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2011/12/2から東京・池尻大橋にある区ト間というBARを、写真家山下忠志氏のmonochromeな写真作品(モノクロ写真)が飾る。BARで写真展が行われるのだ。 詳細はこちら。http://kutoma.blog94.fc2.com/blog-entry-410.html? これを機に、モノクロ写真について考えてみたい。というのは、デジカメが普及した現在、多くの方が当然のようにカラー写真を撮影し観賞しているからだ。カラーも素晴らしいのだが、モノクロの長けているところも知ってもらいたい。 ご存じのように、モノクロには色がない。この色がないことがモノクロ写真の利点を醸し出すのだ。 ↓ これは私の愚作であるが、以下の主張のサンプルとして利用いただきたい。 ~ 色を想像させる ~ モノクロ写真でも懐かしの白黒テレビでもそうなのだが、色のない画像を見た場合、人は色を想像出来るのだ。特に多感な子ども達は想像力に長けている。古い話になるが、初期の「ゴジラ」という映画はモノクロであった。それでも多くの子どもは口から噴かれる炎に“色を観ていた”のだ。 色というものが足りていないからこそ、人はそれを補完しようとして想像力を活動させる。大切に養われた想像力は、やがて創造する能力を開花させる。物質資源の乏しい日本が成長を遂げた理由のひとつとして創造力がある。新しい製品を創造出来たからこその高度成長期だったはずだ。 ~ 色がないからこそ見えてくるものがある ~ 撮影時にカメラの絞りを開けて撮ると、背景がぼける。この方法を利用すると主役な被写体を引き立たせる事が可能だ。例えば人物撮影をする際、背景まで全てピントが合ってしまうと、主役である人物が引き立たなくなる場合がある。いわゆる“ウルサイ写真”ということになる。場合によっては、全てにピントを合わせなければならない写真もあるのだが、主役を引き立たせる必要性については理解できると思う。 モノクロも絞りの利用と同じように、写真をシンプルにする。例えば、サーカスのピエロと女の子の記念撮影をした場合、カラー写真では色の派手なピエロが目立ちすぎてしまいがちだ。主役は愛娘なので、お父さんカメラマンは悩むところ。でも、モノクロで撮影すれば、ピエロの派手な色使いに娘さんも負けることはないであろう。 また、モノクロ化という着色のキャンセルを巧みに利用すれば、「人間の目に見えなかった物」或いは「人間の視覚が見落としていた物」が見えてきたりもするのだ。 人間の視覚は常に膨大なデータを脳に送っている。脳は受け取る全てのデータをまともに処理していては追いつかないので、必要性を判断して選択しているのだ。その時に選ばれなかった視覚情報は捨てられ、認識されることはない。つまり、あなたは「見ていても見えていない物」があるのだ。場合によっては、この「選ばれなかった現物」に大切なことが含まれている。 着色を削除したモノクロ写真はカラーよりも、見落としていた事実を確認する能力に長けている。 写真家山下忠志氏は、上記に挙げたように写真展を開催するのだが、今回のテーマは「FLOWERS」であって、花をモノクロで表現している。 彼によってモノクロ化された花からは、今まで気付かなかった新たな美しさを感じ取ることが出来る。 元々美しい花から色を抜くことにより、あなたは斬新な美を発見することであろう。 横尾けいすけ Yokoo Keisuke mail to keisuke450@gmail.com お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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