてい

るわけではない。そこに、「生命への畏敬」という心的態度の根拠がある。

 人体についての番組をNHKが放映しているのだが、臓器同士が会話を重ねて

いるという事実に私は圧倒されている。よくもこんなに精密な仕組みがあるも

のだと思う。それだけで「人間に対する畏敬の念」が自然に起きてくる。

 新しい年、最初の一冊となった。1月8日

 






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2018.01.09 20:05:46
コメント(5) | コメントを書く


■コメント

お名前
タイトル
メッセージ

利用規約に同意してコメントを
※コメントに関するよくある質問は、こちらをご確認ください。


Re:『エレファントム』読了(01/08)   maki5417 さん
なんとも読みにくいブログですね。

吉祥寺は、はな子がなくなってさびしいです。 (2018.01.08 22:05:00)

Re[1]:『エレファントム』読了(01/08)   まろ0301 さん
maki5417さんへ

普通にコピーして貼り付けたのですが・・。編集しなおします。
(2018.01.09 07:18:10)

今年もよろしく   嫌好法師 さん
今年もまろさんの知識のおこぼれで勉強させていただきます。

BBCアースのドキュメントで知ったのですが、象やキリンも葬送儀式をするのですね。「なめとこ山の熊」みたいなことを。それがヒトよりもっと以前からのことだとしたら、我々はあまりに人間中心の思考に慣れ過ぎて驕っていますよね。 (2018.01.09 12:28:12)

Re[1]:『エレファントム』読了(01/08)   まろ0301 さん
maki5417さんへ

編集画面に戻ってみたのですが、これは正常です。「投稿」した後で変化が生じたようです。書いている途中にもしょっちゅうenterキーで修正しなければなりませんでしたから、その段階でどこかおかしかったのだと思います。
(2018.01.09 20:09:57)

Re:今年もよろしく(01/08)   まろ0301 さん
嫌好法師さんへ

 「人体」を見ているのですが、臓器同士が会話するという現象に驚きました。これまですべて脳が司っていると思っていましたから。人間でもこれほどわからないことがあります。ましてや、動物の世界となると不思議だらけですね。
(2018.01.09 20:12:25)

Favorite Blog

日本のトランプ? … New! maki5417さん

逗子を歩く(その13) … New! MoMo太郎009さん

図書館大好き638 New! Mドングリさん

2024年の桜行脚(2… New! リュウちゃん6796さん

16日朝の日記 象さん123さん

Comments

まろ0301@ Re[1]:ドラマ「舟を編む」(03/27) maki5417さんへ 正社員二人というのは、…
maki5417@ Re:ドラマ「舟を編む」(03/27) 私も見ています。 キャスティングを見てど…
まろ0301@ Re[1]:ドラマ「舟を編む」(03/27) 嫌好法師さんへ 「なんて」の語釈。 […
嫌好法師@ Re:ドラマ「舟を編む」(03/27) ある人から勧められ私も今ハマっています…
まろ0301@ Re[1]:大二病なのか?(03/20) maki5417さんへ 確かに「詳細につきまし…

© Rakuten Group, Inc.