2014/12/23(火)00:08
蟲師 続章 第19話 「泥の草」
『蟲(むし)』
見慣れた動植物とは違う、時にヒトに妖しき影響を及ぼすもの。
蟲師(むしし)は、それらを調査し在るべき様を示す。
ヒトと蟲の世を繋ぐ者、蟲師ギンコの旅の物語。
★前のお話は→ 蟲師 続章 あらすじまとめ
★蟲師1~26話 特別篇は→ 蟲師 あらすじまとめ
蟲師 続章 第19話「泥の草」
娘のユリを探すシゲル。山の中で見つかったが体がなく衣だけが残っていた。山に取られたんだと言われた。
奇妙な病が蔓延している里にやって来たギンコ。人々の足にはイボのようなものがたくさん出来ていた。この三日のうちに急に発症、足が痺れて辛いと訴えた。誰かが山に入ったんだ。だから死が伝染ったんだと囁く。死が伝染る? ギンコに老人が話した。
四日前に亡くなった者がいる。この里では山のあちこちにある沼地に死者を置いて葬る。するとやがて骸は骨まで消えて衣のみとなる。山に帰るのだと我々は思っていると老人は言った。それが終わるまで七日間は山に入ってはいけない。遠い昔にそれを破ったものが持ち帰り里中に広めたという言い伝えがあるので畏れている。
骸草(むくろそう) 動物の骸を骨まで分解して泥状にする蟲。その泥を生体に踏まれることで子株を拡げ、それをまた踏んだ生体に寄生していく。里の人たちの足に生えているのは骸草の芽のようだった。言い伝えとも重なる。ギンコが調合した薬を塗るとイボがポロっと取れて痺れも治った。
ギンコは道で骸草を見つけた。草全体には塩をまけば消える。骸草が生えていた家から少年(草介)が出て来た。その足にもイボがあったので薬がいるのかとギンコが聞くと伯父さん(シゲル)を看てあげてと言った。その足には芽ではなく成長した骸草が生えていた。抜いても抜いても出てくる。抜くと手にも生えるとシゲルは言った。
シゲルの足の骸草には薬が効かなかった。他のものと違う。山に入ったのはあんたかと聞くとシゲルは、ああと言った。亡くなったのは弟(シノブ)で、その息子の草介と山へ供養に行った。あんな言い伝えは嘘だと思っていた。十年前に娘がいなくなり探すと山で衣だけが見つかった。皆、山に取られたと言ったが山に入った誰も病にはならなかった。だから大丈夫だと思った。
父さんに会いたい、山にひとりにするなんて可哀想だと泣く草介を見て、お別れを言いに行こうとふたりで山に入った。シノブの骸には草がたくさん生えていて体は消えかけていた。草介は駆け寄って草を抜こうとした草介だが、父さんは本当に山の一部になったんだと言った。この草は父さんの分まで生きているんだと。
ひとりになってしまった草介に、うちの子になるか、伯父さんを父さんの代わりと思ってくれとシゲルは言った。家に帰ろうと近づいたときに草(が生えている骸)を踏んだ。その日以来、足から草が生えてきて育っている。話を聞いてギンコは妙だなと思った。山で偶然、泥状の骸を踏んで病になった例はわりとあるが薬で治っている。何か他に原因があるはずだと。
弟さんはどんな亡くなり方をしたのかと聞くと崖から落ちて見つかった時にはもう亡くなっていた。いつも俺を慕ってくれて特別仲のいい兄弟だったから辛かったとシゲルは言った。伯父さんは治ったかと聞く草介にギンコはまだわからないことがあってと答える。お前も薬を塗るかと言うと俺はいいよと草介は言った。
この草は父さんの代わりに生えてきたんだという草介に、でも辛いだろう、薬は伯父さんに預けておくからその気になったら使うといいとギンコ。ふたりはどんな兄弟だったかと聞くと草介は、父さんは伯父さんのことが大好きだった。小さい頃はよく伯父さんとの思い出話をしてくれた。でも何年か前からあまり伯父さんのことを話さなくなったと言った。
兄さんに話があると思いつめた様子のシノブが来た。何でも言ってみろとシゲル。シノブはすまなかったと泣いて謝った。ユリは自分が死なせてしまった。いると知らずに荷車の下敷きに。兄さんに言えなくて山に運んだ。自分も子を持って、あの子を見るたび苦しかった。どうしてこんなことを......地面に手を着いて何度も謝るシノブの頭をシゲルは石で殴りつけた。シノブを背負って運ぶと崖から投げ落とした。
夢の中でシノブが兄さんすまないと言う。シゲルは、もういい、お前は死んだんだと言って飛び起きた。足の草を見て、お前まだ生きているのかと呟いた。
草介は父の言葉を思い出していた。父は昔ある人に酷いことをしてしまったと言った。もし父さんに何かあっても、お前は誰も恨んだりしないでくれと言った。この里の者はいつかはみんな山に帰るんだ。何も心配することはないと。
ひとつ考えが浮かんだので試しに聞いてみてくださいとシゲルに話すギンコ。この足に生えている骸草という蟲は普段は泥状のものだが生き物の死臭に反応し死骸から芽を出す。その芽を踏むと寄生されるが生きたものから芽を出しても育つことはない。だがあんたのは骸と同じ反応をしている。あんたの体に死臭がしみついているからと考えると筋が通る。
いったい何のことを言っているとシゲル。ギンコは、それを追及するつもりはないと言った。この考えが正しければわずかな死臭も残さぬようしっかりと洗い清めれば薬も効くようになるはず。心当たりがあるなら試してみるといい。俺が口を出すのはここまでだ。
川で体を洗うシゲル。そこに草介が来た。父さんを殺したの?と草介。何を言っているんだとシゲルが言うと、さっきの蟲師さんの話を聞いていたと言った。そのことを誰かに言ったかとシゲル。誰にも言わないよ、父さんは誰も恨むなって言ったからと草介は言った。
シゲルが草介に近づく。伯父さんは俺に優しくしてくれた。なのにどうして、そんなことをしてしまったのと草介。怒りでどうしようもなくなったとシゲル。だがもしあの時こらえられたとしても、どのみちいつかはこうなっていただろうよ。お前だっていつかは俺を...
草介を捕まえようと手を伸ばしたシゲルが川に落ちた。足が痺れて動かないシゲルは草介に早く助けてと言いながら沈んで行った。
ギンコが川を通りかかると河原に骸草が生えていた。山にも帰れなかったのかとギンコは言った。
☆次回 「常の樹」
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