1月20日
トランプが大統領に就任するのは、1月20日のはずだが、この男は既に大統領気取りで、暴言を吐き散らし、支持者はそれに喝采を送っている。 トランプが、「気候変動などは存在しない」と公言しているのは有名で、さっそくパリ協定から離脱するのではないかと言われている。 「気候変動対策の死角」という番組を見て、二酸化炭素よりも温室効果が高いメタンが特定の地域から大量に発生していることが、衛星写真で明らかになっていることを知った。ツンドラが解けて氷の状態で地中にあったメタンが噴出しているのかと思ったら、石油・天然ガスの生産地から出ているという事を知った。アメリカのテキサスの現状が取り上げられていた。 形式的には排出してはいけないメタンガスに対する法規制はテキサスでは全くのザルであることが取材ではっきりした。 「テキサスには石油と天然ガスしかないんだから、私たちが生活していくためには仕方がない」という住民の声が取り上げられていたが、マイケル・サンデルの「白熱教室」で有名になったある思考実験を思い出した。 トロッコが暴走していて、転轍機を操作すれば、トロッコの方向をコントロールすることが出来る。ただし、Aの方向には5人が工事中であり、Bの方向には1人しか人が居ない。さて、転轍機を操れるあなたはどうしますか?というもの。 「私たちが生活するためには、トランプ大統領が公言しているように石炭や石油を掘って掘って掘りまくる。その地域で生活している国民のために」という理屈と、「産業革命以来、地球の平均気温が1,5度上昇する状態が続くと、もう引き返せない状態となる」という予測とどちらを選べばいいのか? 「世界一の金持ち」と言われているィーロン・マスクは、地球が住めなくなった時のために、火星への移住を検討していると仄聞する。地球は使い捨てなのだ。これはもう確信犯である。 「私の個人主義」は、漱石が学習院で行った講演を記録したものだが、英文学について英米人の見解をそのまま担ぎまわるのではなく、自己の立場をはっきりさせねばならないという事に気が付いて後、漱石は「自己本位」という立場をとる、という部分が有名なのだが、一方で、学習院の生徒たちに向かって、大要、以下のように言っている。 君たちは、金力と権力とを将来、他の人たちよりもより多く持つ立場になるでしょう。ただ、その時考えて欲しいのは、金力と権力とを持つ人間は、自己の欲望を実現するためにそれを使うのではなく、まずは人格の修練をしなければなりません。 今のアメリカ、そして日本を見るにつけ、漱石のこの言葉が脳裏に浮かんでくる。 別の番組で、マスクは、「テクノ・リバタリアン」と称されていた。「リバタリアニズム」という言葉は、ノージックという人物に帰されている言葉だが、「自由至上主義」と訳され、「平等や正義といった観点を自由主義に持ち込みべきではない」と主張する。「社会的な平等の為に財産の再分配などを国家がやるべきではない」とも。つまり、日本ではまだ生き残っている累進課税などは論外であるということだろう。「高額の税は勤勉な人々の労働意欲を奪い、貧乏人への所得の移転は彼らをよりナマケモノとする」という言葉が、リバタリアンのスローガンとなっている。 1月20日は、トランプが大統領に就任する日だが、今から気が重い。